少しでも多くお金を借りる場合、1つの金融機関のみでお金を借りるよりも、2つの金融機関からお金を借りる方が、借りられる金額が多くなるケースがあります。今回は、2つの金融機関から同時に融資を受ける「協調融資」についてご説明致します。
目次
1.協調融資とはなにか?
2つ以上の金融機関から同時に融資を受けることを協調融資と言います。この記事では日本政策金融公庫と民間の金融機関(信用保証付きの融資)の協調融資に関して説明していきます。日本政策金融公庫は2020年3月末時点で、489の金融機関等と業務連携・協力にかかる覚書を締結しており、全国各地どの金融機関とも協調融資に対応できる状況となっております。2019年度には28,736件の協調融資実績があり、積極的に取り組んでいます。
出典:日本政策金融公庫ホームページより
なぜ日本政策金融公庫が協調融資を積極的に取り組んでいるかというと、そもそも日本政策金融公庫は一般の金融機関が行う金融を補完する政策金融機関として設立されており、民業圧迫にならないように民間金融機関との連携を推進しています。
2.協調融資のメリット
(1) 希望額の融資を受けられる可能性がある
1つの金融機関では希望額の融資を受けるのは難しいという場合、協調融資にすることで希望額の融資を受けられる可能性があります。金融機関としてはリスクを分散することができるため、融資をしやすいといえます。
(2) 将来的に資金調達の幅が広がる
複数の金融機関と付き合っておくことで、今後事業拡大を行うなどで再度融資を希望するときに実績がある金融機関とは話が進めやすく、資金調達の幅が広がるといえます。
3.協調融資のデメリット
(1) 時間がかかってしまう
日本政策金融公庫からのみ融資を受ける場合には、一般的には1ヶ月から1ヶ月半で融資を受けることができます。
しかし、協調融資の場合には、2ヶ月から3ヶ月融資を受けるまでに時間が必要な場合があります。
協調融資で時間がかかる理由は、日本政策金融公庫の融資実行の要件に、もう一つ金融機関の融資が確定したら、日本政策金融公庫も融資をするという要件が加わるためです。
民間の金融機関の場合、信用保証協会付きの融資での対応になることが多く、信用保証協会の面談などがあるため、一般的に、融資実行までに2ヶ月から3ヶ月かかります。
そのため、協調融資では、信用金庫や地方銀行などの金融機関の結果が出てからでないと日本政策金融公庫からも融資を受けることができないため、融資を受けるまでに時間がかかってしまうのです。
(2) どちらも融資がNGになってしまう
前段でも説明しましたが、基本的に日本政策金融公庫の方が先に結果としては出ることがあり、最終決定は民間の金融機関の結果を待つことになり、仮に日本政策金融公庫はOKであってももう一方の金融機関がNGなら、結果的に日本政策金融公庫もNGとなります。協調融資の場合、2つの金融機関からの融資をもとに事業を行うので、片一方のみだと資金が足りず、想定していた事業計画では進められないことになるためです。
(3) 手間がかかる
基本的にはほぼ同様の資料を準備すれば問題ないと思いますが、状況によってはそれぞれの金融機関で異なる資料が必要な場合もあります。また前段でも説明しましたが、日本政策金融公庫と信用保証協会それぞれの担当者と面談を行う必要があり、手間がかかるといえます。
協調融資のメリットとデメリットを動画でも解説しておりますので、ぜひご参照ください。
4.協調融資の事例
弊社のお客様でも、実際に2つの金融機関(日本政策金融公庫と民間の金融機関)を利用して融資(協調融資)を受けた方がいらっしゃいますので、ご紹介します。
【事例①】
整骨院を開業する方で、トータル1,400万円を借りたいという方がおりました。創業当初でお金を借りる場合には、1つの銀行から1,400万円借りるのは、非常に難しいです。
2つの銀行からであれば、借りられる可能性があったため2つの銀行から借りる戦略を立てました。 協調融資の場合少し時間がかかることがあるため 3ヶ月程度時間がかかりましたが、 『横浜信用金庫』と『日本政策金融公庫』の2つから1,400万円の融資を受けられた方がおります。
【事例②】
トータル1,200万円を借りたいという方がおりました。 その方は開業2年目で、既に横浜銀行から借入金が4,000万円ありました。1つの銀行から借りる場合には、800万円程度しか貸せないと言われました。
そこで1,200万円を借りるために、2つの金融機関から合計1,200万円を借りる方法を採用しました。『川崎信用金庫』と『日本政策金融公庫』の2つから融資を受けた方がいます。このケースのように、1つからだけでは、借りられないので、2つから借りるという方法もありますので、覚えておくといざというときに利用できるのではないでしょうか。
5.協調融資の注意点
(1) しっかりとした事業計画が必要
協調融資とは1つの金融機関では借入することが難しい金額を2つの金融機関から借入するという場合が多いので、通常以上にしっかりとした事業計画が必要になります。
(2) どの金融機関に話を持ち込むかも重要
基本的にはどの民間金融機関でも対応はできますが、できれば頑張ってくれる金融機関で話を進めたいですよね。しかし、どの金融機関に話を持ち込んだらいいのか分からない方も多いと思います。日本政策金融公庫から紹介してくれる場合もありますが、協調融資の実績がある専門家に支援してもらうのが良いでしょう。
まとめ
融資を受けるにあたって、選択肢の一つに協調融資という考え方もあるということを理解いただけましたでしょうか。1つの金融機関から融資を受けるよりも時間がかかることにはなりますが、希望する金額の融資を受けることができるかもしれません。