運転資金や設備資金など、事業資金を工面したい人の中には、資金調達することを検討している人もいますよね。その際、資金調達するときに費用がかかるのかどうか分からず、資金調達におけるコストが知りたい人もいるでしょう。
当記事では、資金調達におけるコストを解説します。コストの計算方法や費用負担の軽減策も解説するため、資金調達するときに費用がかかるのかどうか分からず、資金調達におけるコストが知りたい人は参考にしてみてください。
資金調達におけるコストとは事業者にかかる費用負担のこと
資金調達におけるコストとは、事業者にかかる費用負担のことです。資金調達する場合は費用負担が発生する可能性があるため、資金調達におけるコストが知りたい人はその前提を踏まえつつ、まずは資金調達におけるコストを確認してみましょう。
【資金調達におけるコスト】
- 資金調達時のコスト
- 資金調達後のコスト
資金調達におけるコストは「資金調達時のコスト」と「資金調達後のコスト」に分類できます。資金調達するときはコストが発生することを念頭に置く必要があるため、資金調達におけるコストが知りたい人はそれぞれの項目を確認してみましょう。
資金調達時のコスト
資金調達する場合、資金調達時に発生するコストがあります。実際の費用負担は資金調達方法によっても異なりますが、資金調達時はいくつかのコストが発生することになるため、資金調達におけるコストが知りたい人は資金調達時のコストを確認してみましょう。
【資金調達時のコストの具体例】
| 資金調達方法 | 資金調達時のコストの具体例 |
|---|---|
| 銀行融資 | 印紙税、信用保証料、事務手数料、担保の登記費用 |
| 株式発行 | 定款認証手数料、証券会社の手数料、広告費用、IR費用、登録免許税、司法書士の報酬 |
| 社債発行 | 証券会社の手数料、事務代行手数料 |
| 補助金や助成金 | 事業費の立替費用、振込手数料 |
| リースバック | 査定手数料、印紙税、契約手数料、家賃保証料 |
| ファクタリング | 債権譲渡登記費用、売却手数料、振込手数料 |
| クラウドファンディング | 広告費、プラットフォームの利用料、決済手数料 |
たとえば、銀行融資を受ける場合のコストとして挙げられるのは「信用保証料」です。信用保証料は信用保証協会から信用保証を受ける対価となるため、信用保証協会の信用保証付き融資を受ける人は融資額や保証期間をもとに算出した信用保証料を支払うことになります。
また、ファクタリングを利用する場合のコストとして挙げられるのは「売却手数料」です。売却手数料は業者の未回収リスクに伴う対価となるため、ファクタリング利用する人は売掛債権の0.5%~20.0%を目安とした売却手数料を支払うことになります。
なお、資金調達時のコストは資金調達方法次第です。「銀行に担保を提供する場合」や「司法書士に登記申請を委託する場合」など、資金調達方法により、発生するコストが異なるため、資金調達時のコストが知りたい人はその前提を踏まえておきましょう。
資金調達後のコスト
資金調達する場合、資金調達後に発生するコストがあります。実際の費用負担は資金調達方法によっても異なりますが、資金調達後はいくつかのコストが発生することになるため、資金調達におけるコストが知りたい人は資金調達後のコストを確認してみましょう。
【資金調達後のコストの具体例】
| 資金調達方法 | 資金調達後のコストの具体例 |
|---|---|
| 銀行融資 | 利息、繰上返済手数料 |
| 株式発行 | 配当金、自己株取得費用、株主管理費用 |
| 社債発行 | クーポン、社債管理者の報酬 |
| リースバック | リース料、更新料、管理費用 |
| クラウドファンディング | リターン費用 |
たとえば、株式を発行した場合のコストとして挙げられるのは「配当金」です。配当金の義務はありませんが、利益還元の期待を満たすことができなければ、株主からの支持を失うおそれがあるため、株式を発行した企業は株主から配当金を求められる可能性があります。
また、クラウドファンディングを利用した場合のコストとして挙げられるのは「リターン費用」です。リターンの内容はプロジェクト次第ですが、支援者にリターンを提供することになるため、クラウドファンディングを利用した人はリターン費用を支払うことになります。
なお、継続的な支払いが必要となる場合、合計額がかさむおそれがあります。「利息」や「株主管理費用」など、継続的に支払うコストは合計額がかさむおそれがあるため、資金調達後のコストが知りたい人はその前提を踏まえておきましょう。
資金調達におけるコストを確認した人は計算方法を押さえる
資金調達におけるコストが知りたい場合、指標をもとに計算することができます。WACC(加重平均資本コスト)と呼ばれる指標を用いる計算方法があるため、資金調達におけるコストを確認した人はWACCの計算方法を確認してみましょう。
WACCとは、資金調達額に対するコストの割合を示す指標のことです。「株主資本による資金調達にかかるコスト」と「負債による資金調達にかかるコスト」を加重平均することにより、資金調達におけるコストを算出することができます。
【WACCの概要】
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 計算式 | WACC=RE×E/(E+D)+RD(1-T)×D/(E+D) 加重平均資本コスト=株主資本コスト×株主資本割合+負債コスト × 負債割合 |
| RE | 株主資本コストのこと。株主が期待する投資収益率。 |
| E | 株主資本のこと。株価に発行済み株式数を掛けた額。 |
| D | 負債のこと。事業者が抱えている有利子負債の総額。 |
| RD | 負債コストのこと。負債に対して負担する金利。 |
| T | 法人税率のこと。事業者が支払う法人税の割合。 |
たとえば、「株主資本コストが7.0%」「法人税率を考慮した負債コストが2.5%」「株主資本と負債の比率が1:3」と仮定した場合、「7.0%×1/4+2.5%×3/4=3.625%」の計算式により、WACCは約3.6%となるため、発生するコストは資金調達額の約3.6%となります。
なお、WACCの目安は資金調達の条件次第です。WACCの平均は5.0%~7.0%と言われることもありますが、実際は資金調達の条件次第となるため、WACCの目安を一概に言うことはできず、資金調達におけるコストを計算したい人は参考程度に留めておきましょう。
株主資本コストを求めるときはCAPMを用いる
株主資本コストは株主が期待する投資収益率となる関係上、明確な数値を算出することができません。CAPM(資本資産価格モデル)により、株主資本コストを推定することができるため、株主資本コストを計算したい人はCAPMの計算方法を確認してみましょう。
CAPM(読み方:キャップエム)は株主資本コストにおける計算方法のひとつです。「リスクフリーレート」と「株式市場全体の利回り」をもとに株式資本コストを計算する理論モデルとなるため、CAPMを用いることにより、株主資本コストを推定することができます。
【CAPMの概要】
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 計算式 | RE=RF+β×(RM-RF) |
| RF | リスクフリーレート(無リスク利子率)のこと。リスクがほとんどない投資対象から得られる利回りとなるため、10年満期の日本国債における利回りを活用する傾向がある。 |
| β | ベータ値のこと。株式市場全体の変動に対して任意の株式の感応度を示す値。上場企業の場合は証券会社の公式サイトから確認できる可能性があるが、未上場企業の場合は類似した上場企業のβを活用する傾向がある。 |
| RM-RF | マーケットリスクプレミアムのこと。株式市場全体の利回り(RM)とリスクフリーレート(RF)の差を示す値となるため、具体例には「TOPIXの期待利回り」から「日本国債の利回り」を引いた数値が挙げられる。 |
たとえば、「リスクフリーレートが1.5%」「ベータ値が1」「マーケットリスクプレミアムが5%」と仮定した場合、「1.5%+1×5%=6.5%」の計算式より、株主資本コストは6.5%となるため、株主が期待する投資収益率は6.5%と推定することができます。
ただし、今回紹介したCAPMの計算方法はあくまでも一例です。「ベータ値」や「マーケットリスクプレミアム」の数値は他にも考え方があるため、株主資本コストを計算する人は事業者の状況に合った計算方法を取り入れることを検討してみましょう。
資金調達におけるコストが不安な人は費用負担の軽減策を考える
資金調達する場合、いずれの資金調達方法においてもコストが発生する可能性があります。費用負担の軽減策を講じることにより、資金調達におけるコストを削減できる可能性があるため、資金調達におけるコストが不安な人は費用負担の軽減策を考えてみましょう。
たとえば、銀行融資を受ける場合は不動産担保を提供する方法があります。不動産担保を提供することにより、不動産担保を提供しない場合よりも低金利となる可能性があるため、銀行融資のコストが不安な人は不動産担保の提供を検討する余地があります。
また、ファクタリングを利用する場合は相見積もりを取る方法があります。相見積もりを取ることにより、複数の業者の中から最も売却手数料が低い業者を選べる可能性があるため、ファクタリングのコストが不安な人は相見積もりを取ることを検討する余地があります。
なお、必要となる資金調達額を明確にすることにより、余分なコストを削減できる可能性があります。資金調達額が必要額を超過している場合はその分のコストが発生するため、資金調達のコストを削減したい人は資金調達額を明確にするところから始めてみましょう。
まとめ
資金調達におけるコストとは、事業者にかかる費用負担のことです。資金調達する場合は費用負担が発生する可能性があるため、資金調達におけるコストが知りたい人はその前提を踏まえつつ、まずは資金調達におけるコストを確認してみましょう。
また、資金調達におけるコストが知りたい場合、指標をもとに計算することができます。WACC(加重平均資本コスト)と呼ばれる指標を用いる計算方法があるため、資金調達におけるコストを確認した人はWACCの計算方法を確認してみましょう。
なお、資金調達する場合、いずれの資金調達方法においてもコストが発生する可能性があります。費用負担の軽減策を講じることにより、資金調達におけるコストを削減できる可能性があるため、資金調達におけるコストが不安な人は費用負担の軽減策を考えてみましょう。