経営力向上計画を策定することで自社の生産性向上を目指すだけでなく、様々な優遇措置を受けることも出来ます。
経営力向上計画は国へ申請する計画であることから、作成が難しいのではないかというイメージを持つ人もいると思います。しかし、注意点やポイントを抑えて書くことができれば、認定の可能性も十分ありえます。
そこで今回の記事では、経営力向上計画の書き方について解説します。
なお、認定支援機関に申請書類の作成サポートを依頼することもできます。当社SoLabo(ソラボ)でも受け付けているので、詳しく知りたい方はご相談ください。
お問合わせの際は「経営力向上計画の件」とお伝えいただくとスムーズに担当にお繋ぎできます。
目次
1.経営力向上計画の申請書様式をダウンロードしよう
まずは経済産業省HPから申請書様式をダウンロードしましょう。
下記のサイトに申請書様式や業種別の記載例もありますので、自社の業種の記載例も合わせて用意します。
2.経営力向上計画策定のポイント
経営力向上計画を作成するうえで大切なのは、自社の現状を分析し、経営力向上するための今後の取り組みを申請書に反映することです。
一般的に申請してから30日程度で認定される経営力向上計画ですが、書類に不備があると手続きに時間がかかってしまいます。次の3つのポイントをおさえて経営力向上計画を策定しましょう。
- 内容を複雑に書かず、書くべきことを漏らさず書く
- 要点を押さえて8行~10行程度で記載する
- 手引きと記載例に沿って、自社の計画にする
経営力向上計画は、策定された経営力向上計画の申請書に点数をつけて可否を判断したり、認定を出す件数が予め決まっていたりするものではありません。国の指針に沿った計画であることが求められている制度です。
現状を適切にとらえ、今後の生産性向上が見込まれる合理的な内容で計画を作成することが出来れば、認定後、金融機関等への説明資料としても利用できることでしょう。3つのポイントを踏まえて経営力向上計画を策定しましょう。
3.経営力向上計画の書き方①申請書(1枚目)を記入しよう
(1)住所や会社名、代表者名を記入
「経営力向上計画に係る認定申請書」へ経営力向上計画策定の手引きに従って、申請書に自社の住所や会社名、代表者名を記入しましょう。日付は提出日または郵送日を記入します。
手引きは下記から確認できます。
(2)どの印鑑を押すか
氏名を自署する場合、押印は省略できます。押印する場合は、実印を使いましょう。
(3)宛先はどこか
経営力向上計画の事業分野(業種)を所管する大臣です。ただし、所管大臣が権限を委譲している場合、地方支分部局の長になります。
例)埼玉県の製造業(一般)の場合…関東経済産業局長
各提出先については下記の中小企業庁のホームページの「事業分野と提出先」から確認できます。
もし提出先が不明な場合は、下記に問い合わせると丁寧に教えてくれます。
経営力向上計画相談窓口(中小企業庁 事業環境部 企画課)
電話:03-3501-1957(平日9:30-12:00、13:00-17:00) |
4.経営力向上計画の書き方②別紙(計画書)を記入しよう
(1)「1 名称等」
①氏名又は名称
氏名又は名称には、会社名又は屋号を記入しフリガナを付けます。
※フリガナ(ルビ)の振り方
|
②常時使用する従業員の数
従業員数には役員は入れません。個人事業主で従業員がいない場合は0人と記載しましょう。
③資本金
個人事業主の場合は空欄でOKです。
④法人番号
下記のサイトで、会社名(株式会社や有限会社等は除く)と所在地を選択すると検索できます。
12桁の会社法人等番号と間違わないようご注意ください。
また、個人事業主の場合は空欄でOKです。
(2)「2 事業分野と事業分野別指針名」
①事業分野
「事業分野」欄は、計画に係る事業の属する事業分野について、日本標準産業分類を確認のうえ、該当する中分類(2桁)と細分類(4桁)コードと項目名を記載してください。
中分類(2桁)の中で所管省庁が異なる場合があるので、必ず細分類名も併記してください
例)ボルト製造業の場合、
24金属製品製造業 2481ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ネジ等製造業 |
②事業分野別指針名
事業分野別指針とは、事業分野を所管する省庁が事業分野ごとに生産性向上の方法等を示しています。
各分野ごとの情報を基に分析し作成されているので、この指針を読みこなして良い計画作成を目指しましょう。
「事業分野別指針名」欄は、計画に係る事業の属する事業分野における事業分野別指針を記載します。下記のページから該当する分野を確認してください。なお、事業分野別指針が定められていない場合には空欄にしましょう。
調べてもわからない場合は経営力向上計画の問い合わせ窓口に問い合わせると教えてくれます。
経営力向上計画について(経営力向上計画相談窓口)
中小企業庁 事業環境部 企画課 TEL: 03-3501-1957(平日9:30-12:00, 13:00-17:00) |
(3)「3 実施時期」
計画開始の月から起算して、①3年(36ヶ月)、②4年(48ヶ月)、5年(60ヶ月)のいずれかの期間を自身で設定して記載して下さい。
×令和2年9月-令和5年9月
〇令和2年9月-令和5年8月 |
また、認定前に設備を取得した場合、計画の遡及申請は、経営力向上設備を取得してから2ヶ月が限度です。
×申請月 令和2年9月 取得時期 令和2年6月
○申請月 令和2年9月 取得時期 令和2年7月 |
(4)「4 現状認識」
①自社の事業概要
現に自社が営む事業(主業、副業)と事業構成、売上高など、自社の事業について記載してください。また、事業分野別指針において、規模別に取組内容や取組の数が指定されている場合、自社がどの規模に該当するかを明記してください。
記入例)事業分野別指針における規模は小規模に該当 |
なお、基本方針にしたがって策定する場合は規模別の整理の記載は不要です。
②自社の商品・サービスが対象とする顧客・市場の動向、競合の動向
顧客・取引先の状況や推移、市場の規模やシェア、競合の状況、自社の強み・弱みの3項目については必ず記載してください。
自社の弱みや強みを踏まえて、今後取り組むべき方向性や改善すべき内容がわかるように記載しましょう。
文章の内容作成にあたっては各事業分野の記載例が参考になります。自社の事業分野の記載例と手引きの文章を参考にしながらそれを自社に置き換えていくとスムーズです。
③自社の経営状況
経営状況については、例えば、直近2年分を比較して売上は増加しているのに、利益が減っていたとします。その場合、売上や営業利益の推移を記載し、なぜ利益が減ったのかの要因を記入しましょう。
(5)「5 経営力向上の目標及び経営力向上による経営の向上の程度を示す指標」
①指標の種類
基本方針にしたがって策定する場合は、「労働生産性」を指標として記載してください。
※労働生産性=(営業利益+人件費(福利厚生費含む)+減価償却費)÷労働者数
例)製造業の場合
製造業に係る経営力向上に関する指針による、次のいずれかの指標を選びます。 『労働生産性、売上高経常利益率、付加価値額』 |
②A現状
A現状は、計画開始直前の決算や確定申告(実績)から算出します。
例)3月決算の法人で、計画開始が令和2年9月の場合、令和2年3月期の決算実績から算出
③B計画終了時の目標
B計画終了時の目標は、「6」で実施する取組を行った結果想定される目標値を記載してください。
④伸び率
伸び率は四捨五入せず、切捨てで条件を満たしているかを確認してください。
例)伸び率が0.9999・・%の場合、1%以上の条件は満たしません |
(6)「6 経営力向上の内容」
①「現に有する経営資源を利用する取組、他の事業者から取得した又は提供された 経営資源を利用する取組」
両方無との記載となることはなく、必ず(1)(2)どちらかが有、もしくは両方有との記載になります。
②具体的な実施事項
まず実施事項の項目数に関しては、企業の事業分野と企業規模によって異なります。具体的な数に関してはそれぞれの事業分野別指針(下記リンク)に記載されているので確認しましょう。
自社の取組が該当する基本方針または事業分野別指針の中から、自社に必要な経営力向上の取組を選択して記載します。
自社に必要な取組とは、「4」で記載した自社の弱みや課題を改善・解消し経営力の向上が期待できる取組や自社の強みを活かし取り組むことで経営力の向上が期待できる取組などをいいます。
「4」で記載した自社の強み弱みや改善の方向性と整合がとれるようにしましょう。
また、取組を行う背景・目的 、取組内容 、取組により期待できる効果の3項目を基本方針や事業分野別指針に定められている取組内容を参考にしつつ、自社の具体的な状況に合わせて記載します。
NG例)「4」では、熟練工から若手技術者への事業の継承が必要であるとしながら、「6」にその課題に対する該当する取組がない |
なお、発電設備を導入する場合は、発電した電気を全量自家消費とする予定か、全量又は一部を他者に販売する予定かを記載します。
事業承継等の種類については、事業承継等を伴わない場合には、斜線を引いてください。
(7)「7 経営力向上を実施するために必要な資金の額及びその調達方法」
「実施事項」欄には、「6 経営力向上の内容」の取組を実施するため必要になる資金についてすべて記載します。
「使途・用途」欄には、必要とする資金について、具体的な使途・用途を記載してください。
例)技術指導員人件費・採用費用、経営力向上設備導入費 |
なお、同一の使途・用途であっても、複数の資金調達方法により資金を調達する場合には、資金調達方法ごとに項目を分けて記載します。
(8)「8 経営力向上設備等の種類」
税制措置を活用する場合、この欄に記載します。
添付する工業会等による証明書又は投資計画の確認申請書に記載の通り記入しましょう。同じ型式の設備を複数取得する場合でも、「取得年月」や「所在地」が異なる場合には、列を分けて記載します。
「証明書等の文書番号等」欄には、工業会等の証明書の整理番号や、経済産業局の確認書の文書番号をそのまま記載してください。
(9)「9 特定許認可等に基づく被承継等中小企業者等の地位」以降
9番以降の項目については、6番の事業承継の取組がある場合のみ記載すればよく、該当なければ不要です。
5.経営力向上計画の書き方③申請書提出用チェックシートを作成しよう
チェックシートでは「提出にあたっての注意事項」や「記載漏れの有無」の確認を行います。
下記より様式をダウンロードし、エクセルまたは手書きで記載します。
まず、上部の事業所名等の概要情報を記入します。
チェック項目について、エクセルで作成の場合、各項目は文章を読み、申請者チェックのセルのプルダウンより、次のいずれかを行います。
OKであれば「✓」を選び、該当しない場合は「該当なし」を選びます(手書きの場合は斜線を引く)。
チェックシートの記入が完了したならば、「✓」も「該当なし」も「斜線」もない、空欄のセルは残りませんので、漏れがないか必ず確認しましょう。
チェック項目の下の代表者名の自署も忘れないようにしてください。隣の枠は、自署の場合は押印不要です。
また、【本計画の作成に当たって、認定経営革新等支援機関の支援を受けた場合は、その名称等を記載】は支援を受けた場合のみ記載します。
まとめ
経営力向上計画の書き方について、ポイントや注意点を解説しました。
聞き慣れない用語等はあるかもしれませんが、ひとつずつ確認しながら注意して記入していけば申請書を作ることは可能です。
しかし、申請書にどう記入すればいいか迷い作成に時間がかかる人もいると思います。余裕を持って申請準備をしましょう。
自分で作成するのが難しい場合には、商工会議所や地域の金融機関、税理士や公認会計士など専門家の作成支援を受けることも可能です。必要に応じて相談すると良いでしょう。
当社SoLaboは認定支援機関として、経営力向上計画の申請書作成サポートを行っております。「自分で書類作成できるか不安」という方は専門の担当が対応しますので、まずは一度ご相談ください。
お問合わせの際は「経営力向上計画の件」とお伝えいただくとスムーズに担当にお繋ぎできます。