中小企業の資金調達方法を利用できる経営状況別に解説 

中小企業にとって、資金繰りは大きな課題のひとつと言えます。なかには資金調達を検討している人もいるでしょう。

中小企業の資金調達というと金融機関からの融資が主要な方法ですが、その他の方法についても資金使途や経営状況によっては有効に活用できる可能性があるため、さまざまな資金調達方法について知識を持ち広く検討することは、資金繰りを円滑にするために大切なことです 。

当記事では中小企業の資金調達方法について、運転資金向けの方法と設備資金向けの方法に分けたうえで、活用しやすい経営状況と合わせて解説しました。

運転資金か設備資金かによって選ぶ資金調達方法が変わってくる

資金調達方法は運転資金と設備資金のどちらを調達するのかによって決めましょう 。運転資金と設備資金では資金調達したい背景や意図に違いがあるため、有効な資金調達方法も変わってくるからです。

中小企業が運転資金を調達するときは、「入金スピード」や「財務内容に課題があるが調達できるか」を重視しましょう 。運転資金が不足する原因は、取引先の倒産などの外部要因や事業の利益構造に課題がある場合が考えられるため、期日までに入金されるか、または決算内容が悪化していても調達できるかといった点を確認する必要があります。

中小企業が設備資金を調達するときは、「調達金額」や「返済の有無や返済方法」を重視しましょう 。設備資金は事業の拡大や新規事業へのチャレンジなどにまとまった資金が必要になることが多く、また、設備投資後に利益がでるまで時間がかかることもあります。そのため、希望の金額が調達できるのか、返済方法に無理はないかといった点を確認していきます。

設備資金のなかには今まで使用していた機械の故障や車両の買い替えなど、緊急性の高いものもあります。その場合は運転資金向けの資金調達方法も含めて検討してみましょう。

運転資金向けの資金調達方法

運転資金向けの資金調達方法として挙げられるのは、金融機関からの融資、ノンバンクのビジネスローン、ファクタリング、助成金です。それぞれの特徴を比較した表は以下の通りです。

【運転資金の調達方法 の特徴を比較】

 資金調達方法 入金スピード 資金調達額 金利や手数料
金融機関からの融資 1か月~3か月 100万円~数千万円 金利1%~5%
ノンバンクのビジネスローン 最短即日~3週間程度 1,000万円程度 金利3.1%~18%
ファクタリング 最短即日~2週間 売掛債権によるが1,000万円程度 手数料10%~20%
助成金 制度によるが半年ほどかかるものもある 制度による なし

入金スピードが早い資金調達方法は、ノンバンクのビジネスローンとファクタリングです。ノンバンクのビジネスローンは返済が必要なのに対し、ファクタリングは返済不要な点が異なります。

金融機関からの融資は、新規取引の場合は提出書類も多く審査に時間がかかる傾向にありますが、継続取引の場合は1か月程度で入金となるケースもあります。助成金は入金まで時間がかかるものが多いですが、申請要件を満たしていれば財務内容に関わらず支給されるケースが多いため、決算内容が悪化していても申請できる 方法です。

運転資金の資金調達方法を検討する際には、入金スピードが早い方法は相対的に金利や手数料が高くなる点に注意し、資金調達後に資金繰りを改善できるか想定して決めるようにしましょう。

金融機関からの融資のなかには運転資金で活用できる制度がある

金融機関からの融資のなかには、運転資金で活用できる制度があります。もちろん、金融機関の融資制度は基本的に運転資金も設備資金もどちらも対応していますが、とくに資金繰りに課題がある中小企業に対して提供している融資制度は以下の通りです。

【資金繰りの改善を図る際に活用できる融資制度の一例】

融資制度名  概要
日本政策金融公庫のセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金) 社会情勢の影響など外的要因により一時的に売上の減少といった状況にあるが、中長期的には状況の回復が見込める事業者向けの融資制度。金利は1.94~2.90%(令和5年8月現在)、融資限度額は4,800万円で運転資金の返済期間は最長8年(うち据置3年以内)。
日本政策金融公庫のマル経融資(小規模事業者経営改善資金) 商工会、商工会議所による経営指導を受けており、かつ商工会、商工会議所等の長の推薦を受けた事業者が利用できる融資制度。金利は1.09%(令和5年8月現在)、融資限度額が2,000万円で運転資金の返済期間は最長7年(うち据置1年以内)。
信用保証協会の借換保証 信用保証協会を利用した融資が複数ある場合、借換えして1本の借入にすることで返済負担を減らせる保証制度。保証限度額は2億8,000万円まで。
信用保証協会の経営安定関連保証(セーフティネット保証)

 

災厄や疫病の 影響や取引先が法的整理などといった外部要因で経営に支障が生じている事業者向けの保証制度。保証料率はおおむね1%以内、普通保証2億円(無担保保証は8,000万円)まで。

日本政策金融公庫は個人事業主から中小企業への融資に特化した政府系金融機関で、売上が減少していたり、商工会等の経営指導を受けていたりと資金繰りに課題がある事業者向けの融資制度があります。

信用保証協会は小規模事業者や中小企業が民間金融機関から融資を受けやすくするために設立された保証機関で、返済負担を軽減する借換保証や新型コロナウイルスの影響を受けた事業者に対する保証制度を用意しています。

金融機関からの融資は、ほかの運転資金向けの資金調達方法と比べると低金利で借入でき、事業計画を作成し経営課題を相談したうえで融資をうける制度もあるため、資金繰りの根本的な改善を行う際には適した資金調達方法といえます。各制度の詳細については公式サイトを確認してみましょう。

ノンバンクのビジネスローンは短期的な資金繰り対応として活用できる

ノンバンクのビジネスローンは、短期的な資金繰り対応するために有効な活用方法です。金融機関からの融資と比べて審査スピードが早い点が特徴であるため、緊急で運転資金が必要になった場合に活用しやすいからです。

たとえば、売上の急な増加に伴い仕入れ資金が必要になった場合に、ノンバンクのビジネスローンで1週間後に資金調達できたら売上アップの時期を逃さずに対応できます。ほかには、50万円だけ必要といった少額な資金需要のときなどにも、ノンバンクのビジネスローンには10万円から相談できるところもあるため利用しやすい面もあります。

インターネット上で手続きが完了するローン会社もあるため、経営者にとっては急ぎの資金調達時に利用しやすいです。しかし、ノンバンクのビジネスローンは金融機関からの融資と比べると金利が高く、とくにカードローンは繰り返し借入しやすく利息計算が複雑になるため、長期的に利用すると気づいたら支払総額が膨れ上がってしまうおそれがあります。

中小企業がノンバンクのビジネスローンを利用するときは、売上が入金されたら繰り上げ返済するなど短期間での利用にとどめられる目途があるときのみ活用するようにし、借入総額を把握しやすい状態にしておきましょう。

ファクタリングは売掛金の回収期間が長い状況のときに活用しやすい

ファクタリングは売掛金の回収期間が長い状況のときに活用しやすい方法です。ファクタリングは売掛債権をファクタリング業者に買い取ってもらうサービスで、売掛金の回収期日を待たずに早期に現金化できるため資金繰りの助けになるからです。

たとえば、建設業など工事の施工から売上の入金まで3か月くらいかかる業種では、外注費や人件費、材料代などの経費を先に支払う必要がでてきます。工事の請求書等をファクタリング業者に提示すれば、最短即日から2週間ほどで請求書の金額から手数料を差し引いた資金を調達できるため、手元資金不足で支払いが遅れてしまう事態を避けられます。

ファクタリング業者に支払う手数料は 売掛債権の10%から20%が相場と言われており、融資ではないため返済不要な点が特徴です。金融機関からの融資と比べて入金スピードが早く返済管理が不要なため利用しやすい資金調達方法ではあるのですが、手数料が高いため定期的に利用してしまうと逆に資金繰りを悪化させてしまう要因となりえます。

中小企業がファクタリングを利用する場合は、緊急性が高いときの利用にとどめ、なぜ 資金繰りが回らないのかについて分析と対策を考えるなどファクタリングを常態利用しないようにしましょう。

助成金は雇用関係で課題があるときに活用できる

助成金は雇用関係で課題があるときに活用できます。人材の確保や採用後の研修費用などさまざまな雇用に関する助成金が提供されています。

【中小企業が活用できる助成金の一例】

助成金名 概要
キャリアアップ助成金 従業員の正社員化や処遇改善が目的の助成金。1人あたり正社員化したら28.5万円から57万円を支給。

処遇改善はコースによるが1人あたり3万円から40万円を支給

人材開発支援助成金 正社員を対象に、業務の習得やスキルアップにつながる研修等の費用と研修中の賃金を一部助成。7つのコースが設定されている。

キャリアアップ助成金は、契約社員を正社員にキャリアアップさせる、退職金制度を導入するなどといった従業員の雇用環境を向上させる取り組みを支援するものです。キャリアアップ計画の作成後、取り組みを6か月行ったのち申請し承認されれば入金となります。

人材開発支援助成金は、従業員が業務知識を得るための研修にかかる経費や賃金を一部助成するものです。それぞれのコースに合わせた計画書をつくり研修等を実施したのち2か月以内に申請し承認されれば入金となります。

中小企業では、従業員の処遇改善やスキルアップ支援をするための運転資金を確保することが難しい会社も多いです。他にも雇用に関する助成金がいくつかあるため、雇用に課題を感じている場合はミラサポPlusで探してみても良いでしょう。

設備資金向けの資金調達方法

設備資金向けの資金調達方法として挙げられるのは、金融機関からの融資、少人数私募債、補助金、増資です。それぞれの特徴を比較した表は以下の通りです。

【設備資金の調達方法の特徴を比較】

 資金調達方法 入金スピード 資金調達額 金利や手数料
金融機関からの融資 1か月~3か月 100万円~数千万円 金利1%~5%
少人数私募債 1か月~6か月 1億円まで 企業が設定する
補助金 制度によるが半年以上かかるものもある 5万円~1,000万円程度 なし
増資 2か月以上 数百万円~数億円 なし

購入する設備の規模にもよりますが、金融機関からの融資、少人数私募債、増資のうちどの方法を選んでもある程度の設備資金需要には対応できるようになっているため、入金スピードや返済の有無などの条件も加味しながら検討するようにしましょう。

補助金は原則あと払いのため先に手元資金で設備を購入する必要がある点と、購入した設備費用の1/2を支給するなど満額支給されるケースは少ない点に注意が必要です。補助金による資金調達を行う人は、入金時期と補助率を確認したうえで申し込むようにしましょう。

金融機関からの融資のなかには設備資金で活用できる制度がある

金融機関からの融資のなかには設備資金で活用できる制度があります。金融機関では運転資金と設備資金のどちらも対応している融資制度が多いですが、設備資金の場合、運転資金よりも返済期間が長いといった有利な条件で借入できる制度があります。

【設備資金向け融資制度の種類の一例】

融資制度の種類  概要
日本政策金融公庫の企業活力強化資金(企業活力強化貸付) 主に商業振興関連の業種でキャッシュレス決済などの合理化を図る設備の導入を行う際に適用できる制度。金利は1.04~2.90%、融資限度額は7,200万円まで、返済期間は最長20年(うち据置2年以内)。
都道府県や市町村による制度融資 自治体が制度を用意し、信用保証協会と地域金融機関が連携して行う融資制度。自治体により取り扱う制度は異なるが、 一例として東京都では事業の実施に必要な設備の導入、増強、改良、補修等を対象に金利1.7~2.4%、融資限度額2億8,000万円まで、返済期間最長15年の融資制度がある。
民間金融機関による設備資金向け制度 信用金庫や地方銀行などでも中小企業向けに設備資金向けの融資制度を取り扱っている。 たとえば東京都にある多摩信用金庫のトライⅡという商品では、不動産担保の提供が条件として、融資限度額8億円まで、返済期間は最長35年の融資制度がある。

設備資金は大型の資金調達になることが多く、返済期間や金利、元金据置が可能かといった条件を比較することが重要になってきます。設備投資後の利益がどれくらい増えて、どのくらいの返済負担なら無理なく返済できるのかといった事業計画を立てて検討しましょう。

事業計画を立てる際には設備の耐用年数も意識します。金融機関によっては耐用年数を超えるほどの返済年数は認められない可能性があるため、耐用年数内に完済できるようスケジュールを組む必要があります。

また、調達金額によっては不動産担保の提供を求められるため、入金までのスピードは運転資金よりも設備資金のほうが長期化する傾向にあります。金融機関からの融資で設備資金を調達する場合は、返済負担や担保の有無を確認して調達先を決定し、期間に余裕をもって申し込むようにしましょう。

少人数私募債は経営者が主体となって資金調達したいときに活用可能

少人数私募債は経営者自らが主体となって資金調達したいときに活用可能です。少人数私募債は発行企業側が金利や償還期限などを設定できる社債で、企業の事業計画に合わせた返済プランを組むことができるためです。

少人数私募債の場合、元金は原則満期一括償還で利息はそれまでの期間定期的に支払います。金利や償還期限をいつに設定するかは債券を発行する企業が決め、購入者はその条件に納得したうえで少人数私募債を引き受けます。

新規事業へのチャレンジや設備投資し業務効率の改善を図るなどといった場合だと、投資効果がでるまで時間がかかるため、その間の元金支払いをストップできる少人数私募債は有効な活用方法といえます。

ただし、資金調達計画を立て元金を一括で償還する見込みがあることを納得してもらわないと 購入者が集まらないため、少人数私募債を利用する場合には、設備の導入により利益が増加し元金の償還が可能であると具体的に説明できるようにしましょう。

全国商工会連合会による資金調達事例集に少人数私募債の活用事例が掲載されているため、少人数私募債を検討している人は参考にしてみてください。

補助金は対象事業の設備導入をするならば活用可能

補助金は対象事業の設備導入をするならば活用可能です。補助金は助成金と同じく国や自治体による支援事業で、募集要項を満たした設備を導入して事業を行うならば申請できます。

【設備資金の調達が可能な補助金の一例】

 補助金名 概要
IT導入補助金 生産性向上のためのITツール導入費が対象。補助金額通常枠はA類型が5万円~149万、B類型が150万~450万、補助率は1/2以内。
ものづくり補助金 生産性向上のための設備投資が対象。補助金額は100万~1,000万、補助率は中小企業1/2、小規模事業者2/3

IT導入補助金は、会計ソフトの導入により経理業務効率が改善したなどITツールを取り入れることで業務課題を解決が図れる場合に 申請が可能です。中小機構が提供するIT経営簡易診断にてITツールが業務上活用できるか相談することもできます。

ものづくり補助金は地域の名産品を開発するため設備を購入するといった革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備やシステムの導入時に申請できる補助金です。

補助金は申請しても採択されなければ支給されず、IT導入補助金の採択率は40%から60%、ものづくり補助金の採択率は30%から40%となっています。補助金による資金調達を行う際は、申請に通る事業計画書の作成のために、中小企業向けの公的な相談機関であるよろず支援拠点などに相談しながら進めてもよいでしょう。

なお、株式会社SoLaboでも補助金申請支援事業を行っているため、興味のある人はお気軽にご相談ください。

増資は取引先や取引銀行からの出資が見込めるときに活用可能

増資は取引先や取引銀行からの出資が見込めるときに活用可能です。上場を望まない中小企業にとって投資家からの出資は難しいことが多いですが、取引先や取引銀行に対して配当金等の金銭リターン以外の投資リターンを提示することができれば、中小企業でも出資を受けられる可能性があります 。

2021年11月に経済産業省がまとめた「中小企業者のためのエクイティファイナンスの基礎知識」によると、中小企業への出資者候補として「取引銀行」と「取引先」を挙げており、安定した取引などのシナジー効果を期待して出資が可能と記載されています。

つまり、中小企業が出資を受けるためには、取引銀行や取引先から出資をしてでも継続した関係性を築きたい優良顧客であることが条件となると言えるでしょう。出資を受けられるメリットの他にも、企業側は出資先から財務面や経済面のアドバイスを受けやすくなるといった効果も期待できます 。

一方で、増資は返済不要な資金調達のため、資金繰りが安定し長期的にチャレンジングな事業に取り組むことができますが、第三者が株主になることで経営の自由度が下がる、株式を買い戻す事態になったときコストがかかるといったデメリット もあります。増資を検討する際はリスクも加味したうえで実施するようにしましょう。

まとめ

中小企業の資金調達は約90%が金融機関からの融資といった報告もあるように、現状では金融機関からの融資が主要な資金調達方法といえます。

しかし、増資や少人数私募債、ファクタリングやビジネスローンといった方法についても知識を持ち、補助金や助成金の情報収集を行っておくことで、資金調達時により良い方法で資金調達できる可能性があります。

資金繰りに課題を感じている、大型の設備投資を行いたいけれど資金調達に不安があるといった場合は、認定経営革新等支援機関やよろず支援拠点、中小機構による経営相談ホットラインといった経営支援を受けることもできます。幅広い視点から資金繰り改善や資金調達に関するアドバイスをもらえるため、活用を検討してみましょう。

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