経営力向上計画の申請は、流れを理解できれば決して難しいものではありません。
しかし、提出先が業種や都道府県によって異なったり、見慣れない書類や言葉があったりするとどうしても難しく感じてしまうこともあります。
事業者としては経営力向上計画を活用し、自社の生産性向上を図るとともに優遇措置を受けて事業拡大に繋げたいものです。
そこで今回の記事では、経営力向上計画の申請の流れと提出先について解説します。
1.経営力向上計画の申請の流れ
(1)経営力向上計画の申請書と手引きを確認
申請書様式は申請書と別紙をあわせて4ページに収まります。
企業の概要、現状認識、経営力向上の目標および経営の向上の程度を示す指標、経営力向上の内容などを記載してください。
申請書様式、手引きは中小企業庁のホームページで確認できます。
(2)自社の業種と指針を確認
まず、自社の事業分野が何に該当するのかを政府の下記のサイトから確認しましょう。
事業を管轄する大臣は事業分野ごとに指針を策定しています。
認定を受けるには、この指針を踏まえた経営力向上計画を作成する必要がありますので、自社の事業に該当する指針を確認しましょう。
事業分野ごとに大臣が策定した指針は、こちらに掲載されています。
(3)経営力向上計画を作成
経営力向上計画策定の際、中小企業庁が公表している手引きや業種別の記載例を参考にできます。
下記のサイトに業種別の記載例がありますので自社の業種の例を参考にしましょう。
(4)提出書類と提出先
①基本的な提出書類
基本的な提出書類は、下記のa~dですが、優遇措置を受ける場合にはその内容によって異なります。
a.申請書(原本)
b.申請書(写し) ※ 都道府県に提出する場合に限ります。
c.チェックシート
d.返信用封筒(A4の認定書を折らずに返送可能なもの。返送用の宛先を記載し、切手
(申請書類と同程度の重量のものが送付可能な金額)を貼付して下さい。)
②設備投資について税制措置を受ける場合の提出書類
設備投資について税制措置を受ける場合は2パターンあります。
はじめに、経営強化税制A類型の税制措置を受ける場合、a~dに加え下記の書類が必要です。
e.工業会等による証明書(写し)
次に、経営強化税制B類型・C類型の税制措置を受ける場合、a~dに加え以下の書類が必要です。
f.投資計画の確認申請書(写し)
g.経済産業局の確認書(写し)
※発電設備等の取得等をして税制措置を適用する場合は、「発電設備等の概要等に関する報告書」の添付が必要です。
③事業承継等について支援措置を受ける場合の提出書類
事業承継等について支援措置を受ける場合は、a~dに加え以下の書類が必要です。
h.事業承継等に係る契約書(又はそのドラフト)
i.事業承継等に係る誓約書
j.被承継者が特定許認可等を受けていることを証する書面 (許認可承継の特例を受ける場合に限ります)
④提出先
提出先に関しては、事業者が経営力を向上させたい事業分野の関係省庁へ提出していただきます。
※この後「2. 提出先は関係省庁」で詳しく書いてあります。
(5)提出手段
提出手段は、紙申請と電子申請があり、いずれかの方法で申請をします。
紙申請は、各窓口へ郵送します。
一方、電子申請は、事業分野で確認した窓口が経済産業局の場合は、政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)から電子申請が可能です。また、事業分野で確認した窓口が経済産業局及び一部の省庁が窓口の場合は、経営力向上計画申請プラットフォームから電子申請が可能です。
なお、電子申請を行う際には政府が発行する「GビズID」を事前に取得する必要があり、アカウント作成のためには印鑑証明書などが必要となりますので事前にご確認ください。
こちらから「GビズID」取得手続きができます。
2.経営力向上計画の提出先は関係省庁
(1)通常の提出先
提出先は、自社の事業分野によって異なります。
例として、建設業であれば国土交通省、製造業であれば経済産業省、酒類小売業であれば国税庁、などが管轄となります。
ただし、関係省庁へ直接提出するのではなく、東京都の建設業の企業であれば、関東地方整備局へ提出することになる等、都道府県によっても異なります。
各提出先については下記の経営力向上計画のホームページの「事業分野と提出先」から確認できます。
調べてみたものの提出先が不明な場合は、下記に問い合わせると丁寧に教えてくれます。
経営力向上計画相談窓口(中小企業庁 事業環境部 企画課)
電話:03-3501-1957(平日9:30-12:00、13:00-17:00) |
(2)複数の分野の事業を行っている場合の提出先
複数の分野の事業を行っている場合は、経営力を向上させたい事業分野の担当省庁に提出します。
また、経営力を向上させたい事業分野が複数ある場合には、申請書に複数の分野を並記し、申請書はいずれかの担当省庁に提出すれば良いとされています。
(3)事業承継等を含む場合の提出先
例えば、東北と九州のように承継される側の企業と承継する側の企業の所在地が離れている場合には、承継する側の事業者、つまり、他から取得した経営資源を活用して生産性向上を行う事業者が、経営力向上計画の策定を行い、計画認定を受けます。
経営力向上計画の提出先は承継する側の企業を管轄する行政機関です。
(4)不動産取得税の特例措置を受ける場合の提出先
例外として、不動産取得税の特例措置を受ける場合に関しては、事業分野によらず、都道府県が提出先となりますので注意が必要です。
3.他の類似した計画書の申請との相違点
経営力向上計画と似ているものに、経営革新計画と先端設備等導入計画がありますが、それぞれ提出先が異なります。
経営革新計画…都道府県
先端設備等導入計画…市区町村
となっており、間違えやすいので注意してください。
4.経営力向上計画の申請時期
経営力向上計画で税制措置を受ける場合の申請するタイミングについてですが、原則認定されてから設備を取得しなければなりません。しかし、設備取得後60日以内に申請をすれば良いという例外規定があります。
また、経営力向上計画の認定は事業年度末までに取得していなければなりません。
例)3月決算の法人であれば、3月末まで
個人事業主の場合は、12月末まで |
なお、中小企業庁のホームページには次のように記載されています。
設備を取得した後に経営力向上計画を申請する場合には、設備取得日から60日以内に経営力向上計画が受理される必要があります。
制度の適用を年度単位で見ることから、遅くとも当該設備を取得し事業の用に供した年度(各企業の事業年度)内に認定を受ける必要があります(当該事業年度を超えて認定を受けた場合、税制の適用を受けることはできませんのでご注意ください)
引用:中小企業庁ホームページ
以上のことから、期末近くの設備投資については、念入りに準備をしておかないと、税制措置の適用漏れを起こす恐れがありますので注意しましょう。
5.経営力向上計画の申請から認定までの期間
通常、申請書に不備がなければ、30日(計画に記載された事業分野が複数の省庁の所管にまたがる場合は45日)で認定が下ります。
しかし、申請書に記載漏れや間違いがある場合、各事業所からの問い合わせや申請書の差戻しが発生し、手続きに時間がかかってしまうケースもあります。
また、e-Govの電子申請については、申請書に不備がなく、かつ特定許認可の承継の特例の適用もない場合には、受理から約25日以内(複数の省庁の所管にまたがる場合は40日以内)に認定されます。
実際に当社でお客様の経営力向上計画を提出したときは、ピッタリ30日かかりました。
まとめ
経営力向上計画の申請は初めて見ると難しそうに感じるかもしれませんが、順を追って準備をすれば決して難しいものではありません。
しかし、自社の事業分野がどれに該当するのか、その事業がどの関係省庁が管轄しているのかをしっかり確認できていないと、計画の作り方や提出先が異なりますので注意が必要となります。
また、経営力向上計画の優遇措置を受ける場合、申請時期に期限があったり、認定されるまでに時間がかかることから、時間に余裕を持って申請準備を行うことが重要です。