銀行融資において事業資金を借り入れる際、保証人を求められることがあります。保証人がどのようなものか分からない場合や、保証人を依頼できそうな知人がいない場合など、銀行融資を受けようとする際に不安に感じることもあるでしょう。
当記事では、銀行融資における保証人について解説します。「保証人とは何か」や「保証人なしでも銀行融資を受けられるのか」など、銀行融資を受ける際の保証人について知りたい人は参考にしてみてください。
保証人とは融資が返済不可となった場合に債務者に代わって返済義務を負う人のこと
銀行融資における保証人とは、債務者が何らかの事情によって返済不可となった場合に、代わりに借入金の返済義務を負う人のことです。銀行は融資を実行する際、貸し倒れのリスクに備えて融資の利用者に対し保証人を求めることがあります。
保証人は、銀行融資において利用者の信用力を補完する役割を担います。高額な借入を希望する場合や事業実績が少ない場合など、利用者の信用力だけでは不足すると判断された際には、保証人を立てることが融資実行の条件となる可能性があります。
また、信用力が十分にあると判断されれば保証人なしでも銀行融資を受けることは可能ですが、保証人を立てることでより好条件での融資につながる場合もあります。保証人によって利用者の信用力が補完され、保証人なしの場合と比較して低金利や高額の融資を受けられる可能性が高まります。
ただし、保証人を立てる際には審査があります。保証人となる人の収入や信用情報に基づき十分な返済能力があるかどうかを審査されるため、収入が安定していない人や過去に返済遅延の履歴がある人などは保証人として認められない可能性があることに留意しておきましょう。
保証人と連帯保証人の違い
銀行融資における保証人には、保証契約の内容によって「保証人」と「連帯保証人」の2種類があります。銀行融資の利用を検討している人は、保証人と連帯保証人にはどのような違いがあるのかを押さえておきましょう。
【保証人と連帯保証人の違い】
項目 | 詳細 |
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保証人 | ・債務者が返済不能となった場合に返済を肩代わりする責任を負う ・催告の抗弁権および検索の抗弁権が認められている |
連帯保証人 | ・債務者と同等の返済責任を負う ・催告の抗弁権および検索の抗弁権が認められていない |
保証人は、債務者が返済不能となった場合にのみ責任を負います。主債務者の返済が滞り銀行からの請求があった場合に、まずは主債務者への請求を求める「催告の抗弁権」や、主債務者に弁済可能な資産があることを主張できる「検索の抗弁権」が認められています。
連帯保証人は、債務者と同等の責任を負います。銀行から債務者よりも先に債務履行を求められることがあるほか、請求の拒否や抗弁権の行使は認められておらず、銀行からの請求があった場合には速やかに支払いに応じなくてはなりません。
銀行の事業性融資における保証人契約は、原則として「連帯保証人」が求められます。銀行融資において保証人契約を結ぶ場合は、連帯保証人として債務者と同等の返済責任を負うこととなり、保証人よりも重い責任がともなう点に留意しておきましょう。
経営者保証と第三者保証の違い
銀行融資における保証人には、誰を保証人とするかによって「経営者保証」と「第三者保証」の2種類があります。銀行融資の利用を検討している人は、経営者保証と第三者保証にはどのような違いがあるのかを押さえておきましょう。
【経営者保証と第三者保証の違い】
項目 | 概要 |
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経営者保証 | ・経営者本人が連帯保証人となる ・事業者の状況や融資の内容などから銀行にとってリスクが高いと判断される場合に求められることがある |
第三者保証 | ・経営者以外の第三者が連帯保証人となる ・経営者保証のみでは信用力が不足する場合に求められることがあるが、近年では非常に稀 |
経営者保証は、経営者本人が連帯保証人となり、事業の債務について個人として連帯保証の責任を負います。創業後まもなく信用力が不足している場合や、高額な融資を希望している場合など、銀行にとってリスクが高いと判断される場合には経営者保証が求められることがあります。
第三者保証は、経営者本人以外の第三者による連帯保証です。経営者の親族や友人など、返済能力のある第三者を保証人とすることで銀行の貸し倒れリスクを低減するものであり、かつては銀行融資の利用において第三者保証人を求められることが一般的でした。
ただし、金融庁による「主要行等向けの総合的な監督指針」の改定により、金融機関に対して経営者以外の第三者保証を求めないことを原則とする融資慣行の確立が求められています。近年の銀行融資においては第三者保証人が不要とされる傾向にあり、経営者保証のみや保証人なしでの融資が主流となっています。
保証人なしで銀行融資を受けるためのポイント
銀行融資の利用において、以前は原則として保証人が求められていましたが、近年では保証人よりも事業そのものが重視される傾向にあります。保証人なしで銀行融資を利用するためには、以下のポイントを押さえておきましょう。
【保証人なしで銀行融資を利用するためのポイント】
- 法人と経営者個人の資金を明確に区別する
- 事業の収益や資産による返済可能性を示す
- 銀行に対して適時適切に財務情報を開示する
- 担保となる資産を提供する
全国銀行協会と日本商工会議所によって策定された「経営者保証に関するガイドライン」によると、これらの条件の全てまたは一部を満たすことにより、経営者保証なしで融資を受けられる可能性があることが示されています。
また、すでに提供している保証人契約の見直しや、経営者保証の解除を行える可能性もあります。これから新たに融資を受ける人だけではなく、現在借り入れている融資の保証人を外したいと考えている場合も、条件を確認した上で借入先の銀行へ相談してみてください。
法人と経営者個人の資金を明確に区別する
保証人なしで銀行融資を受けるためのポイントとして「法人と経営者個人の資金を明確に区別すること」が挙げられます。法人と経営者個人の資金の区別が曖昧な状態だと、銀行は事業者の経営実態を正確に把握できず、融資の判断を適切に行うことが難しくなるためです。
法人と経営者個人の資金を明確に区別するためには、法人の口座と個人の口座を分けて資金を管理することが前提となります。経営者の私的な支出に事業資金を充てることだけではなく、法人としての支出に経営者個人の資金を充てることも避けなければなりません。
また、日々の会計処理においても、法人としての経費と経営者個人の経費を厳密に分け、帳簿に明確に記録することが求められます。目に見える形で適切に資金管理を行うことが、銀行からの信頼を得る上で不可欠な要素となります。
銀行融資の審査において、銀行は事業としての返済能力を重視しています。法人と経営者個人の資金の区別が曖昧だと、銀行は事業者の返済能力を正確に評価できず保証人なしでの融資が認められない可能性があるため、会社のお金と個人のお金が混同していないことを銀行に示しましょう。
なお、個人事業主の場合も、事業用の資金と私的な資金を分けておくことが望ましいです。法人を設立していなくても、事業用の銀行口座を別途開設し、事業における売上や経費は必ず事業用の口座を通じて管理しましょう。
事業の収益や資産による返済可能性を示す
保証人なしで銀行融資を受けるためのポイントとして「事業の収益や資産による返済可能性を示すこと」が挙げられます。銀行の融資判断においては事業者の返済能力が重視されることから、保証人なしで融資を受けようとする場合は、事業のみの収益や資産によって十分な信用力を示す必要があるためです。
事業の収益を示すためには、損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書などの財務諸表を用いて具体的な実績を提示します。財務諸表による過去の実績に加えて、今後の売り上げ予測や資金繰り計画などを根拠とともに示した事業計画書を作成することも有効です。
また、事業者が保有する資産を証明するためには、固定資産台帳や不動産登記簿謄本など資産の状況が分かる書類を提示します。土地や建物といった不動産だけではなく売掛金や在庫なども資産として認められる可能性があるため、売掛金明細書や棚卸資産明細書などを用意することも有効です。
保証人なしで融資を受けるためには、事業の収益と資産の状況から融資の返済財源が確保できることを 銀行に理解してもらう必要があります。具体的な数字と根拠に基づき事業者の返済能力を示し、銀行からの信頼を獲得することができれば、保証人なしでの融資実行の可能性が高まるでしょう。
銀行に対して適時適切に財務情報を開示する
保証人なしで銀行融資を受けるためのポイントとして「銀行に対して適時適切に財務情報を開示すること」が挙げられます。保証人なしで融資を受けようとする場合、銀行に対する正確かつ丁寧な情報開示によって、経営の透明性を確保することが求められます。
事業者は銀行からの要請があった場合に、事業における資産や負債の状況のほか、事業計画や業績見通しなどの情報を銀行に対して開示する必要があります。情報開示後に内容の変更が生じた場合には、事業者側から自発的に報告することが求められます。
また、情報開示の際には外部専門家による検証を行い、検証結果と合わせて開示することが望ましいとされています。資産負債の状況や事業計画の進捗状況については、公認会計士や税理士など専門家の検証を受けることにより情報の信頼性が向上し、担保なしによる融資条件の補完につながる可能性があります。
保証人なしで融資を受けるためには、銀行に対して積極的に財務情報を開示していくことが求められます。経営の透明性が確保されることにより、銀行は事業者の返済能力を適切に評価できるようになるため、保証人に代わる信頼の基盤を築くことにつながるでしょう。
物的担保を提供する
保証人なしで銀行融資を受けるためのポイントとして「物的担保を提供すること」が挙げられます。保証人が「人的担保」と呼ばれるのに対して、不動産や流動資産など事業者が保有する資産は「物的担保」と呼ばれ、保証人と同様に債務者の信用力を補完する役割を担います。
物的担保には、事業者が所有する土地や建物といった不動産のほか、売掛債権や在庫なども認められる場合があります。銀行による担保の審査において、資産に十分な価値があり、万が一の際に資金を回収できると判断されれば担保として認められ、保証人なしでの融資の実行につながる可能性があります。
ただし、物的担保を提供する際にはその資産を失うリスクも考慮しなければなりません。店舗や機械設備などを物的担保として提供し、融資の返済が不能となった場合には事業継続が困難となるリスクがあるため、担保設定する資産は慎重に検討する必要があります。
なお、物的担保については「なしでも大丈夫?銀行融資における担保を解説」の記事で詳しく解説しています。銀行融資の利用において、保証人と合わせて物的担保の概要や必要性も確認しておきたい人は参考にしてみてください。
銀行融資の保証人に関するQ&A
銀行融資の保証人に関する内容をQ&A方式にまとめました。保証人について気になることがある人は、あわせて確認してみてください。
【銀行融資の保証人に関するQ&A】
質問 | 回答 |
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保証人なしでも銀行融資を受けられますか? | 返済能力が認められれば保証人なしでも銀行融資を受けられる可能性はあります。また、銀行によっては保証人を不要とするビジネスローンが提供されている場合もあります |
経営者保証ガイドラインとは何ですか? | 経営者保証に過度に依存しない融資慣行の確立を目指すために策定されたルールのことです。法律ではないものの、経済産業省や金融庁等によって普及が推進されています |
保証人には誰を設定してもいいですか? | 審査によって保証人となる人の返済能力が認められる必要があります。未成年者や収入が不安定な人、信用情報に問題がある人などは保証人として認められない可能性があります |
現在設定している保証人を外すことはできますか? | 「経営者保証に関するガイドライン」の条件を満たすことにより保証人を外せる可能性があります。まずは融資を受けている銀行へ相談をしてみてください |
信用保証協会を利用すれば保証人なしで銀行融資を受けられますか? | 信用保証協会を利用する場合でも経営者保証を求められる可能性があります。ただし、個人事業主の場合は原則として経営者保証も不要です |
保証人なしの銀行融資を返済できなくなった場合はどうなりますか? | 経営者個人の資産が直ちに差し押さえられることはありませんが、遅延損害金の発生や法人の破産につながる恐れがあります。返済に不安を感じたら早めに借入先の銀行へ相談しましょう |
保証人は銀行融資の利用において事業者の信用力を補完する役割がありますが、必ずしも保証人がいなければ融資を利用できないわけではありません。近年では保証人に過度に依存しない方針への転換により、保証人なしでも銀行融資を受けられる可能性が高まっています。
なお、当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)では、融資サポートを実施しています。8,000件以上の融資サポートの実績から回答するため、保証人の設定に不安がある人や保証人なしで銀行融資を受けたいと考えている人は株式会社SoLabo(ソラボ)に相談することを検討してみてください。
まとめ
銀行融資における保証人とは、債務者が何らかの事情によって返済不可となった場合に、代わりに借入金の返済義務を負う人のことです。銀行は融資を実行する際、貸し倒れのリスクに備えて融資の利用者に対し保証人を求めることがあります。
事業者の信用力や借入希望額によっては保証人を求められることがありますが、近年では保証人の在り方が見直され、保証人なしでも銀行融資を受けられる可能性が高まっています。特に、経営者以外を保証人とする第三者保証については、原則として求めないこととする融資慣行の確立が促されています。
保証人なしで銀行融資を受けるためのポイントには「法人と経営者個人の資金を明確に区別すること」「事業の収益や資産による返済可能性を示すこと」「銀行に対して適時適切に財務情報を開示すること」「担保となる資産を提供すること」が挙げられます。保証人なしで銀行融資を受けたい場合は経営者保証ガイドラインを確認し、これらの条件を満たせるかどうか検討してみてください。