保証協会を利用して創業融資を受けるときの流れを解説

創業融資を考えている人の中には、保証協会の保証制度を利用したいと考えている人もいるでしょう。保証協会から直接融資を受けることはないため、保証協会を利用するときの流れが分からない人もいるかもしれません。

当記事では、保証協会を利用して創業融資を受けるときの流れを解説します。全体の流れを押さえることにより、各工程の要点が把握できるため、保証協会を利用して創業融資を受けたい人は参考にしてみてください。

まずは全体の流れを確認する

保証協会を利用して創業融資を受けたいと考えている人は、まずは全体の流れを確認してみましょう。全体の流れを確認することにより、入金までの各工程の要点が分かるため、まずは全体の流れを押さえてみてください。

【保証協会を利用するときの流れ】

  1. 申込
  2. 審査
  3. 保証承諾
  4. 融資実行

保証協会を利用するときの流れは「申込」「審査」「保証承諾」「融資実行」の4工程に大別できます。申込者の状況や申込方法によって工程が異なることもありますが、保証協会を利用して創業融資を受けたい人は、それぞれの工程の内容を押さえていきましょう。

申込

保証協会を利用するときの最初の工程は「申込」です。「金融機関を経由する申込方法」「信用保証協会へ直接申込する方法」の2種類の申込方法があるため、信用保証協会の利用を検討している人はそれぞれの申込方法を確認してみましょう。

【信用保証協会の申込方法】

金融機関経由を経由する申込方法 信用保証協会へ直接申込する方法
・融資を受けたい金融機関に相談に行く
・金融機関へ保証協会付き融資を申し込む
・金融機関の担当者から保証協会へ保証申込を行う
・創業場所を管轄する保証協会へ相談に行く
・信用保証協会へ保証協会付き融資を申し込む
・保証審査後、金融機関をあっせんしてもらう

信用保証協会を利用するには、「金融機関を経由する申込方法」があります。融資を受けたい金融機関へ相談に行き、保証協会付き融資を申し込んだあと、金融機関の担当者から保証協会への保証を申し込む方法となります。

信用保証協会を利用するには、「信用保証協会へ直接申込する方法」があります。創業場所を管轄する保証協会へ相談に行き、信用保証協会へ保証審査の申込をしたあと、保証協会の担当者から金融機関のあっせんを受ける方法となります。

なお、保証協会によっては金融機関を経由する申込を推奨している場合があります。保証協会ごとに対応方針が異なる場合があるため、保証協会を利用して創業融資を受けたい人は、まずは創業場所を管轄する保証協会の公式サイトを確認することから始めてみてください。

申込の必要書類を確認する

保証協会を利用して創業融資を受けたい人は、申し込みに必要な書類を確認しましょう。金融機関や保証協会ごとに必要書類は異なる可能性がありますが、準備に時間や手間がかかる書類もあるため、必要となる書類の例を押さえておきましょう。

【必要書類の例】

  • 創業計画書
  • 信用保証委託申込書
  • 申込人の印鑑証明書
  • 開業届(個人事業主の場合)
  • 履歴事項全部証明書(法人の場合)
  • 定款(法人の場合)
  • 納税を証明できる書類
  • 許認可書類
  • 自己資金を確認できる書類
  • 設備の見積書
  • 不動産の賃貸契約書

必要書類のひとつは「創業計画書」です。「ビジネスモデル」「申込人の経歴」など、金融機関や信用保証協会のフォーマットに沿った計画書を作成し、金融機関と信用保証協会の担当者に確認してもらうことになります。

必要書類のひとつは「信用保証委託申込書」です。信用保証協会に保証を申し込む書類となるため、「書類への押印」「押印された印鑑の印鑑証明書」を合わせて提出し、信用保証協会の担当者に確認してもらうことになります。

なお、必要書類は個々の状況により異なります。「個人事業主か法人か」「賃貸物件か所有物件か」など、申込人の状況により必要となる書類は異なるため、保証協会への申し込みを検討している人は必要書類を事前に相談することも検討してみましょう。

審査

保証協会を利用するときの2つ目の工程は「審査」です。「金融機関での審査」「保証協会での審査」のどちらも通過しなければ、保証協会を利用した創業融資は受けられないため、保証協会の利用を検討している人はそれぞれの審査の概要を確認しておきましょう。

【審査の概要】

項目 概要 審査方法
金融機関での審査 融資の実行が適切かどうかを判断する 書類と面談による審査
保証協会での審査 保証の承諾が適切かどうかを判断する 書類と面談による審査

金融機関での審査は「融資の実行が適切かどうか」の判断をします。金融機関の責任において融資を実行することになるため、「事業の見通し」「返済能力」などのさまざまな観点から申込者への融資の実行が適切かどうかを判断します。

保証協会での審査は「保証の承諾が適切かどうか」の判断をします。保証協会の責任において保証を承諾することになるため、「事業計画の妥当性」「資金計画の妥当性」などのさまざまな観点から保証の承諾が適切かどうかの判断をします。

なお、創業融資は書類と面談による審査が行われます。創業融資は初めての融資取引となるため、「金融機関」「保証協会」どちらの審査においても書類提出と面談の機会があることを念頭に置いておきましょう。

審査のポイントを押さえておく

信用保証協会を利用するときは、審査のポイントを押さえておきましょう。「金融機関での審査」「保証協会での審査」は提出書類が共通する場合がある関係上、審査のポイントも共通する可能性があるため、いずれの審査にも共通するポイント例を押さえておきましょう。

【審査のポイント例】

項目 具体例
適格性 ・融資の対象業種かどうか
・保証の対象業種かどうか
事業計画 ・事業計画は妥当かどうか
・資金計画は妥当かどうか
返済能力 ・資金繰りに問題はないかどうか
・他社の借入はあるかどうか
個人の状況 ・創業する業種の経験はあるかどうか
・個人の支払能力はどうか

審査のポイントのひとつは「適格性」です。「融資の対象業種」「保証の対象業種」はそれぞれ決められているため、創業予定の業種が対象要件に該当するかどうかは審査ポイントのひとつになります。

審査のポイントのひとつは「事業計画」です。「ビジネスモデル」「購入する設備機械」「自己資金の準備状況」など、事業計画の妥当性を検証することになるため、事業計画書の内容は審査ポイントのひとつになります。

なお、審査では、個人の状況も確認される傾向にあります。個人の経歴や経験に加え、「個人の信用情報」「個人の借入情報」なども審査のポイントとなるため、書類の提出時や面談時は念頭に置いておきましょう。

保証承諾

保証協会を利用するときの3つ目の工程は「保証承諾」です。信用保証協会での審査の結果、保証を承諾した場合は保証条件を記載した保証承諾書をもらえるため、保証承諾書の概要を確認しておきましょう。

【保証承諾書の記載項目の例】

  • 借入金額
  • 保証日
  • 保証期間
  • 保証割合
  • 保証制度
  • 返済方法
  • 保証料

保証承諾書の記載項目のひとつは「借入金額」です。申込者の借入希望額にもとづいて審査を行い、「満額」「一部減額」「否決」のいずれかの対応に決定されるため、申込者は保証承諾書の借入金額欄を確認することになります。

保証承諾書の記載項目のひとつは「保証期間」です。保証協会が債務を保証する期間となる関係上、保証期間内に完済するような融資条件となる場合が多いため、申込者は保証承諾書の保証期間を確認することになります。

なお、保証承諾書には保証料も記載されています。保証料とは、信用保証協会が債務の保証を行う条件のもと、申込者が保証協会へ支払う料金となるため、保証協会を利用して創業融資を受けるときは保証料の金額を確認しましょう。

保証料を含めた事業計画を立てておく

保証協会を利用するときは保証料を含めた事業計画を立てておくようにしましょう。保証料は融資金額から差し引かれることになるため、保証料の差し引き分を含めた資金計画を立てておくことになります。

【保証料の例】

項目 具体例
借入金額 500万円
保証期間 60か月
据置期間 0か月
保証料率 1.9%
保証料 261,250円

東京信用保証協会「信用保証料簡易シミュレーション」をもとに株式会社SoLaboが作成

たとえば、500万円を5年払いで借入した場合、保証料は261,250円となりました。「保証料率」「据置期間の有無」などによっても保証料は異なりますが、500万円を5年払いでの借入した場合、事業者は26万円程度の保証料を支払うことになります。

保証料は融資金額から差し引かれます。保証料が26万円の場合、500万円から26万円を差し引かれた474万円が入金されるため、創業時の資金計画を立てるときは474万円内に収まるような資金計画を立てることになります。

なお、今回は東京都信用保証協会の簡易シミュレーションを使用しました。実際の信用保証料は保証承諾書に記載されるまで分からないため、資金計画を立てるときは簡易シミュレーションを活用することを検討してみましょう。

融資実行

保証協会を利用するときの最後の工程は「融資実行」です。金融機関は保証協会の保証承諾書の内容をもとに融資条件を設定し、申込者と融資契約を交わしてから融資を実行することになるため、融資契約の概要を確認しましょう。

【融資契約の概要】

項目 具体例
融資契約書(借用証書)の記載項目 ・融資金額
・返済期間
・毎月の返済元金
・毎月の返済期日
・金利
融資契約に必要な書類項目 ・融資契約書
・印鑑証明書
・収入印紙
・実印

融資契約には、融資契約書(借用証書)が必要です。「融資金額」「返済期間」「金利」など、融資に関する条件が記載された書類に署名捺印することにより、金融機関と事業者との間での融資契約が交わされることになります。

融資契約には、揃える書類があります。「融資契約書」に加え、「印鑑証明書」「収入印紙」「実印」などが必要となる場合があるため、融資契約時には不備のないように揃えることになります。

なお、保証協会を利用する場合、申込から融資実行までは1か月半~2か月程度かかる可能性があります。手続きにかかる時間を念頭に置きつつ、創業までのスケジュールを立てるようにしましょう。

融資実行後に返済困難となった場合は代位弁済となる

融資実行後、事業者の返済が困難となった場合は代位弁済となります。事業者による毎月の返済が困難になった場合、信用保証協会が事業者に代わって金融機関へ弁済することになるため、保証協会の利用を検討している人は代位弁済の概要を押さえておきましょう。

【代位弁済の概要】

項目 概要
代位弁済となる条件 「返済が遅れている」「返済ができない」状況となり、金融機関が信用保証協会へ代位弁済を請求した場合
代位弁済後の流れ 債権が金融機関から信用保証協会へ移行するため、事業者は信用保証協会に対して返済を行う

代位弁済は金融機関から保証協会へ「代位弁済の請求」がされた場合に行なわれます。「返済遅滞」「返済不能」などの状況になり、事業者からの返済回収が困難と判断された場合、金融機関が信用保証協会へ代位弁済を請求することになります。

代位弁済されたあとは、債権が金融機関から信用保証協会へ移行します。信用保証協会は事業者に対し債務の請求を行うため、事業者は信用保証協会へ残った債務を返済していくことになります。

代位弁済されたあとも、事業者の債務は残ります。事業者の状況により個々の対応は異なりますが、原則として信用保証協会は事業者に対し返済を求めるため、保証協会を利用して創業融資を受ける人は代位弁済の知識も理解しておきましょう。

自治体の制度融資を活用するときは流れが異なる

自治体の制度融資を活用して保証協会を利用するときは流れが異なります。自治体の制度融資は、「自治体」「信用保証協会」「金融機関」が連携して取り扱う融資となるため、自治体の制度融資を活用するときの流れも押さえてみましょう。

【自治体の制度融資の流れ】

  1. 利用する制度融資を決める
  2. 自治体に制度融資の申込をする
  3. 自治体からあっせん書をもらう
  4. 金融機関へ申込手続きを行う
  5. 金融機関を経由して保証協会へ保証申込する
  6. 保証承諾を得る
  7. 金融機関から融資が実行される

自治体の制度融資を利用するときは、自治体からあっせん書をもらうことになります。自治体へ制度融資の申込を行い、自治体での審査を通過するとあっせん書がもらえるため、あっせん書をもとに金融機関への融資申込を行います。

自治体の制度融資を利用すると、融資条件が優遇される場合があります。「保証料率の低減」「利息の一部補給」など、通常の信用保証協会付き融資よりも有利な条件での借入ができる可能性があります。

なお、自治体の制度融資の流れは自治体によって異なる可能性があります。「金融機関で受付できる場合」「商工団体で受付できる場合」など、自治体によって対応窓口が異なる場合があるため、気になる人は創業場所を管轄する自治体の公式サイトを確認しましょう。

まとめ

保証協会を利用して創業融資を受けたいと考えている人は、まずは全体の流れを確認してみましょう。全体の流れを確認することにより、入金までの各工程の要点が分かるため、まずは全体の流れを押さえてみてください。

保証協会を利用するときの流れは「申込」「審査」「保証承諾」「融資実行」の4工程に大別できます。申込者の状況や申込方法によって工程が異なることもありますが、保証協会を利用して創業融資を受けたい人は、それぞれの工程の内容を押さえていきましょう。

自治体の制度融資を活用して保証協会を利用するときは流れが異なります。自治体の制度融資は、「自治体」「信用保証協会」「金融機関」が連携して取り扱う融資となるため、自治体の制度融資を活用するときの流れも押さえてみましょう。

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