独立開業を目指す人の中には、創業融資による資金調達を検討している人もいるでしょう。その際、開業のスケジュールを立てるために、創業融資を受けるまでの期間がどれくらいかかるのか気になる人もいますよね。
当記事では、創業融資を受けるまでの期間の目安を解説します。申込先ごとの目安や目安より長引いてしまう要因も紹介しているため、融資までの期間が知りたい人は参考にしてみてください。
創業融資を受けるまでの期間の目安は申込先によって異なる
創業融資を受けるまでの期間の目安は申込先によって異なります。創業融資の申込先によって融資フローが異なるため、どれくらい融資に時間を要するのかは申込先によって変わることを念頭に置いておきましょう。
【各申込先における融資までの期間の目安】
申込先 | 期間の目安 |
---|---|
日本政策金融公庫の融資 | 3週間~1ヶ月 |
保証協会付き融資 | 1ヶ月~1か月半 |
自治体の制度融資 | 1ヶ月~2ヶ月 |
「日本政策金融公庫の融資」「保証協会付き融資」「自治体の制度融資」が創業融資の申込先として挙げられます。それぞれの申込先における融資までの流れが異なる関係上、融資までの期間の目安が異なるため、申込先ごとの創業融資までの期間の目安を確認してみましょう。
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日本政策金融公庫の融資の場合
日本政策金融公庫の場合、創業融資を受けるまでの期間の目安は3週間~1ヶ月です。日本政策金融公庫は小規模事業者や中小企業者への融資に特化した政府系金融機関のため、融資までの期間は他の申込先と比較して短い傾向にあります。
【日本政策金融公庫の融資を受けるまでの期間の内訳】
融資までの流れ | 期間の目安 |
---|---|
① 創業融資を申込し、審査面談する | 1週間程度 |
②面談後、融資可否の決定を受ける | 2週間程度 |
③契約手続き完了後に着金される | 1週間程度 |
融資の申込から審査面談までの期間の目安は1週間程度です。創業融資の申込書類を提出したあと、審査の担当者と面談日を調整する流れのため、申込書類を提出してから審査面談までの日数はおおよそ1週間要します。
面談後から融資可否の決定までの期間の目安は2週間程度です。「提出書類の精査」「現地調査の実施」など、融資の可否を決定するための確認作業におおよそ2週間要します。
なお、融資の決定から着金までの期間の目安は1週間程度です。日本政策金融公庫は送金を民間の金融公庫に依頼するため、融資の契約を結んだ後、着金まで4営業日程度要する旨を留意しておきましょう。
保証協会付き融資の場合
保証協会付き融資の場合、創業融資を受けるまでの期間の目安は1ヶ月~1ヶ月半程度です。保証協会付き融資は、信用保証協会に保証してもらった上で金融機関から融資を受ける仕組みである関係上、金融機関と信用保証協会の双方の審査に時間を要します。
【保証協会付き融資を受けるまでの期間の内訳】
融資までの流れ | 期間の目安 |
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① 金融機関へ創業融資を申込し、面談する | 1週間程度 |
② 面談後、審査可否が判断される | 1週間~2週間程度 |
③ 信用保証協会へ保証申込をし、面談する | 1週間程度 |
④ 面談後、保証可否が判断される | 1週間~2週間程度 |
⑤ 融資が決定し、契約手続き完了後に着金される | 3~4日程度 |
保証協会付き融資を受ける場合は、まず金融機関へ創業融資を申込み、面談します。金融機関と面談後、審査の適当性を判断される流れとなるため、創業融資の申込から金融機関の審査可否の判断までおおむね2週間~3週間程度要します。
そして、金融機関の審査が通ったあとは信用保証協会へ保証申込を行います。信用保証協会の担当者とも面談し、保証可否が判断される流れとなるため、保証協会への保証申込から保証可否の判断までおおむね2週間~3週間程度要します。
なお、信用保証協会の保証審査を先に申し込む方法もあります。その場合、先に信用保証協会の保証承諾を受けたあと、金融機関をあっせんしてもらう流れとなる関係上、融資までの期間が変わる可能性がある点を留意しておきましょう。
自治体の制度融資の場合
自治体の制度融資の場合、創業融資を受けるまでの期間の目安は1ヶ月半~2ヶ月程度です。自治体の制度融資は、自治体のあっせんを受けて保証協会付き融資を受ける仕組みである関係上、「自治体」「信用保証協会」「金融機関」の3者と連携する必要があるため、他の申込先よりも融資までの期間が長くなる傾向にあります。
【自治体の制度融資を受けるまでの期間の内訳例】
項目 | 期間の目安 |
---|---|
①自治体に制度融資の申込をし、面談する | 2週間~1ヶ月程度 |
②自治体の審査を通過したあと、金融機関と信用保証協会へあっせんされる | 1週間程度 |
③金融機関と信用保証協会での審査が通り次第、着金となる | 1ヶ月程度 |
自治体の制度融資を受ける場合は、まず自治体に創業融資を申込みする流れとなります。自治体によって内容は異なりますが、「経営診断」「数回にわたる面談」など、所定の審査を通過したのち、金融機関と信用保証協会へのあっせんが行われます。
金融機関と信用保証協会へのあっせんが行われたあとは、保証協会付き融資と同じ流れで融資審査と保証審査が行われます。「金融機関」「信用保証協会」の2者がそれぞれ審査するため、審査が完了し着金となるまで1か月程度の時間を要します。
なお、自治体によっては2ヶ月以上の時間がかかる可能性があります。「数回の面談が義務づけられている」「経営講義の受講が義務づけられている」など、自治体によって制度融資を受けるための要件が異なるため、融資までの期間が気になる人は自治体に確認することも検討してみてください。
創業融資を受けるまでの期間は目安より長くなる可能性もある
創業融資を受けるまでの期間は目安より長くなる可能性もあります。さまざまな要因により、融資までの期間が目安よりも長くなる可能性が考えられるため、創業融資を検討している人は融資までの期間が長くなる要因を押さえておきましょう。
【融資までの期間が長くなる要因の例】
- 書類の不備
- 担保を提供する
- 借入希望額が高額
- 支店の繁忙状況
融資までの期間が長くなる要因はいくつか挙げられます。要因を押さえておくことにより、対策を立てることやスケジュール調整することができる可能性があるため、それぞれの要因を確認してみましょう。
書類の不備
創業融資を受けるまでの期間が長くなる要因のひとつは「書類の不備」です。とくに、創業融資は金融機関から受ける初めての融資となる関係上、必要書類が多い傾向にあるため、書類の不備が発生しやすくなります。
たとえば、面談日に書類に不備があるとその後の審査が遅れてしまいます。「納税の確認書類」「設備の見積書」など、書類が揃わなければ審査が進められないため、面談日に書類を持参し忘れてしまった場合、審査期間が長引いてしまう可能性があります。
また、契約書類に不備があると着金が遅れてしまいます。「契約書類の押印漏れ」「印鑑証明書の期限切れ」など、契約書類に不備がある場合は融資契約を締結できないため、着金までの期間が長引いてしまう可能性があります。
なお、必要書類が期限までに用意できない場合は担当者へ相談しましょう。「営業許可証」「賃貸契約書」など、融資を受けないと準備できない書類がある場合は審査担当者に事前に相談し、指示を受けることを検討してみてください。
担保を提供する
創業融資を受けるまでの期間が長くなる要因のひとつは「担保を提供すること」です。土地や建物などの不動産を担保として提供する場合は、無担保での融資と比較すると手続きに時間がかかる可能性があります。
土地や建物などの不動産を担保提供する場合、金融機関は「担保評価」を実施します。「登記情報の確認」「実地確認」などを実施し、不動産の担保としての価値を測る作業が発生するため、審査期間が目安よりも長引く可能性があります。
土地や建物などの不動産を担保提供する場合、「抵当権の登記」を実施します。担保提供することが決まったあとは、法務局に抵当権の登記を申請し、登記完了後の着金となるため、着金までの期間が無担保での融資よりも長引きます。
なお、担保を提供する場合は無担保での融資よりも1ヶ月程度長く時間がかかる傾向にあります。司法書士や不動産業者との連携が必要となる場合もあるため、担保を提供する場合は必要な手続きを確認しながら計画的に作業を進めるようにしましょう。
借入希望額が高額
創業融資を受けるまでの期間が長くなる要因のひとつは「借入希望額が高額」です。借入希望額が他の創業融資案件と比較して高額な場合、慎重な審査となる傾向にあるため、審査に時間がかかる可能性があります。
借入希望額が高額かどうかの基準のひとつは、自己資金比率です。創業に必要な資金総額の3割程度の自己資金を準備することが目安となるため、自己資金が3割に満たない場合は借入希望額が高額と判断され、資金繰りや返済能力を慎重に審査される可能性があります。
また、借入希望額が高額かどうかの基準のひとつは、融資額の平均値です。「2024年度新規開業実態調査」によると、金融機関等からの借入額の平均は780万円だったため、借入希望額が平均値を超える場合は高額と判断され、減額交渉や資金計画の見直しを打診される可能性があります。
高額な借入を希望する場合は、慎重な審査になることを想定した準備をしましょう。「追加資料を用意しておく」「面談の想定問答を用意しておく」など、事業計画の妥当性を担当者に説明することにより、審査期間が長引くことを防げるよう準備しておきましょう。
支店の繁忙状況
創業融資を受けるまでの期間が長くなる要因のひとつは「支店の繁忙状況」です。支店に融資申込が多くなっている時期は、担当者の業務量が増えて対応が遅れる可能性があります。
たとえば、毎年12月や3月は融資の申込が増える時期とされています。「年末に向けた資金需要の高まり」「企業の決算期」などの要因から、12月や3月は事業資金の申込が増加する傾向にあるため、担当者とのやり取りに時間がかかる可能性があります。
また、国内情勢によって融資の申込が増える時期もあります。「災害による融資窓口の設置」「経済不況の影響による融資相談の増加」など、国内情勢によって融資の申込が一時的に増加した場合、担当者とのやり取りに時間がかかる可能性があります。
創業融資を受けたい人は、繁忙状況を考慮して申し込むことも検討してみましょう。支店が混雑している場合は資金調達のスケジュールが目安より遅れる可能性があるため、創業融資を受けたい人は繁忙期を避けることも検討してみてください。
融資希望日がある場合は担当者に事前相談する
創業融資を申し込むとき、融資希望日があれば担当者に事前相談してみてください。「内装工事日の関係」「物件契約日の関係」などの事情により、特定の融資希望日がある場合は担当者に事前相談することにより、融資希望日に間に合うかどうか意見をもらえる可能性があります。
たとえば、物件の契約金を支払う日が決まっている場合、担当者へ支払日を事前共有しておきます。事前共有することにより、支払日までに融資が受けられるかどうかを担当者の目線から意見してもらえる可能性があります。
また、融資希望日を事前に共有することにより、支店の繁忙状況を踏まえた回答がもらえます。支店ごとの融資までの期間の目安を共有してもらえる可能性があるため、その情報をもとに開業までのスケジュールを調整できます。
融資を受けられる時期によって開業までのスケジュールは変化します。「設備の発注」「店舗物件の契約」など、資金があってこそ進められる工程があるため、融資希望日がある場合は担当者に早めに相談することも検討してみてください。
まとめ
創業融資を受けるまでの期間の目安は申込先によって異なります。創業融資の申込先によって融資フローが異なるため、どれくらい融資に時間を要するのかは申込先によって変わることを念頭に置いておきましょう。
創業融資を受けるまでの期間は目安より長くなる可能性もあります。さまざまな要因により、融資までの期間が目安よりも長くなる可能性が考えられるため、創業融資を検討している人は融資までの期間が長くなる要因を押さえておきましょう。
なお、融資を受けられる時期によって開業までのスケジュールは変化します。「設備の発注」「店舗物件の契約」など、資金があってこそ進められる工程があるため、融資希望日がある場合は担当者に早めに相談することも検討してみてください。