美容室を開業予定の人の中には、創業融資を検討している人もいるでしょう。独立して自分の店をもちたいけれど、創業融資を受けられるか不安な人もいるかもしれません。
当記事では、美容室を開業する人が創業融資を受けるためのポイントを解説します。創業融資を受けるためには、いくつかの審査項目を押さえておく必要があるため、融資を受けて美容室を開業したい人は参考にしてみてください。
ポイントは金融機関の懸念点を解消する事業計画書を作ること
美容室を開業する人が創業融資を受けるためのポイントは、金融機関の懸念点を解消する事業計画書を作ることです。事業計画書のフォーマットは申込する金融機関によって異なりますが、大きく分けて3つの項目から成り立っています。
【事業計画書に記載する項目例】
- 事業内容
- 初期投資の内訳
- 収益予測
事業計画書は「事業内容」「初期投資の内訳」「収益予測」の項目に大別できます。それぞれの項目において金融機関の懸念を解消することにより、事業への熱意や計画性を評価してもらうことにつながるため、まずはそれぞれの項目を確認してみましょう。
事業内容
事業計画書に記載する項目のひとつは「事業内容」です。厚生労働省の「令和4年度衛生行政報告例」によると、美容所の数は年々右肩上がりに増加しているため、金融機関は競争が激しい業界において、どのような方針で経営するのか確認する傾向にあります。
【事業内容の記載例】
項目 | 具体例 |
---|---|
コンセプト |
|
ターゲット |
|
特色のあるサービス |
|
価格帯 |
|
周辺の立地状況 |
|
競合店と差別化できる点 |
|
集客方法 |
|
※株式会社SoLaboが作成したものであり、あくまで参考例となります。
事業内容を記載するときのポイントのひとつは、創業者が作りたい店舗に一貫性があることです。コンセプトにもとづいてターゲット層やサービスなどを決めることによって、経営方針に軸が通り、作りたい店舗のイメージが伝わりやすくなります。
事業内容を記載するときのもうひとつのポイントは、創業者が作りたい店舗の需要を示すことです。「周辺環境の確認」「競合店との比較」などの調査結果にもとづいて示すことにより、自身の美容室に需要があると根拠をもって説明しやすくなります。
なお、事業内容には集客方法も記載しましょう。美容室はとくに競争が激しい業界のため、新規客の獲得やリピーターを増やすための具体的な施策を事業計画書に記載することも検討してみてください。
初期投資の内訳
事業計画書に記載する項目のひとつは「初期投資の内訳」です。美容室は「シャンプー台」「パーマ機器」など、さまざまな設備が必要になってくるため、金融機関は初期投資にかかる費用の妥当性を確認する傾向にあります。
【初期投資の内訳の例】
項目 | 具体例 | 費用の目安 |
---|---|---|
物件取得費 | 敷金・礼金・保証金・仲介手数料 | 100万円~200万円 |
内装工事費 | 壁・床・天井の施工、照明、配管工事 | 300万円~800万円 |
設備機材費 | シャンプー台、セット面、ミラー | 100万円~300万円 |
材料消耗品費 | カラー材、パーマ液、タオル | 50万円~100万円 |
広告販促費 | 看板、WEBサイト、SNS広告 | 30万円~100万円 |
運転資金 | 家賃、人件費、光熱費 | 200万円~400万円 |
備品代 | POSシステム、会計ソフト、パソコン | 10万円~100万円 |
合計 | 790万円~2,000万円 |
※株式会社SoLaboが作成したものであり、あくまで参考例となります。
内装工事費は初期投資の中でも高額になりやすい項目です。美容室はセット面やシャンプー台を設置する関係上、コンセントや水道管などのインフラ工事が発生するため、「相見積もりを取得する」「工事内容の内訳を確認する」などの方法により、工事金額の妥当性を金融機関に説明します。
運転資金は初期投資の中でも金額に幅がある項目です。「家賃」「人件費」などは店舗によって異なるため、1か月にかかる予測経費を算出し、数か月分の運転資金を確保している旨を金融機関に説明します。
なお、借入に依存した初期投資計画とならないよう注意しましょう。借入額が過大と金融機関に判断された場合は、融資金の減額や融資が否決される可能性があるため、自身が返済できる範囲での資金計画を立てることを検討しましょう。
収益予測
事業計画書に記載する項目のひとつは「収益予測」です。美容室は「従業員の有無」「席数」などによって売上の規模や経費の目安が変動するため、妥当性のある収益予測かどうかを金融機関は確認する傾向にあります。
【収益予測の例】
項目 | 具体例 | |
---|---|---|
売上 | 1日あたりの客数×客単価×営業日数 10人×8,000円×25日=200万円※1日あたりの客数の算出式 1日あたり5席×2回転=10人 |
|
経費 | 家賃 | 30万円 |
人件費 | 100万円(25万円×4人) | |
材料費 | 30万円(売上の15%) | |
水道光熱費 | 10万円(売上の5%) | |
広告・販促費 | 5万円(ポータルサイト掲載料) | |
その他経費 | 5万円(支払利息、消耗品など) | |
営業利益(売上―経費) | 20万円 |
※株式会社SoLaboが作成したものであり、あくまで参考例となります。
美容室の売上予測は、1日あたりの客数×客単価×営業日数により算出できます。1日あたりの客数は席数と回転数により決まるため、「セット面の数」「前勤務先での実績」などの情報を参考にすることにより、妥当性のある根拠をもって売上予測を立てられる可能性があります。
美容室の経費は、項目ごとに予測を立てることにより算出できます。家賃や人件費などの固定費に加え、ポータルサイトの掲載料や支払利息などの経費においても詳細に記載することにより、実態に沿った経費予測を立てられる可能性があります。
なお、借入金の返済は営業利益から差し引かれます。営業利益から借入金の返済や自身の生活資金を捻出することになるため、収益予測を立てるときは毎月の返済金額や生活費も考慮し、妥当性のある収益予測であるかどうか検証してみてください。
事業計画書以外の審査項目も押さえておく
創業融資の審査では、事業計画書以外にも確認される点があります。創業時は事業の実績がまだないため、これから創業する事業の内容に加え、金融機関は創業者自身の信用力をさまざまな観点から確認する傾向があります。
【事業計画書以外の審査項目】
項目 | 提出書類の例 |
---|---|
自己資金 | ・預金通帳 ・領収書(すでに支払い済みのものがある場合) |
美容師としての経験 | ・美容師免許や管理美容師の資格 ・コンテスト受賞した賞状 |
支払振り | ・公共料金の領収書 ・クレジットカードの支払いが確認できるもの |
事業計画書以外の審査項目のひとつは「自己資金」です。創業のために自己資金を準備してきた経過を確認されるため、「前勤務先からの給与振込口座」「貯蓄用口座」などの預金通帳を提出することになります。
事業計画書以外の審査項目のひとつは「支払振り」です。「支払期日を守っている」「収支のバランスがとれている」など、個人の支払能力を確認されるため、公共料金の領収書やクレジットカードの支払い明細書などを提出することになります。
なお、美容室を開業する場合は業種経験も確認されます。美容室の開業に必須となる美容師免許の提出に加え、コンテストの賞状といった技術力を証明する書類があれば、審査時にプラスの評価となる可能性があるため、該当書類を提出することを検討してみてください。
まとめ
美容室を開業する人が創業融資を受けるためのポイントは、金融機関の懸念点を解消する事業計画書を作ることです。事業計画書のフォーマットは申込する金融機関によって異なりますが、「事業内容」「初期投資の内訳」「収益予測」の項目に大別できます。
美容所の数は年々右肩上がりに増加しており、競合他社の多い業界といえます。それぞれの項目において創業者自身の戦略や計画を示すことにより、金融機関の懸念を解消することにつながるため、それぞれの項目の詳細を確認してみましょう。
なお、創業融資の審査は事業計画書以外にも確認される点があります。創業時は事業の実績がまだないため、「自己資金」「美容師としての経験」「支払振り」など、金融機関は創業者自身の信用力をさまざまな観点から確認する点も留意しておきましょう。