IT活用促進資金〔IT資金〕(企業活力強化貸付)

日本政策金融公庫の貸付を受けるには、まず自分の状況に合った融資制度を選ぶことが重要です。

例えるなら、レストランで食事をするときにメニューを選んで、注文するようなイメージです。

このメニューは人や状況によって利用できる融資制度が異なります。

それはちょうど、お子さまランチが小学生以下でないと頼めなかったり、雨が降ったときだけ注文できるスペシャルメニューがあったりするのと似て、利用するときに利用者の属性や状況などの条件を満たす必要があります。

では「IT活用促進資金(企業活力強化貸付)」とは、どんな融資制度なのか?見ていきましょう。

利用条件

情報化を推進したい方が利用できる融資制度です。「IT資金」とも呼ばれます。

この融資制度は、次の条件のいずれかに当てはまれば利用できます。

とにかく情報技術(IT)に関連していれば、この融資制度は利用条件に合うと思っていいでしょう。

パソコンやソフトウェアの購入やレンタルリースといった身近なものから、サーバ管理者の人材育成、ネットワークの管理保守、大きなものでは電子商取引システム導入やIoTを活用した企業改革まで幅広くサポートできる融資制度となっています。

ただし、選択する利用条件によって金利の枠組みが異なってくるため、詳細をよく確認しましょう。

IT活用促進資金(企業活力強化貸付)の利用条件

情報化投資を実施している方で、以下のどれかに該当する方
  1. 情報技術を活用して効果的な企業内の業務改善、または企業内の情報交換などの業務高度化を実施している方
  2. 他の企業や消費者などとの間でネットワーク上の取引や情報の受発信を実施している方
  3. 企業内の業務について情報技術の水準を取引先企業の情報技術の水準に合わせようとする方
  4. 情報技術を活用して、業務方法や業務の内容などについての経営革新を実施しようとしている方
  5. 上記1~4の内容を組み合わせるなどして情報技術を高度に活用している方
  6. ケーブルテレビ事業者の方(1)2K放送のネットワーク強靭化を図る方(設備資金のみ利用可)(2)4K放送に対応する方(設備資金のみ利用可)
  7. 軽減対象課税資産の譲渡等を行っている方(設備資金のみ利用可能)
  8. IoTを活用して生産性の向上を目指している方で、IoTの導入時に専門家のアドバイスや指導を受けいる方(設備資金のみ利用可能)

資金の使途

この融資制度は、次のように資金の使い道によって、条件が大きく2つに分かれています。

資金の使途 運転資金 設備資金
融資限度額 4,800万円 7,200万円
返済期間

(据置期間)

7年以内

(2年以内)

20年以内

(2年以内)

利率 ①利用条件1〜5に該当する方で、【対象のIT設備】を導入するために必要な運転資金[基準利率]、[特利A]、[特利B]、[特利C]

 

【対象のIT設備】

(ア) コンピュータ(ソフトウエアを含む)

(イ) 周辺装置(モデムなどの通信装置など)

(ウ) 端末装置(多機能情報端末など)

(エ) 被制御設備(高度数値制御加工装置(CNC)や自動搬送装置など)

(オ) 関連設備(LANケーブルや電源設備など)

(カ) 関連建物・構築物(上記装置および設備の導入に併せてその取得に必要不可欠な建物・構築物およびそれらの設置に必要不可欠な土地)

 

※その他、返済期間または担保の有無によって異なる

①利用条件1〜5に該当する方で、【対象のIT設備】を取得するために必要な設備資金[基準利率]、[特利A]、[特利B]、[特利C]

②利用条件6に該当する方の設備資金[基準利率]、[特利A]、[特利B]、[特利C]

③利用条件7に該当する方で、軽減税率対象課税事業等にかかる設備と捨て【対象のIT設備】

のア〜ウまたはオを取得するために必要な設備資金[基準利率]、[特利A]、[特利B]、[特利C]

④利用条件8に該当する方の設備資金(土地取得金を除く)[基準利率]、[特利A]、[特利B]、[特利C]

 

※その他、返済期間または担保の有無によって異なる

担保・保証人 要相談

*日本政策金融公庫の公開情報「国民生活事業」の融資制度の概要を参考に2018年11月に作成

IT活用促進資金(企業活力強化貸付)で利用できる資金の使いみちは2つ、「運転資金」と「設備資金」があります。

言葉の定義を確認しておきましょう。

借りた時と異なる使いみちで資金を流用すると、資金使途違反となり、一括返済を求められる他、日本政策金融公庫からの借り入れは二度とできなくなりますので、注意しましょう。

なお、IT設備投資においては、機材のレンタル費用やリース費用、IT人材の教育費用、運営保守の委託などは「運転資金」、IT資産を保有するような設備導入費は「設備資金」の扱いになるケースが多いようです。

「運転資金」は、事業経営に必要な資金のことを指します。

「運転」というと、機械や自動車を動かすイメージが強いかもしれませんが、組織や団体を動かすことにも使われます。

「ランニングコスト」とも呼ばれます。

事業をスムーズに回すために必要なお金で、具体的には人件費や仕入れ費用はもちろん、文房具や印刷用紙代などの雑費も、運転資金に含まれます。

運転資金は、次の式で算出できます。

運転資金=売上債権+棚卸資産−買入債務

ざっくり身近な言葉で表現すると、次のようになります。

運転資金=売上+在庫-仕入れ

算出式を見てわかる通り、売上が黒字であっても、運転資金が充分とは限りません。

例えば、月に100万円の仕入れをして、売上が150万円の事業を経営しているとします。

会計上は50万円の黒字です。

しかし、通常、現金払いを徹底でもしない限り、仕入れの支払い時期と、売上が懐に入ってくる時期が同じになることはありません。

仕入れの支払いは当月、売上金の回収は翌月という事業サイクルの場合、50万円あっても次の仕入れの代金としては不足で商売が成立しません。

仕入れをして、売り上げて、またその次の仕入れをして、と事業を回していくのに必要なこのお金が運転資金に当たります。

「設備資金」は、設備に必要な資金のことを指します。

設備とは、建物、車、機械設備などの、長期に渡って利用し、事業基盤(インフラ)となる有形固定資産のことです。

事業拡大で多額の初期投資が必要になった場合、その多くは設備資金として扱われるため「イニシャルコスト」と同義です。

設備資金の融資は金額が大きい上、雑費を含む運転資金よりは使いみちの是非を判断しやすいため、追跡調査されることが多々あります。

設備資金の利用時はできるだけ領収書などを保管し、後からいつでも証明できるようにしておくことも重要です。

融資限度額

融資限度額は「条件を満たせば、この額まで融資できますよ」という日本政策公庫の設定金額を指します。

あくまで最大の金額なので「運転資金だから4,800万円も貸してもらえる!」という勘違いはしないようにしましょう。

当然、状況によって融資希望額が下回ることもあります。

IT活用促進資金(企業活力強化貸付)の場合、運転資金は4,800万円、設備資金は7,200万円の融資限度額が設定されています。

返済期間(据置期間)

返済期間は「日本政策金融公庫が、お金を返し終わるのを待ってくれる期間」のことで、据置期間」は「日本政策金融公庫が、利子の支払いだけで、本格的に返済を始めるのを待ってくれる期間」のことを指します。

返済期間の中に据置期間が含まれるので、注意が必要です。例えば、返済期間が3年で、据置期間が1年だった場合、最初の1年は利子だけ支払って、後の2年で返済することになります。

融資を受けた後、据置期間を設定する、といったことはできないので、それも注意しましょう。

具体的な年数は、日本政策金融公庫の担当者との融資面談を通して、利子を決める「利率」とセットで決まります。

IT活用促進資金(企業活力強化貸付)では、運転資金は7年以内、設備資金20年以内の返済期間を設定されます。

据置期間は、運転資金も設備資金も2年以内を設定されます。

これらの年数はどれも最大の期間を示しているので、これより短くなる想定をしておくと安全です。

利率

融資を受けたときに融資金に上乗せして支払う利子、金利を算出する率のことを「利率」と呼びます。

なお、日本政策金融公庫の場合、年間で算出する年利です。

IT活用促進資金(企業活力強化貸付)では、情報化の重要度、社会や事業への影響度によって、利率が大きく4パターンに分かれます。

この融資制度では、使いみちが運転資金であろうが設備資金であろうが、利率の選定には関係しません。

(1)基準利率

基準利率のケースです。

使いみちが一般的な情報化推進に当たるものであれば、日本政策金融公庫が設定する「基準利率」と呼ばれる一般的な利率が採用されます。

イメージとしては、オフィスで事務作業に使っている古くなったパソコンを全社で新しくする、といったものでしょう。

一般的には、もしパソコンが壊れても、事業の今後を左右するほどには影響するものではありません。

この場合、利率が変わる要素は「担保」と「保証人」です。具体的な数字は、日本政策金融公庫の担当者との融資面談を通して、返済期間とセットで決まります。

基準利率
担保あり・保証人あり 1.16~2.35(年利%)
担保なし・保証人あり 2.06~2.65(年利%)

 

(2)特利A

特利Aのケースです。

使いみちが、緊急性や唯一性はそれほど高くないものの、重要度が高い情報化推進については、基準利率よりも低い利率「特利」の「特利A」という利率が採用される可能性が高いです。

イメージとしては、情報セキュリティを保つために長期的に計画を立ててIT関連人材を育成・教育する場合や、事務処理などの他社のシステムやオンラインサービスでも代替可能な業務のIT投資をする場合などが考えられます。

特利A
担保あり・保証人あり 0.76~1.95(年利%)
担保なし・保証人あり 1.66~2.25(年利%)

 

(3)特利B

特利Bのケースです。

使いみちが、事業を左右するような唯一性のある情報化推進については、特利Aよりも更に低金利の「特利B」が採用される可能性が高いです。

イメージとしては、その企業の根幹になるような基幹システム・サーバなどのIT設備取得や導入、更新などのIT投資が考えられます。

特利B
担保あり・保証人あり 0.51~1.70(年利%)
担保なし・保証人あり 1.41~2.00(年利%)

(4)特利C

特利Cのケースです。

使いみちが、一企業だけにとどまらず、社会への影響が大きい情報化推進については、更に低金利の「特利C」という利率が採用される可能性が高いです。

イメージとしては、銀行や電気、交通、インターネットなど社会基盤に関連するシステムやサービスのIT設備取得や導入、更新などのIT投資が考えられます。

今は、複合的なシステムやサービスが珍しくありません。

一つのシステムに不備があって使えなくなると、他のサービスに影響し、ひいては消費者の生活に影響し、社会的混乱を招く可能性は大いにあります。

特利C
担保あり・保証人あり 0.30~1.45(年利%)
担保なし・保証人あり 116~1.75(年利%)

2018年11月時点での金利情報です。最新の金利情報は、日本政策金融公庫のウェブサイトでご確認ください。

担保・保証人

「担保」はお金を返せなかったときに没収される財産で、「保証人」は返せなかったときに支払い義務が生じる連帯保証人のことです。

それらを用意することで確実に返済する意思を示すことになり、利息が安くなります。

IT活用促進資金(企業活力強化貸付)の枠組みで融資に臨む場合、特利の他は「保証人あり」で担保の有無が選べる部分だと言えるでしょう。

まとめ

IT活用促進資金(企業活力強化貸付)は、中小企業の活動力を強化するための貸付の枠組みで、とにかく情報化を推進したいという意思が強く出ている融資制度です。

情報化は、扱える情報が増えれば増えるほど、情報化のメリットが強くなります。

昨今、よく見るキーワードの「ビッグデータ」や「AI(人工知能)」は、膨大な情報・データの中から法則を見つけたり、解決策を見つけ出したりできる可能性から注目されています。

企業がグローバル化するためには、まず情報化が推進されていることが必要条件になりつつあるのも事実です。だからこそ中小企業にも情報化のサポートをしよう!というのが、この融資制度の狙いと言えるでしょう。

利用者の業種や属性を問わない、融資制度です。

特利は日本政策金融公庫が融資対象の情報化をどう判断するかによるところが大きいですが、ITに関する融資を希望するなら、まずは検討してみてもよい融資制度と言えるでしょう。

「IT活用促進資金(企業活力強化貸付)」を利用する前に一度、他にも条件のあった融資制度がないか、確認するようにしましょう。

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