相手の目標達成に必要な気づきを促すように対話を重ね、自発的な行動を支援する手法、コーチング。身近な例では、スポーツの場面でスポーツを教える先生が「コーチ」と呼ばれ、教える生徒にコーチングをしています。このコーチング、ビジネスコミュニケーションの場面でも大いに役立つ場面が多く、キャリア形成のために資格取得を目指すビジネスパーソンも少なくありません。
なぜ今、コーチング資格が求められているのでしょうか。代表的なコーチング資格3つ、取得費用と一緒にご紹介します。
目次
1.コーチング資格が求められる背景
コーチングは、相手の目標達成に必要な気づきを促すように対話を重ね、自発的な行動を支援する手法です。コーチングをする人(コーチ)が必要だと相手に気づかせるのは、視点・考え方・スキル・知識等の不足であったりします。(コーチングについて詳しく確認されたい方は「コーチングをビジネスで使うとどんな効果がある?メリット・デメリットは?」をご覧ください。)
コーチングという手法が注目されている大きな理由は、人材育成に有効だからです。コーチングを活用することにより、相手の目標達成をサポートしつつ、自ら問題を考え、取り組むような自立型の人材を育成することができるのです。
ビジネスは一人でできるものではありません。いかに人材を集め、生み出し、育てることができるかが、その成功を左右します。また周りの人だけではなく、自分自身にコーチングを行う「セルフコーチング」で課題を明確にし、問題解決につなげるような活用もでき、ビジネスで欠かせないヒューマンスキルの一つと言っても過言ではないでしょう。
資格は必要?
コーチングは、現時点で国家資格はありません。コーチングをするのに資格は要りません。実際、スイミング教室で子どもに水泳を教えるコーチが、採用時にコーチング資格を求められるということもないはずです。しかし、多くの民間団体がコーチングの資格を認定しています。なぜなのでしょうか。
大きな理由として、コーチングが人に大きな影響を与えるため、と言えるでしょう。
コーチを志す人が、民間資格を通して、有効なコーチング手法をちゃんと学びたいと考えるのは、自然なことです。現在、小学校や中学校の教師になるには教職課程を経て教員免許を持っていなければなれませんが、これらも国家資格ではありません。そして、教師の子供に対する影響力を鑑み、教職に国家資格制度を導入してはどうか、という議論が続いています。コーチングも同様、人に影響を与える性質やその専門性から、ある日、国家資格として設定されたとしても不思議はないでしょう。
2.代表的なコーチング資格3つ
ここでは、代表的なコーチングの民間資格を3つご紹介します。他にもコーチング資格はありますが、ビジネスパーソンがキャリアアップを目的として取得する場合、取得費用が高くとも、普遍性のある、有資格者の多い資格を選択することをお勧めします。3つの中で迷う場合、自身が目指したいキャリアをお持ちの方が持っている資格を選んだ方が、より無難です。共通してコーチの実践経験が問われることも多いので、取得までの道のりは長いことを覚悟しましょう。また、多くの場合、毎年更新費用がかかるため、費用をかけずにコーチングの方法論を学べればよいという場合、他の資格を選択するのもよいでしょう。
なお、業界によってはこの他の団体によるコーチング資格の方が有利なケースもあります。どのコーチング資格を取得するか特色などを比較しながら、自身の目的にあったものを選びましょう。
Ⅰ.国際コーチ連盟(ICF)から認定のコーチ資格
国際コーチ連盟(ICF)から認定を受けている、国際的コーチング資格です。国内では、非営利型(経済的利益を目的としていない)一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(別名:ICF ジャパン)が運営しています。
取得できる資格には、トレーニング時間・コーチング経験が短い順に、以下のものがあります。
国際コーチ連盟(ICF)自体は、コーチングのプログラムを持ちません。しかし、コーチングを学ぶのに適したトレーニング・プログラムの評価基準があり、その基準を満たした外部団体・組織によるトレーニングを評価します。トレーニングプログラムを受けさせ、条件を満たした学習者を有資格者として認定するのです。また、認定したプログラム以外でも、それと同等であると認められるコーチング実績やスキルがあることを証明(ポートフォリオパス)できれば、それもまた有資格者として認定しています。
そのため、国際資格の「国際コーチ連盟(ICF)認定コーチ資格」の取得費用は、各人によって異なり、モデルケースのような算出はできません。
国際コーチ連盟(ICF)により認定を受けた、包括的なコーチ・トレーニング・プログラムは「ACTP」と呼ばれます。完全に受講が完了した場合、「プロフェッショナル認定コーチ(PCC)」になり得る知識やスキルを身につけることが可能です。
ICF認定の資格取得が初めての方は・・・
初めて国際コーチ連盟(ICF)のコーチング資格取得を目指す方は、まずACTPを受講完了して「アソシエート認定コーチ(ACC)」の資格認定を申請することを目指します。その後、ウェブテスト「コーチ・ナレッジ・アセスメント(CKA)」を受験し、一定の条件を満たすことで、「プロフェッショナル認定コーチ(PCC)」の申請が可能になります。コーチ経験を積むなどの条件を満たすと、「マスター認定コーチ(MCC)」の申請が可能になります。
Ⅱ.一般財団法人生涯学習開発財団から認定のコーチ資格
財団法人生涯学習開発財団(文部科学省の外郭団体)の応援や援助を受け、1998年に始まった日本で初めての「コーチ認定制度」で、これまで延べ7,000人以上が資格取得しています。日本で最も多く取得されているコーチング資格と言われており、コーチング初心者におすすめできる資格です。日本におけるコーチングのスタンダードな資格です。
取得できる資格には、トレーニング時間・コーチング経験が短い順に、以下のものがあります。
株式会社コーチ・エィ (COACH A Co. Ltd.)によるコーチング・プログラム「coachAcademie(コーチ・エィ アカデミア)」を履修し、コーチング実践経験を積むなどの条件を満たすと取得できます。ビジネスリーダーがコーチングの理論・スキル・実践方法を身に着けるための方法論に特徴があります。
講座内容は大きく「リーダー向けコース」と「プレミアムコース」に分かれます。プレミアムコースを履修し、一定の条件を満たすと、先に挙げた国際資格の「国際コーチ連盟認定(ICF)コーチ資格」を取得することができます。
一般財団法人生涯学習開発財団認定の資格取得が初めての方は・・・
一般財団法人生涯学習開発財団の資格を取得するなら、リーダー向けコースで充分ですが、ゆくゆくは国際資格の取得を、と考えている方は、プレミアムコースを選ぶとよいでしょう。
Ⅲ. 一般社団法人日本コーチ連盟(JCF)から認定のコーチ資格
一般社団法人日本コーチ連盟が認定している、コーチング技能の実用的な水準を満たしていることを明らかにする資格です。字面が似ていますが、日本コーチ連盟(JCF)は、国際コーチ連盟(ICF)と組織上、何も関連しません。
コーチングの研究・発展が目的の団体で、独立した専門の機関として、非営利型(経済的利益を目的としていない)のコーチ養成機関「コーチアカデミー」を設立し、大学公開講座の開講、検定試験の実施などを行っています。
取得できる資格には、トレーニング時間・コーチング経験が短い順に、以下のものがあります。
さらに、キャリアを積むとコーチングについて教授できる「一般社団法人日本コーチ連盟公認マスターコーチ」、「一般社団法人日本コーチ連盟公認アカデミーコーチ」というインストラクター資格を得ることができます。
JFC認定の資格取得が初めての方は・・・
初めて日本コーチ連盟のコーチング資格取得を目指す方は、「一般社団法人日本コーチ連盟認定コーチング・ファシリテータ」の取得を目指しましょう。コーチ養成プログラムを受講し、検定試験を受けることが一般的です。それ以上の資格は、前提資格を保持した上で、特定のコースの修了、あるいは一定の条件を満たすことで取得できるように設計されています。
まとめ
ビジネスで欠かせないヒューマンスキルであるコーチング。どんな業界・職種であっても、あなたのキャリアアップにつながる資格です。代表的なコーチング資格を取得するには、時間だけでなく相応の取得費用、更新費用がかかりますが、それに見合うだけの結果はついてくることでしょう。
それでも、いきなりコーチング資格取得するのにためらいを覚えるなら、まずは身近なところで短期のコーチングセミナーやスクールが開催されていないか探して、参加してみるとよいでしょう。その小さな一歩が、あなたの未来を輝かせる第一歩となることを願っています。