金融機関から融資を受ける際、2つ以上の金融機関から融資を受ける協調融資という方法があります。1つの銀行から希望金額を借りるのは難しくとも、2つ以上の銀行から融資を受けることにより、希望金額を借りられる可能性があります。
当記事では、協調融資について解説していきます。2つ以上の金融機関から融資を受けたい人や協調融資を検討中の人は、ぜひ参考にしてみてください。
1.協調融資とはなにか?
協調融資とは、ひとつの企業に対し、複数の金融機関が協力して融資を行うことです。金融機関から融資を受ける際、ひとつの金融機関から全額を借りられない場合に協調融資を利用します。
具体的には、2行以上の銀行が融資団を結成し、主取引銀行といった金融機関が幹事となり、貸出金額・貸出分担割合・利用条件などを協定し、実際の貸付けは個々の銀行が行います。借り手は希望金額を借りられるのに対し、貸し手は貸倒れが生じたときのリスクヘッジになるため、協調融資は双方の視点から考えられた制度となります。
なお、日本政策金融公庫では、複数の金融機関と業務連携・協力にかかる覚書を締結し、全国各地の金融機関と協調融資できるようにしています。
出典:日本政策金融公庫ホームページより
日本政策金融公庫は民間の金融機関を補完する目的があるため、銀行や信用金庫などの金融機関と連携しています。協調融資を検討中の人は、選択肢のひとつとして日本政策金融公庫を検討してみましょう。
なお協調融資や日本政策金融公庫の融資を受けたい人は無料診断をお試しください。希望金額や事業内容から融資が受けられるか、いくら借りられそうかを診断いたします。
協調融資のメリット
協調融資には、いくつかのメリットがあります。協調融資を検討中の人は、事前にメリットを確認しておきましょう。
希望金額を借りられる可能性がある
1つの金融機関から希望金額の全額を借りるのは難しくとも、2つの金融機関であれば、希望金額の全額を借りられる可能性があります。金融機関としてもリスクを分散できるため、協調融資は借り手と貸し手の双方にメリットがあります。
将来的に資金調達の幅が広がる
複数の金融機関と付き合うことにより、将来的に資金調達の幅が広がる可能性があります。金融機関とのつながりがあれば、事業拡大に伴い、再度融資を希望するときに話が進めやすいといったメリットがあります。
協調融資のデメリット
協調融資には、いくつかのデメリットがあります。協調融資を検討中の人は、事前にデメリットを確認しておきましょう。
時間がかかる
協調融資による借入方法は、時間がかかる傾向があります。早めの融資を希望する人にとっては、時間がかかる点はデメリットになる可能性があります。
たとえば、日本政策金融公庫からのみ融資を受ける場合には、1か月~1か月半程度の期間となる傾向があります。それに対し、協調融資の場合には、2か月~3か月程度の期間となる傾向があります。
時間がかかる理由は、ひとつの金融機関の要件に加え、その他の金融機関の要件も加わるからです。具体的には、日本政策金融公庫の要件に加え、別の金融機関からも融資を受けることが確定すれば、その金融機関の要件も加わるといった次第です。
なお、民間の金融機関では、信用保証協会付きの対応になる傾向があります。信用保証協会の面談があるため、融資を受けるまでの期間は2か月~3か月程度なる可能性があります。
また、日本政策金融公庫を例にした場合、信用金庫や地方銀行など、民間の金融機関の結果が出なければ、日本政策金融公庫からも融資を受けることはできません。協調融資を検討中の人は、融資を受けるまでの期間を考慮しておきましょう。
どちらの金融機関からも融資を受けられない場合がある
協調融資は2つ以上の金融機関から融資を受けることになりますが、場合によってはどちらの金融機関からも融資を受けられない可能性があります。片方の金融機関が了承しても、もう片方の金融機関が了承しなければ、融資を受けられない場合があるからです。
たとえば、民間の金融機関よりも日本政策金融公庫のほうが先に結果が出た場合、最終決定は民間の金融機関を待ってからになります。その際、日本政策金融公庫は了承しても民間の金融機関が了承しなければ、結果として日本政策金融公庫も融資することはできなくなります。
協調融資を検討中の人は、すべての金融機関から了承を得られなければ、融資を受けれられない点を覚えておきましょう。
手間がかかる
協調融資は2つ以上の金融機関から融資を受けることになるため、その分手間と時間がかかる点はデメリットになる可能性があります。状況によっては、それぞれの金融機関を別々に対応することも考えられます。
たとえば、日本政策金融公庫の協調融資を利用する場合、日本政策金融公庫と信用保証協会のそれぞれの担当者と面談を行う必要があります。また、場合によっては、日本政策金融公庫と民間の金融機関に提出する書類がそれぞれ異なる可能性があります。
なお、協調融資のメリットとデメリットに関しては、以下の動画でも解説しているため、検討中の人はぜひ参考にしてみてください。
協調融資の事例
今回は日本政策金融公庫と民間の金融機関の2つを利用し、協調融資を受けた人の事例を紹介します。協調融資を検討中の人は、ぜひ参考にしてみてください。
【事例①】
接骨院を開業したAさんは、1,400万円の融資を希望していました。創業当初だったこともあり、ひとつの銀行から全額を借りることは難しく、協調融資を検討しました。
3か月程度の時間がかかりましたが、協調融資を利用し、「横浜信用金庫」と「日本政策金融公庫」から1,400万円の融資を受けられました。
【事例②】
開業2年目のBさんは1,200万円の融資を希望していましたが、横浜銀行からの借入額が4,000万円程度ありました。そのため、借りられるのは800万円程度と言われ、協調融資を検討しました。
協調融資を利用し、「川崎信用金庫」と「日本政策金融公庫」から1,200万円の融資を受けられました。
協調融資の注意点
協調融資を利用する際には、いくつかの注意点があります。
たとえば、協調融資は2つ以上の金融機関から融資を受けることになるため、その旨を考慮した事業計画が必要です。また、事業計画書は金融機関側にも提出することになるため、協調融資を利用する前に準備しておく必要があります。
協調融資を検討中の人は、2つ以上の金融機関から融資を受けることを考慮した事業計画を立て、そのうえで金融機関側に提出する事業計画書を作成しましょう。
まとめ
今回は協調融資について説明してきました。ひとつの金融機関から全額を借りるのは難しくとも、協調融資を利用すれば、希望金額を借りられる可能性があります。
ただし、2つ以上の金融機関から融資を受けることになるため、その点を考慮した事業計画を立てる必要があります。返済不能に陥らないためにも、金融機関から融資を受ける際は入念に事業計画を立てるようにしましょう。