あまり世間では耳にしない言葉かもしれませんが、経営者であれば、ぜひ知っておいてほしい言葉です。
意外にも、国内には休眠会社が多く存在しています。
そして休眠会社にすること、休眠会社を購入し開業を目指すことはメリットよりもデメリット面の方が多いという事も分かっています。
後々後悔しないためにも、今のうちに休眠会社の事について学んでおきましょう。
1.休眠会社とは何か?
文字を見てなんとなく想像はできるかもしれませんが、休眠会社というのは、登記はされていても長期間で経営がされていない(眠っている)会社の事を指します。
長期間がどれくらいか、具体的には、最後の登記から数えて12年間が経つと、休眠会社として扱われます。
あまり耳にはしませんが、国内でも休眠会社の数はおよそ9万社あると言われています。
2.会社を休眠させる手続きとは?
会社には国税や地方税などの税金を支払う義務があります。
各税金・税金を管轄している行政機関を表にまとめましたのでご覧ください。
会社を休眠させる場合は、税金を管轄している行政機関へ届出を提出する必要があります。
上記を見ても分かるように、税金ごとに管轄となる行政機関が異なります。
この場合の届出とは、「休業届」「休眠届」と呼ばれていますが、実際に提出する書類は「異動届出書」というものです。
この「異動届出書」に休業(休眠)することを記載し、提出をすれば「休業届(休眠届)」を提出したという事になります。
3.休眠会社にすることのメリット・デメリットは?
メリット
Ⅰ.手間と費用がゼロ
休眠会社にすることのメリットとしては、一番にこの理由があるからこそなのです。
休眠会社にする理由として、高齢化・後継者問題・経営難等の様々な理由がありますが、
廃業となると、廃業コストがかかり、廃業への手続きとして「清算決算」「解散登記」など面倒なものでもあります。
ですが、休眠会社は、手続きも少なく、なおかつ費用がかからないという利点があります。
この理由こそが国内の休眠会社の数を表しているのかもしれません。
Ⅱ.再開の際の手間を軽減
休眠会社にする際は、税務署・市区町村への「休業届」提出、のみで手続きを終えますが、再開の場合も、税務署に対しては提出するものはなく、再開した年に確定申告を行うのみです。
また、市区町村に関しては、休業届を提出した時と同じように「異動届出書」の提出のみで再開することが可能となります。
デメリット
Ⅰ.税務申告を行う必要がある
ここで間違えないでほしいことが、会社を休眠したからと言って、会社自体は無くなっていないという事です。
その為会社が存在している以上は、売上の有無に関係なく税務申告を行う必要があります。
毎年行わなければならないため、一度でも税務申告を怠ってしまうと、特別控除による節税や特典がある青色申告の承認が取り消され可能性があります。
Ⅱ.税金納税の義務がある
休眠会社にしていても、税金は課税され、納税をする義務があります。
また、自治体によっては、例え利益がなく赤字であろうと納税をしなければならない「法人地方税均等割」が課税される場合もあります。
これは所得額に関係がなく、低額で決められているものになります。
Ⅲ.役員変更登記が必要
実際に経営をしていなくても、会社の役員には任期があり、会社役員の任期が満了した際には、役員変更登記を行う必要があります。
これは、人物が変わらず引き続き同じ人が役員になる場合でも「重任登記」が必要となってきます。
ほとんどの会社では、取締役の任期が2年となり、役員変更登記を2年に1度はやらなければなりません。
この変更登記をやらなかった場合、代表者は100万円以下の金銭を支払わなければならなくなるため、しっかり覚えておくようにしましょう。
Ⅳ.みなし解散をされてしまう
最終登記の日から12年間経過すると、休眠会社とみなされ、また、法務大臣より休眠会社ということが新聞等に掲載され、世間に広く知れ渡ってしまう公告がされてしまいます。
この公告通知から2カ月以内の間に何も届出をしない場合、解散した、とされてしまうみなし解散が決定され、解散の登記を登記官が行います。
自身の会社が勝手に無くなってしまうことに何も感じないという方はいないのではないでしょうか。
4.休眠会社を購入し開業を行う事のメリット・デメリットは?
休眠会社にすることだけではなく、存在している休眠会社を購入し、新たに開業を目指す、という方もいるかと思います。
この場合も同様、デメリット面の方が多く存在しています。
メリット面を挙げながら、デメリット面についても一緒に見ていきましょう。
メリット
Ⅰ.取引先からの信頼度が高まる
お店を例えにご説明すると、新しくオープンしたばかりのお店よりも昔からあるお店の方が信頼度は高くなります。
昔から続いているからこそ、「選ばれ続けている」「それだけの価値がある」という事です。
会社でも同じことで、新しく立ち上った会社よりも昔からある会社の方が取引先からの信頼度が高まります。
そこで、休眠会社の社歴をそのまま受け継ぐことは、新設で会社を立ち上げる事よりも信頼性の面で有利なこととなります。
Ⅱ.資本金が必要ない
会社を立ち上げる際には、資本金が必要となりますが、社歴同様、資本金の情報も受け継ぐことが可能となります。
必要となる資金は、会社の購入金額と登記を変更する際にかかる登記変更費のみとなります。
Ⅲ.当座預金口座・許認可を購入し使用可能となる
もしも購入しようとしている休眠会社が、法人の当座預金口座を所有している場合には、それを購入することで使用が可能となります。
また、ある決められた職業の場合は、許認可が必要となりますが、この許認可も休眠会社が所有している場合は、購入し、使用が可能となります。
この許認可を得るための手続きには、手間がかかるため、この手間がかからないとなると大きなメリットとなります。
デメリット
Ⅰ.ブラックリストに載っている可能性
購入を考えている会社が、ブラックリストに載っている会社ではないかきちんと調べておく必要があります。
休眠会社にする理由として様々な理由が考えられますが、「借金の返済が不可能」「借金を支払わない」などの理由でブラックリストに載ってしまっていると、融資を受けることもできなくなってしまい、信頼も無くすことになってしまいます。
Ⅱ.融資を受けることが困難
上記の「ブラックリストに載っている可能性」に加え、購入を考えている会社が年に一度の決算を怠っていた場合にも、融資を受けることが困難になってしまいます。
Ⅲ.債務責任を負うことになる
貸借対照表には記されていない返済金である簿外債務や税金の未納がある場合は、この債務の責任を負うことになります。
会社を購入するという事は、会社のものが自分のものになるため債務があった場合には支払う義務があるのです。
Ⅳ.青色申告が受けられない
休眠会社の場合、多くの会社は休眠中の申告を怠っていることがほとんどです。
この場合、特別控除による節税や特典がある青色申告が取り消されることになり、白色申告で申請しなければならない可能性も大いにあります。
まとめ
休眠会社にすることで、手続きの手間や費用でのメリットがある反面、毎年申告を行ったり納税の義務があったりとデメリットもあります。
よく検討して、手続きに進みましょう。
また、すでに休眠している会社を購入する際は、会社の財務状況や異動情報など丁寧に確認しましょう。