AI審査とは?中小企業向け融資のAI審査の仕組み

AI審査(人工知能での審査)は、オンライン融資(オンラインレンディング)などで採用され、活用が広がっています。人力での審査に比べて「オンライン融資はスピーディーで審査結果がブレない」と評価されつつあります。

今回はAI審査の基本として、AI審査による融資の変化、AI審査の仕組みとして必要なデータやデータ分析方法、中小企業向け融資のAI審査基準についてご紹介します。

AI審査:中小企業が融資を受けやすくなる仕組み

AI
出典:PIXTA

AI審査でできるようになること

AI審査は、銀行口座の入出金記録などのデータをもとに、人工知能(AI:エーアイ)を活用して実施する審査のことです。金融分野でのAIはオンライン融資の活用で注目されています。

AIと普通のコンピュータシステムを分ける点を一言でシンプルに表現すると「学習できるかどうか」です。

普通のコンピュータシステムは、1から100まであらゆる条件下の正しい行動を指定しないと正しく振る舞えません。一方で、A Iは「どういう行動が正しいか」を教えて方法を導き出す学習(機械学習)を終えたら、別の微妙に異なる条件になっても、正しい振る舞いをA I自身で導き出せます。

A Iに学習をさせるには、正しい行動パターンの莫大なデータ(ビッグデータ)が必要です。AI審査のケースでは「きちんと返済できた顧客の属性や融資条件」や「審査落ちした顧客の属性や融資条件」といった、質のよい融資周りのデータの有無によって、AI審査としてできるようになることの範囲も決まります。

AI審査による融資の変化:活用例のオンライン融資を例に

AI審査を取り入れることで、次のように融資が変わるだろうと言われています。

  • 貸し倒れをしない顧客を見極める効率が向上する(融資の効率化)
  • 自動化によって、目視でのチェックを減り、融資審査の人的コストが減る
  • 顧客対象にできる層が広がり、中小企業が融資を受ける機会が増える

あわせて、すでに活用されている「オンライン融資」の特徴も、みていきましょう。

オンライン融資の特徴は次の3つです。

  • 申込みから融資の実行まで、すべてオンライン上で完結する
  • 従来の「人による審査」の融資サービスと比べて書類が少ない
  • 人が介在する融資と比べて、オンライン融資の審査は早い

オンライン融資に関して詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

人が審査を行う従来の融資サービスと比べ、オンライン融資はスピーディーかつ、オンラインで完結した審査・融資実行が実現できます。AI審査によって「融資の効率化」が図れると言えるでしょう。

また、AI審査は、銀行などの貸す側の「貸し倒れなく、できるだけ多くの人に融資する」方針を推し進めることになるため、金融機関側の売上にもつなげられます。

貸し倒れする人を見極めは、従来、個々の融資担当者の力量次第でした。AI審査では、AIの判断で取り行えるため、ブレも出にくくなります。融資の効率化によって、融資担当者は今まで手が回らなかった顧客に対応する余裕も生まれるでしょう。

もともと中小企業は、事業を始めたばかりで実績が出ていなかったり、経営が安定していなかったりと「融資では不利な状況にある」のが通説です。貸す側からすると「審査に時間がかかる割に貸せない」という判断で、金融機関から融資の対象として、魅力的に思われない状況がありました。

オンライン融資をはじめとしたAI審査の普及によって、今まで見逃していた商機を見極める余裕ができるでしょう。最終的に「中小企業が融資を受ける機会が増える」と予測されています。

AI審査の特徴:早い・休まない・揺らぎがない

融資の変化でも説明した通り、AI審査には、次の3つの特徴があります。

  • 審査が早い:決められた判断基準で自動的に判別するため、審査が早いです。
  • 審査を休まない:人であれば稼働が止まる休日・夜間でも休まず審査できるため、審査できる件数が増えます。
  • 審査で揺らぎがない:人であれば経験の有無や、印象などで判断の差異がでてしまいますが、情報量や判断軸が決まっているため揺らぎのない審査ができます。

早い・休まない・揺らぎがないという一般的なAIによるメリットが、オンライン融資の審査スピードに貢献していることがわかります。

AI審査によって変わる中小企業向けの融資の流れ

AI審査で中小企業向けの融資の流れはどのように変わるのかみていきましょう。

 従来の融資の流れ(AI審査なし)

人が対面で審査する従来の融資の一般的な流れは、

  1. 決算書など必要な資料を紙で提出
  2. 内容に人が目を通し、業界の動向等調べつつ顧客について理解
  3. 面談で定性面を含めて審査(必要に応じて現地調査)
  4. 融資実行

の大きく4ステップです。資料を郵送したり、直接面談したりするため、申込みから実行までに1ヶ月~1.5ヶ月程度かかります。

 オンライン融資の流れ(AI審査あり)

AIが審査するオンライン融資の流れは

  1. インターネットから申込み
  2. AI審査(AI審査部分は自動審査。AIでは判断できないグレーゾーンのみ人が審査)※
  3. 融資実行

の大きく3ステップです。すべてオンラインで完結し、審査もAIで自動化されて即時判断できる場合もあるため、1営業日で実行されるケースもあります。

※AI審査はサービスによっても仕組みが異なります。

AI審査の仕組み

進化するAI審査:必要なデータと分析方法

AI審査の仕組みは、日々進化しています。AI審査の精度を進化させるのはデータと分析方法です。それぞれ、現在のトレンドをみてみましょう。

AI審査に必要なデータの拡充

現在、AI審査に必要なデータとして、次のものが使われつつあります。

  • 会計データ
  • 取引データ
  • 銀行口座情報
  • クレジットカード情報
  • 顧客属性情報
  • ソーシャル情報

以前は、決算書などの会計データのみでAI審査をしていました。現在は、取引データなどの日々更新されるデータや、SNSなどの会社をとりまく定性的なデータを加えることで、より正確な審査につなげています。

また、オンライン融資サービスの中には、「自社の口座を持っている方」「提携先の会計ソフトを使用されている方」など利用者の対象を絞っているケースがあります。それは、A I審査に口座データや提携先の会計ソフトのデータを審査に活用するためです。

AI審査で必要なデータはサービスによって様々ですが、AI審査に必要なデータは同意のもと利用許可し、SNSのアカウントや会計ソフトと連携して提供できるため、審査のための融資書類を揃える労力は最小限で済むでしょう。

データ分析の方法と段階的な活用

深層学習(ディープラーニング)はAIが法則を導き出すため、システムに組み込むと、ブラックボックス化するとも言われています。

現在AI審査で主流のデータ分析方法は「なぜ審査に落ちたのか」を説明できる機械学習です。もちろん、AI審査を自動化するために採用されるデータ分析方法は、それぞれのサービスによって異なります。

また、複数の分析を組み合わせたデータ分析手法も進められています。

例えば、「1年間という期間でみた企業の実力と、急激に伸びた・悪化したなどの直近の状況を含めて判断したい」というAI審査ニーズがある場合、年に一度更新される決算書などの会計データによる格付と、入出金などの日々更新されるデータによる格付の2種類を使用することで、より審査の精度が高くなると考えられます。

これからAI審査は段階的に自動化されていくでしょう。すべてを人の目で審査していく段階、AIで人が審査するためのデータを抽出するなど審査の補助をしていく段階、一部AIで自動審査をする段階、全く人が入らずAIで自動審査する段階…などです。

一般的に、現在のAI自動審査では、融資実行の「できる」「できない」の最終判断は人が行います。また、人が判断すべき「保留」というグレーゾーンの判定結果もあります。現在のオンライン融資やAI審査については「一部、自動審査する段階」まできていると言えるでしょう。

「AI審査は使えない」は2000年代前半の失敗例からくる誤解

「AI審査は使えない」という誤解が根強く残っています。いくつかきっかけはありますが、最大の理由はリーマンショック前後、AI審査の融資で「貸し倒れ」件数が増えたことでしょう。AI審査したのに貸し倒れした事実から「AI審査は使えない」と敬遠された時期もありました。

ここではAI審査が失敗した理由、2000年代前半の失敗例をひも解き、AI審査を恐れる必要はないこと、AI審査が万能ではないことをおさえましょう。

AI審査に必要なデータの不備

2000年代前半、ほとんど決算書のみのデータで判断して、結果、融資の失敗につながりました。AI審査で落ち入りがちな失敗「データの不備」について知っておきましょう。

  • 決算書の内容が間違っていて、間違った決算書を元に審査をしてしまった(AI審査の工程で、決算書のインプットデータの正誤チェックがなかった)
  • 決算書は年に1度作成するため、融資の申込みタイミングでは状況が変わっていた。古い状況の決算書を元に審査をしてしまった(AI審査の工程で、インプットするデータの妥当性をチェックできなかった)
  • 決算書は過去の結果をまとめた書類であるため、現在~未来の市場の動向などの周辺情報は審査に影響しなかった。その結果、決算書以外の状況の変化を踏まえずに審査をしてしまった(決算書以外で見るべき審査項目がAI審査に盛り込まれなかった)

AI審査で落ち入りがちな失敗は審査の精度に影響し、審査に通過したものの、結果的に返済できずに「貸し倒れ」になるケースが目立ちました。

未熟なロジックによるデータ分析

2000年代前半、データの不備だけでなく、データを分析するルールのロジックも未熟だったと考えられます。

例えば、データ分析のルールによって、審査の精度は大きく変わります。「利益の額が3段階、持っている資産の額が3段階の9通りで分析して結果を出す」ルールと、「利益の額が3段階、持っている資産の額が3段階、売上の額が3段階の27通りで分析して結果を出す」ルールでは、当然、後者の方が高い精度で審査できます。

今ではAI審査の技術がすすんで、複雑なロジックでのAI審査ができるようになっていますが、昔は未熟なロジックで分析によって失敗したものと考えられます。

AI審査の審査基準

次にAI審査の審査基準について説明します。利用するサービスによって、使われるデータもロジックも異なるため、審査基準を把握するポイントを押さえていきましょう。

AI審査の基準は「参照するデータ」で作られる

AI審査の審査基準を知る最初の一歩は「参照するデータ」、つまり、何の情報をもとに作られたかを知ることです。

AI審査の審査基準は、金融関連機関が持っている過去の融資情報のデータをもとにA Iに学習させて、審査基準を作るのが一般的です。

AIの学習によいデータベースは「抽出したい成功データ」だけでなく、「失敗データ」も含めて豊富なデータがあるとより精度の高い分析ができます。

例えば、2000年代初期のデータベースは、「貸し倒れしない人」のデータで基準を作っているケースが多かったようです。しかし、「貸し倒れする人」のデータが抜けていたため、審査結果の精度が低かったようです。

AI審査の提供を予定している株式会社SoLabo(ソラボ)の例をみてみましょう。顧客の特定の経営情報を入力することで経営スコアを表示することができるAIツール「AI創業スコア」「AI経営スコア」の開発(特許出願)をすすめています。

元々、株式会社SoLabo(ソラボ)では、主要事業として「経営者への資金調達支援」を通じて、中小企業や個人事業主からの融資相談40,000件以上のデータベースを保有しています。中には、あらゆる金融機関の融資についての累計4,500件(2021年8月末時点)の融資成功データ、それ以外の融資不可データの両方が蓄積されているので、豊富な融資に関るデータでA I審査の基準を作り、精度の高い分析が可能です。

中小企業、個人事業主の融資審査をAIで支援。株式会社SoLaboがAIツールを2021年中に販売|株式会社SoLaboのプレスリリース

AI審査で審査されるのは「会社をとりまく今の状況」

AI審査を活用する今も、人の目で見定める昔も「お金を貸しても貸し倒れをしない人なのか」を多面的に審査しているに過ぎません。目的が同じであれば、大きく昔と審査基準が変わるとは考えにくいでしょう。

しかし、多様なデータが審査に使われるようになりつつある今、審査基準も細かく多様化しつつあるのは事実です。

昔は審査されなかった会社の側面が審査されること、「会社をとりまく今の状況」をAI審査される覚悟を持ちましょう。

例えば、複数ある取引先の会社の格付けや、それぞれの会社からの売上規模、ニュースリリースに対しての個々のユーザーのSNSのオープンなコメントなども、AI審査に影響する可能性もあります。

SNSでの評判や取引先の動向、売上規模の変化など、より細かくリアルタイムで審査できるようになるため、良くも悪くも融資審査にごまかしがきかなくなります。

SNSでの評判は一朝一夕で変わるものではないため、融資対策の一つとしてwebマーケティングに力をいれていくこともおすすめです。

まとめ

今回はAI審査の基本として、AI審査による融資の変化、AI審査の仕組みとして必要なデータやデータ分析方法、中小企業向け融資のAI審査基準について説明しました。

AI審査を用いることで、より早く正確に多くの融資案件に対応できます。その結果、金融機関の人的資源に余裕ができ、以前は見逃されていた商機にチャレンジできるようになるでしょう。とはいえ、まだまだAIは発展途上の技術であるため、しばらくは「融資できる・できない」の最終判断は人の目が必要でしょう。

ただ、今までは審査されていなかったSNSなどの反応を含めて「会社をとりまく今」の情報は広がり、審査対象になる可能性があります。進化するAI審査の動向を追うとともに、対策をしていきましょう。

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