業種経験のない人が創業融資を受けるためのポイントを解説

創業する業種の経験がない人であっても、創業融資に申し込むことはできます。ただし、創業融資の審査時には、過去の経歴や業種経験の有無が問われるため、創業する業種の就業経験がない場合は、審査に影響を与える可能性があります。

当記事では、業種経験のない人が創業融資を受けるためのポイントを解説します。開業したい業種での就業経験が不足していると感じる人は参考にしてみてください。

ポイントは創業にむけて準備した経過を伝えること

業種経験のない人が創業融資を受けるためのポイントは、創業にむけて準備した経過を伝えることです。事業の成功のために準備してきた経過を伝えることにより、業種経験の不足を補えるほどの評価を金融機関の審査担当者から得られる可能性があります。

【創業にむけて準備できることの例】

  • 自己資金を貯める
  • 自身の経験の活かし方を考える
  • できる範囲での経験を積む
  • フランチャイズの加盟を検討する

事業を成功させるために準備できることはさまざま挙げられます。開業したい業種の就業経験が不足している人は、創業にむけて準備できることを確認してみましょう。

自己資金を貯める

事業を成功させるために準備できることのひとつは、「自己資金を貯めること」です。相応の自己資金を貯めることにより、業種経験の不足を補えるほどの資金力があると評価される可能性があります。

自己資金は創業に対する準備や熱意を示す指標とする考え方があります。自己資金を貯めるには時間や労力がかかるため、創業のために一定期間準備してきたことを金融機関の担当者から評価される可能性があります。

自己資金は創業後の返済能力を示す指標とする考え方があります。創業後に事業が軌道にのるまで時間がかかった場合、自己資金を切り崩して返済に充てることも考えられるため、自己資金を準備している場合は返済能力があると評価される可能性があります。

なお、日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度新規開業実態調査~アンケート結果の概要~」によると、創業時の自己資金の平均値は280万円でした。業種経験が不足している人は、自己資金を平均値まで貯めることも検討してみてください。

自身の経験の活かし方を考えること

事業を成功させるために準備できることのひとつは、「自身の経験の活かし方を考えること」です。自身の過去の経験が創業する業種に活かせる場面を伝えることにより、業種経験の不足を補えるほどの強みがあると評価される可能性があります。

【自身の経験が活かせる場面の例】

過去の勤務経験と開業する業種の例 伝え方の例
経験:食品の卸メーカーに15年勤務してきた
開業する業種:飲食店
飲食店の勤務経験はありませんが、食材の目利きや仕入先との交渉に自信があります。鮮度の良い食材をリーズナブルな価格で提供するレストランを開業したいです。
経験:一般企業で経理事務を担当していた
開業する業種:エステサロン
エステサロンの勤務経験はありませんが、経理事務の経験から、帳簿の管理や採算のとれる事業形態を行える自信があります。Excelを使用し事業データを管理することにより、利益を確保できるサロン運営を実現させたいです。

たとえば、食品の卸メーカーに勤務してきた人が飲食店を創業する場合、「食品」という共通点から自身の経験を活かせる場面が考えられます。「食材の選定」「仕入先との交渉」などに特色をもたせることにより、自身の強みを生かした店舗づくりができる可能性があります。

また、経理事務を担当してきた人がエステサロンを創業する場合、「経理管理」という共通点から自身の経験を活かせる場面が考えられます。「帳簿管理」「予算管理」などに特色をもたせることにより、自身の強みを生かした店舗づくりができる可能性があります。

自身の経験を活かすことにより、同業他社との差別化が図れる可能性があります。同業他社と違うキャリアを積んできたからこその強みが見つかる場合があるため、開業する業種の経験が不足している人は、これまでの自身の経験から強みを探すことを検討してみてください。

できる範囲での業種経験を積む

事業を成功させるために準備できることのひとつは、「できる範囲での業種経験を積むこと」です。開業までにできる範囲での業種経験を積むことにより、業種経験の不足を補えるほどの知見やスキルを身に付けたと評価される可能性があります。

【できる範囲での業種経験を積む例】

  • 開業する業種のパートやアルバイトを始める
  • 機材をレンタルしてお試し開業してみる
  • スクールに通う

できる範囲での経験を積む例として、パートやアルバイトを始める方法があります。休みの日を利用して開業したい業種のパートやアルバイトをすることにより、実務経験が積めるため、より実務理解を深めた話を審査担当者に伝えられる可能性があります。

できる範囲での経験を積む例として、スクールに通う方法があります。技術が必要な業種を開業する場合、スクールに通うことにより体系的に技術を習うことができるため、より技術理解を深めた話を審査担当者に伝えられる可能性があります。

業種経験が不足していても、できる限りでの業種経験を積む方法はあります。数年単位での経験がなくとも、実務や知識に触れる機会は考えられるため、業種経験が不足している人はできる範囲での業種経験を積むことを検討してみてください。

フランチャイズの加盟を検討する

事業を成功させるために準備できることのひとつは、「フランチャイズの加盟を検討すること」です。フランチャイズは本部の商品や経営ノウハウを使用して営業する形態のため、業種経験の不足を補えるほどの営業基盤があると評価される可能性があります。

フランチャイズに加盟して開業した場合、本部により画一化された運営を求められることがあります。「業務フロー」「仕入先の選定」など、標準化されたマニュアルを習得することにより開業できる場合は、運営が行える基盤があると評価される可能性があります。

フランチャイズの中には、未経験者のためのサポート制度が整っている場合があります。「1週間ほどの事前研修」「開業後の定期的な相談」など、本部からのサポート制度が整っている場合は、成長できる基盤があると評価される可能性があります。

なお、フランチャイズに加盟して開業する場合、本部への支払いが発生します。「加盟金」「毎月のロイヤリティ」などの費用が発生する可能性があるため、フランチャイズへの加盟を検討するときは、採算が見込める事業かどうかを考慮するようにしましょう。

創業にむけて準備した経過は事業計画書に反映させる

業種経験が不足している人が創業にむけて準備したことは、事業計画書に反映させましょう。事業計画書は金融機関によってフォーマットが異なりますが、事業計画書の記入項目によっては、準備してきたことを反映させられる可能性があります。

【事業計画書の記入例】

項目 記入例
業種 飲食店
創業の目的と動機 食品メーカーに長年勤務するうちに、自身で飲食店を手掛けてみたいと思うようになりました。3年ほど前から開業のために自己資金を貯めていましたが、目標額である300万円に達したため、開業を決意しました。
創業する事業の経験 会社員として勤務しながら、1年前から土日を利用してイタリアンレストランでアルバイトしています。アルバイト先では、「厨房」「ホール業務」「在庫発注」「シフト管理」などを任せてもらっているため、店舗運営の流れは把握しています。
強みやセールスポイント及び競合状況 〇×食品株式会社に15年勤めていました。営業職に従事していたときに培った人脈を活かし、良質な食材を低価格で仕入れられるため、近隣の高級店と同等の新鮮な食材をリーズナブルな価格で提供できる点が強みです。

※東京都信用保証協会「創業計画書」を参考に株式会社SoLaboが作成

たとえば、事業計画書には「創業する事業の経験」を記入する項目があります。「1年前からアルバイトしている」「店舗運営の流れを把握した」などの内容を記入することにより、できる範囲での業種経験を積んだことを伝えられる可能性があります。

また、事業計画書には「強みやセールスポイント及び競合状況」を記入する項目があります。「営業職で培った人脈」「良質な食材を低価格で仕入れられる」などの内容を記入することにより、自身のこれまでのキャリアを強みにしていることを伝えられる可能性があります。

なお、事業計画書の記入例はあくまで一例です。自身が事業の成功のために準備してきたことを事業計画書に反映させる方法はさまざま考えられるため、事業計画書を作成するときは記入項目を活用し、自身の準備してきた経過をアピールすることを検討してみてください。

まとめ

業種経験のない人が創業融資を受けるためのポイントは、創業にむけて準備した経過を伝えることです。事業の成功のために準備してきた経過を伝えることにより、業種経験の不足を補えるほどの評価を金融機関の審査担当者から得られる可能性があります。

事業を成功させるためにとる行動として「自己資金を貯めること」「自身の経験を活かすこと」「できる範囲での経験を積むこと」「フランチャイズの加盟を検討すること」が挙げられるため、業種経験が不足している人は、開業準備のひとつとして行動することを検討してみましょう。

業種経験が不足している人が創業にむけて準備したことは、事業計画書に反映させましょう。事業計画書は金融機関によってフォーマットが異なりますが、事業計画書の記入項目によっては、準備してきたことを反映させられる可能性があります。

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