創業資金を用意するために日本政策金融公庫から融資を受けたい人のなかには、新創業融資制度が気になっている人もいるでしょう。とくに、新創業融資制度の審査に通過するためにどのような準備が必要か知りたい人もいますよね。
当記事では、新創業融資制度の審査に通過するためのコツを解説します。審査の際に担当者がチェックする項目についても紹介するので、新創業融資制度を利用して日本政策金融公庫の融資を受けたい人は参考にしてみましょう。
当サイトでは、現在準備できている自己資金や事業計画で日本政策金融公庫の融資が受けられそうか、またいくらの融資が受けられそうか、当社SoLabo(ソラボ)の過去4,500件の融資実績から診断可能です。当社には元日本政策金融公庫の担当者もおり、無料で診断できますので、審査が不安な方はお問い合わせください。
審査は総合的な判断をもとに行われる
新創業融資制度の審査は総合的な判断をもとに行われます。審査基準は非公開ですが、提出書類や日本政策金融公庫の担当者との面談を通して、さまざまな項目を確認されることになります。
具体的には、日本政策金融公庫の担当者は「自己資金」「業務経験」「事業計画」「信用情報」を確認する傾向があります。そのため、日本政策金融公庫の担当者はこれらの情報から総合的に審査を行い、新創業融資制度の審査の可否を決定します。
融資を受けるには所定の審査に通過する必要があるので、新創業融資制度を利用して融資を受けたい人はそれぞれの項目を確認しておきましょう。
自己資金
日本政策金融公庫の担当者は、自己資金を用意しているかどうかを確認しています。事業をはじめるために用意した自己資金が確認できない場合、日本政策金融公庫の担当者から創業の準備が不十分だと判断され、新創業融資制度の審査に落ちる可能性があります。
たとえば、日本政策金融公庫総合研究所の「2013年度新規開業実態調査」によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均して約3割程度でした。開業資金の総額が600万円の人を例にすると、目安として300万円程度の自己資金を用意する必要があります。
ただし、日本政策金融公庫から融資を受ける場合は、自己資金として認められないお金もあります。タンス預金や親からの贈与は自己資金として認められない可能性があるので、自己資金について気になる人は「自己資金なしでも日本政策金融公庫から融資を受けられるのか?」を参考にしてみてください。
業務経験
日本政策金融公庫の担当者は、創業する業種における業務経験がどの程度あるかを確認しています。同じ業種での経験があることで、思いつきで創業を決めたのではなく、以前から創業準備を進めてきたと考えられるためです。
たとえば、飲食店を開業したい人が5年間の調理経験と3年間の店舗運営の経験を積んだ場合、調理の技術だけでなく、飲食店を運営するためのノウハウもある程度持っていると判断できるので、開業するための業務経験を積んでいると判断される可能性があります。
なお、申し込み時に提出する創業計画書に業務経験を記載します。創業計画書の書き方については「日本政策金融公庫の融資に必要な創業計画書の書き方まとめ」のページを参考にしてみてください。
事業計画
日本政策金融公庫の担当者は、事業の実現可能性や事業が成功するかどうかを判断するために、創業後の事業計画を確認しています。
具体的には、日本政策金融公庫の担当者は「創業計画書」の記載内容から事業計画を確認しています。創業計画書は事業の経験、販売計画や資金計画などを説明するために、創業する人や創業後2年以内の人が融資を受ける際に提出する書類です。
項目名 | 記載内容 |
---|---|
創業の動機 | 創業動機、事業の目的、将来的なビジョン |
事業の経験等 | 勤務先や勤務年数、勤務時の役職、待遇、実績等 |
取扱商品、サービス | 提供する商品、サービス、技術の詳細とそれらの提供方法、セールスポイント |
販売先・仕入先 | 顧客ターゲット層の具体像や顧客獲得につながるポイント、具体的な仕入先や仕入先との関係など |
必要な資金と調達の方法 | 設備資金と運転資金の内訳および具体的な金額、創業資金の調達方法(どこからいくら調達するのか具体的に記載) |
事業の見通し(月平均) | 創業後の収支計画(売上高、売上原価、経費、利益など) |
たとえば、「必要な資金と調達の方法」の項目には、自己資金や家族や親戚、知人からの借入、他の金融機関からの借入などの具体的な金額を記載します。日本政策金融公庫の担当者は借入に依存していない資金計画かどうか確認します。
また、「事業の見通し(月平均)」の項目では、事業をはじめた後にどの程度の利益が出るのかを説明するので、商品やサービスの料金と見込み顧客の人数から、想定している売上高を算出します。創業後の売上高のほかには、原価や経費などの収支の見込みが実際よりも甘くなっていないかに注意する必要があります。
なお、売上高の計算方法は、日本政策金融公庫の公式サイトにある「売上高の計算方法について」で詳しく解説されているので、これから事業計画を立てる人は参考にしてみましょう。
信用情報
日本政策金融公庫の担当者は、申込者の信用情報を確認しています。クレジットやローンの契約や申込などの客観的な取引事実を登録している信用情報は、申込者が計画的に返済できる人物かどうかの判断材料になるためです。
【信用情報から照会できる情報の一例】
・クレジットカードの支払い
・銀行や消費者金融などのカードローン
・奨学金の返済
・スマホ本体代の分割払い
具体的には、日本政策金融公庫の担当者は、信用情報から申込者の滞納などの支払履歴や債権回収、債務整理の有無を確認しています。クレジットカードやカードローンの支払いを延滞した経験がある人は、日本政策金融公庫の担当者から返済能力に問題があると判断されるおそれがあります。
信用情報は株式会社シー・アイ・シー(CIC)や株式会社日本信用情報機構(JICC)に開示請求すれば確認できます。自分の信用情報に不安がある人は、「日本政策金融公庫の審査における信用情報を解説」を参考にしてみましょう。
公共料金や税金の支払状況も確認している
日本政策金融公庫の担当者は、公共料金や税金の支払状況も確認します。公共料金や税金の支払い状況は信用情報から確認できないので、通帳の履歴や支払証明証、領収書の内容から確認する傾向があります。
具体的には、日本政策金融公庫の担当者は携帯電話料金、水道、電気、ガスなどの公共料金や住民税、所得税などの税金を滞納していないかを確認しています。
実際に、日本政策金融公庫の「創業の手引き+」では、「公庫では、ご返済をきちんとしてもらえるかどうかの判断材料の一つとして、日頃の諸支払い振り(公共料金、家賃、住宅ローン等の支払い状況)を確認させていただいています」との記載を確認できます。
ただし、公共料金や税金の支払いをクレジットカード払いに設定している場合には、それらの支払いはクレジットカードの利用履歴として信用情報に登録されています。公共料金や税金の支払いをクレジットカード払いに設定している人はその点を留意しておきましょう。
新創業融資制度の審査に通過するためのコツ
新創業融資制度の審査に通過するにはおさえておきたいコツがあります。金融機関からはじめて融資を受ける人は、審査に通過するためのコツをおさえておくことで、融資を受けるための準備を適切に進められるためです。
【新創業融資制度の審査に通過するためのコツ】
- 必要な資金の内訳とその根拠を整理しておく
- 面談で事業計画を説明できるように準備する
- 状況にあわせた追加書類を提出する
提出書類や面談に向けて必要な準備も解説するので、日本政策金融公庫に申し込む予定がある人は確認しておきましょう。
必要な資金の内訳とその根拠を整理しておく
新創業融資制度の審査に通過するためには、必要な資金の内訳とその根拠を整理しておきましょう。日本政策金融公庫の審査では、必要な資金の内訳とその根拠を確認し、希望の融資額が妥当な金額かどうかを判断しているためです。
たとえば、日本政策金融公庫が飲食店を創業する人に向けて公開している『創業の手引き+』では、必要な資金についてのチェックリストを記載しています。
【飲食店を創業する人の資金に関するチェックリスト】
- 出店予定地周辺の家賃相場を把握していますか?
- 出店予定地の家賃・保証金が周辺相場と比べて高くはないですか?
- 飲食店の内外装工事の実績がある工事業者を知っていますか?
- 2社以上から見積書を取って、工事価格の妥当性や相場観をつかんでいますか?
- 出店場所や内外装等のグレードは調達できる金額(自己資金や借入金等)を算段した上で決めていますか?
- 創業時の宣伝広告費、人材募集費等の運転資金や、事業開始後の運転資金(半年程度の赤字補てん資金等)の準備は大丈夫ですか?
- 居抜き物件の場合、譲渡してもらう造作・設備の価格の内訳および価格の妥当性を確認していますか?※引用:『創業の手引き+』|日本政策金融公庫
店舗の内外装工事にかかる費用は、2社以上から見積をとることで、予算をいくら確保しておけばよいかの目安がわかります。審査の際は見積書の提出を求められる場合もあるので、工事業者にあらかじめ見積書の作成を依頼しておく必要があります。
また、事業開始後に支払うことになる毎月の家賃や光熱費、仕入費用、人件費などの運転資金は、事業が軌道にのるまでの期間分を用意しておく必要があるので、できる限り実際に近い金額を確認しておくことが望ましいです。
なお、開業資金について留意すべき点は事業内容によっても異なります。日本政策金融公庫の公式サイトにある「創業の手引、創業のポイント集」では、業種ごとの資料が掲載されています。チェックリストを確認したい人は、該当する業種の資料を参考にしてみましょう。
面談で事業計画を説明できるように準備する
新創業融資制度の審査に通過するためには、日本政策金融公庫の担当者との面談で事業計画を説明できるように準備しておきましょう。面談の際、申込者は口頭で担当者からの質問に答えるので、事業についてわかりやすく説明できるようにしておく必要があります。
具体的には、日本政策金融公庫の担当者は面談時に創業計画書の記入内容を質問する傾向があります。事業計画の概要は創業計画書から確認できますが、記載内容の根拠や詳しい経緯などを深掘りするために口頭でも質問されます。
創業計画書の「必要な資金と調達の方法」の項目を例にすると、日本政策金融公庫の担当者は創業計画書で説明されていない背景を確認するために、自己資金の調達方法や設備資金と運転資金の根拠について質問する傾向があります。
なお、面談の際の質問内容は申込者の状況や事業内容によっても異なります。日本政策金融公庫の担当者からよく聞かれる質問もあるので、日本政策金融公庫の面談準備をしたい人は「日本政策金融公庫の面談内容と質問集」も参考にしてみましょう。
状況にあわせた追加書類を提出する
新創業融資制度の審査に通過するためには、状況にあわせた追加書類を提出しましょう。追加書類を提出することで、創業に向けて計画的に準備を進めてきたことがわかる場合があるためです。
追加書類が必要になる条件 | 追加書類の一例 |
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許認可の取得が必要な事業をはじめる場合 | 許認可証のコピー |
設備資金で融資を受けたい場合 | 見積書のコピー |
不動産を担保に入れる場合 | 不動産の全部事項証明書または登記簿謄本等 |
申込者が日本国籍以外の外国籍の場合 | 在留資格があることが確認できる書類 |
たとえば、許認可の取得が必要な事業の場合は許認可証のコピーを提出します。飲食店なら保健所の営業許可、美容室なら美容師免許など、事業内容によって必要な許認可は異なるので、日本政策金融公庫から融資を受けて創業する予定の人は許認可が必要かどうかを確認する必要があります。
追加書類が必要になるかどうかは事業内容などの状況によって異なるので、追加書類の有無を確認したい人は日本政策金融公庫の公式サイトにある「店舗のご案内」から最寄りの支店を確認し、該当する支店の窓口に問い合わせてみましょう。
希望金額が借りられるかどうかは事業計画による
日本政策金融公庫から希望金額が借りられるかどうかは事業計画によります。日本政策金融公庫の担当者は、事業計画の内容から融資金額を決めているためです。
たとえば、飲食店の開業を例にすると、設備購入費用が相場を大きく上回る場合や、設備の必要性が確認できなかった場合は希望金額から減額される可能性があります。このように、創業計画書に記載した資金の使いみちが妥当でない場合は、希望金額で借りられないおそれがあります。
また、創業資金総額に対して自己資金の割合が低い場合は、借入に依存した計画とみなされ、希望金額から減額される可能性があります。自己資金は創業資金総額の3割程度が目安になることを留意しておきましょう。
なお、日本政策金融公庫から創業融資を受けて運転資金を調達する場合には、月商の2か月~3か月分までの金額が目安になる傾向があります。
建設業や不動産業などの売掛金の回収に時間がかかる業種は面談時に交渉が可能なので、運転資金に不安を感じる人は「運転資金の融資を受けられる金融機関は?借入金額の目安と考え方」も参考にしてみましょう。
融資の専門家にアドバイスを受ける選択肢もある
事業計画の立て方がわからない人は融資の専門家にアドバイスを受けるのも選択肢のひとつです。事業者を支援した実績を持つ専門家からアドバイスを受けることで、事業計画の作成をサポートしてもらえたり、改善点を見つけたりすることができます。
たとえば、中小企業支援ができる機関として国の認定を受けている「認定支援機関」は事業計画の作成をサポートしています。認定支援機関として認められている機関は、中小企業庁が運営する「認定経営革新等支援機関検索システム」から都道府県別に調べることが可能です。
ただし、認定支援機関によってサポート内容は異なります。事業計画の作成代行に対応している場合もあれば、作成した事業計画に対するアドバイスのみの場合もあるので、どこまでサポートが可能なのかを事前に確認しておく必要があります。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)も国の認定支援機関です。これまでに4,500件以上の融資を支援してきた実績があるので、事業計画の立て方がわからない人や専門家のアドバイスを受けたい人は気軽にご相談ください。
まとめ
新創業融資制度の審査は、申込者の「自己資金」「業務経験」「事業計画」「信用情報」に基づき総合的に判断されます。各項目については創業計画書に記載の上、日本政策金融公庫の担当者との面談でも詳しく質問を受けるので、口頭でも説明できるように準備する必要があります。
なお、日本政策金融公庫から事業資金の融資を受ける場合は、申込者が制度を指定できるわけではありません。審査の結果から日本政策金融公庫側が利用する制度を指定することになるので、新創業融資制度を利用したい人は留意しておきましょう。