法人設立1年目で融資を受ける場合、実績が十分でないため銀行融資への審査は通りにくい傾向です。今回は法人1年目で銀行融資を受けるための必要書類を解説します。
1.法人1年目の銀行融資の必要書類
2期以上の実績を積んでいない事業者が銀行で創業融資を受ける場合、信用保証協会の利用がほぼ必須です。
初回で保証協会を通さず低金利の銀行融資を受けられることはほぼなく、銀行の窓口にプロパー融資について問い合わせても、相談の時点で、信用保証協会の利用を提案されるでしょう
銀行に提出する必要書類は次の14種類です。
- 信用保証協会の保証に必要な書類
- 商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
- 定款の写し
- 事業計画書
- 試算表
- 資金繰り表
- 資金使途資料
- 決算書(損益計算書・貸借対照表など)
- 納税証明書
- 借入申込書
- 印鑑証明
- 自己資金額等が確認できる書類
- 商取引を証明できるもの
- 開業届(個人事業主の場合)
それぞれ詳しく解説していきます。
(1)信用保証協会の保証に必要な書類
まず、信用保証を受けるための書類を最初に準備しておく必要があります。
- 信用保証委託申込書
信用保証協会に信用保証を委託するための申込書です。
最寄りの信用保証協会または提携金融機関で入手することができます。
- 信用保証委託契約書
信用保証協会に保証を申し込んだ契約書です。
こちらも最寄りの信用保証協会または提携金融機関で入手することができます。
なお、例外として、きらぼし銀行の創業サポートローン
https://www.kiraboshibank.co.jp/hojin/choutatsu/sougyou.html
のように、日本政策金融公庫との連携して融資を実施することで保証協会を必要としない場合はありますが、そういったケースはほぼないと思ったほうがいいでしょう。
(2)商業登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
法務局で、登記簿謄本交付申請書を提出して申請すると交付される書類です。
会社の登記情報を銀行に伝えるための書類で、簡単に言えば会社の身分証明書のような役割をする書類です。
現在登記情報は法務局でデータ化されているため、その情報を印刷した「履歴事項全部証明書」という形で提出します。
入手には窓口申請、郵送申請、オンライン申請の三種類の申請方法があり、それぞれ管轄の法務局の窓口やホームページに申請します。
基本的に発行後3か月以内と利用期限が指定されているので、事前に用意した場合、うっかり有効期限を過ぎてしまう場合がある点には注意しましょう。
(3)定款の写し
定款は、会社運営のために必要なルールをまとめたものです。
定款の原本は法人側で保管しなければならないため、定款の写しを提出します。
(4)事業計画書
事業計画書は、ビジネスの全体像や会社が目標とする成果を達成するための計画を示す書類です。
中長期的な計画を示すことで、その事業のリスクが低く、金融機関が融資した資金をきちんと回収できることをアピールする書類となります。
(5)試算表
決算書類を作成する前段階のデータのことで、月次で作成され、会社の現状を知るために有用なデータです。
通常直近の決算から現段階までの状況を把握するために利用されますが、一年目の場合は申請時までの事業の軌跡を読み取るために利用されます。また、決算期から6ヶ月以上経過している場合は必須です。
試算表は非常に重要なデータなので、間違いがあると審査に非常に不利になります。
作成する場合は顧問税理士に依頼しましょう。
(6)資金繰り表
現金収支の動きや現金過不足の実態などを把握できる表です。
資金繰り表を作成すると、いつ現金が入り現金が出ていくのかが見て取れるため、どのタイミングでどれくらい資金が必要になるのかが分かります。融資を受ける際に必要な金額を明確にしやすい資料です。
資金繰り表はExcelで作成可能です。下記の記事からExcelのテンプレートをダウンロード可能ですので、手順を見ながら作成してみましょう。
(7)資金使途資料
銀行から融資を受けた資金を、どのような目的で使うかの「使用使途」を銀行に伝えるための書類です。
資金使途は、設備資金と運転資金の2種類に大別されます。
設備資金と運転資金のどちらかの融資を申請するかで、必要書類が変わります。
- 設備資金
見積書や前回同じものを購入した時の領収書等。
具体的に何の設備をいくらで導入するのかが目に見えてわかる資料が必要です。
- 運転資金
月々に発生するコストをまとめた書類等
外注費、広告費、人件費などを開示し、説明できる状況にすることが大切です。
(8)決算書(損益計算書・貸借対照表など)
決算書(決算報告書)とは、会社のお金の状況を示すための書類です。正式には「財務諸表」と呼ばれます。
創業1期目の会社はまだ決算を出せないので、不要ですが、すでに決算書を作成している会社は必要となる書類です。
「決算書一式」と言われたら、法人税確定申告書、決算報告書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書が必要です。
書面で申告された場合は申告書等の控えに収受日付印が押されたもの、電子申告の場合は送信データを受け付けた証明となるメール詳細が必要です。
決算書(決算報告書)の詳細は下記の通りです。
- 損益計算書
事業の利益や損失を記した書類です。一年間の損益をまとめた経営成績を確認できます。
- 貸借対照表
会社の総資産、負債、純資産を記した書類です。資金調達と運用の流れが見える内容です。
- 株主資本等変動計算書
貸借対照表から株主資本の項目を抜き出して作成した書類です。
株主資本の各項目における変動自由を確認できるため、株式会社の場合はより細かな株主資本に関するデータを見て取ることができます。
- キャッシュ・フロー計算書
現金の増減とその理由を示す書類です。
期首の現金と期末の現金を比較し、その流れを把握することができます。
(9)納税証明書
法人、または代表者個人が税金を納めたことを証明する書類です。
きちんと納税している方かどうかを確認するための書類で、県や都の税事務所で発行してもらえる地方税(事業税)の納税証明書、税務署で発行してもらえる国税(法人税、所得税、消費税)の納税証明書が該当します。
(10)借入申込書
銀行へ融資を申し込むための申込書です。
金融機関によってフォーマットが違ったり、フォーマットがない場合もあるので、各金融機関に問い合わせして確認したり、直接出向いて申込書をもらいに行きましょう。
通常は、相談に行った際にその場で記入するケースが多いです。
日本政策金融公庫の「借入申込書」の書き方は当サイト関連メディアの下記記事で詳しく解説しています。
日本政策金融公庫の申し込みで必要な「借入申込書」の書き方とは?|資金調達ノート
(11)印鑑証明
登録された印鑑が本物であることを証明する書類です。
法人の代表者個人のものだけではなく、法人専用の実印も必要なので間違えないようにしましょう。
各自治体の役所で発行してもらえるほか、印鑑登録証を使用すれば、役所だけでなくコンビニの自動交付機からも取得が可能です。
(12)自己資金額等が確認できる書類
創業1年未満の法人が融資を受けるには、自己資金が必要額に対して一定割合必要になります。
日本政策金融公庫の場合は必要額に対して最低でも1/10以上、できれば半分は用意しておくのが望ましいです。
そのため、代表者個人の通帳など、自己資金の量や自己資金を貯めていく過程が見える書類が必要となります。
(13)商取引を証明できるもの
取引先が発行した注文書や発注書、契約書等を見れば、どのように仕事を請けているかの状況や、取引先との取引条件が確認できます。但し、見積書では証明として認められないケースが多いです。
(14)開業届(個人事業主の場合)
事業の開始のほか、事務所・事業所の新設や増設、移転や事業の廃止を行った際に、税務署へ提出する書類です。
2.事業内容や状況に応じて必要となる書類
事業内容や融資を受ける際の条件によっては、追加で必要な書類もあります。以下で場合分けしてご紹介します。
(1)個人事業主から法人成りして融資を受ける場合の必要書類
- 源泉徴収票または確定申告書
個人事業主、または別に本業があった場合の所得税額の証明書となります。
個人事業主が法人成りする場合は必須となる書類です。
- 個人事業の廃業届出書
法人成りする場合、個人事業主としての事業を廃業して新たに法人を設立する形になります。
そのため、個人事業主として廃業したことを確認するための廃業届出書が必要です。
(2)設備資金の融資の必要書類
- 見積書又は契約書
購入予定の設備金額の証明になる書類です。
設備資金は比較的長期契約の融資になりやすく、金額も大きいのでこういった必要金額に関する書類の重要度が特に高くなります。
- 土地売買契約書、重要事項説明書
土地を設備として購入する場合に必要な書類です。
土地を設備として購入する場合の必要資金額がわかるため必要になります。
融資を考えている場合は契約書の時点から金融機関に相談していきましょう。
- 建築確認書
新築時または改築時に県下一区の修了確認が取れたことを証明する書類です。
新築、増築資金の場合に必要となるので、大切にしまっておきましょう。
(3)不動産を担保に入れる場合の必要書類
- 登記簿謄本
法務局により商業登記簿謄本と同じく「登記事項証明書」としてデータ化されている書類。
取得方法も商業登記簿謄本と同じで、法務局に申請することで取得することができます。
- 建物図面
担保となる不動産の図面です。
法務局で必要書類に記入し、窓口に申請すれば発行してもらうことができます。
- 公図
土地の大まかな位置や形状を記した図面です。
法務局に備え付けの申請書に、担保不動産の地番をはじめとする必要事項を記入して発行申請を行うことができます。
- 固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書は、担保にする不動産の固定資産の所有者、所在地、土地の地名や地積、家屋の種類や構造、床面積、固定資産評価額、課税標準額などを証明する書類です。
担保となる固定資産を管轄する役所に申請することで発行してもらうことができます。
- 地積測量図
担保となる土地の測量図です。
土地の所在や面積、などを測量した結果が書かれています。
地積測量図も法務局に申請することで入手することができますが、担保不動産の管轄法務局である必要はなく、全国どこの法務局でも入手可能な書類です。
(4)許認可が必要な事業の場合の必要書類
事業が正当なものであることを証明するため、許認可や免許が必要な場合は、それを証明する証明書や免許証が必要です。
ご自身が展開する事業で許認可をどのよう取得できるか分からない場合、「〇〇業 許認可」で検索し、調査することをおすすめします。なお、許認可が必要な事業と窓口の一覧については、下記記事で詳しく紹介しています。
3.法人1年目の銀行融資の成功率を上げるために作成すべき書類
(1)銀行取引一覧表(銀行取引明細表)
各銀行との取引を行った履歴を書いた書類です。
提出することで金融機関の担当者が過去の取引について把握し、融資後の流れをシミュレーションしやすくなるメリットがあります。
過去の返済履歴を見ればその法人や代表者がしっかり返済を行えるかどうかや、どのような返済プランが向いているのかといった情報が得られるので融資の話し合いをスムーズに進めることができるのです。
(2)創業計画書
創業前から創業時、その後のビジョンをまとめた計画書です。
創業時でなければ必須ではないものの、創業前からの計画性があることと、それを実際に実行し、予測が合っていたなら今後の予測も成功する可能性が高いと印象付けることができます。
(3)コロナ関連保証
セーフティネット保証、危機関連保証の認定書です。
各自治体の役所にて発行してもらう認定書で、国のコロナウイルス感染症対策政策の恩恵を受けることができます。
創業1年未満だと前年度比較ができないのでコロナの影響で事業にダメージを負ったことの証明がしにくく、審査には多少通りにくいところもありますが、サポートを受けられれば通常の保証よりも保証率が高く、銀行にとってリスクが低い融資を受けることができます。
まとめ
創業後間もない場合、銀行から直接融資を受けるプロパー融資は受けにくく、創業1年目では融資を敬遠してしまう方も多くいます。
しかし、計画的に信用保証協会を利用し、かつ書類をしっかり準備すれば、創業2年を待たずとも銀行融資を受けやすい体制を整えることは可能です。
書類作成など、融資の準備に不安がある場合は、認定支援機関を利用して融資に関するサポートを受けるのもおすすめです。
当サイト「創業融資ガイド」を運営する株式会社SoLabo(ソラボ)も、融資を専門とする認定支援機関です。
さまざまな融資のサポートを行ってきた実績があるので、書類の作成や手続きに不安がある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。ご相談は無料で承ります。