会社を設立し、従業員を雇うとなると色々な手続きが発生します。どんな手続きをいつまでに、どこにしなければならないのか、悩ましいことだらけです。
せっかく働いてくれる従業員のためにも、迅速かつ正確に手続きをするために、今回の記事では提出書類と提出先についてまとめていきます。
従業員から提出してもらう書類
まずは、従業員となる方から提出してもらう書類を挙げてみましょう。
- 年金手帳(被扶養配偶者がいる場合は配偶者の分も必要です)
- 口座振込依頼書
- 通勤手当等支給申請書
- マイナンバー
平成28年より運用が開始されたマイナンバー制度ですが、税金や社会保険関係の書類にはこのマイナンバーの記載が法令で決められているため、従業員のマイナンバーの把握は必須となります。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
配偶者控除や扶養控除などの控除を受けるために必要な書類です。扶養する人がいなくても提出します。
- 雇用保険被保険者証(加入していたことがあれば)
- 源泉徴収票(入社する年に入社前に働いていた会社の給与所得がある場合)
- 健康保険被扶養者(異動)届(扶養する家族、親族がいる場合)
会社が行う手続き
(1)労働契約を結ぶ
従業員を雇う時にまず、最初にするべきことは、労働契約を結ぶことでしょう。労働契約を結ぶには、労働条件通知書という書面で交わします。労働条件通知書には主に以下のような内容を記載します。
- 労働契約の期間
- 就業場所と職務内容
- 所定労働時間を超える労働(残業)の有無
- 労働時間(始業・終業・休憩)や休日・休暇について
- 賃金(計算・支払方法・締切・支払日等)
- 退職規定
いわゆる「雇用契約」にあたる部分ですね。ちなみに、就業規則を作成し、それを示すことで、上記の「労働時間」「賃金」「退職規定」に関しては明示したという解釈になります。
(2)社会保険の加入
①健康保険
健康保険は、従業員の方が病気やケガをしてしまった時の通院や入院に対して保障を受ける事ができる制度です。社会保険制度の医療保険にあたる部分となります。
雇用期間が2か月以上で、所定労働時間と労働日数が一般社員のおおむね3/4以上に該当する場合が対象となります。
健康保険の手続きは年金事務所で行い、提出書類は「被保険者資格取得届」です。
対象となる従業員に扶養家族がいる場合は、「健康保険扶養者(異動)届」も必要となります。
届出の期日は、被保険者となる従業員を雇った日から5日以内に、管轄の年金事務所へ届出を提出します。
法人の場合はすべての事業者が対象となりますが、個人事業主の場合は、一部のサービス業を除いて、労働者が5人以上の場合が適用対象となります。5人未満の場合は任意となっています。
②厚生年金
厚生年金は、社会保険制度の年金保険にあたる部分で、会社勤めの方や公務員が加入する制度です。
手続きは基本的に、健康保険と同じです。被保険者となる従業員を雇った日から5日以内に管轄の年金事務所へ届出を提出します。
書類は健康保険とセットになっている場合がほとんどです。1の従業員から提出してもらう書類に「年金手帳」がありましたが、厚生年金の手続きの際に、「基礎年金番号」が必要となります。
ちなみに、「年金手帳」をなくしてしまったということもよくあります。従業員が年金手帳を無くしてしまった時には、再交付の手続きが可能です。その際は、「年金手帳再交付申請書」を提出します。
(3)労働保険の加入
①雇用保険
従業員が失業した時などに、失業給付を受ける事ができる制度です。失業以外にも育児期休暇や介護休暇の取得時の休業給付を受ける事が可能です。
対象は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、30日を超えて引き続いて雇用する見込みがある場合となります。届出の期間は対象となる従業員を雇った日の翌月10日までに、管轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ届出を提出します。初めて雇用保険の対象者を雇用する場合は、保険関係成立に関する手続きを行う必要があります。
*保険関係成立に関する手続きは下記で改めてご説明します。
②労災保険
従業員が業務中や通勤時に病気やケガ、後遺症、死亡などから従業員とその家族を保護するための制度です。労災保険に関しては、「労働者を使用するすべての事業」が適用となり、対象となる従業員はすべての従業員となり、労働時間や契約期間の制限がありません。従業員を採用する際に特別な手続きはありませんが、雇用保険同様に、初めて従業員を雇用する場合は、保険関係成立に関する手続きを行う必要があります。
【保険関係成立に関する手続き】
労働保険の適用事業となった場合、管轄の労働基準監督署もしくは公共職業安定所(ハローワーク)に「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。
(4)法定帳簿の準備
賃金台帳、従業員名簿、出勤簿などの法定帳簿を用意します。これらの書類は官公署から提出を求められる場合があります。従業員が退職した場合でも3年間は保管しておかなければなりません。
まとめ
従業員を雇う際に準備しなければならないことをまとめました。従業員の方が安心して働ける職場にするためにもきちんと手続きし、双方が納得して円滑に仕事を進めていけるように準備を進めていきましょう。