創業融資を受けるためには、事業計画書の作成が必須になります。事業計画書とは、創業者の頭の中にあるビジネスの説明書です。
ビジネスのためのリソース(ヒト・モノ・カネ)はどのように調達するのか、だれのどのような課題を解決するのか、毎月どの程度の利益を出せるのかなど、ビジネスの根幹を記します。
金融機関の融資担当者は、その事業計画書をもとに融資先の将来性を判断し、融資するかを決めます。本来、融資判断は融資先の過去業績をもとに行われますが、これから創業する場合には会社としての過去業績がなく、将来性から判断するしかないためです。
創業者が融資を受けられるかどうかは、事業計画書の完成度によって決まります。
本記事では、起業資金調達のために融資を受けたいと考えている方に向けて、「事業計画書とは何か」 「事業計画書記入時の注意点」を解説します。融資を通しやすくするポイントに重点を置いて解説しますので、初めて起業を考えている人はお役立てください。
目次
1.「事業計画書」とは
事業計画書とは、ビジネスの全体像・計画を記したもので、日本政策金融公庫にとって、融資をするかどうかの判断材料になるものです。ただ、融資を受けるために必ずしも提出が必要になるわけではありません。事業計画書の提出が必要な融資制度を説明します。
(1)中小企業経営力強化資金制度を受けるために必要な書類
事業計画書は、日本政策金融公庫の「中小企業経営力強化資金」という融資制度を利用する際に作成が必要になります。日本政策金融公庫は、中小企業および起業者の支援を目的として日本政府によって設立された貸付専門の金融機関です。初めて起業する人には過去の事業実績がないため、民間の金融機関の融資は通りづらいと言われていますが、日本政策金融公庫はそのような起業者や中小企業への融資を積極的に行っています。
日本政策金融公庫とはどんな金融機関なの?創業時でも融資が受けやすいってホント?
(2)「創業計画書」とは異なるもの
「事業計画書」と混同しやすい言葉として、「創業計画書」というものがありますが、全くの別物のため注意してください。創業計画書は、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」という融資制度を利用する際に作成します。利用する融資制度によって、必要な書類が変わることを留意しましょう(※)。
(※)厳密にいうと、新創業融資では創業計画書が必要ですが、中小企業経営力強化資金では創業計画書と事業計画書の両方が必要になります。
2.日本政策金融公庫で受けられる融資制度
創業時に受けられる日本政策金融公庫の融資制度は、「中小企業経営力強化資金」と「新創業融資」の2つがあります。いずれも無担保・無保証人・低金利が特長の融資制度ですが、中小企業経営力強化資金のほうが融資限度額・金利がやや優遇されています。
ただその分、定期的に事業計画の進捗報告をしなくてはならない、外部専門家(認定支援機関)の助言・支援を受けなくてはならないといった制約があります。
日本政策金融公庫の融資制度名 | 必要な計画書 | 特長 | 留意点 |
中小企業経営力強化資金 | ・事業計画書 ・創業計画書 | 無担保・無保証人・低金利 | ・申込には認定支援機関のサポートが必要 ・定期的な事業計画/進捗報告が必要 |
新創業融資制度 | ・創業計画書 | ・融資限度額・金利は中小企業経営力強化資金ほど良くない |
2つの融資制度の詳細は、次のリンクで解説しています。
中小企業経営力強化資金を利用して、金利を安く融資を受けよう!
日本政策金融公庫(公庫)で創業融資を受ける場合、どの制度で借りるのが得か?
3.中小企業経営力強化資金を利用するための「事業計画書」の書き方
事業計画書には、事業毎の計画をまとめ、事業の方向性の確認や第三者へ事業内容を説明する際に用います。中小企業経営力強化資金を利用する場合には、事業計画書と創業計画書の提出が必要ですが、日本政策金融公庫の事業計画書はテンプレートが準備されています。
日本政策金融公庫HP「事業計画書(PDF)」
※エクセル/ワードデータは「日本政策金融公庫HP各種書式ダウンロード」(19)からダウンロードが可能です。
(1)事業計画書 各項目の記入ポイント
日本政策金融公庫の事業計画書では、6.7の項目については認定支援機関が記入します。まずは、1~5の各項目の記入ポイントを紹介します。
1.現状・新商品の開発または新役務の内容、課題・重点項目取組、具体策
《現況(創業の場合は創業する目的、動機)》
創業の目的や動機を記載します。創業計画書を作成してから、事業計画書の作成を行う場合には、創業計画書の「創業の動機」と同様の内容を記載してください。
《新商品の開発または新役務の内容》
《経営上の課題項目 / 課題項目または重点取組事項を踏まえた具体策》
ここは、該当する項目にマルをつけ、マルを付けた項目に対する具体策を記入します。枠が小さいので、入りきらない場合は、別紙などを準備しましょう。
また、必要に応じて、資金繰り計画など数字のわかる書類も添付します。
2.業績推移と今後の計画
創業計画書が完成している場合は、創業計画書の「事業の見通し」と整合性が取れていることがポイントとなります。先に、事業計画書を作成している場合は、創業計画書作成時に「事業の見通し」に記入する内容が変わってしまわないように注意してください。
3.借入金・社債の期末残高推移
「借入金・社債の期末残高推移」は、現状の借入等に関する残高推移を記入します。前期実績は書けませんが、住宅ローンや自動車ローンなど長期で組んでいるローンがある場合には、借入先と残高の推移を記入します。
今期見込み以降に、日本政策金融公庫からの借入返済予定も記入します。
4.計画終了時の定量目標及び、達成に向けた行動計画等
《定量目標》には数字の目標を、《行動計画等》には定量目標を達成するための具体的な計画を記入します。
【記入例】《定量目標》従業員を5名雇用 《行動計画等》求人サイトの活用以外に、知人からの紹介なども視野にいれ、接客に必要なコミュニケーション能力が高い人材に積極的にアプローチを行う。 《定量目標》月間売上200万円 《行動計画等》ランチ、ディナー共にリピーターを獲得するために再来店に繋がる季節メニューの打ち出しや、近隣店舗との共同イベントなどを実施する。近隣店舗と協力することで、お客様情報を共有し、お互いに繁盛店になるような関係値を構築する |
認定支援機関記入欄
(2)中小企業経営力強化資金の申込みには認定支援機関のサポートが必要
4.新創業融資を利用するための「創業計画書」の書き方
新創業融資制度を利用するためには、事業計画書ではなく、創業計画書の作成が必要です。
創業計画書のテンプレートは日本政策金融公庫Webサイトからダウンロードが可能です。
※エクセルデータは「日本政策金融公庫HP 各種書式ダウンロード」の(3)からダウンロードが可能です。
(1)創業計画書 作成時の注意点
日本政策金融公庫の各種書式ダウンロードには、創業計画書の記入例も公開されています。創業計画書を作成する際の注意点としては、記入例通りに創業計画書を作成しても融資成功の確率は低いということです。
記入例はあくまでも、「こんな感じで書いてください」という例です。そのため、内容がふんわりとした表現でまとめられています。
実際に創業計画書を書く際には、達成可能な創業計画であることを公庫側にきちんとアピールするために、説得力のある内容であることが大切です。そのため、売上計画や返済計画などの具体的な数値を元に、「現実的な創業計画である」という明確な根拠を示す必要があります。
(2)創業計画書 各項目のポイント
創業計画書には全部で9項目の記入箇所があります。創業計画書の各項目の書き方ポイントは、下記記事にまとめています。
ここでは、創業計画書の中でも特に重要な項目について詳しく説明します。
ポイント1.「1創業の経緯」と「2経営者の略歴等」
「1創業の経緯」では、なぜ創業しようと思ったのかということを記入します。「2経営者の略歴等」には創業者が、今までどのような経験を積んできたかを見せる部分です。この2つの項目は、別々に記入しますが、「2経営者の略歴等」に記載した、経験から創業を決意したということがわかるように「1創業の経緯」を書きましょう。
ー経営者の略歴は創業融資ではとても重要ー これから創業する事業は、事業実績を示すことが出来ません。そのため、事業が成功する可能性が高いことをアピールする必要があります。今まで全く経験のしていない事業をスタートするよりも、スタートしようとしている事業に関しての経験やノウハウを持っている方のほうが、事業の成功確率が高くなります。 もちろん、未経験で成功している方もたくさんいらっしゃいますが、お金を貸す側の立場で考えた場合は、成功する可能性が少しでも高い方が安心できます。貸したお金を回収できないリスクを少しでも低くするために、未経験者よりも経験を持っている方のほうが融資成功の可能性が高くなるということです。 |
ポイント2.「7必要な資金と調達方法」
調達の方法の各項目について
ここでは「自己資金」「親、兄弟、知人、友人等からの借入」「日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入」「他の金融機関からの借入」の4つを埋めます。
配偶者やお子さまなど生計をひとつにしている方の通帳も自己資金として見せることが出来ます。その場合には、配偶者やお子さまの通帳の提示が必要です。
〇親、兄弟、友人、知人等からの借入
親や兄弟などの親族、友人・知人等からの借入は自己資金に含めることはできませんが、余剰資金として見せることは可能です。親、兄弟、友人、知人等から資金援助を受ける場合には、現金手渡しは避け、振込してもらうようにしましょう。
現金手渡しは、誰からいくらもらったかを証明することが難しいため、融資を受けるための見せ金ではないかという疑いを持たれてしまいます。振込にすることで、誰からいくら入金があったかを証明することが出来ます。振込をした方の名前もわかるように振り込んでもらいましょう。
〇日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入
今回の融資希望額を記入します。
〇他の金融機関等からの借入
この項目は協調融資(日本政策金融公庫と民間の金融機関が協調して融資を行う方法 詳しくは「2つの金融機関から融資を受ける協調融資という方法とは?」をご確認ください。)を行う場合に、協調先となる金融機関名と融資希望額を記入してください。
ポイント3.「8事業の見通し(月平均)」
創業時と軌道に乗った後の、売上高を記入します。ポイントは、数字の根拠を示すことです。右側の《売上高、売上原価(仕入高)、経費を計算された根拠をご記入ください》の空欄に創業当初、軌道にのった後の具体的な売上高、売上原価、人件費等の経費の計算式を記入します。

ここでは「自己資金」「親、兄弟、知人、友人等からの借入」「日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入」「他の金融機関からの借入」の4つを埋めます。
〇自己資金
自己資金とは、簡単に説明するとご自身の貯蓄です。すでに、購入している設備等がある場合は、支払った設備費用も自己資金に含めることが可能です。領収書や振込の証明書は捨てずに保管しておきましょう。
配偶者やお子さまなど生計をひとつにしている方の通帳も自己資金として見せることが出来ます。その場合には、配偶者やお子さまの通帳の提示が必要です。
〇親、兄弟、友人、知人等からの借入
親や兄弟などの親族、友人・知人等からの借入は自己資金に含めることはできませんが、余剰資金として見せることは可能です。親、兄弟、友人、知人等から資金援助を受ける場合には、現金手渡しは避け、振込してもらうようにしましょう。
現金手渡しは、誰からいくらもらったかを証明することが難しいため、融資を受けるための見せ金ではないかという疑いを持たれてしまいます。振込にすることで、誰からいくら入金があったかを証明することが出来ます。振込をした方の名前もわかるように振り込んでもらいましょう。
〇日本政策金融公庫 国民生活事業からの借入
今回の融資希望額を記入します。
〇他の金融機関等からの借入
この項目は協調融資(日本政策金融公庫と民間の金融機関が協調して融資を行う方法 詳しくは「2つの金融機関から融資を受ける協調融資という方法とは?」をご確認ください。)を行う場合に、協調先となる金融機関名と融資希望額を記入してください。
ポイント3.「8事業の見通し(月平均)」

創業時と軌道に乗った後の、売上高を記入します。ポイントは、数字の根拠を示すことです。右側の《売上高、売上原価(仕入高)、経費を計算された根拠をご記入ください》の空欄に創業当初、軌道にのった後の具体的な売上高、売上原価、人件費等の経費の計算式を記入します。

5.創業融資を成功させるためのポイント
業績推移や、資金繰り計画など数字的な計画についても、希望数値ではなく、現実的な数字で表現する必要があります。
まとめ
自分の事業の理解を深めるために事業計画書を作るのであれば、どんな内容でも問題ないと言えますが、実際のところ、2人に1人が審査に落ちてしまう状況です。
金融機関からの融資を目的とした創業計画書や事業計画書は、融資担当者を納得させる内容を作成することが重要です。
そのため、自分で作成する自信がない、不安があるという方は、融資サポートを専門とする認定支援機関に相談することがおすすめです。
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