法人として創業融資を申し込むときのポイントを解説

創業融資を検討している人の中には、法人として創業融資を受けることを考えている人もいるでしょう。法人成りをした場合、創業融資の対象になるのかどうか気になる人もいるかもしれません。

当記事では、法人として創業融資を申し込むときのポイントを解説します。「創業前の場合」「法人成りの場合」など、申し込むタイミングによってポイントが異なるため、法人として創業融資を申し込むことを検討している人は参考にしてみてください。

ポイントはすでに事業を開始しているかどうかにより異なる

法人として創業融資を申し込むときのポイントは、すでに事業を開始しているかどうかにより異なります。すでに事業を開始しているかどうかにより、法人が創業融資を申し込むときのポイントが変わってくるため、まずはそれぞれのポイントを確認しましょう。

【法人として創業融資を申し込むときのポイント】

  • 事業をまだ開始していない場合は「事業計画」がポイント
  • 事業をすでに開始している場合は「事業実績」がポイント

法人として創業融資を申し込むときのポイントは、「事業開始前の場合は事業計画」「事業開始後の場合は事業実績」となります。法人として創業融資を申し込む場合は、事業開始前後によってポイントが異なるため、それぞれのポイントを押さえておきましょう。

事業開始前のポイントは事業計画

事業を開始する前に創業融資を申し込む場合は、「事業計画」がポイントとなります。事業を開始する前に創業融資を申し込む場合は、事業の未来図となる事業計画書をもとに金融機関の担当者と面談することになるため、事業計画書に記載する項目例を押さえておきましょう。

【事業計画書に記載する項目例】

項目 具体例
事業の概要 ・業種
・法人名
・資本金
・従業員数
・創業の経緯など
創業に必要な資金 ・運転資金の内訳
・設備資金の内訳
資金調達先 ・自己資金額
・借入先

事業計画書に記載する項目のひとつは「事業の概要」です。「法人名」「資本金」「従業員数」など、事業の概要に関する情報を詳細に記載することにより、金融機関の担当者へ開業後の事業イメージを伝えやすくなります。

事業計画書に記載する項目のひとつは「創業に必要な資金」です。「運転資金の内訳」「設備資金の内訳」など、創業に必要な資金の内訳を記載することにより、金融機関の担当者が開業にどれくらいの資金を投入するのか想像しやすくなります。

事業を開始する前に融資を申し込む場合、事業計画を含めた総合的な観点から融資の可否が判断されることになります。「開業後の売上予測」「開業後の返済能力」など、開業後の事業イメージを伝えられる事業計画書を作成することを検討してみてください。

事業開始後のポイントは事業実績

事業を開始した後に創業融資を申し込む場合は、「事業実績」がポイントとなります。「個人事業主として開業した後に法人化した場合」「法人として開業した場合」のどちらにおいても、事業の実績をもとに金融機関の担当者と面談することになるため、事業実績が分かるものの例を押さえておきましょう。

【事業実績が分かるものの例】

  • 確定申告書
  • 決算書
  • 試算表
  • 月別の売上帳簿
  • 受注契約書

事業実績が分かるものとして「確定申告書」が挙げられます。法人成りしたあと創業融資を申し込む場合、個人事業主の業績が記載されている確定申告書を提出することにより、金融機関の担当者が法人化したあとの業績をイメージしやすくなります。

事業実績が分かるもののとして「試算表」が挙げられます。法人として開業したあと創業融資を申し込む場合、決算前の月別の業績が記載されている試算表を提出することにより、金融機関の担当者が法人の直近の業績を把握しやすくなります。

事業を開始した後に融資を申し込む場合、過去の実績を含めた総合的な観点から融資の可否が判断されます。「過去の売上実績」「過去の利益実績」など、これまでの実績から今後の事業イメージを伝えることを検討してみてください。

法人成りした場合は創業融資が受けられない可能性がある

法人成りした場合は創業融資が受けられない可能性があります。個人事業主から法人に事業形態を変更した場合は、創業融資の対象者に該当しない可能性があるため、法人化して創業融資を受けたい人は確認しておきましょう。

【創業融資の対象者の例】

対象者 概要
日本政策金融公庫
「新規開業資金」の対象者
新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方
全国信用保証協会
「創業関連保証」の対象者
事業を営んでいない個人が開始した事業を法人化し、個人創業時から5年未満である

日本政策金融公庫「新規開業資金」の場合、創業前もしくは事業開始後おおむね7年以内の事業者が対象者です。法人成りをした場合、個人事業主として事業開始したときから7年以内であれば、新規開業資金の対象者になる可能性があります。

信用保証協会「創業関連保証」の場合、個人の創業から5年未満の法人が対象者です。法人成りをした場合、個人事業主として事業開始したときから5年未満であれば、創業関連保証の対象者になる可能性があります。

原則として、法人成りをした場合は、個人事業主として事業開始したときからの年数を基準に創業融資の対象有無が決まります。年数によっては創業融資の対象とならない場合があるため、法人成りした事業者は留意するようにしましょう。

ポイントを押さえた人は準備するものを用意する

法人として創業融資を申し込むときのポイントを押さえた人は、準備物を用意しましょう。法人と個人事業主とでは、創業融資を申し込むために準備するものが一部異なるため、法人として創業融資を申し込む場合の準備物を押さえておきましょう。

【法人と個人事業主における準備物が異なる例】

項目 法人 個人事業主
書類 ・商業登記簿謄本
・定款の写し
・決算書
・試算表 など
・本人確認書類
・開業届の控え
・確定申告書 など
連帯保証人 代表者本人が連帯保証人となる傾向がある
(その場合、代表者の印鑑証明書や実印が必要となる)
第三者の連帯保証は原則徴求されない

法人が用意する準備物のひとつは「書類」です。個人事業主と異なり、法人が借入するときは「商業登記簿謄本」「定款の写し」など、法人の実態が確認できる書類を用意することになります。

法人が用意する準備物のひとつは連帯保証人です。個人事業主と異なり、法人が借入するときは代表者が連帯保証人となる傾向にあるため、「実印」「印鑑証明書」など、連帯保証の契約を結ぶためのものを用意することになります。

なお、法人の状況により準備するものは異なります。「これから創業する場合」「法人成りした場合」など、創業融資を申し込むときの法人の状況により準備物は変わってくるため、準備物を用意するときは事前に金融機関の担当者へ確認することも検討してみましょう。

代表者の連帯保証が不要な制度がある

創業融資に関連する制度の中には、代表者の連帯保証が不要な制度があります。代表者の連帯保証が不要な制度を利用すれば代表者の保証負担がなくなるため、法人として創業融資を検討している人は代表者の連帯保証が不要な制度を押さえておきましょう。

【代表者の連帯保証が不要な制度】

制度名 対象者
日本政策金融公庫
「経営者保証免除特例制度」
以下のいずれかに該当する場合
・新たに事業を始める人
・税務申告を2期終えていない事業者   など
全国信用保証協会
「スタートアップ創出促進保証制度」
・2か月以内に法人を設立し、事業を開始する計画がある人
・分社化により別法人を設立して事業を開始する予定の法人
・個人が開始した事業を法人化し、個人創業時から5年未満の法人 など

日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」が適用されると、法人代表者の連帯保証が免除されます。「新たに事業を始める人」「税務申告を2期終えていない事業者」などの要件に該当している場合は、代表者の連帯保証が免除される可能性があります。

全国信用保証協会「スタートアップ創出促進保証制度」が適用されると、法人代表者の連帯保証が免除されます。「2か月以内に法人を設立して創業する人」「創業時から5年未満の事業者」などの要件に該当している場合は、代表者の連帯保証が免除される可能性があります。

なお、対象要件を満たしていれば必ず保証免除の制度が適用されるとは限りません。制度の適用可否は金融機関の総合的な判断によって決められるため、対象要件を満たしている事業者すべてが制度を利用できるとは限らない点を留意しておきましょう。

希望の融資額よっては協調融資を利用する方法もある

希望の融資額によっては、協調融資を利用する方法を検討しましょう。日本政策金融公庫「2023年度新規開業実態調査」によると開業費用の平均額は1,027万円ですが、法人の創業において、平均よりも高額な資金調達が必要な場合も想定されるため、協調融資の選択肢を押さえておきましょう。

【協調融資の例】

創業に必要な資金額 調達方法の例
設備資金1,000万円 自己資金   500万円
○○信用金庫 500万円
運転資金1,000万円 日本政策金融公庫 1,000万円
総額  2,000万円 調達金額 2,000万円

協調融資は、2つ以上の金融機関が協力して同一の事業者に貸付を実行することです。複数の金融機関から融資を受けることにより、事業者は希望の金額を資金調達できる可能性があります。

たとえば、1,500万円が融資希望額の場合、日本政策金融公庫と信用金庫との間で協調融資を検討する余地があります。「日本政策金融公庫から1,000万円」「信用金庫から500万円」をそれぞれ借入することにより、希望の融資額を資金調達することができます。

なお、金融機関によっては協調融資を前提とした融資商品を用意している場合があります。信用金庫や地方銀行など、金融機関同士が連携して協調融資の商品を用意している場合があるため、協調融資が気になる人は金融機関への相談から始めることも検討してみてください。

協調融資のメリットとデメリットを押さえておく

協調融資を検討するときは、メリットとデメリットを押さえておきましょう。協調融資は一長一短の側面があるため、協調融資を検討している人は協調融資のメリットとデメリットを押さえてみてください。

【協調融資のメリットとデメリット】

メリット デメリット
・希望の融資額を調達できる可能性がある
・複数の金融機関と取引実績がつくれる
・融資決定まで時間がかかる
・すべての融資審査に通らない可能性がある

協調融資のメリットは「希望の融資額を調達できる可能性がある点」「複数の金融機関と取引実績がつくれる点」が挙げられます。複数の金融機関から融資を受けられるため、希望の借入額を資金調達できる可能性がある点や、取引実績がつくれる点をメリットとする考え方があります。

協調融資のデメリットは「融資決定まで時間がかかる点」「すべての融資審査に通らない可能性がある点」が挙げられます。それぞれの金融機関での審査に通る必要があるため、時間がかかる点や、1行でも審査が通らなければ、協調融資の計画が取り消しになる可能性がある点をデメリットとする考え方があります。

協調融資には一長一短の側面があります。代表者の考え方や法人の状況にもよりますが、協調融資を検討するときは「希望の融資額」「希望の融資日」などの条件と照らし合わせながら決めることを検討してみましょう。

まとめ

法人として創業融資を申し込むときのポイントは、「事業開始前の場合は事業計画」「事業開始後の場合は事業実績」となります。法人として創業融資を申し込む場合は、事業開始前後によってポイントが異なるため、それぞれのポイントを確認してみましょう。

法人として創業融資を申し込むときのポイントを押さえた人は、準備物を用意しましょう。法人は個人事業主が創業融資を申し込む場合と、準備するものが一部異なるため、法人として創業融資を申し込む場合の準備物を押さえておきましょう。

希望の融資額によっては、協調融資を利用する方法も検討できます。複数の金融機関から融資を受けることにより、希望の金額を資金調達できる可能性があるため、希望の融資額によっては協調融資を利用する方法も検討してみましょう。

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