銀行や信用金庫などの金融機関の融資を検討するために、制度融資のメリットやデメリットを把握したいという人もいるでしょう。
当記事では、制度融資のメリットとデメリットを説明します。制度融資を検討している人向けの相談窓口も説明するので、制度融資の利用を検討している人は参考にしてみましょう。
目次
制度融資のメリットはさまざまな支援内容があること
制度融資は、地方自治体が中小企業の資金調達を円滑にするために、金融機関や信用保証協会と連携して実行する融資です。そのため、地方自治体が行うさまざまな支援内容がメリットに挙げられます。
具体的には、制度融資のメリットとして次のような内容が挙げられます。
- 地方自治体が利用者の負担を軽減するための支援を行っている
- 事業者の目的にあわせた制度がある
- 創業者へのサポートを含めた制度がある
それぞれのメリットについて詳しくみていきましょう。
地方自治体が利用者の負担を軽減するための支援を行っている
制度融資は中小企業者の資金調達を円滑化する目的で実施しているため、地方自治体は制度融資を通し、利用者の負担を軽減するための支援を行っています。
具体的には、地方自治体は次のような支援を行う傾向があります。
- 信用保証料を一部または全額補てんする
- 利子を一部または一定期間全額補助する(利子補給)
たとえば、福岡県北九州市の制度融資の場合、福岡県信用保証協会へ支払う信用保証料の一部を北九州市が補てんしています。信用保証協会から保証を受ける際には、利用者が信用保証料を支払いますが、その一部を北九州市が代わりに支払ってくれる流れになります。
各地方自治体の制度融資の資料には「保証料補助率」の欄に補てんされる金額の割合が記載されている傾向があるため、制度融資を検討中の人は予備知識として覚えておきましょう。
事業者の目的にあわせた制度がある
制度融資には、地方自治体ごとに事業者の目的にあわせた融資が用意されています。用意している融資は地方自治体ごとに異なるので注意が必要です。
東京都の制度融資を例にとると、次の表のように目的別で融資メニューを設けていることが確認できます。
融資メニュー名 | 該当する制度融資の例 |
社会課題解決融資 | 「働き方改革支援」「女性活躍推進特例」 |
一般事業融資 | 「クイックつなぎ(事業一般)」 |
創業融資 | 「創業」 |
事業承継融資 | 「事業承継」 |
新型コロナウイルス感染症対応融資 | 「伴走対応」 |
参照:令和3年度 東京都中小企業制度融資一覧|東京都産業労働局
具体的には、起業家や創業者に向けた融資や、働き方改革支援のような東京都の政策に対応した融資、事業承継のための融資、コロナによる一時的な業況悪化に対応した融資などが挙げられます。
なお、制度融資の目的は中小企業者の資金調達の円滑化ですが、中小企業者が必ず制度融資を受けられるとは限りません。制度融資を利用するには、申込条件に該当したうえで、所定の審査に通過する必要があります。
制度融資の仕組みや申込方法が知りたい人は「制度融資とは?仕組みと申込方法を解説」を参考にしてみましょう。
創業者へのサポートを含めた制度がある
制度融資には、創業者向けのセミナーや個別相談、事業計画書へのアドバイスなどのサポートを含めた制度があります。地方自治体によってサポート内容は異なりますが、地方自治体や商工会議所のアドバイザーが直接相談に応える形式をとっている傾向があります。
たとえば、東京都の制度融資「女性・若者・シニア創業サポート事業」の場合、東京都の地域創業アドバイザーが融資前の事業計画アドバイスを行います。そのため、申込者は融資を受けるための参考意見を得たうえで、融資審査に臨むことができます。
申込対象者 | ・女性、若者(39歳以下)、シニア(55歳以上)で、都内における創業の計画がある人または創業後5年未満の人(NPO等も含む) ・地域の需要や雇用を支える事業 ※創業には企業の合併や買収等を活用して新たに事業を開始することも含む。 |
融資条件 | 取扱金融機関ごとに次の範囲で設定 ・融資限度額:1,500万円以内(運転資金のみは750万円以内)※ただし他の借入金の借換は対象にならない ・固定金利:実質年率1%以内 ・無担保 ・返済期間:30年以内(据置期間:3年以内) ・保証人:法人は代表者個人または不要、個人事業主は不要 |
参照:「女性・若者・シニア創業サポート事業」のご案内|東京都
大阪府の制度融資「開業サポート資金」の場合、大阪商工会議所による融資申込前の事業計画の作成等のアドバイスと、融資後3年間は経営に関するフォローアップを受けることができます。
申込対象者 | 具体的な創業計画を有する人で次のいずれかに該当する人 ・これから創業する方 ・創業後1年未満の方 |
融資条件 | ・融資限度額:3,500万円以内 ・固定金利:実質年率1%台 ・返済期間:7年以内(据置期間:12か月以内) |
サポート内容は制度によっても異なるので、創業のために制度融資の利用を検討している人は、利用予定の制度融資を管轄している地方自治体の窓口に問い合わせて確認しておきましょう。
制度融資のデメリットは銀行融資よりも時間がかかること
制度融資は、地方自治体への申請手続きや、金融機関と信用保証協会の2機関での手続きと審査が発生します。そのため、申し込みから着金までにかかる時間は、銀行融資よりも制度融資のほうが長くなる傾向があります。
具体的には、申し込みから着金までの流れを制度融資と銀行融資で比較すると次の表のようになります。
1. 地方自治体(都道府県または市区町村)に融資あっせんを申し込む |
2. 地方自治体から交付されたあっせん書を受け取る |
3. 金融機関へ融資を申し込む |
4. 金融機関経由で信用保証協会に保証を申し込む |
5. 信用保証協会で保証審査を行う(初回利用時は面談を実施) |
6. 信用保証協会から金融機関へ保証承諾を通知する |
7. 金融機関が借入金を銀行口座に振り込む |
1. 銀行に融資を申し込む |
2. 銀行が融資審査を行う(面談を実施) |
3. 金融機関が借入金を銀行口座に振り込む |
制度融資では、地方自治体の窓口で融資あっせんを申し込んだ後、金融機関と信用保証協会で審査に通過する必要があります。制度融資の場合、申し込みから着金までには、3か月程度かかる傾向があります。
一方、銀行融資の場合は銀行以外の機関が間に入ることがないので、制度融資よりも工数が減ります。そのため、申し込みから着金までにかかる時間は2週間から1か月程度になる傾向があります。
制度融資を検討している人は、申込前に資金繰り表を作成し、着金のタイミングが間に合うかどうかを確認しておくとよいでしょう。資金繰り表の作成方法は「資金繰り表とは?経営者のための資金繰り表の活用法と作り方」を参考にしてみてください。
制度融資の自己資金要件は厳しいとも甘いとも言えない
制度融資の自己資金要件は厳しいとも甘いとも言うことができません。地方自治体ごとに制度内容が異なる点に加え、自己資金要件を公開していない地方自治体もあるからです。
たとえば、東京都の制度融資「創業」では、自己資金要件を定めていません。一方、創業時や開業時に利用できる埼玉県の制度融資「起業家育成資金」では、融資条件欄に「開業前の場合、自己資金が必要」という記載を確認できます。
なお、埼玉県の制度融資についてさいたま商工会議所に「開業の場合、どの程度自己資金が必要か」と質問したところ、「業種や過去の経験によるので一概に言えないが、必要資金から総合的に判断することになる」との回答を得ました。
制度融資の利用を検討している人は、管轄の地方自治体に、自己資金要件の有無を確認しておきましょう。自己資金要件は申込者の状況によっても異なるので、相談する際は職務経験を証明する資料や必要な資金の概算、現状の借入金などの情報をまとめておきましょう。
制度融資を検討している人は外部機関に相談する選択肢もある
制度融資は地方自治体ごとに申込方法や融資条件が異なります。とくにはじめて融資を受ける場合、どのように手続きを進めるべきか迷う可能性もあるため、制度融資に詳しい外部の専門機関に相談し、サポートを受けるのもよいでしょう。
たとえば、全国に515か所の拠点がある「商工会議所」は起業や創業時の融資の相談や、事業開始後の経営相談などの事業者へのサポートを実施しています。オンラインでの面談に対応している商工会議所もあるので、遠方の人は自宅や事務所から相談可能です。
専門機関や専門家の種類 | 検索機能があるWebサイト |
商工会議所 | 商工会議所検索|日本商工会議所 |
都道府県等中小企業支援センター | 都道府県等中小企業支援センター|中小企業庁 |
認定支援機関(正式名称:認定経営革新等支援機関) | 認定経営革新等支援機関|中小企業庁 |
また、全国の都道府県と政令指定都市の60か所にある「都道府県等中小企業支援センター」も中小企業の支援機関として経営相談窓口を設けています。
東京都の場合は電話や対面での相談に加え、予約することにより夜間の相談も受け付けています。
その他には「中小企業支援に関する専門的知識や実務経験が一定レベル以上にある」として、国の認定を受けた「認定支援機関」でも制度融資の相談が可能な場合があります。
なお、当社株式会社SoLabo(ソラボ)も国の認定支援機関として、制度融資に関するご相談を受けることが可能です。これまで4,500件以上の融資を支援してきた実績をもとに、融資支援の専門家がお話をお伺いしますので、気軽にお問い合わせください。
まとめ
制度融資のメリットのひとつに地方自治体が利用者の負担を軽減するためのさまざまな支援を行っている点が挙げられます。とくに創業期の人は、創業者向けのサポートを用意している制度があるので、制度融資の利用を検討するのも選択肢のひとつです。
一方、制度融資は銀行融資よりも申し込みから着金までに時間がかかるというデメリットもあります。制度融資を検討している人は、申込前に資金繰り表を作成し、着金が間に合うかどうかを確認しておきましょう。