返済不要な資金調達方法の特徴と利用時の注意点を解説

資金調達というと金融機関からの借入を思い浮かべる人が多いでしょう。借入の場合は毎月の返済負担が発生しますが、実は返済不要な資金調達方法も存在します。

返済不要といっても手数料が発生したり株式の発行が求められたりと、なんらかのリターンは必要になる場合が多く、それぞれの資金調達方法への理解が必要です。

当記事では返済不要な資金調達方法を紹介するとともに、返済不要な理由と利用するときの注意点も解説していきます。

返済不要な資金調達方法は4つある

返済不要な資金調達方法は「クラウドファンディング」「ファクタリング」「出資」「補助金と助成金」の4つが挙げられます。

【返済不要な資金調達方法の比較】

入金までの期間 手数料 個人事業主の利用
ファクタリング 最短即日~2週間 売掛債権の1%~20%程度
出資 最短即日~3か月程度 出資先によるが出資額の1~2%程度 不可
クラウドファンディング 1~2か月程度 調達金額の

10%~20%程度

補助金と助成金 長期化するものが多い なし

ファクタリングは売上以上の金額は調達できませんが、入金までの期間が短く、柔軟な資金使途での利用が可能なことから運転資金としての利用に向いています。

出資、クラウドファンディングは資金調達のハードルは高いですが、大型の資金調達が可能なため、創業や新規事業へのチャレンジや事業の急拡大を図るときに向いています。

補助金と助成金は資金使途は限定されますが、対象要件を満たした資金調達を行う場合は向いています。

ほかにも、それぞれの資金調達方法には手数料がかかる、手続きが面倒で時間がかかるといった注意点もあるため、各々の特徴を比較したうえで自分の目的に合った資金調達方法を検討しましょう。

SNSで見かける返済不要な資金調達案件は利用しない

SNSで見かける返済不要な資金調達案件は利用してはいけません。詐欺や個人情報の抜き取りなどのトラブルに巻き込まれるおそれがあるためです。

金融庁でも注意喚起されているように、SNS上で「融資します」「資金調達できます」等の勧誘を行うことは、貸金業法に抵触する可能性が高いです。資金調達を行うときは、貸金業法などの法律を遵守した業者のみ利用するようにしましょう。

詳細を知りたい人は、創業融資ガイドにある「SNS上にある返済不要の資金調達案件は詐欺なのか?」の記事も参考にしてみましょう。

ファクタリングは売掛債権を早期に現金化するため返済不要

ファクタリングは売掛債権を早期に現金化できるサービスです。売掛金を取引先からの支払期日を待たずに現金化しているので、返済不要で資金調達することができます。

ファクタリング利用者は、請求書などの売上が分かる資料をファクタリング業者に提出し審査を受けます。審査に通るとファクタリング業者に手数料を支払い、売掛債権を買い取ってもらう流れです。

ファクタリングすることを取引先に通知する「3者間ファクタリング」と、ファクタリングすることを取引先へは通知しない「2者間ファクタリング」の2種類があります。通知の有無以外に、入金までの期間や手数料が変わります。

【2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの比較】

ファクタリングの種類 2者間ファクタリング 3者間ファクタリング
調達期間 即日~1週間 10日~2週間
手数料 10~20% 1~10%
売掛先への通知 通知なし 通知あり

ファクタリングは自社の売掛金を業者へ手数料を支払うことで買い取ってもらい、本来の期日より早く現金化できるサービスです。融資ではないため返済が不要ですが、売掛金以上の資金調達ができないため大型の設備投資などには向かず、つなぎの運転資金としての利用に向いているでしょう。

ファクタリングを活用しやすい人

ファクタリングでの資金調達が活用しやすい人は以下の通りです。

  • 売掛金の回収期間が長く、その間の資金繰りが難しい人
  • 緊急で事業 資金が必要な人
  • 取引先と信頼関係が築けている人

建設業など売掛金の回収期間が2か月から半年など長くかかる業態の場合は、その間に外注先への支払いや材料の仕入れなど支払いが発生するため、ファクタリングによる資金調達は有効だといえます。

また、急に備品が壊れて買い替えが発生したり、想定よりも外注先や仕入れの負担が重くなってしまったりなど資金が急ぎで必要になる場面でも、ファクタリングは入金までの期間が他の資金調達方法よりも短いため対応できる可能性があります。

他には、取引先と信頼関係が築けており3者間ファクタリングに同意してもらえるようであれば、2者間ファクタリングよりも低い手数料で利用できるため、さらに便利な資金調達方法として活用できるでしょう。

ファクタリングは緊急の事業資金需要に対応できる手段として有効です。以上に挙げた特徴に当てはまる人は、緊急時の備えとしてファクタリング業者を数社ピックアップしておいてもいいかもしれません。

ファクタリングを利用するときの注意点

ファクタリングを利用するときの注意点は、ファクタリングの利用が常態化してしまうことです。手数料が他の資金調達方法と比較しても高いため、頻繁に利用してしまうと結果的に資金繰りを悪化させることにつながりかねません。

たとえば、100万円の売掛金を20%の手数料でファクタリングした場合、手元に入る金額は80万円になります。毎月100万円の売掛金を同じ条件でファクタリングしつづけると、 年間で合計240万円の手数料を支払うことになってしまいます。

売掛金の回収が1か月後などの短い業種でファクタリングに頼らざるを得ない 場合や、毎月ファクタリングしないと資金が足りなくなってしまう場合は、そもそもの資金繰り構造を見直したほうが良い可能性が高いです。

ファクタリングは返済が不要で気軽に利用できますが、手数料が高く頻繁に使うと資金繰りを悪化させてしまうおそれがあります。あくまで緊急時の運転資金として利用するだけとしておきましょう。

出資は資金の代わりに自社の株式を発行するため返済不要

投資家から出資をうけて資金調達する方法は、出資金額に応じて自社の株式を譲渡するため資金の返済は不要です。スタートアップなどのベンチャー企業が活用するケースが多いです 。

未上場企業に投資する投資家は3種類に分けられます。

【未上場企業に投資する投資家】

エンジェル投資家 企業の創業期に出資することが多い。

個人で活動している投資家のため、意思決定が早く即日で出資が決まるケースもある。

ベンチャーキャピタル(VC) 企業の成長期に出資することが多い。

投資専門会社のため、経営者に対し経営アドバイスも行って企業の成長に伴走してくれる。出資基準が高く、審査に2か月~3か月程度かかる。

コーポレートベンチャーキャピタル(CVC) 大手企業などの事業会社が自己資金でファンドを作り、ベンチャー企業などに投資する 。

将来的な金銭のリターンだけでなく、自社の事業にプラスになる技術を開発してくれるなどのシナジー効果を期待して投資するケースが多い。出資基準が高く、審査には時間がかかる。

企業は投資家に未来のリターンが大きいと判断され株式を購入してもらいます。そのため、出資金額の返済義務はなく、経営に集中することができます。出資による資金調達方法を検討する人は、投資家に対し将来のリタ―ンをどれくらい提供できるか具体的に明示し、魅力的な出資先だと思ってもらう必要があるでしょう。

なお、出資をうけるには株式の発行が必要なため、事業形態が法人であることが条件となります 。個人事業主の場合は他の資金調達方法を検討しましょう。

出資による資金調達方法を活用しやすい企業

出資による資金調達方法を活用しやすい企業は以下の通りです。

  • スタートアップなどのベンチャー企業
  • 事業や技術に独自性があり、将来性がある企業

スタートアップなどのベンチャー企業は10年ほどで上場を目指すといった短期間での急成長を狙う企業が多いです。投資家からしたら投資成果が短期間で分かるというのは魅力的なため、ベンチャー企業は投資家から資金を調達しやすい傾向にあります。

また、事業内容や技術に独自性があり優れている場合は、同じ業界でシナジー効果の期待できる事業会社にアピールすると 出資に興味をもってくれる可能性があります。事業会社は有望な中小企業に出資することで、自社で新規事業や開発をするリスクを避けようとするためです。

出資をうけるには、出資先に配当金や株式の売却益、革新的な技術などのリターンを提示できるかどうかにかかっています 。出資による資金調達を検討する際は、事業計画を綿密につくる、経営者が魅力的なプレゼンをするなどの事前準備をしたうえで臨みましょう。

出資による資金調達方法を利用するときの注意点

出資による資金調達方法を利用するときの注意点は、無計画に株式を発行しすぎないようにすることです。資金調達したいがために株式を発行しすぎると、経営権がなくなってしまうおそれがあるからです。

たとえば、全部で5,000株ある企業が1,000株を投資家に譲渡し資金調達した場合、投資家は株式を20%保有したことになります。 企業が再び 資金調達したいとき、さらに2,000株を譲渡してしまうと 投資家の株式保有率は60%になります。

株式会社の取締役は株主総会において議決権の過半数をもって選任するため、投資家が60%の議決権をもってしまうと、経営者は取締役を解任されてしまう可能性がでてきます。

会社の意思決定権を投資家に渡さないためにも、 出資による資金調達を何回行うのか、株式は何パーセント譲渡するのか事前に計画を立てておく必要があります。出資 は返済不要で大型の資金が集められる分、出資に頼りすぎると経営権を失ってしまうおそれがあるため、そのほかの資金調達方法も併用しながら経営権のバランスをとるようにしましょう。

クラウドファンディングはさまざまな方法でリターンを行うため返済不要

クラウドファンディングはインターネット上で個人から小口の支援金を集め、目標金額に達したら取引成立となる資金調達方法です。 融資型以外の種類を選べば月々の返済不要ですが、支援者に何らかの形でリターンを用意する必要があるのが特徴です。

クラウドファンディングにはさまざまな種類があり、 返済不要なものは以下の4つです。

種類 特徴
購入型 支援金に応じて商品やサービスのリターンが得られる形式。支援者は商品やサービスを購入する感覚で支援できる。
寄付型 プロジェクトに寄付する形式

支援者にリターン は原則ないが、なんらかの特典はつく場合もある。

NPOなど社会貢献性の高いプロジェクトが多い。

株式投資型 非上場企業へ50万円までの少額投資を行う形式。

支援者は業績に応じて配当金が得られる。

ファンド型 クラウドファンディング事業者がファンドとなり、支援者から集めた資金で投資する形式。

支援者は配当金やサービスを受けられる。

日本では取り扱いがまだ少ない形式。

「株式投資型」や「ファンド型」は従来の出資に近い形式で、業績に応じて配当金を分配するため調達した金額の返済は不要です。「購入型」や「寄付型」はプロジェクト自体への共感や関心が高い支援者による支援のため、商品やサービス等でリターンを返すか、リターン自体が不要な形式をとっています。

クラウドファンディングでの資金調達は返済不要ですが、代わりに商品やサービスなどのリターンが求められます。クラウドファンディングの利用を検討する際は、商品の用意や発送フローの準備などの手間がかかる点も考慮しましょう。

クラウドファンディングを活用しやすい人

クラウドファンディングでの資金調達が活用しやすい人は以下の通りです。

  • すでに企業や個人で知名度があり、宣伝効果がでやすい人
  • 商品やサービスが市場でどんな反応をされるか知りたい人

クラウドファンディングのサイトにはたくさんのプロジェクトが支援募集を行っているため、すでに企業や個人に知名度がありファンがいる場合は、支援金を集めやすい傾向にあります。

また、クラウドファンディングを通じて自身の商品やサービスにどれくらい市場が反応してくれるのかテストマーケティングを行うことも可能です。創業期の企業や新商品を開発中の企業などであれば、クラウドファンディングを活用して市場のニーズ調査に役立てられます。

ファンを増やすことが大事なBtoCの業種や、創業期で商品の市場調査を行いたいときなどはクラウドファンディングによる資金調達を選択肢として検討しても良いでしょう。

クラウドファンディング利用時の注意点

クラウドファンディングを利用するときの注意点は、目標金額に達しない場合は資金調達できない点です。目標金額に達しない場合は、取引不成立で支援者に返金される仕組みになっています。目標金額に達しなくても取引成立できるプランも一部ありますが、手数料や支援者へのリターンだけで赤字になってしまう可能性があります。

クラウドファンディングの成功率をあげるため、事前にクラウドファンディングの担当者に相談し、PRの方法や支援者に共感してもらえるストーリー作りなどを準備してから行うことが重要です。

クラウドファンディングは成功しなかったら資金調達できないリスクも高いため、別の資金調達方法も並行して検討する、事前準備を行うなどの対策を立てて臨むようにしましょう。

補助金と助成金は中小企業の支援が目的のため返済不要

補助金と助成金は国や自治体が管轄しており、中小企業・小規模事業者への支援を目的としているため返済不要です。

生産性向上のための設備投資が対象となる「ものづくり補助金」や事業再編などの新たな取り組みを支援する「事業再構築補助金」などのほか、コロナ禍など社会情勢の影響で休業せざるをえない企業に「雇用調整助成金」を支給するなど、国や自治体の政策目的でさまざまな補助金、助成金制度がつくられています。

補助金と助成金の違いは以下の通りです。

【補助金と助成金の違い】

項目 概要
補助金 補助金を支給できる採択数の上限が決まっている。

上限を超える申込があった場合、審査で落ちる可能性もある。

助成金 採択数の上限がなく、要件を満たしていれば支給されるケースが多い。

対象者かつ所定の様式に沿って申請を行えば原則支給される。

ただし、補助金と助成金は明確に定義づけされてはいないため、制度によっては補助金でも申請すれば原則支給されるものもあります。補助金と助成金による資金調達を検討する際は、自身が申し込む制度概要をよく読んでから申請するようにしましょう。

補助金と助成金の活用が向いている人

補助金と助成金による資金調達方法が活用しやすい人は以下の通りです。

  • 各補助金、助成金の制度に該当する人
  • 手続きする時間がある人

補助金と助成金は申請が通ればもらえる資金であり、返済義務もなければ手数料や株式の発行も不要なため、制度の条件に当てはまる事業者は活用を検討してみると良いでしょう。

対象要件の確認や申請書類の準備が煩雑で手間がかかるため、時間的なコストもかかります。書類の準備が難しい場合は、顧問税理士等に相談し書類を代行作成してくれるところを探してみてください。

補助金と助成金の利用時の注意点

補助金と助成金の利用時の注意点は、支給されるまでの資金繰りを確保することです。制度によっては支給されるまで1年間待つ補助金や助成金もあるため、その間の資金繰り計画を立てておく必要があります。

たとえば、500万円の設備投資のうち1/2の補助が支給される補助金制度が採択された場合、先に500万円を自社で立て替えたあと、領収書などを精査して数か月後に250万円が支給されます。

補助率分の補助金がすぐに入金されるわけでないため、 補助金や助成金での資金調達を検討する際は支給されるまでの期間を確認し、資金繰りに問題はないか、先に経費を立て替えられるかも考慮して申請するようにしましょう。

資金調達時に資金繰り計画を立てることが大切

資金調達時には資金繰り計画を立てるようにしましょう。通常、資金繰り計画は金融機関からの借入の際きちんと返済できるかをシミュレーションするために作成されることが多いですが、返済不要な資金調達を行った際も資金繰り計画を立てることで、現在の経営課題を分析し見直すきっかけとなるからです。

たとえば、運転資金を資金調達したい場合は、なぜ運転資金が不足するのか原因を探します。売掛金の入金が遅いのが原因ならば、売掛先へ早期に入金してくれないか交渉するか、反対に支払先への支払いを遅らせられないかも検討しましょう。

また、設備投資のための資金調達を行う場合は、設備投資後の作業フローを見直し、削減できる工程はないか、設備導入により人件費や経費を削減できないかも資金繰り計画を作りながら検討することができます。

資金繰り計画を立てることで資金調達の悩みが可視化され、経営改善に向けたアクションを起こせる効果が期待できます。 返済不要の資金調達のみに頼るのではなく、資金繰りを改善することで経営そのものの安定化を目指していきましょう。

経営改善計画策定支援の補助金を活用する

経営改善計画策定支援(405事業)は、資金繰りの悩みを解決するために認定経営革新等支援機関と連携し経営改善計画の策定を支援する補助金です。

経営改善計画策定支援を活用すると 、金融機関からの借入負担が重い中小企業や小規模事業者に対して、返済条件変更などの交渉や変更後の資金繰り計画の作成を、国の認定を受けた支援機関と一緒に行っていくことが可能です 。支援機関に払う費用を2/3の補助率で補助金申請できます。

金融機関からの借入があり、毎月の返済負担など資金繰りに悩みがある場合は中小企業庁の公式サイトより申込方法を確認し活用してみてください。

また、株式会社SoLaboも認定経営革新等支援機関として認定を受けています。経営のお悩みについて、お気軽にご相談ください。

まとめ

返済不要の資金調達を利用すると毎月の返済負担がかからなくなります。一方で、返済不要の資金調達方法は入金までの時間や手続きの煩雑さ、手数料の高さなど融資にはない注意点があるのも確かです。

そのため、それぞれの資金調達方法の特徴を理解し、自社にあった方法を選択することが大切になります。また、経営改善するために資金調達をするつもりであるのなら、資金調達をするのではなく資金繰りを確認し、場合によっては専門家に相談しながら経営改善をしていくことも検討してみてください。

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