創業融資の主要な選択肢における金利の目安を解説

創業融資を検討している人の中には、金利による利息の負担が気になる人もいるでしょう。借入金額によっては、金利による利息の負担が数十万円から数百万円にのぼるため、金利は借入先を決定する判断軸のひとつと考える人もいるかもしれません。

当記事では、創業融資の主要な選択肢における金利の目安を解説します。金利を踏まえた上で、借入先を決定する判断軸についても紹介しているため、創業融資を検討している人は参考にしてみてください。

創業融資における金利の目安は1%から3%

創業融資における金利の目安は1%~3%です。創業融資の主要な選択肢ごとに金利の目安が異なるため、創業融資を検討している人は主要な選択肢ごとの金利を確認してみましょう。

【創業融資の主要な選択肢における金利】

選択肢 金利の目安
日本政策金融公庫の融資 1%台~3%台
信用保証協会付き融資 2%台~3%台
自治体の制度融資 1%台

創業融資の主要な選択肢は「日本政策金融公庫の融資」「信用保証協会付き融資」「自治体の制度融資」です。それぞれの選択肢においても金利の目安に幅があるため、選択肢ごとの金利の詳細を確認していきましょう。

日本政策金融公庫の融資

日本政策金融公庫から融資を受ける場合、金利の目安は1%台~3%台です。創業時に日本政策金融公庫から借入する場合、まずは「新規開業資金」制度を検討することになるため、新規開業資金の金利の条件を確認してみましょう。

【新規開業資金の金利】※2024年11月14日時点での金利情報

条件  適用される金利
特別金利の要件に該当しない人 【基準金利】
2.30%~3.50%
特別金利Aの要件に該当する人
例:「女性」もしくは「35歳未満または55歳以上の男性」
【特別金利A】
税務申告を2期終えている場合
1.90%~3.10%
税務申告を2期終えていない場合
2.00%~3.20%
特別金利Bの要件に該当する人
例:「日本ベンチャーキャピタル協会の会員」または「中小企業基盤整備機構もしくは産業革新投資機構が出資する投資事業有限責任組合等から出資を受けている人」
【特別金利B】
税務申告を2期終えている場合
1.65%~2.85%
税務申告を2期終えていない場合
1.75%~2.95%
特別金利Cの要件に該当する人
例:デジタル田園都市国家構想交付金を活用した起業支援金および移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める人
【特別金利C】
税務申告を2期終えている場合
1.40~2.60%
税務申告を2期終えていない場合
1.50~2.70%
有担保で融資を受ける場合 【基準金利】
1.30%~3.10%

※日本政策金融公庫の公式サイトにある「新規開業資金」をもとに株式会社SoLabo(ソラボ)作成

新規開業資金は「基準金利」と「特別金利」があります。特別金利は要件に該当する人のみが適用され、要件に該当しない場合は基準金利が適用されるため、新規開業資金の金利は1.30%から3.50%まで幅があります。

新規開業資金は、税務申告の回数によって金利が異なります。税務申告を2期終えているかどうかによって、適用される基準金利や特別金利が変わってくるため、新規開業資金の金利は1.30%から3.50%まで幅があります。

なお、税務申告を2期終えていない場合は「創業支援貸付利率特例制度」が併用できます。適用予定の金利から一律0.65%低減されるため、自身に適用される金利を知りたい人は、日本政策金融公庫の担当者に確認することも検討してみてください。

信用保証協会付き融資の場合

信用保証協会付き融資の場合、金利は2%台~3%台が目安となります。信用保証協会付き融資の金利は、融資を実行するそれぞれの金融機関が設定することになるため、信用保証協会付き融資を検討している人は、金融機関が金利を設定する要素を確認してみましょう。

【金融機関が金利を設定するときの要素の例】

  • 返済期間
  • 自己資金
  • 財務実績

金融機関が金利を設定するときの要素のひとつは「返済期間」です。返済期間の長短によって金利が異なる可能性があるため、信用保証協会付き融資を検討するときは、返済期間による金利の変動があるかどうかを金融機関に確認することになります。

金融機関が金利を設定するときの要素のひとつは「財務実績」です。すでに事業を開始している場合、財務実績によって金利が異なる可能性があるため、信用保証協会付き融資を検討するときは、財務実績による金利の変動があるかどうかを金融機関に確認することになります。

なお、金融機関の公式サイトに金利の詳細が記載されていないことがあります。個人の状況や金融機関の状況によって金利は異なるため、信用保証協会付き融資を考えている場合は金融機関に金利の目安を確認することも検討してみてください。

制度融資の場合

自治体の制度融資の場合、金利は1%台が目安となります。自治体によって金利は異なりますが、自治体が金利の一部を負担している関係上、日本政策金融公庫の融資や信用保証協会付き融資と比べて、低い金利で借入できる傾向にあります。

【自治体の制度融資の例】

制度融資名  金利
埼玉県が取り扱う創業者向けの制度融資
起業家育成資金
1年超3年以内…年1.2%以内
3年超5年以内…年1.3%以内
5年超10年以内…年1.4%以内
大阪府が取り扱う創業者向けの制度融資
開業・スタートアップ応援資金
開業後5年未満の場合
1.4%
(女性・若者・シニア・UIJターンは1.2%)
開業前もしくは開業後1年未満の場合
1.2%
(女性・若者・シニア・UIJターンは1.0%)

埼玉県の制度融資は、返済期間によって金利が異なります。「1年超3年以内に返済する場合は年1.2%以内」「3年超5年以内に返済する場合は年1.3%以内」など、返済期間によって異なる金利が設定されています。

大阪府の制度融資は、開業後の年数によって金利が異なります。「開業前もしくは開業後1年未満の場合は1.2%」「開業後5年未満の場合は1.4%」など、開業後の事業年数によって異なる金利が設定されています。

自治体の制度融資は、自治体ごとに内容を設定しています。自治体がそれぞれ融資条件を設定しているため、制度融資の金利を知りたい人は、創業場所を管轄する自治体の公式サイトを確認してみてください。

借入先を決めるときは金利以外の観点からも検討する

借入先を決めるときは、金利以外の観点からも検討しましょう。金利は借入先を決定する判断軸のひとつとなりえますが、金利以外の観点からも考えることにより、自身の状況に合った借入先を判断できる可能性があります。

【借入先を検討するときの項目例】

項目    保証料の有無 融資実行までの期間 融資以外の相談対応
日本政策金融公庫 なし 1か月~1か月半 対応不可の場合がある
信用保証協会付き融資 あり 1か月~2か月 金融機関での対応可
制度融資 あり(自治体によって一部助成あり) 2か月~3か月 金融機関での対応可

金利以外の観点として、「保証料の有無」「融資実行までの期間」「融資以外の相談対応」が挙げられます。金利以外の観点からも検討することにより、自身の状況に合った借入先を決められる可能性があるため、それぞれの項目を確認してみましょう。

保証料の有無

借入先を決めるときの観点として「保証料の有無」が挙げられます。信用保証料を支払う場合、利息以外の支払が発生することになるため、借入先を決めるときは信用保証料と利息を含めた支払い総額を確認するようにしましょう。

 【信用保証料の有無】

項目  保証料の有無
日本政策金融公庫 なし
信用保証協会付き融資 あり
制度融資 あり(自治体によって一部助成あり)

信用保証料が発生するのは、信用保証協会付き融資と制度融資を利用する場合です。信用保証協会に債務を保証してもらう代わりに、信用保証料を事前に支払うことになるため、信用保証協会付き融資と制度融資を検討する場合は、信用保証料の金額を確認しておくことになります。

信用保証料の目安は、「信用保証料簡易シミュレーション」から算出できます。「借入金額」「保証期間」「信用保証料率」などを入力することにより、信用保証料の目安が算出できるため、信用保証協会を利用する場合は信用保証料を含めた資金計画を立てておくことになります。

なお、制度融資の中には、保証料を一部助成してくれる自治体があります。自治体によっては、創業者の負担を減らすために信用保証料を一部助成するところがあるため、創業場所を管轄する自治体の制度融資を確認することも検討してみましょう。

融資実行までの期間

借入先を決めるときの観点として、「融資実行までの期間」が挙げられます。申込から融資実行までの期間が借入先ごとに異なるため、借入先を決めるときは開業までのスケジュールを考慮しつつ、融資が実行されるまでの期間を確認してみてください。

【融資実行までの期間の目安】

項目  融資実行までの期間
日本政策金融公庫 1か月~1か月半
信用保証協会付き融資 1か月~2か月
制度融資 2か月~3か月

3つの選択肢のうち、最も融資実行までの期間が短い傾向にあるのは「日本政策金融公庫」です。日本政策金融公庫は信用保証協会の保証審査がないため、申込から融資の実行までの工程が日本政策金融公庫内部で完結することにより、融資までの期間が短い傾向にあります。

3つの選択肢のうち、最も融資実行までの期間が長い傾向にあるのは「制度融資」です。「信用保証協会」「自治体」「金融機関」の3者が連携する融資となる関係上、書類手続きや審査に時間がかかり、融資までの期間が長い傾向にあります。

なお、融資実行までの期は目安です。「土地を担保に提供する場合」「窓口が混みあっている場合」など、状況によって融資までの期間は変わってくるため、融資希望日が決まっている場合は、申込前に期日に間に合うかどうかを相談することも検討してみてください。

融資以外の相談対応

借入先を決めるときの観点として「融資以外の相談対応」があります。金融機関から借入した場合、返済期間を含めると数年単位の付き合いとなるため、借入先を決めるときは金融機関の担当者が融資以外の相談に応じてくれるかどうかを判断材料のひとつとすることも検討してみましょう。

 【融資以外の相談対応の例】

項目  事業用の口座開設  地域の情報共有
日本政策金融公庫 対応不可 少ない傾向がある
信用保証協会付き融資 対応可 多い傾向がある
制度融資 対応可 多い傾向がある

融資以外の相談対応として「事業用の口座開設」が挙げられます。日本政策金融公庫は預金業務を取り扱っていない関係上、事業用の口座開設はできませんが、信用保証協会付き融資や制度融資は民間の金融機関を利用するため、事業用の口座開設を手続きできます。

融資以外の相談対応として「地域の情報共有」が挙げられます。「信用金庫」「地方銀行」などの地域密着型の金融機関から信用保証協会付き融資や制度融資を受ける場合は、「事業者マッチング」「イベントへの出展」など、地域の情報を共有してくれる可能性があります。

なお、融資以外の相談対応は金融機関やその支店の方針によっても異なります。「創業相談会」「事業者間マッチング交流会」など、支店によってイベントを開催している場合もあるため、気になる人は公式サイトや店舗チラシなどを確認してみてください。

まとめ

創業融資における金利の目安は1%~3%です。創業融資の主要な選択肢として「日本政策金融公庫の融資」「信用保証協会付き融資」「自治体の制度融資」が挙げられるため、それぞれの選択肢ごとの金利を確認していきましょう。

それぞれの選択肢における金利はあくまで目安となります。「対象要件」「金融機関による判断」「自治体の制度内容」など、金利を左右する要素はさまざま考えられるため、自身が適用される金利を知りたい人はそれぞれの窓口に問い合わせることを検討してみましょう。

借入先を決めるときは、金利以外の観点からも検討してみてください。「保証料の有無」「審査にかかる期間」「融資以外の相談対応」など、金利以外の観点からも検討することにより、自身の状況に合った借入先を決められる可能性があるため、それぞれの項目を確認してみましょう。

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