資金調達の手段を検討する際、銀行融資は有力な選択肢のひとつです。 ただし、融資によって得られる利点だけでなく、伴う負担や制約についても事前に理解しておく必要があります。
当記事では、銀行融資のメリットとデメリットを、公的融資やノンバンクなど、銀行以外の融資制度と比較しながら解説します。自社の資金調達方法として銀行融資が適切かどうか迷っている人や、複数の選択肢と比較したい人は参考にしてみてください。
銀行融資のメリット
銀行融資は、他の金融機関における融資と比較した場合にさまざまなメリットがあります。まずはメリットを押さえ、自社が銀行融資を申し込むかどうかを判断する際の手がかりにしてみてください。
【銀行融資のメリット】
メリット | 内容 |
---|---|
借入れできる限度額が大きい | 自己資金額や事業計画に応じて、一度にまとまった資金調達が可能 |
低金利で融資を受けられる | ノンバンクの融資サービスに比べて金利負担が抑えられるため、返済の見通しが立てやすい |
信用力向上につながる | 銀行との取引実績があることで、社会的な信用力の向上にもつながる |
たとえば、ノンバンクが提供するビジネスローンは、限度額が数百万円程度に設定されている傾向にあり、大規模な設備投資や仕入れ資金には不十分な場合もあります。一方、銀行融資は、自己資金額や事業規模、実績などに応じて数千万円単位の資金調達も可能です。
また、ノンバンクのビジネスローンは、提出書類が少なく審査も簡易な反面、金利は年8%〜10%前後と高めです。一方、銀行融資は審査が厳しいものの、金利は年1%〜3%程度と低いため、同じ借入額でもノンバンクと銀行融資では返済総額に大きな差が生じます。
さらに、ノンバンクからの借入は、迅速な資金調達に役立つ反面、その後の信用評価において慎重な見方につながる可能性があります。一方、銀行融資を受けている企業は、第三者から「銀行が一定の信用判断を行った企業」とみなされるため、取引先との新規契約や今後の追加融資において有利になることがあります。
銀行融資は、低金利で多額の資金調達が可能な点や、信用力の向上が期待できる点がメリットです。まずは、資金の使途や返済計画を整理したうえで銀行担当者に相談し、自社がどのような条件で融資を受けられるかを確認してみましょう。
借入れできる限度額が大きい
銀行融資は、ノンバンクの融資と比較して、借り入れできる限度額が大きいというメリットがあります。そのため、高額な機械装置の導入や物件の取得費などでまとまった金額が必要な場合の資金調達に適しています。
【融資形態ごとの限度額の比較】
融資額の種類 | 限度額の目安 | 特徴 |
---|---|---|
銀行融資 (プロパー融資) |
上限なし | ・保証なしの直接融資 ・信用と事業実績が必要 ・大型資金調達に適している |
銀行融資 (信用保証付き融資) |
最大2億8,000万円程度 | ・中小企業向け ・信用保証協会の保証付き ・設備資金や運転資金に利用可 |
ノンバンク融資(ビジネスローン) | 数十万円~1,000万円未満 | ・短期資金向け ・審査が早いが金利が高め ・緊急時やつなぎ資金の資金調達に適している |
たとえば、事業の拡大に向けた設備導入や店舗の改装に必要な資金として2,000万円の融資を受けたい場合、銀行融資であれば制度上の上限額に十分な余裕があります。そのため、2,000万円の必要資金を一度に確保できる可能性があります。
一方で、同じ金額をノンバンクで調達したい場合は、融資限度額が1,000万円未満に設定されている傾向にあるため、希望額を満たせない可能性があります。そのため、2,000万円を調達するには、複数社のビジネスローンや、他の資金調達方法などと組み合わせる必要が生じます。
高額な融資を一括で調達できることは、銀行融資の大きなメリットです。近年では、ネット銀行でも事業者向けの融資が「担保不要」「迅速な審査」「オンライン完結」などの好条件で提供されていますが、多くの場合で限度額は1,000万円前後にとどまる点には留意しておきましょう。
低い金利で融資を受けられる
銀行融資は、ノンバンクの融資と比較して金利が低めに設定されている傾向にあり、返済時の利息負担を抑えやすいというメリットがあります。特に長期間や高額の借入れでは、わずかな金利でも総返済額に大きく差が生じます。
【融資形態ごとの金利の比較】
融資の種類 | 金額の目安 | 特徴 |
---|---|---|
銀行融資 (プロパー融資) |
年1.0%~3.5%前後 | ・保証なしで銀行から直接融資を受ける ・信用力の高い企業が対象 |
銀行融資 (信用保証付き融資) |
年1.5%~3.0%前後 ※別途0.5%~2%程度の保証料がかかる |
・信用保証協会が保証人の役割を担う ・民間金融機関の融資の中では低金利 |
ノンバンク融資(ビジネスローン) | 年3.0%~18.0%前後 | ・審査が早く即日融資も可能 ・リスクを加味して高金利に設定 |
銀行融資の金利の相場は、1.0%〜3.0%前後です。仮に、1,000万円の資金を調達する場合、年2.0%の金利で1年間借り入れると、利息は約20万円となり、返済総額は1,020万円にとどまります。
一方で、ノンバンク系のビジネスローンでは、無担保で審査が比較的柔軟な分、貸倒れリスクを加味して金利は3.0%〜18.0%と高めに設定されています。仮に年15.0%の金利で1,000万円を借りた場合、利息だけで150万円が発生し、返済総額は1,150万円にのぼります。
比較的低い金利で融資を受けられる銀行融資は、返済計画の立てやすさという面でも優れてます。特に中長期の資金需要においては、金利の差が総返済額に大きく影響するため、少しでも低い金利で借りられる金融機関を選ぶことが資金繰りの安定にもつながります。
信用力の向上につながる
銀行融資を受けている会社は、取引先や営業先からの信頼を得やすくなります。銀行は金融機関の中でも審査基準が厳しく、業務内容や財務状況、将来性などを総合的に評価していることから、融資の実行は第三者から「高い信用力がある」と判断されやすくなるためです。
たとえば、銀行融資を受けていることは、企業の資金繰りが安定していることの裏付けとなり、仕入先や取引先に安心感を与えやすくなります。その結果、新規の取引交渉や価格交渉を進めるうえでも、高い信用力がプラスに働く可能性があります。
また、過去に銀行融資を受けた実績があり、期日通りに返済している場合、次回の融資申請でも信頼性の高い取引先として評価されやすくなります。継続的な取引を通じて信用を積み上げておくことが、将来の資金調達を円滑に進めるうえでも役立ちます。
銀行からの融資を受けられると、資金調達の成功とともに、自社の信用力向上にもつながるというメリットがあります。銀行融資によって得られた信用力を活かし、将来の事業拡大や多様な資金調達の機会を広げていきましょう。
銀行融資のデメリット
銀行融資には限度額の大きさや金利の低さといった利点がある一方で、利用にあたっては一定のハードルや注意点も存在します。融資の申請を検討する際には、事前に銀行融資のデメリットも把握しておきましょう。
【銀行融資のデメリット】
デメリット | 内容 |
---|---|
創業初期では審査に通りにくい | 実績や信用情報が不十分な場合は融資審査で不利になることがある |
保証人や担保が必要な場合がある | リスクを補うため、個人補償や不動産などの担保が求められることがある |
融資実行までには一定の時間を要する | 複数の手続きを経るため、融資の着金までに1か月~2ヶ月程度かかる傾向にある |
たとえば、創業間もない事業者や事業実績の少ない企業は、信用情報が不十分であることから審査通過の難易度が高まります。希望額を借りられないことや融資そのものを断られる場合は、他の融資制度や資金調達方法も視野に入れることが必要になります。
また、銀行からの信用評価が十分でない場合は、保証人や不動産などの担保を求められることもあります。万が一、債務不履行で返済が滞った場合は、担保として提供した資産に影響が及ぶ可能性がある点に留意しておかなければなりません。
さらに、融資実行までには複数の審査や契約手続きを経る必要があり、資金着金までには1か月〜2ヶ月かかることもあります。急な資金ニーズには対応しにくいため、スケジュールに余裕を持って申請準備を進めることが求められます。
銀行融資はメリットの大きい資金調達手段である一方で、条件によっては利用が難しい場合もあります。銀行融資を円滑に活用するためには、デメリットを理解した上で、どう対策するかも考えつつ、資金調達の計画をたてましょう。
創業初期では審査に通りにくい
銀行融資は、創業間もない事業者にとっては審査のハードルが高いというデメリットがあります。実績や財務基盤が不十分な段階では、自己資金の割合や事業計画の説得力がより重視されるため、融資の獲得が難しくなる傾向にあります。
【創業直後の審査難易度の比較】
融資の種類 | 審査通過の難易度 | 特徴 |
---|---|---|
銀行融資 (プロパー融資) |
非常に難しい | 過去の実績や財務内容を重視するため、創業直後では対象外となることが多い |
銀行融資 (信用保証付き) |
やや難しい | 創業計画の内容や自己資金の割合、保証協会の評価が重視される |
ノンバンク (ビジネスローン) |
通りやすい | 必要書類が少なく審査も簡易だが、金利が高く返済期間が短い傾向にある |
日本政策金融公庫 (創業融資) |
比較的通りやすい | 国が100%出資を行う公的金融機関で、創業者向けの融資制度も提供している |
銀行融資は、返済可能性を重視するため、売上実績や決算書が十分でない創業初期の企業では審査通過が難しくなります。特にプロパー融資は、銀行が全リスクを負うため、創業段階では申請自体が認められないこともあります。
一方で、日本政策金融公庫では、創業者向けの融資制度が整っており、創業計画をもとに審査が行われるため、実績が少ない段階でも利用しやすい傾向にあります。民間金融機関と異なり、国による創業支援を目的とした制度が中心で、創業初期の資金調達として多くの事業者に活用されています。
創業間もない事業者にとって審査のハードルが高いことは、銀行融資におけるデメリットのひとつです。創業初期で銀行融資を検討する際は、自社の実績や事業計画の内容、自己資金の有無などを総合的に見直しつつ、状況に応じて公的融資の活用やほかの資金調達との併用も検討しましょう。
保証人や担保が必要な場合がある
銀行融資では、融資条件として保証人や担保の提供を求められる場合があるというデメリットがあります。万が一返済が滞った際のリスクを軽減するための措置として、経営者個人の連帯保証や資産の担保提供を融資の条件として求められることがあるためです。
【保証人や担保の必要性比較】
融資の種類 | 保証人や担保の必要性 | 特徴 |
---|---|---|
銀行融資 (プロパー融資) |
原則あり | ・連帯保証や不動産担保などを求められることが多い ・融資対象は信用力のある企業に限られる |
銀行融資 (信用保証付き) |
原則あり | ・信用保証協会が保証人となる代わりに保証料が発生する ・物的担保を求められることもある |
ノンバンク融資 (ビジネスローン) |
原則不要 | ・無担保、無保証での利用が可能 ・金利が高めに設定される傾向にある |
日本政策金融公庫 (創業融資) |
条件次第で不要 | ・自己資金や経験などの一定条件を満たせば無担保、無保証での融資も可能 ・創業者支援目的とした制度がある |
たとえば、銀行融資では、法人名義の借入であっても、経営者個人の連帯保証が求められることや、状況によっては土地や建物などの不動産担保の提供を求められる場合もあります。万が一返済が滞った場合、提供した資産に影響が及ぶ可能性があります。
一方で、銀行以外の融資では、無担保、無保証で利用できる制度もあります。ノンバンクのビジネスローンには、保証人や担保を求めない商品が複数あり、日本政策金融公庫の創業融資でも、一定の条件を満たせば無担保、無保証で利用できる制度が用意されています。
保証人や担保の要否は、銀行融資を検討する際に必ず確認すべきポイントです。自社の財務状況や返済計画を整理したうえで、負担の少ない融資条件での借入方法を検討しましょう。
融資実行までの時間が長い
銀行融資は、ノンバンクの融資制度や一部の公的融資と比較して、申請から資金を受け取るまでに時間がかかるというデメリットがあります。申請後は複数の審査や書類確認、面談などを経る必要があるため、融資実行までには数週間から1か月前後の期間を要する傾向にあります。
【融資形態ごとの審査期間の目安】
融資の種類 | 審査期間の目安 | 特徴 |
---|---|---|
銀行融資 (信用保証付き) |
約2週間~1か月半程度 | ・信用保証協会と銀行の二重審査が必要 ・ 書類の不備や保証協会の判断により期間が長引くことがある |
銀行融資 (プロパー融資) |
約1週間~1か月程度 | ・銀行単独の審査のため、信用保証保証付きよりは早い ・ 担保や保証人の有無、審査内容によって審査期間にばらつきがある |
ノンバンク融資 (ビジネスローン) |
数日~10日程度 | ・必要書類が少なく、簡易な審査で即日融資も可能 ・少額、短期の資金に限定されることが多い |
日本政策金融公庫 (国民生活事業) |
約2週間~3週間程度 | ・面談日程の調整や事業計画の精査が必要 ・申し込みから面談までの調整に時間を要する場合がある |
信用保証協会付きの銀行融資では、銀行の審査に加えて信用保証協会による別途審査も必要となります。二重審査が行われることから、申込から融資実行までには約1か月〜2ヶ月前後の期間を見込んでおく必要があります。
一方で、ノンバンクのビジネスローンでは、提出書類が少なく、審査も簡易でスピード感を重視する傾向にあります。金利が高く設定されているため、少額かつ短期の資金向けではあるものの、早ければ即日〜10日程度で資金を受け取ることができます。
融資実行までにかかる期間は、融資の種類や申請の時期、提出書類の整備状況によっても異なります。書類の不備や面談日程の調整でスケジュール全体が後ろ倒しにならないよう、必要書類を事前に揃え、銀行担当者との連携を密にしておきましょう。
なお、融資実行までの期間について詳細を知りたい人は「銀行融資の審査期間はどれくらいかかる?長引く原因も解説」の記事を参考にしてみてください。
銀行融資の利用が困難な場合はその他の融資を検討する
銀行融資のメリットとデメリットを押さえた上で、銀行から融資を受けることが難しいと感じる場合は、銀行以外の機関を通じて事業資金の融資を受ける方法もあります。資金の使途や調達までのスピード、審査の難易度などに応じて、自社の状況に合った融資を検討してみましょう。
【銀行以外の融資制度の比較】
融資の種類 | 限度額の目安 | 金利の目安 | 審査期間の目安 |
---|---|---|---|
ノンバンク融資 (ビジネスローン) |
数十万円~数百万円程度 | 年7〜18%程度 | 数日〜10日程度 |
制度融資 (一例:東京都中小企業制度融資) |
2,000万円〜2億円程度(制度によって異なる) | 年1〜2%台(自治体による) | 1か月半〜2か月程度 |
日本政策金融公庫 (国民生活事業など) |
数百万円~7,200万円程度 (融資種別によって異なる) |
年1〜2%台 (融資種別により異なる |
2〜3週間程度 |
ノンバンクのビジネスローンは、銀行と比べて審査が迅速で、最短即日~数日程度で資金を受けられる点が特徴です。金利は高めに設定されているものの、無担保、無保証で利用できる商品が用意されているため、急な支払い対応や短期間の資金ニーズに適しています。
「自治体」「信用保証協会」「銀行」が連携して実施する制度融資は、信用保証付きで金利が低い点が特徴です。3機関が関わるため手続きには時間を要しますが、公的な支援を受けながら準備を進められる仕組みで、計画的に資金を確保したい事業者に適しています。
日本政策金融公庫の融資は、創業者や小規模事業者向けの制度が用意されており、審査では自己資金や事業計画が考慮される点が特徴です。融資総額の3割程度の自己資金と明確な事業計画の準備が求められますが、銀行と比べて審査が柔軟で、初めて融資を受ける事業者の開業資金や売上が不安定な時期の運転資金に適しています。
銀行融資に限定せず、他の融資制度の特徴や申請条件を整理しながら選択肢を検討してみることが、資金調達の幅を広げるうえで有効です。返済の見通しや資金が必要となる時期を踏まえたうえで、自社に合った方法を見極めましょう。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資支援実績をもとに、資金調達方法や経営改善に関するアドバイスを実施しているため、株式会社SoLabo(ソラボ)に相談することを検討してみてください。
まとめ
銀行融資のメリットには「限度額が大きい」「低金利で利用できる」「信用力の向上につながる」などが挙げられます。高額な設備資金や長期の運転資金を安定的に調達したい場合に、有力な選択肢となります。
一方で「創業初期の事業者にはハードルが高い」「保証人や担保が求められる」「融資実行までに時間がかかる」というデメリットが挙げられます。メリットだけでなく、デメリットも理解したうえで申請するかどうかを検討しなければなりません。
資金調達を成功させるには、銀行融資に限定せず、公的融資やノンバンク融資も含めて選択肢を広げることがポイントです。各制度の特徴や条件を把握したうえで、自社に適した資金調達方法を選択しましょう。