【運送業版】日本政策金融公庫の創業計画書の書き方と記入例を解説

トラック運送業やバイク便事業など、運送業の開業を予定している人の中には、日本政策金融公庫から創業融資を受けることを検討している人もいますよね。その際、日本政策金融公庫に提出する創業計画書の書き方を知りたい人もいるでしょう。

当記事では、運送業における創業計画書の書き方と記入例を解説します。「創業計画を考えるときのポイント」や「創業計画書にある各項目のポイント」を解説するため、運送業の開業を目指している人は参考にしてみてください。

まずは創業計画を立てるところから始める

創業計画書は事業の実現性を伝えるための書類です。日本政策金融公庫の担当者は創業計画書から事業の実現性を見極めることになるため、まずはその前提を踏まえつつ、創業計画書を作成するための準備として創業計画を立てるところから始めてみましょう。

【創業計画を立てるときのポイント】

  • 将来を構想する
  • 現状を整理する
  • 課題を抽出する

創業計画書の内容が非現実的だった場合、事業の実現性を示すことはできません。日本政策金融公庫から創業融資を受けるならば、担当者に事業の実現性を示す必要があるため、まずは創業計画書を作成するための準備としてそれぞれの項目を確認してみましょう。

将来を構想する

創業計画を立てるときのポイントは「将来を構想すること」です。将来を構想することにより、目標や方針を創業計画書に落とし込むことができるため、運送業の開業を目指している人は創業計画書を作成するための準備として将来を構想してみましょう。

【将来を構想するときの具体例】

項目 具体例
形態 ・個人事業主になるのか?
・法人設立するのか?
対象 ・運送する貨物の種類は?
・顧客となる荷主は?
拠点 ・対応する地域は?
・事務所を設けるのか?

将来を構想するときの項目として挙げられるのは「形態」です。「個人事業主」「法人設立」「フランチャイズ」など、形態の観点から将来を構想することにより、開業後の目標を創業計画書に落とし込むことができます。

また、将来を構想するときの項目として挙げられるのは「対象」です。「倉庫間の運送」「企業間のルート配送」「通販サイトの取引」など、対象の観点から将来を構想することにより、開業後の方針を創業計画書に落とし込むことができます。

なお、将来を構想するときは開業の動機を振り返ることも方法のひとつです。開業の動機を振り返ることにより、理想の将来像が見えてくる可能性があるため、将来を構想するときは開業の動機を振り返ることも検討してみましょう。

現状を整理する

創業計画を立てるときのポイントは「現状を整理すること」です。現状を整理することにより、長所や成果を創業計画書に落とし込むことができるため、運送業の開業を目指している人は創業計画書を作成するための準備として現状を整理してみましょう。

【現状を整理するときの具体例】

項目 具体例
許可 ・運送業許可の取得は?
・運行管理者の資格は?
実績 ・運送業界の勤務歴は?
・取得したスキルは?
人脈 ・ルート配送の荷主は?
・チャーター便の荷主は?

現状を整理するときの項目として挙げられるのは「許可」です。「運送業許可の取得」「運行管理者の資格」「整備管理者の資格」など、許可の観点から現状を整理することにより、アピールポイントとなる長所を創業計画書に落とし込むことができます。

また、現状を整理するときの項目として挙げられるのは「実績」です。「運送業界の勤務歴」「取得した技術」「経験した業務」など、実績の観点から現状を整理することにより、アピールポイントとなる成果を創業計画書に落とし込むことができます。

なお、現状を整理するときは強みと弱みを書き出すことも方法のひとつです。強みと弱みを書き出すことにより、得意とする分野と苦手とする分野を把握できる可能性があるため、現状を整理するときは強みと弱みを書き出すことも検討してみましょう。

課題を抽出する

創業計画を立てるときのポイントは「課題を抽出すること」です。課題を抽出することにより、対策や戦略を創業計画書に落とし込むことができるため、運送業の開業を目指している人は創業計画書を作成するための準備として課題を抽出してみましょう。

【課題を抽出するときの具体例】

項目 具体例
資金 ・開業資金の目安は?
・資金調達の方法は?
集客 ・認知度を上げる方法は?
・取引先を増やす方法は?
車両 ・維持管理の方法は?
・搭載する機能は?

課題を抽出するときの項目として挙げられるのは「集客」です。「物流業者への営業方法」や「新規顧客の開拓方法」など、集客の観点から課題を抽出することにより、その課題を解決するための対策を創業計画書に落とし込むことができます。

また、課題を抽出するときの項目として挙げられるのは「車両」です。「導入する車種」や「メンテナンスの方法」など、車両の観点から課題を抽出することにより、その課題を解決するための戦略を創業計画書に落とし込むことができます。

なお、課題を抽出するときは競合となる運送業者を調査することも方法のひとつです。競合となる運送業者を調査することにより、新たな課題を発見できる可能性があるため、課題を抽出するときは競合となる運送業者を調査することも検討してみましょう。

次は創業計画書にある各項目を確認する

日本政策金融公庫は創業計画書のフォーマットを用意しています。フォーマットの中には、いくつかの項目が用意され、その中でも融資の可否を左右する項目があるため、創業計画を立てた人は次の工程として創業計画書にある各項目を確認してみましょう。

【創業計画書にある項目の具体例】

  • 「創業の動機」
  • 「経営者の略歴」
  • 「取扱商品とサービス」
  • 「取引先と取引関係」
  • 「必要な資金と調達方法」
  • 「事業の見通し」

創業計画書のフォーマットは日本政策金融公庫の公式サイトにある「国民生活事業」からダウンロードできます。まずは創業計画書をダウンロードし、ダウンロードが完了した人は次から説明する各項目のポイントと記入例を確認してみましょう。

「創業の動機」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「創業の動機」です。開業の目的や理由を記入する項目となるため、「創業の動機」を書くときは開業前の計画性や開業後の経営方針を落とし込むことがポイントになります。

【「創業の動機」の記入例】

高校を卒業後は運送会社2社に計14年間勤務してきました。中型トラック(最大積載量4トン)を使用し、埼玉県全域の企業を対象にルート配送を行ってきました。2社目では、運行管理者の資格を取得し、関東営業所長として従事しました。労務管理や人材育成などの業務を経験する中で、運送業を開業したいと考えるようになり、それからは自己資金をコツコツと貯めてきました。そしてこの度、現勤務先の取引先から運送業務を受託できる目途が立ったため、開業を決意しました。開業後は千葉県内の個人宅への配送を中心に取り組みつつ、信頼されるサービスを提供していきます。

開業前の計画性を伝えるときのポイントは「具体的な行動」を盛り込むことです。「勤務経験の年数」「自己資金の貯蓄」「人脈の構築」など、具体的な行動を盛り込むことにより、計画的に開業準備を進めてきたことを伝えられる可能性があります。

開業後の経営方針を伝えるときのポイントは「具体的な条件」を盛り込むことです。「受託予定の業務内容」「対応する地域」「配送先の特徴」など、具体的な条件を盛り込むことにより、経営方針が明確にできていることを伝えられる可能性があります。

なお、支援者の協力がある場合はその旨を記入することも方法のひとつです。「親族」や「取引先」など、支援者の協力は事業の実現性を示す要素となるため、支援者の協力がある人は親族や取引先などの支援者との関係性を記入しておきましょう。

「経営者の略歴」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「経営者の略歴」です。自身の経歴や実績を記入する項目となるため、「経営者の略歴」を書くときは習得したスキルや客観的な実績を落とし込むことがポイントになります。

【「経営者の略歴」の記入例】

年月 内容
平成22年3月 〇〇高等学校卒業
平成22年4月 〇〇運輸 8年勤務
(中型トラックでのルート配送に従事。荷積み、荷下ろし、車両整備などを担当)
平成30年6月 〇〇運送サービス 6年勤務
(運行管理者の資格を取得後、関東営業所長として従事。労務管理や人材育成などを担当)
令和6年12月 退職

習得した技術を伝えるときのポイントは「職務内容」を記入することです。「車両整備」「労務管理」「人材育成」など、複数の職務を担当した経験がある場合はそれらの職務内容を記入することにより、開業後に活かせる技術を伝えられる可能性があります。

客観的な実績を伝えるときのポイントは「役職名」を記入することです。「営業所長」「支店長」「エリア統括部長」など、役職者としての経験がある場合はそれらの役職名を記入することにより、周囲からの評価を伝えられる可能性があります。

なお、運送業に関する資格を取得している場合はその旨を記入することになります。「運行管理補助者」「整備管理者」「大型特殊自動車免許」などの資格は開業後の経営に役立つ可能性があるため、資格を取得している人は資格名を記入しておきましょう。

「取扱商品とサービス」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「取扱商品とサービス」です。業者の長所や戦略を記入する項目となるため、「取扱商品とサービス」を書くときは競合業者との差別化や集客の実現性を落とし込むことがポイントになります。

【「取扱商品とサービス」の記入例】

項目 内容
事業内容 軽トラックを使用した運送事業
取扱商品・サービスの内容 貨物軽自動車運送事業(売上シェア100%)
セールスポイント 勤務中における無事故と無違反の実績があります。開業後は個人宅への配送が中心となるため、この実績を活かして丁寧な運転を徹底します。個人事業主として柔軟な対応が可能となるため、時間指定や届け先変更など、顧客のニーズに応じたサービスを提供します。
販売ターゲット・販売戦略 開業当初は現勤務先の取引先である〇〇ロジスティクス様より業務を受託するため、すぐに売上が確保できます。他の業務の対応も可能な場合は受託業務を増やす予定で、物流会社への訪問営業や物流マッチングサービスを活用し、新規顧客の獲得を目指します。
競合・市場など企業を取り巻く環境 運送業界はドライバー不足が慢性化しており、運送業務の需要は高い状態です。今後も通販サイト市場が拡大することが考えられるため、運送業務は増えると予想されます。競合する業者はありますが、早朝や夜間の配送にも対応することにより差別化を図ります。

競合業者との差別化を伝えるときのポイントは「運送業者の強み」を記入することです。「無事故の実績」や「個人事業主としての柔軟な対応」など、運送業者としての強みを記入することにより、競合業者と差別化する要素を伝えられる可能性があります。

集客の実現性を伝えるときのポイントは「具体的な施策」を記入することです。「物流会社への訪問営業」や「物流マッチングサービスの活用」など、具体的な施策を記入することにより、集客の実現性を伝えられる可能性があります。

なお、商圏分析を実施した場合はその旨を記入することも方法のひとつです。「人口比率」や「地域特性」など、商圏分析は差別化や実現性における根拠となるため、商圏分析を実施した人は人口比率や地域特性などの商圏分析の結果を記入しておきましょう。

「取引先と取引関係」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「取引先と取引関係」です。想定している販売先や仕入先を記入する項目となるため、「取引先と取引関係」を書くときは受託の見込みや仕入先の信頼性を落とし込むことがポイントになります。

【「取引先と取引関係」の記入例】

項目 取引先名 所在地 取引先のシェア 掛取引の割合 回収・支払の条件
販売先 〇〇ロジスティクス
(現勤務先の取引先。個人宅への配送を受託予定)
千葉県〇〇市 100% 100% 末日〆翌月末日回収
仕入先 〇〇石油
(知人が経営)
千葉県〇〇市 100% 100% 末日〆翌月末日支払

受託の見込みを伝えるときのポイントは「受託が期待できる理由」を記入することです。「販売先との関係性」や「業務委託の契約内容」など、受託が期待できる理由を記入することにより、受託の見込みが想定できていることを伝えられる可能性があります。

仕入先の信頼性を伝えるときのポイントは「仕入先との関係性」を記入することです。「知人が経営する業者」や「過去の取引先」など、仕入先との関係性を記入することにより、信頼できる仕入先が確保できていることを伝えられる可能性があります。

なお、販売先が個人の場合はその旨を記入することになります。「引越の業務」や「個人間の取引」など、販売先が個人の場合はその旨を記入することになるため、個人から業務を受託する予定の人は受託が期待できる理由に加え、一般個人と記入しておきましょう。

「必要な資金と調達方法」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「必要な資金と調達方法」です。開業資金や資金調達の金額を記入する項目となるため、「必要な資金と調達方法」を書くときは必要資金と借入額の妥当性を落とし込むことがポイントになります。

【「必要な資金と調達方法」の記入例】

項目 必要な資金 見積先 金額 調達の方法 金額
設備資金 (内訳)
軽トラック×1台
駐車場費
HP作成費
備品費
(内訳)
A社
B社
C社
D社
(内訳)
250万円
20万円
20万円
10万円
自己資金 150万円
親、兄弟等からの借入
(内訳・返済方法)
40万円
日本政策金融公庫からの借入
(内訳・返済方法)
200万円
運転資金 (内訳)
燃料費
修理費
駐車場費
交通費
(内訳)
30万円
25万円
20万円
15万円
他の金融機関等からの借入
(内訳・返済方法)
合計 390万円 合計 390万円

必要資金の妥当性を伝えるときのポイントは「分類した金額」を記入することです。「軽トラック」「燃料費」「駐車場費」など、分類した金額を記入することにより、必要資金が適正であることを伝えられる可能性があります。

借入額の妥当性を伝えるときのポイントは「矛盾のない金額」を記入することです。「設備資金とその内訳の合計額」「運転資金とその内訳の合計額」など、矛盾のない金額を記入することにより、借入額が適正であることを伝えられる可能性があります。

なお、親族や友人からの借入がある場合はその旨を記入することになります。贈与は自己資金として認められる可能性もありますが、親族や友人からの借入は自己資金とは区別されるため、親族や友人からの借入がある人はその内訳や返済方法を記入しておきましょう。

「事業の見通し」

日本政策金融公庫の創業計画書にある項目のひとつは「事業の見通し」です。開業後の売上や利益の見込み額を記入する項目となるため、「事業の見通し」を書くときは売上や利益の算出根拠を落とし込むことがポイントになります。

【「事業の見通し」の記入例】

項目 創業当初 1年後または軌道に乗った後 算出の根拠
売上高① 36万円 59万円 【創業当初】
①売上高:180円/個×80個×1台×25日=36万円
②その他(燃料費、駐車場費、交通費など):15万円
【軌道に乗った後】
①売上高:180円/個×110個×1台×30日=59万円
②人件費:アルバイトを1人雇用
(時給1,300円×40時間=6万円)
その他:燃料費を3万円増加
売上原価②
経費 人件費 6万円
家賃
支払利息 2万円 2万円
その他 15万円 18万円
合計③ 17万円 26万円
利益①-②-③ 19万円 33万円

売上の算出根拠を伝えるときのポイントは「根拠となる計算式」を記入することです。「単価×1日の対応数×車両台数×1か月の営業日数」や「時給×勤務時間数」など、根拠となる計算式を記入することにより、再現性のある売上高を伝えられる可能性があります。

利益の算出根拠を伝えるときのポイントは「経費にかかる金額」を記入することです。「燃料費」「駐車場費」「修理費」「交通費」など、経費にかかる金額を記入することにより、再現性のある利益額を伝えられる可能性があります。

なお、法人の場合は役員報酬を人件費として記入することになります。個人事業主の場合は自身の収入を人件費に含めませんが、法人の場合は役員報酬を人件費に含めることになるため、法人に該当する人は役員報酬を含めた金額を記入しておきましょう。

創業計画書を書き終えた後は記入内容を見直す

創業計画書を書き終えた後は記入内容を見直すことを検討してみてください。創業計画書を見直すことにより、改善点や修正点に気付くことも考えられるため、創業計画書を書き終えた後は各項目の記入内容を見直してみましょう。

【記入内容を見直すときのポイント】

  • 全体の整合性はとれているか?
  • そう言える根拠は示せているか?
  • 誤字脱字などの修正点はないか?

創業計画書を見直すときのポイントは「全体の整合性」です。「経営方針」や「資金計画」など、創業計画の内容に矛盾がある場合は一貫性がないことにより、日本政策金融公庫の担当者に事業の実現性が低いと判断される可能性があります。

創業計画書を見直すときのもうひとつのポイントは「そう言える根拠」です。「売上高」や「利益額」など、創業計画の数字に無理がある場合は説得力がないことにより、日本政策金融公庫の担当者に事業の実現性が低いと判断される可能性があります。

なお、日本政策金融公庫は「創業計画書のセルフチェック」に関する情報を公開しています。会員登録を必要とせず、無料のサービスとなるため、創業計画書を見直すときは日本政策金融公庫の公式サイトにあるセルフチェックも利用してみましょう。

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まとめ

創業計画書は事業の実現性を伝えるための書類です。日本政策金融公庫の担当者は創業計画書から事業の実現性を見極めることになるため、まずはその前提を踏まえつつ、創業計画書を作成するための準備として創業計画を立てるところから始めてみましょう。

また、日本政策金融公庫は創業計画書のフォーマットを用意しています。フォーマットの中には、いくつかの項目が用意され、その中でも融資の可否を左右する項目があるため、創業計画を立てた人は次の工程として創業計画書にある各項目を確認してみましょう。

なお、創業計画書を書き終えた後は記入内容を見直すことを検討してみてください。創業計画書を見直すことにより、改善点や修正点に気付くことも考えられるため、創業計画書を書き終えた後は各項目の記入内容を見直してみましょう。

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