商標登録とは、あるサービスや製品などに対して品質や出どころを明らかにするための手続きです。例えば、宅急便と言えばクロネコヤマトのあの猫のマークを人々は思い浮かべますし、コーラと言えばあの赤いロゴマークを想像することでしょう。
今回の記事では、「自分で商標登録をする」というテーマでお話していきたいと思います。是非お役立てください。
1.そもそも商標登録とは?
①商標登録を簡単に言うと
クロネコヤマトの黒猫のマーク、コカコーラの赤いロゴ。簡単に言うと、このようなロゴやマークが商標登録です。他には、着メロや弾丸ツアーなんて言葉も商標登録されています。なんとなく、「新しい商品やサービスのロゴや言葉を登録するのかな」とお察しがつくと思います。
②商標登録にある4つの機能
商標登録についてもう少し説明すると、商標登録には以下のように4つの機能があります。
- 自他商品識別機能 ある商品やサービスが他とは違う(差異)とアピールできる
- 出所表示機能 ある商品やサービスがどこの会社や地域から流通しているのかを明らかにできる
- 品質保証機能 同じ商標をつけた商品やサービスであれば、同等の質を持つことを示すことができる
- 宣伝広告機能 商標をつけることによって似たような他社製品と区別することで、自社の製品を消費者のアピールできる
事業主の方に魅力的なのは、この中で特に4つ目の機能(宣伝広告機能)なのではないでしょうか。自社の製品やサービスにマークをつけることによって、多大な宣伝効果が見込まれるのです。
2.商標登録をするための流れとは
商標登録をするための大まかな流れをまず把握しておきましょう。全部で6つの行動が必要です。この他にも、必要に応じて特許庁に電話することもあります。
結構やることがありますね。⑥まで終わると、審査期間に入ります。審査期間はおよそ5か月です。
3.商標登録の手続きについて
①商標検索
ドメインや電話番号と同じで、商標登録では同じものが登録できません。自分が登録したい商標が既に登録されていないかを調べる必要があります。
調べるのは、特許情報プラットフォームから行います。
このような画面が出ますので、左の「特許・実用新案を探す」のところをクリックして「商標を探す」に切り替えましょう。空白の部分に商標登録したいもののキーワードを入力して検索すればいいのです。例えば、「しろたん」という筆者の家にあるぬいぐるみの名前を入れてみましょう。
すると、ヒット件数2件と表示されました!
一覧表示をクリックすると、現在しろたんで登録されている商標が表示されます。しろたんというお酒もあるのですね、、。
②出願書類を準備する
商標登録を申請することを、出願と呼びます。出願は手書きの紙書類を作成する方法と、オンラインで申請する方法と2種類あります。
【紙書類のダウンロード先】
※商標の部分をクリックすると書類がダウンロードできます
【オンラインで申請するには】
オンラインで申請するのは、紙の申込書を提出するより手続きが煩雑です。まずは以下のサイトをご覧ください。
オンラインで申請することを電子申請と呼んでいますが、まずはお手持ちのパソコンに電子申請ができる環境を作らなければいけません。
<電子申請の環境の作り方>
- 1.電子証明書の準備 電子証明書とは、ネット上で法的な申請をする場合に間違いなく本人だと証明するための証明書です。
- 2.パソコンの準備 電子申請ができるブラウザやOSを確認しましょう。ちなみに、Microsoft Windows 8はサポート対象外です。
- 3.出願ソフトの入手&インストール ソフトは無料で上記サイトからダウンロードできます。ソフトのダウンロードにはフリーアドレス(yahooメールやGmail)以外のアドレスが必要です。
- 4.申請人利用登録
この他に知っておきたいこととして、国際出願という言葉があります。商標を国内だけでなく国際的にも登録をしたい方は、国際商標出願の手続きを踏むことによってマドリッド協定議定書におけるスイス・ジュネーブの国際事務局の登録簿に登録できます。一応、覚えておきましょう。
③登録したいものの区分を調べる
2016年に日本の特許庁が受理した商標登録の出願数は16万件以上もあったそうです。商標登録の種類は前述したように、宅急便やコーラや着メロのように非常に範囲が広いのです。この膨大な範囲の中で区分化されていないと、特許庁の職員さんがいちいち調べるハメになり登録のスピードも遅くなります。
これは、先ほどご紹介した商標検索をした結果の画面です。画面中央から少し左側に、区分という言葉が見えると思います。これは何を意味するのかというと、「しろたん」という商標がどのジャンルに当てはまるのかということを意味しています。
※区分 のイメージ図
ヤフオク!をご利用になった方であれば分かりやすいと思いますが、オークションサイトでは商品を出品する際も区分されたカテゴリに登録します。商標登録する時も同じように、登録するものの区分を指定しなければいけません。商標登録の区分はなんと45種類もあります。商標の内容によっては、1つの区分だけでなく複数の区分に当てはまります。
商標の区分についての詳細は、以下のURL(特許庁)よりご確認いただけます。
最近では、新しいタイプの商標の保護制度という法律がスタートしました。新しいタイプとは、ズバリ「音」です。その他にもテレビやPC上で映し出される文字が変化すること、色彩の組み合わせなんかも新たな商標登録として区分されています。区分が多いと費用がかさみますよ。
何故かと言うと、登録出願料は3,400円+(1区分×8,600円)という計算で求められるからです!
④書類を作成する
次に、出願書類を作成します。
書き方をご説明します。
書類名:このまま変更しません。
整理番号: パスワードのようなものを自分で作成します。10桁以内のローマ字・算用数字・ハイフンからなる文字列を記載しましょう。メモを忘れずに取るか、この用紙を最後にコピーしておきましょう。
提出日:郵送する場合は、郵便局にもっていく日。特許庁に持っていく場合は、持ってい行く日を記載します
あて先:このまま変更しません。
商標登録を受けようとする商標:商標登録したい文字やロゴなどをカットして糊で貼ります。PCで作る場合はロゴなどのデータをここの部分にコピペすればOKです。
第 類:商標を登録する区分を記載します
指定商品(指定役務):登録する商標の詳細を記載します。要領は、以下のイ~ハまでを参考にしてください。
イ 「 指定商品(指定役務 」は、商品(役務)の内容及び範囲を明確に理解することが 【 )】
できる表示をもって記載する。指定商品(指定役務)を具体的に説明する必要があるとき
は、説明書に 「指定商品(指定役務)の説明」と記載し、商品の生産、製造若しくは使 、
用の方法、原材料、構造、効能若しくは用途又は役務の内容、効能、提供の方法若しくは
用途の説明その他の必要な説明を記載する。この場合において 「 提出物件の目録 」の 、【 】
欄に「 物件名 」の欄を設けて「指定商品(指定役務)の説明書」と記載する。 【 】
ロ 2以上の商品(役務)を指定する場合は、それぞれの指定商品(指定役務)の区切りに
コンマ( )を付さなければならない。 ,
ハ 商品及び役務の区分が2以上ある場合は、区分の番号順に、商品及び役務の区分並びに
その区分に属する指定商品(指定役務)を次のように、繰り返して記載する。
【第 類】
【指定商品(指定役務 】)
【第 類】
【指定商品(指定役務 】
識別番号:はじめての出願の場合は空欄です。2回目からの出願であれば発行されている識別番号を記載します
住所又は居所:会社の場合は登記されている場所。個人の場合は住民票のある場所を記載します
氏名または名称:会社の場合は会社名。個人の名前は氏名を記載します
代表者:会社の場合は代表取締役。個人の場合は記載しなくて大丈夫です
印:会社の場合は代表者印。個人の場合は苗字の記載がある印鑑で押印します
国籍:日本人以外の場合は記載します。日本人であれば無記入です。
電話番号:連絡のとれる電話番号を記載します。
物件名:未記入で結構です。
⑤特許印紙を郵便局で購入する
出願書類の最初の部分に、特許印紙を貼る欄があります。特許専用の印紙なわけですね。
特許印紙は全国の主要な郵便局で販売しています。必要な印紙代は、3,400円+(区分数×8,600円)です。ちなみに、めでたく審査を通過して商標登録する場合の商標登録料は区分数×28,200円が必要です。商標登録の有効期限は10年で、更新手続きをすれば継続できます。
⑥提出日を決めて提出する
郵送か特許庁に直接持参するかの2つの方法で提出できます。
<郵送の場合>
1. 国内出願関係書類
〒100-8915
東京都千代田区霞が関三丁目4番3号
特許庁長官 宛
2. 国際出願関係書類
1) 特許協力条約(PCT)に基づく国際出願関係書類
〒100-8915
東京都千代田区霞が関三丁目4番3号
特許庁審査業務部出願課 国際出願室 受理官庁 宛
2) ハーグ協定のジュネーブ改正協定・マドリッド協定議定書に基づく国際出願関係書類
〒100-8915
東京都千代田区霞が関三丁目4番3号
特許庁審査業務部出願課 国際意匠・商標出願室 宛
<郵送の場合>
受付時間
9時から17時まで(平日)
なお、土曜日、日曜日、祝日、年末年始(12月29日から翌年の1月3日まで)は、閉庁となります。
受付場所
国内出願関係書類は1階南側 出願課受付カウンター
国際出願関係書類は1階北側 国際出願室受付カウンター
※特許庁庁舎では、セキュリティ強化対策の一環としてセキュリティゲートを設置しています。
せっかく手間もお金もかけた書類に不備があると、登録ができません。できれば、特許庁への持参で書類のチェックをしてもらうことをお勧めします。
4.商標登録をしないとどうなる?
①他社の商標侵害をしてしまうかもしれない
商標登録を受けないまま商標を使用していると、他社の商標権を侵害する可能性があります。どういう事かというと、あるカフェAのロゴマークが他の有名カフェBのロゴマークに似ていたとしましょう。
カフェAのロゴマークが有名カフェBととても似ていたので、カフェAにもお客さんがたくさん来るようになりました。しかし、カフェBのロゴマークは商標登録がされていました。そのため、商標登録をしていないカフェAのロゴマークは商標登録侵害としてカフェBによって訴えられてしまうかもしれません。
②商標が使えなくなってしまうかもしれない
あなたの考えたロゴマークを、あり得ないかもしれませんが、他社が先に商標登録してしまったら。あなたがそのロゴマークを使えなくなってしまうという事態もあるのです。
5.いざとなったら弁理士に頼むのが一番!
かなりザックリと商標登録の手続きをお伝えしましたが、お急ぎの場合は弁理士さんにお願いするのが賢明です。弁理士は商標登録や特許などの知的財産手続きのスペシャリストです。
弁理士を通すと、審査期間も5か月から2か月へとかなり短くできるようです。また、商標検索や書類作成まで丸投げできるプランもあります。
まとめ
事業を営んでいると、商標登録をした方がいいのかも、と考えることも多いかと思います。商標登録は時間に余裕のある方であれば、個人でも申請が可能な手続きです。
しかし、意外に難解なのは区分の選定や書類作成です。間違った書類でやり直しになるのであれば、弁理士さんに相談しながら作成する、という方が結果的に時間やお金を節約できます。