金融機関のから事業用資金の融資で経営者の方の多くが不安を感じるのは「経営者保証」ではないでしょうか?経営者保証は、会社が金融機関からお金を借りる際に、経営者の方が連帯保証人になることを言います。
金融機関の融資では「無担保・無保証」と記載されている制度もありますが、ここで言う「無担保・無保証」は、不動産などの物資による担保や第三者を保証人とする保証が不要という意味であり、会社の代表者の方の経営者保証は別扱いであることが一般的です。
初めての融資であれば経営者保証にそれほど抵抗はないかもしれません。しかし、事業用資金は1回だけとは限らず、2回目、3回目の融資となればより、経営者保証に対する不安は大きくなります。
近年、国はこの経営者保証に対して1つのガイドラインを策定しました。「経営者保証に関するガイドライン」です。このガイドラインを活用することで経営者保証を付けずに融資を受けることが出来る可能性があります。
今回は、日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度を中心に、経営者保証に関するガイドラインについてご紹介します。
1.日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度とは?
経営者保証免除特例制度は、経営者保証に関するガイドラインに基づき、一定の要件を満たしている経営者の方が日本政策金融公庫から融資を受ける際に、経営者保証を付けることなく融資を受けることが出来るという特例制度です。
この特例は以前からありましたが、2018年から要件の一部が変更となりました。以前は、過去に日本政策金融公庫と取引があることが前提でしたが、変更後は、日本政策金融公庫と取引をしたことが無い方でも経営者保証を付けずに融資を受けることが可能となり、利用しやすくなったと言えます。
特例適用の要件
特例の適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
事業資金を利用する方であって、次のいずれも満たす方(注)
1.税務申告を2期以上実施していること。また、事業資金の融資取引がある場合は、直近の1年間(取引歴が1年未満の場合は、取引がある期間)、返済に遅延がないこと。
2.次の(1)および(2)のいずれも満たすこと。
(1)最近2期の決算期において減価償却前経常利益が連続して赤字でないこと。
- (2)直近の決算期において債務超過でないこと。
- 3.法人から代表者への貸付金・仮払金等がないこと等。
※審査の結果、本制度をご利用いただけない場合もあります。
引用:日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」
上記の適用要件は経営者保証免除特例制度の適用要件です。融資制度によって融資の条件が異なりますので、利用したい融資制度の融資条件も確認するようにしてください。
2.経営者保証免除特例制度のメリットとデメリット
経営者保証免除特例制度のメリット
メリット:融資のマイナス要因を排除することが出来る
事業用融資は高額になることが多いため、経営者保証が付くことが一般的です。しかし、会社に万が一の事があった場合、経営者の方が会社の債務を弁済しなければならず。経営者の方の生活が苦しくなってしまう可能性があります。
経営者保証免除特例制度を利用することで、融資を受けることへのマイナス要因を減らすことが可能となり、新規事業など事業の発展のために融資を受けやすくなります。
経営者保証免除特例制度のデメリット
デメリット:適用されると金利が高くなる
経営者保証免除特例制度の適用を受けると、利率が0.2%(2021年9月8日時点)上乗せされるため、金利が高くなります。また、担保提供については融資申し込み時に有無を選択することが可能です。
3.経営者保証に関するガイドラインも知っておこう!
日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度は「経営者保証に関するガイドライン」に基づいた特例制度です。経営者保証に関するガイドラインについてもご紹介します。
経営者保証に関するガイドラインとは?
経営者保証に関するガイドラインは、中小企業庁と金融庁がバックアップし、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会が事務局となって策定された、経営者保証のない融資や保証債務の整理に関するガイドラインです。経営者保証に関するガイドラインでは主に以下の2点で活用することが出来ます。
経営者保証に関するガイドラインの対象者
経営者保証に関するガイドラインを活用することが出来る人は以下のいずれかを満たしている方が対象となります。
経営者保証に関するガイドラインが企業に求めること
経営者保証に関するガイドラインを活用し、経営者保証のない借入の実現や経営者保証を解除するためには、以下の3つの経営状況が求められます。
1:法人と個人の分離
会社と経営者の資産や経理がきちんと分離され、それぞれが明確となっていることが求められます。
2:財務基盤の強化
財務状況や業績の改善を行うことが求められています。これは、財務状況や業績の改善によって返済能力を高めることで会社の信用力を強化することが目的です。
3:経営の透明性
財務状況等を正確に把握し、資産状況・負債状況、事業計画、業績改善に関する進捗等の情報を必要に応じて金融機関に開示し、きちんと説明を行うことで透明性のある経営を行うことが求められます。
情報開示では、外部専門家(公認会計士や税理士等)による検証結果を合わせて開示できるとより良いとされています。
まとめ
事業用資金の融資は、新規事業など事業拡大に伴う資金調達など、会社の継続・発展に重要な意味を持っています。しかし、経営者保証が必要となると経営者の方にかかる負担も大きくなり、融資に踏み切ることが出来なくなってしまう可能性があります。
そこで、経営者保証に関するガイドラインを策定し、経営者保証のない融資を実行するためのルールが設けられました。
日本政策金融公庫では、このガイドラインを基に「経営者保証免除特例制度」という特例を作り、一定の要件を満たしている場合には代表者保証なしで融資を実行できるようになっています。
事業用の融資を検討されている人で、代表者保証に関する不安がある人は、この特例の適用を受けることが出来るかどうかを含め、融資の専門家に相談することをご検討ください。