設備資金や運転資金など、事業資金を借り入れたい人の中には、各金融機関が実施する協調融資を検討している人もいますよね。その際、日本政策金融公庫は協調融資に対応しているのかどうかを知りたい人もいるでしょう。
当記事では、「日本政策金融公庫は協調融資に対応しているのか?」を解説します。協調融資のメリットやデメリットも紹介するため、事業資金を借り入れるための選択肢として協調融資を検討している人は参考にしてみてください。
日本政策金融公庫は協調融資に対応している
日本政策金融公庫は協調融資に対応しています。協調融資はひとつの企業に対し2つ以上の金融機関が連携して行う融資となるため、日本政策金融公庫の場合は銀行や信用金庫などの民間の金融機関と連携して協調融資を行っています。
日本政策金融公庫は政策金融機関(政府系金融機関)です。民間の金融機関を補完し、国民生活の向上に寄与することが目的となるため、日本政策金融公庫はその手段として協調融資を行うことにより、資金調達における手段の多様化や安定化を目指しています。
また、協調融資には、いくつかの形態があります。「信用保証付き融資とプロパー融資」や「メインバンクの融資とサブバンクの融資」など、複数の形態があるため、日本政策金融公庫と民間の金融機関による融資は協調融資の形態のひとつとなります。
ただし、協調融資が受けられるかどうかは審査の結果次第です。日本政策金融公庫は協調融資に対応していますが、協調融資を受けるときは各金融機関の審査に通過する必要があるため、協調融資を希望している人はその前提を踏まえておきましょう。
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2023年度の実績は3万件超
日本政策金融公庫の公式サイトにある「協調融資実績」によると、協調融資の件数は増加傾向にあります。企業の規模は限定せず、日本政策金融公庫全体の実績となりますが、2023年度における協調融資の件数は3万件を超えています。
【日本政策金融公庫における協調融資の実績】
年度 | 件数 | 合計額 | 参考資料 |
---|---|---|---|
2016年度 | 19,671件 | 7,322億円 | 「国民生活事業のご案内 2017」 |
2017年度 | 23,080件 | 7,505億円 | 「国民生活事業のご案内 2018」 |
2018年度 | 30,768件 | 1兆2,929億円 | 「国民生活事業のご案内 2019」 |
2019年度 | 28,736件 | 1兆2,556億円 | 「国民生活事業のご案内 2020」 |
2020年度 | 24,467件 | 1兆6,847億円 | 「国民生活事業のご案内 2021」 |
2021年度 | 25,259件 | 1兆2,527億円 | 「国民生活事業のご案内 2022」 |
2022年度 | 29,894件 | 1兆2,645億円 | 「国民生活事業のご案内 2023」 |
2023年度 | 32,594件 | 1兆2,406億円 | 「国民生活事業のご案内 2024」 |
※日本政策金融公庫の公式サイトにある「国民生活事業のご案内」をもとに株式会社SoLabo作成
日本政策金融公庫の場合、2016年度から2023年度における協調融資の件数は19,671件から32,594件に増加しています。2019年度と2020年度は前年よりも件数が減少していますが、2021年度以降は協調融資の件数が年々増加していることがわかります。
また、日本政策金融公庫は民間の金融機関との具体的な紹介ルールを取り決める「協調融資スキーム」の構築を進めています。2014年度以降は430以上の金融機関との構築が進行し、その結果として協調融資の件数増加に影響していることが推測されます。
なお、2020年度の融資額が増加しているのは新型コロナウイルス感染症の影響が考えられます。2020年度を除けば、2018年度以降の融資額は1兆2,000億円台の横ばいとなるため、協調融資を検討している人は融資額の推移も予備知識として確認しておきましょう。
協調融資を検討中の人はメリットとデメリットを押さえておく
協調融資には、メリットとデメリットがあります。協調融資のメリットとデメリットを把握することにより、協調融資を利用するかどうかの判断材料となる可能性があるため、協調融資を検討している人はメリットとデメリットを押さえておきましょう。
【協調融資のメリットとデメリット】
- メリットは融資額が高額になる可能性があること
- デメリットは各金融機関の審査に通過する必要があること
メリットとデメリットを把握することにより、協調融資を利用するかどうかの判断材料となる可能性があります。協調融資の特徴を把握することにもつながるため、協調融資が気になる人はメリットとデメリットを確認してみましょう。
メリットは融資額が高額になる可能性があること
協調融資のメリットとして挙げられるのは「融資額が高額になる可能性があること」です。日本政策金融公庫から単独の融資を受けるときと比較した場合、協調融資は2つ以上の金融機関から融資を受けることになるからです。
たとえば、日本政策金融公庫から単独の融資を受ける場合、融資額の上限は日本政策金融公庫が定めた金額となります。日本政策金融公庫から単独の融資を受けることになるため、日本政策金融公庫が定めた以上の金額を借りることはできません。
一方、協調融資を受ける場合、融資額の上限は日本政策金融公庫と連携先の金融機関が定めた金額となります。日本政策金融公庫と連携先の金融機関からそれぞれの融資を受けることになるため、日本政策金融公庫が定めた以上の金額を借りられる可能性があります。
ただし、協調融資だったとしても希望する融資額を借りられるとは限りません。融資額の上限は融資制度ごとに定められ、実際の融資額は申込者の情報から総合的に判断されるため、協調融資を検討している人は留意しておきましょう。
申込手続きの負担が軽減される可能性もある
協調融資におけるもうひとつのメリットは「申込手続きの負担が軽減される点」です。複数の金融機関に申し込むときと比較した場合、協調融資は一部の申込手続きが省略される可能性があるため、それにより申込手続きの負担が軽減されることも考えられます。
たとえば、複数の金融機関に申し込む場合、それぞれの金融機関の申込手続きを進めることになります。申込者の情報は各金融機関に共有されず、同じ内容の書類を各金融機関に提出することになるため、その分の申込手続きにかかる負担が発生することになります。
一方、協調融資の場合、中心となる金融機関から手続きを進めることになります。申込者の情報は連携先の金融機関に共有され、同じ内容の書類は提出を省略される可能性があるため、その分の申込手続きにかかる負担が軽減されることも考えられます。
ただし、それぞれの金融機関から対応する申込手続きもあります。一部の申込手続きは省略される可能性もありますが、書類の提出や面談の実施など、それぞれの金融機関から対応する申込手続きもあるため、協調融資を検討している人は留意しておきましょう。
デメリットは各金融機関の審査に通過する必要があること
協調融資のデメリットとして挙げられるのは「各金融機関の審査に通過する必要があること」です。日本政策金融公庫から単独の融資を受けるときと比較した場合、協調融資は2つ以上の金融機関から所定の審査を受けることになるからです。
たとえば、日本政策金融公庫から単独の融資を受ける場合、審査を実施するのは日本政策金融公庫のみです。審査を実施するのは日本政策金融公庫のみとなる関係上、日本政策金融公庫の審査に通過することができれば、原則として融資を受けることができます。
一方、協調融資の場合、審査を実施するのは日本政策金融公庫と連携先の金融機関です。審査を実施するのは日本政策金融公庫と連携先の金融機関となる関係上、いずれかの金融機関の審査に落ちてしまえば、原則として融資を受けることはできません。
なお、各金融機関の審査基準は非公開です。融資の可否は申込者の情報から総合的に判断されますが、金融機関は審査基準を公表しておらず、審査基準は金融機関ごとに異なることも考えられるため、協調融資を検討している人は留意しておきましょう。
審査に時間がかかる場合もある
協調融資におけるもうひとつのデメリットは「審査に時間がかかる点」です。日本政策金融公庫から単独の融資を受けるときと比較した場合、協調融資は2つ以上の金融機関から所定の審査を受けることになるからです。
たとえば、日本政策金融公庫から単独の融資を受ける場合、審査を実施するのは日本政策金融公庫のみです。審査を実施するのは日本政策金融公庫のみとなる関係上、あくまでも目安ですが、審査にかかる期間は1か月から2か月程度となる傾向があります。
一方、協調融資の場合、審査を実施するのは日本政策金融公庫と連携先の金融機関です。審査を実施するのは日本政策金融公庫と連携先の金融機関となる関係上、あくまでも目安ですが、審査にかかる期間は2か月から3か月程度となる傾向があります。
なお、各金融機関の審査期間は申込者の状況によっても異なります。審査の可否にかかわらず、金融機関の担当者から審査結果の連絡は来ますが、審査にかかる期間は申込者の状況によっても異なるため、協調融資を検討している人は留意しておきましょう。
協調融資を受けたい人は関連する商品を確認してみる
日本政策金融公庫は政策金融機能を発揮するため、金融機関との連携を推進しています。それにより、「信用金庫」「地方銀行」「信用組合」などの様々な金融機関と連携した商品があるため、協調融資を受けたい人は協調融資に関連する商品を確認してみましょう。
【協調融資に関連する商品の具体例】
金融機関と商品名 | 概要 |
---|---|
城南信用金庫 「Approach」 |
・対象者は創業より3年以内の法人または個人 ・融資金額は合計5,000万円以内 (融資割合は原則として50:50) |
名古屋銀行 「ネクスト」 |
・対象者は愛知県内に本社を有し、新たに経営多角化・事業転換を図る人など ・融資金額は3億円以内 (融資割合は個別に調整) |
十勝信用組合 「事業継承」 |
・対象者は同信用組合の営業地区内にて事業承継の局面にある人 ・融資金額は合計5,000万円以内 (融資割合は個別に相談) |
協調融資に関連する商品には、対象者の条件があります。「創業から3年以内の事業者」や「事業承継の局面にある事業者」など、対象者の条件が定められているため、商品を選ぶときは対象者の条件と申込者の状況を照らし合わせることになります。
また、協調融資に関連する商品には、融資額の規定があります。「融資の合計額は5,000万円以内」や「融資の割合は50:50」など、融資額の規定が定められているため、商品を選ぶときは融資額の規定と希望する融資額を照らし合わせることになります。
なお、協調融資スキームの構築が進行した結果、日本政策金融公庫の連携先となる金融機関は300以上あります。協調融資に関連する商品も多岐にわたるため、協調融資が気になる人は日本政策金融公庫の担当者に問い合わせることを検討してみましょう。
シンジケートローンという制度もある
日本政策金融公庫には、協調融資に関連する商品に加え、シンジケートローンという制度もあります。シンジケートローンは複数の金融機関がひとつの契約書に基づき、同一条件により行う融資となるため、気になる人はシンジケートローンの制度も押さえておきましょう。
【日本政策金融公庫のシンジケートローン特別貸付の概要】
項目 | 概要 |
---|---|
対象者 | 「新規事業、環境対策、経営改善などに取り組む人」かつ「地域経済の維持・促進に資する事業に取り組む人」 |
資金使途 | 各特別貸付に定める設備資金および長期運転資金 |
融資限度額 | 直接貸付 1社あたり原則として14億4千万円 |
利率 | シンジケートローンに参加する金融機関が合意した利率 (ただし、固定利率の場合は一定の制約がある) |
返済期間 | シンジケートローンに参加する金融機関が合意した期間 (ただし、設備資金は30年以内、運転資金は20年以内に限る) |
返済方法 | シンジケートローンに参加する金融機関が合意した方法 (ただし、割賦期間は1、2、3、6、12か月のいずれかに限る) |
※日本政策金融公庫の公式サイトにある「シンジケートローン特別貸付」をもとに株式会社SoLabo作成
シンジケートローンは複数の金融機関が参加するシンジケート団を組成することになります。「幹事を務めるアレンジャー」や「事務代行を務めるエージェント」などの役割がありますが、日本政策金融公庫は「貸付を行うパーティシパント」としてシンジケート団に参加する流れになります。
そして、日本政策金融公庫の融資制度の中には、「シンジケートローン特別貸付」があります。シンジケートローンの性質上、シンジケートローン特別貸付は複数の金融機関が関わることになるため、詳しい条件は日本政策金融公庫の担当者に確認することになります。
なお、シンジケートローンを利用する場合は手数料が必要となります。「アレンジメントフィー」や「エージェントフィー」など、シンジケートローン特有の手数料が発生するため、シンジケートローンが気になる人は予備知識として覚えておきましょう。
まとめ
日本政策金融公庫は協調融資に対応しています。協調融資はひとつの企業に対し2つ以上の金融機関が連携して行う融資となるため、日本政策金融公庫の場合は銀行や信用金庫などの民間の金融機関と連携して協調融資を行っています。
また、協調融資には、メリットとデメリットがあります。協調融資のメリットとデメリットを把握することにより、協調融資を利用するかどうかの判断材料となる可能性があるため、協調融資を検討している人はメリットとデメリットを押さえておきましょう。
なお、日本政策金融公庫には、協調融資に関連する商品に加え、シンジケートローンという制度もあります。シンジケートローンは複数の金融機関がひとつの契約書に基づき、同一条件により行う融資となるため、気になる人はシンジケートローンの制度も押さえておきましょう。