資金ショートを起こさないためには、資金繰りの状況を正確に把握することが重要です。資金繰りの状況を把握していないと、予兆に気づかないまま、ある日突然資金ショートに気づくという事態になりかねません。
資金ショートに陥るということは、何らかの原因があります。その原因を予め知っておけば事前に対策することも可能です。当記事では、資金ショートが起こる原因やその防止・対応策、資金調達方法までを解説します。
1.資金ショートとは?
そもそも資金ショートとはどのような状態のことをいうのか、正しく理解する必要があります。まずは基本的な情報について理解しましょう。
(1)手元の運転資金が不足する状態
資金ショートとは、手元にある現金が少なくなり、運転資金が不足する状態です。資金ショートしてしまうと、仕入先への支払いが滞ったり、従業員への給与が支払えなくなったりなど資金繰りに大きな影響を及ぼすことは免れません。
資金ショートの状態の例を考えてみましょう。100円で商品を仕入れて、200円で販売したとします。仕入れに対する支払い期日を翌月末、売上金回収が翌々月末だとすれば、利益は「100円」出ている黒字の状態です。
ただし手持ちの資金がなく、回収よりも支払いが先に発生すれば翌月の支払いに間にあわず、資金が足りなくなります。つまり黒字の状態でありながら、資金ショートし結果的に倒産ということもあるのです。
(2)資金ショートすると倒産?その後はどうなるのか
前述したように黒字だったとしても資金ショートが原因で、倒産となるケースもあります。一般的に資金ショートした場合は、銀行融資による補填で回避できる可能性もありますが、必ず融資が受けられるかどうかが不透明です。
まずは余剰資産を売却したり、支払いに優先順位をつけたりして現金を手に入れなければなりません。それでもどうしようもない場合、会社を倒産させる事も視野に入れることとなるでしょう。
2.資金ショートが起こる原因を解説
資金ショートが起こる原因はいくつかあります。ここでは代表的な3つの原因について見ていきましょう。
(1)売上・収入の減少
思いもよらない売上や収入の減少が資金ショートの本質的な原因となる場合もあります。予定していた売上の回収や収入が減少すれば、支払いに回す資金が枯渇し、支払いができない状態となります。
変動費は売上が減少すれば同じく減少するものの、固定費をいきなり減らすことは難しいため、固定費の大きい事業ほど売上減少の影響が大きくなる傾向にあると言えるでしょう。
(2)予期せぬ大きな出費の発生
事業を運営する上では、予期せぬ大きな出費が発生することもあります。事業用の車両購入や設備の修理修繕、損害賠償金の支払い、リコール費用、訴訟費用など、大きな支払いに現金を使い、資金ショートすることがあるのです。
このような事態に対応するためには、できるだけ現金に余裕を持たせた事業運営をすることはもちろんのこと、保険や共済などに加入してリスクヘッジしておくことも大切だと心得ておきましょう。
(3)資金繰りの悪化
資金繰りの悪化も大きな原因となります。経営者が把握していた資金繰りが、実際とは異なっていた際などに起こるケースといえるでしょう。
経理担当者などに資金繰りを全て任せていたものの、帳簿に間違いがあったり、実は横領などの不正があったりなど要因はさまざまです。資金繰りは経理担当者に任せきりにせず、経営者本人も帳簿とキャッシュフローを常にチェックするべきでしょう。
3.資金ショートの防止策や対応策について
資金ショートが起こる原因については分かりました。次はその原因に対する防止策や対応策についても見ていきましょう。
(1)資金繰り表を作成してあらかじめ対策を
資金ショートを防止・対策するには、まず手持ち資金がいくらあるのか正確に把握しなければなりません。そこで必要不可欠なのが現金の収入と支出を記載した「資金繰り表」です。
収入と支出を集計すれば日々の収支が明らかとなるため、現金の不足を予測することも可能です。特に会社運営が厳しい中小零細企業ほど、日次で記録すると資金繰り表が効果をもたらすでしょう。
例えば、以下のように前月からの繰越と収入、支出、翌月への繰越を月次で作成してみましょう。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | |
前月繰越 | 150万円 | 250万円 | 450万円 | 250万円 |
収入 | 300万円 | 500万円 | 200万円 | 100万円 |
支出 | 200万円 | 300万円 | 400万円 | 250万円 |
収支合計 | 100万円 | 200万円 | −200万円 | −150万円 |
翌月繰越 | 250万円 | 450万円 | 250万円 | 100万 |
オンライン上にはエクセルのテンプレートもあるので活用してみましょう。自社の業種や目的に合ったフォーマット選びとカスタマイズが大切です。
(2)資金ショートに陥った場合の対処法は?
もし資金ショートに陥った場合、どのような対処法があるのでしょうか。資金がショートしたとしてもすぐに会社が倒産するわけではありません。
事業を存続させるための具体的な対処法を知っておきましょう。
①コストの見直しを行う
まずはコストを見直しましょう。コスト削減するべき主な経費は次の通りとなります。
- 変動費
- 固定費
- 人件費
- 赤字事業
これらの中ですぐに効果が表れやすいのは「変動費」と「人件費」を削減することです。仕入原価や残業代などの給与は変動費に含まれ、支出に対して大きな割合を占めます。
まずは、仕入交渉や残業削減などを実施しましょう。しかし人件費の削減は社員のモチベーション低下や集団退職などリスクを伴うので細心の注意が必要です。
また固定費に含まれる光熱費や備品購入費なども積極的に抑えるようにしましょう。資金ショートの状態に陥った場合は事業のスリム化が急務です。最低限必要なもの以外は、削減するように努めてください。
赤字事業や収益の出ない開発や研究は、中止もしくは一時停止の検討をしなければなりません。
②個人資産、遊休資産を売却する
経営者個人が保有する資産や、会社保有の遊休資産などを売却し、まずは現金を確保することが必要です。その例としては次のようなものがあります。
- 投資目的の不動産
- ゴルフの会員権
- リゾート会員権
これらを保有する場合、個人法人の名義を問わず現金化することを検討しましょう。不動産を売却することで固定資産税や管理コストの低減にもつながります。
貸借対照表に遊休資産等が記載されている場合は、また金融機関等と融資の交渉をする際に融資を受けづらくなるケースがあります。「できるかぎりのことをしている」という姿勢を見せるためにも、前もって改善しておくことが大事です。
4.資金がショートした際の資金調達方法
資金ショートの状態を解消するには現金が必要です。そこで資金調達に関する3つの方法について解説します。
(1)銀行から資金調達
まずは銀行から資金調達する方法です。
一般的には資金繰り表や試算表等を持参し、まずはメインバンクに相談に行きます。現在の状況を面談を通じて伝えることから始まります。
これまで取引のあるメインバンクであれば、初見の銀行よりも、対応可能な範囲内で検討してくれることが多いです。銀行側も資金ショートした理由や必要資金額、返済計画などの情報が明確でなければ、融資は期待できません。
また、銀行が必ず融資してくれるという保証はありません。融資が本当に難しい場合には、資金ショートの事実があっても対応できないこともあります。
資金繰り対策の1つという位置づけで、まずは取引のある銀行に相談しながら他の対策を進めておくことが重要です。
(2)日本政策金融公庫の利用を検討
たとえば、新型コロナの影響による売上減少であれば、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」も利用可能です。
また不動産などを担保に融資を受けられる制度もあります。
政府運営の金融機関であることから一般的なビジネスローンなどの金利より低く設定されています。創業融資ガイドを運営する当社株式会社SoLaboでは日本政策金融公庫の利用を検討中の方向けに、申込前に審査の無料診断を実施しているのでぜひこちらからお問い合わせください。
無料診断からお問い合わせいただいたお客様には、「公庫から融資を受けられる見込みはあるのか」や「具体的にいくらで融資を受けられるのか」など、融資専門の担当者から直接ご説明させていただきます。
なお、お急ぎの方はお電話でのお問い合わせもご利用ください(相談無料)。
(3)ファクタリングによる現金の確保
ファクタリングによって現金を確保する方法もあります。ファクタリングとは、売掛金や手形などの売上債権を買い取ってもらうサービスのことです。
取引先への支払いが売掛や手形など売上債権が多い業種やビジネルモデルと相性が良いです。ファクタリングを利用することで2~3ヵ月後に入金予定にしていた売上を現金化できます。手数料は必要となるものの、資金ショートして緊迫している状況であれば、ひとつの選択肢となるでしょう。
しかし売掛債権が減ってしまうというデメリットもあります。「支払期日まで待つことができれば満額を受け取れた債権」が減ってしまう点に注意しましょう。
また、ファクタリングを利用することで一時的に資金繰りは改善されますが、繰り返し利用してしまえば、資金繰りの悪化を招いてしまいます。資金繰り表を作成して計画的に利用してください。
(4)ビジネスローンの利用
ビジネスローンとは、事業者向けの融資制度です。
一般的なローンとは異なり、主に事業目的でなければ借り入れすることができません。一般的に金利は15~18%前後に設定されています。
スコアリングシステムという独自の審査基準を持ち、最短で申込当日に着金されるというスピード感がメリットです。利便性と金利を比較し適宜検討しましょう。
(5)手形割引も選択肢のひとつ
手形割引とは、取引先からの手形を現金化する方法のことです。
支払期日を迎えていない手形が現金化できるので、資金ショートした際には有効な資金調達の方法となるでしょう。
銀行融資を断られた場合で手形割引であれば利用可能です。
一方、デメリットもあります。
それは手形割引で不渡りが発生すると、銀行や手形割引業者に対して弁済する義務が生じることです。弁済後は資金繰りが更に悪化する可能性もあるため注意しましょう。
5.まとめ
資金ショートが起こる原因やその対策、資金調達の方法などを解説しました。赤字や債務超過だけが会社を倒産させる原因ではなく、資金ショートも倒産の原因となります。
資金ショートを防ぐには資金繰り表などを通じて経営者が「正しい情報」をいつも確認できるようにしておくことが重要です。
資金ショートしないために、助成金や補助金を上手に活用している方もいます。
助成金や補助金を上手に活用するためのノウハウについては、提携しているクラウドシエンが解説しています。