銀行から融資を受けるというのはポピュラーな事業性資金の調達方法です。銀行はノンバンクから借入するよりも低金利というイメージを持たれていると思いますし、なるべく返済負担を抑えて融資を受けたいという人も多いのではないでしょうか。
実際に、銀行から融資を受ける時の金利相場はノンバンクと比較して低めの傾向にあります。ただし、融資方法によって金利が変わるほか、利息の支払い方法についても知っておかないと最終的な支払い総額が大きくなってしまうケースも存在します。
当記事では、銀行から融資を受けるときの金利相場と支払う利息について解説していきます。他の金融機関との比較や、金利が決定する要因についても説明しているので、銀行から事業資金の融資を受けることを検討している人は参考にしてみてください。
銀行融資の金利相場
銀行から事業資金の融資を受けるには、信用保証付き融資、プロパー融資、ビジネスローンの3種類の方法があります。それぞれ金利相場は異なるため、方法別に金利相場を次の表にまとめました。
【融資方法別の金利相場】
融資方法 | 金利相場 |
---|---|
信用保証付き融資 | 1.0%~3.0%ほど |
プロパー融資 | 1.0%~3.0%ほど |
ビジネスローン | 1.5%~14.0%ほど |
金利相場を見比べるときは、下限金利より上限金利に着目しましょう。下限金利は優良な事業状況や担保設定、利用頻度が高さなど諸条件に当てはまる一部の事業者しか利用できず、多くの場合は上限金利に近い値が適用されるためです。
上限金利に着目すると、ビジネスローンは他の融資方法と比べて高金利です。信用保証付き融資とプロパー融資は金利相場が近くはありますが、それぞれ保証料の有無と利用難易度に違いがあるので、事業のフェーズによって利用すべき融資方法は異なります。
事業フェーズに合わない融資に申込しても、審査落ちになったり入金が必要なタイミングに間に合わなかったりという、事業を続けていく上で不利になるリスクが発生します。そのため、単純に金利や利息負担だけを比較して融資方法を選択するのではなく、それぞれの特徴を理解したうえで自分に合った方法を選択するようにしてください。
信用保証付き融資の金利相場と特徴
信用保証付き融資とは、信用保証協会を通じて銀行から融資を受ける方法です。信用保証付き融資の金利相場は1.0%から3.0%ほどで、プロパー融資と並んで低金利で事業資金を借入できる融資方法といえます。
信用保証付き融資のメリットは、創業時でも銀行から融資を受けられる点です。実績のないうちは銀行から直接融資を受けるのは難しいですが、信用保証付き融資を利用すれば信用保証協会が返済を保証してくれるため、取引実績のない銀行からでも融資を受けられる可能性が高まります。
信用保証付き融資のデメリットは、銀行に支払う利息とは別に信用保証協会に保証料を払う必要がある点です。保証料は融資額や返済期間に比例して高くなります。一概にいくら程度になるかは断言できませんが、プロパー融資と比較すると信用保証付き融資の方が返済負担は重くなる可能性があります。
そのため、信用保証付き融資を利用するときには、想定している融資額と返済期間でどの程度の保証料が必要になるか確認し、それを含めた返済計画を立てると良いでしょう。保証料がいくらくらいになるかは、東京信用保証協会の「信用保証料について」のページを確認してください。
プロパー融資の金利相場と特徴
プロパー融資とは、保証機関の保証なしに銀行自身がリスクを負って行う融資方法です。プロパー融資の金利相場は信用保証付き融資と同じく1.0%から3.0%ほどで、ビジネスローンと比較して低金利で融資を受けられます。
プロパー融資のメリットは、返済負担を抑えて融資を受けられる点です。信用保証付き融資と比較すると保証料の支払いが不要で、ビジネスローンと比較しても低金利で融資を受けられるため、3つの方法の中で最も支払額を抑えられるのがプロパー融資の長所と言えるでしょう。
プロパー融資のデメリットは、創業時や取引実績のない銀行から融資を受けるのが難しい点です。プロパー融資は銀行自身が融資の保証を行うため、貸付には慎重な審査が行われます。取引の実績のない事業に対する融資は、貸し倒れリスクが算出しにくいため、最初からプロパー融資を受けられるケースは少ないです。
以上から、プロパー融資は低金利で保証料の支払いが不要なため返済負担を抑えられる一方、利用する難易度が高い融資方法であるといえます。プロパー融資を受けられるようにするには、他の融資方法で返済実績を作った上で、取引実績のある銀行に相談することが重要です。
ビジネスローンの金利相場と特徴
ビジネスローンとは、主にノンバンクが保証会社として審査を行っている銀行の事業者向け金融サービスです。ビジネスローンの金利相場は1.5%から14.0%ほどであり、上限金利は他の融資方法と比較して高めに設定されています。
ビジネスローンのメリットは、融資速度に優れる点です。信用保証付き融資やプロパー融資は、申し込みから借入まで1か月以上の期間が必要になるケースが多いのに対し、ビジネスローンは審査が数日で終わるため、申し込みから1週間以内に入金されるケースが多いです。
ビジネスローンのデメリットは、他の融資方法と比較して金利が高い点です。金利が高ければ返済負担が増えるのは当然で、融資額に比例して利息額も大きくなるため、場合によってはビジネスローンの利息支払いが経営を圧迫する可能性も出てきます。
ビジネスローンは融資速度に優れるものの、高金利な融資方法であるため、利用を続けると事業を圧迫する恐れがあります。利用する時には、思わぬ出費に対して少額の融資を受け、返済負担を増やさないようにするのが良いでしょう。
銀行以外の金融機関との金利比較
事業資金の融資を受ける時、利用できる金融機関と銀行との金利を次の表で比較してみました。
【金融機関別の金利相場】
金融機関 | 金利相場 |
銀行 | 1.0%~3.0%ほど
(ビジネスローンは~14%ほど) |
日本政策金融公庫 | 1.7%~3.55% ※ |
ノンバンク | 3.0~18.0%ほど |
※ 日本政策金融公庫の金利については24年8月20日時点の相場を記載。最新の金利については「日本政策金融公庫の金利が更新されました」のページを参考にしてください。
事業資金の融資を受ける場合、ノンバンクと比較して銀行の金利相場は低めの傾向にあります。また、同じ銀行の中でも、扱っている融資方法によって違いがあり、ビジネスローンよりも信用保証付き融資やプロパー融資の方が低金利で借入できる傾向にあります。
日本政策金融公庫と銀行融資の金利相場は近いものの、上限金利に関しては信用保証付き融資やプロパー融資の方がやや低めです。ただし、日本政策金融公庫は保証料の支払いが不要なうえ、創業時にも利用できるというメリットがあるため、どちらから融資を受けるべきかは事業者の状況によって異なります。
また、ノンバンクは最短で即日の融資ができるなど独自の特徴があるため、どの金融機関から融資を受けるべきかは融資を受けたい動機によって異なります。どこから融資を受けるかは、金利だけでなくその他の特徴も加味した上で、総合的に判断することをおすすめします。
金利が決定される要因
銀行から融資を受ける時に適用される金利は、次のような要因によって決定されます。
【金利の決定要因】
- 担保設定の有無
- 返済期間
- 事業計画書
- 借入の時期
金利の決定要因となるのは、完済までのリスクです。完済の見込みが高く、銀行側から見て融資のリスクが低い場合は金利が下がり、逆の要因が多いほど上限金利に近い値が適用されます。
ただし、最終的な金利は複合的な要因で決まるほか、時期的要因などコントロールできない要素もあるため、債務者側から能動的に金利を下げることは難しいです。そのため、金利の決定要因はあくまでも参考要素として捉え、可能な場合には銀行の担当者にそれを伝えながら手続きを進めることをおすすめします。
担保設定の有無
銀行から事業性資金の融資を受けるときの金利は担保設定の有無によって変動し、担保を設定したほうが金利が下がります。債務者が返済できなくなった時に担保を抵当に入れることで銀行側は元金を回収できるようになり、貸し倒れのリスクを低減するためです。
銀行から事業資金の融資を受けるときに担保として設定できるのは、一般的には不動産です。不動産を担保に設定してどれくらい金利が下がるかは査定の結果によって決まるため、一概に断言することはできません。そのため、担保に設定できる不動産を所持している場合は、銀行の窓口でその旨を伝えた上で査定を受けると良いでしょう。
有価証券などの金融資産を担保として設定できるケースもありますが、実際に担保にできるかは金融機関の判断によります。有価証券を担保として設定したい場合に関しても、利用を検討している銀行の窓口で相談してみることをおすすめします。
なお、不動産以外にもABL(Asset Based Lending)という、機械設備や在庫、売掛債権を担保にする融資もありますが、その場合は専門のABL融資というサービスが適用されるため、金利を抑えるための担保としては設定できない点には注意が必要してください。
返済期間
銀行から事業資金の融資を受けるときの金利は、返済期間によって変動し、期間を短く設定したほうが金利は下がります。返済期間が短いほど金利が下がるのには、次のような要因があるためです。
【返済期間が短いほど金利が下がる要因】
- 金利変動のリスクを受けにくくなる
- 銀行側が素早く資金を回収できる
- 銀行側の管理コストが下がる
金利が下がる可能性があるとはいえ、返済期間が短いほど月々の返済額が増加するというデメリットもあります。利息の支払いが事業を圧迫して資金繰りが悪化する可能性もあるため、金利を下げるためだけに無理に返済期間を短く設定することは避けるべきです。
また、返済期間は審査の結果として決まるため、申込者の希望だけで決めることはできません。返済期間の相談は可能なので、事業の成長見込みを担当者と話し合い、返済負担が事業を圧迫しない範囲で返済期間の要望を出してみると良いでしょう。
事業計画書
銀行から事業資金の融資を受けるときの金利は、提出する事業計画書によって変動する可能性があります。
事業計画書によって金利が下がる要因の一つは成長戦略です。融資を受けることによって革新的な事業を行い、利益が出せる成長が見込めると判断されれば、リスクの低い融資先として金利が下がる可能性があります。
また、財務状況が良好であれば金利が下がる可能性があります。財務状況が良好であれば、融資を受けるのは赤字の補填や事業再建のためではないと証明できるため、金利が下がる可能性があるのです。
成長戦略や財務状況は事業計画書から判断されるため、金利を抑えたいときは専門家の力を借りるなどして、銀行の担当者にとって魅力的な融資先と感じてもらえるような事業計画書を作成するよう心がけてください。
借入時期
銀行から事業資金の融資を受けるときの金利は、借入時期によって変動します。借入時期による金利の変動要因は、融資の上限と下限を決定します。
【借入時期による金利変動要因】
- 中央銀行の政策金利
- 債券価格
- 季節性
市場の原則として、借入時期による金利変動は主に国内の経済状況が反映されます。景気が上向きのときには中央銀行の政策金利は上がり、債券価格が下落し、融資の需要が減った結果、金利は上昇する傾向にあります。
2016年から始まったマイナス金利政策によって日本の政策金利は低く抑えられているため、それに応じて銀行融資の金利も低い水準で推移しています。そのため、国内における金利決定の時期要因は、債券価格と季節性によるものが大きいです。
借入時期による金利の変動要因は債務者がコントロールできるものではないため、金利の引き下げに関して債務者側から能動的にできることは少ないです。金利が下がる市場を待つことでビジネスチャンスを逃す可能性もあることを考慮し、時期要因は参考程度に留めておくと良いでしょう。
利息の計算方法
銀行から事業資金の融資を受けたとき、支払い1回あたりの利息の計算方法は次のようになります。
【1回の支払いにかかる利息の計算方法】
元金×金利(年率)/365(※)×借入日数 |
※うるう年なら366で計算する
融資金額に対して適用される金利は、原則として年率です。年率とは、元金に対して1年間にかかる利息の割合を示したものであり、利息の計算では元金に金利を掛けた数値を1年間の日数で割り、さらに借入日数を掛けて1回あたりの支払利息を計算します。
たとえば、120万円の融資を受けたときに1か月(31日間)にかかる利息は、120万円×3.0%÷365×31=3,057円です。この金額に元金返済分を加えた金額が、1回の支払いあたりにかかる金額になります。
支払利息は借入期間に比例するため、可能な限り返済期間は短く設定したほうが利息支払いは抑えられます。ただし、返済期間が短くなると1回あたりの返済負担が大きくなるため、適切な返済期間については融資の担当者と相談しながら決めると良いでしょう。
利息の支払総額は返済方法によって異なる
利息の支払い総額は、返済方法によって異なります。返済方法には元利均等方式と元金均等方式の2つがあり、それぞれに特徴があります。
元利均等方式とは、元金返済と利息の支払いを一定にする返済方法です。毎月決まった金額を返済するので計画が立てやすく、とくに返済開始時の支払い負担が軽いというメリットがある一方、元金返済が遅れるため、最終的な利息総額は元金均等方式と比較して高くなります。
一方、元金均等方式とは、毎月一定の元金返済に利息を上乗せする返済方法です。元金の減りが元利均等方式と比較して早いため、最終的な利息支払いを抑えられますが、初期の返済負担が重くなるという特徴があります。
たとえば、120万円の融資を1年間で返済しきる場合、元利均等方式と元金均等方式では、月々の支払いと利息の総額には次のような違いが出てきます。
【元利均等方式と元金均等方式の支払い比較】
月 | 元利均等方式 | 元金均等方式 | ||
支払額 | 利息 | 支払額 | 利息 | |
1か月目 | 100,000円 | 3,057円 | 103,057円 | 3,057円 |
2か月目 | 100,000円 | 2,538円 | 102,531円 | 2,531円 |
3か月目 | 100,000円 | 2,562円 | 102,547円 | 2,547円 |
4か月目 | 100,000円 | 2,239円 | 102,219円 | 2,219円 |
5か月目 | 100,000円 | 2,064円 | 101,972円 | 2,038円 |
6か月目 | 100,000円 | 1,756円 | 101,783円 | 1,726円 |
7か月目 | 100,000円 | 1,564円 | 101,479円 | 1,528円 |
8か月目 | 100,000円 | 1,314円 | 101,273円 | 1,273円 |
9か月目 | 100,000円 | 1,028円 | 101,019円 | 986円 |
10か月目 | 100,000円 | 810円 | 100,739円 | 764円 |
11か月目 | 100,000円 | 539円 | 100,509円 | 493円 |
12か月目 | 119,744円 | 304円 | 100,254円 | 254円 |
総額 | 1,219,744円 | 19,775円 | 1,219,382円 | 19,416円 |
試算では利息の支払いは数百円程度の違いにとどまりますが、元金の大きさや返済期間の長さによっては、数万円単位の違いが出てくることもあります。それぞれの返済方法にはメリットとデメリットがあるため、特徴を確認したうえで返済方法を選択すると良いでしょう。
利息の支払総額は支払い回数によって異なる
利息の支払い総額は、支払いの回数によって異なります。支払い回数の頻度によって金利が適用される元金が変わっていくため、支払い回数を増やすほど利息の支払いは減っていくためです。
たとえば、120万円の融資を元利均等方式によって1年間で返済する場合、毎月払いをする場合、年2回支払いをする場合、最後に一括返済をする場合だと、次のように利息の総額が変化します。
【支払い回数による利息総額の違い】
支払い回数 | 利息総額 |
年12回(毎月払い) | 19,775円 |
年2回 | 27,067円 |
年1回(一括払い) | 36,000円 |
利息の総額をなるべく抑えるのなら、支払いは毎月した方がお得になります。ただし、事業状況によっては毎月の支払いが厳しいケースなども考えられるので、年に何回の支払いをするのが適切か断言することはできません。
そのため、融資を受ける前に融資の担当者と相談しておき、事業の成長成長戦略に合わせた支払い回数を設定するようにしてください。融資を受けて早期からの事業成長を見込める資産であるならば、支払い回数を増やして早めに元金を減らしていくと良いでしょう。
まとめ
銀行から事業性資金の融資を受ける際の金利相場は、信用保証付き融資とプロパー融資で3.0%ほど、ビジネスローンで14.0%ほどです。しかし、それぞれの融資方法で特徴が異なるため、金利以外の面からも自社にあった融資方法を選択するのが良いでしょう。
金利を下げるためには、完済できる見込みが高く、貸し倒れのリスクが低いと審査によって判断される必要があります。ただし、金利決定のメカニズムは市場の状況など複雑多岐に渡るため、申込者の側でコントロールすることは難しいです。
最終的な支払いを抑えるなら、低金利で融資を受ける以外にも利息負担を減らすという方法があります。返済方式や支払い回数を確認した上、なるべく利息負担を抑えられる返済方法を選択することをおすすめします。