創業融資を受けたいと思っている人の中には、必要書類の情報が知りたい人もいるのではないでしょうか。審査に必要な書類は個人の状況によって異なる場合があるため、自身が用意すべき書類を確認しながら準備することになります。
当記事では、創業融資を受けるための必要書類を解説します。状況によって必要となる書類も解説しているため、創業融資を受けたい人は参考にしてみてください。
創業融資を受けるために必要な書類は多岐にわたる
創業融資を受けるために必要な書類は多岐にわたります。創業融資を受けるときは金融機関からさまざまな書類の提出が求められるため、書類を提出する意図を考えることにより、揃えるべき書類を整理しやすくなる可能性があります。
【創業融資を受けるための必要書類の例】
- 借入の申込をする書類
- 事業計画が分かる書類
- 身分証明書
- 納税が確認できる書類
- 支払振りが確認できる書類
- 借入状況が確認できる書類
- 自己資金が確認できる書類
- 資金の使い道が確認できる書類
創業融資を受けるための必要書類を挙げてみると、書類を提出する意図によって分類できます。金融機関が確認したい意図を汲み取って書類を用意することにより、申請や面談がスムーズに運ぶ可能性があるため、それぞれの書類の具体例を確認していきましょう。
借入の申込をする書類
創業融資受けるために必要な書類のひとつは、「借入の申込をする書類」です。借入の申込をする書類は、申込先によって所定の書式が用意されているため、創業融資を取り扱っている機関を参考例として確認してみましょう。
【借入の申込をする書類】
日本政策金融公庫に申込みする場合は、借入申込書に記入して提出します。「融資希望額」「融資希望日」「担保を提供するかどうか」など、フォーマットに記載された事項を漏れなく記入します。
東京都の制度融資に申し込む場合は、信用保証委託申込書を記入します。制度融資は信用保証協会へ借入金の保証人となってもらう仕組みのため、「融資希望額」「融資を受ける金融機関名」など、フォーマットに記載された事項を漏れなく記入します。
なお、借入の申込をする書類は、各機関の窓口からも入手できます。支店の窓口へ行くことにより、記入方法や申請方法の相談を受け付けてもらえる場合があるため、借入申込に関する相談がある人は窓口に行く方法も検討してみましょう。
事業計画が分かる書類
創業融資受けるために必要な書類のひとつは、「事業計画が分かる書類」です。申込先の金融機関が所定の書式を用意している場合はそれを利用することになるため、創業融資を取り扱っている機関を参考例として確認してみましょう。
【事業計画が分かる書類の例】
日本政策金融公庫の融資に申し込む場合、提出する事業計画が分かる書類は「創業計画書」です。「事業の内容」「取引先」「資金計画」など、フォーマットに沿って漏れなく記入します。
東京都の制度融資に申し込む場合、提出する事業計画が分かる書類は「創業計画添付書」「創業計画書」です。制度融資は自治体によってフォーマットが異なる場合があるため、所定の書式に従って記入します。
なお、事業の概要が分かる書類があれば併せて提出しましょう。「パンフレット」「商品概要書」など、事業の概要が分かる書類を併せて提出することにより、審査担当者が事業を理解しやすくなる可能性があるため、創業計画書の他にも資料がある場合は提出することを検討してみてください。
身分証明書
創業融資を受けるために必要な書類のひとつは、「身分証明書」です。「運転免許証」「パスポート」など、本人確認できる書類がなければ融資の申込ができないため、創業融資を申し込むときは身分証明書を用意することになります。
【身分証明書の例】
項目 | 書類の例 |
---|---|
身分証明書 | ・運転免許証 ・パスポート ・マイナンバーカード |
身分証明書は原則として顔写真付きの証明書を提出します。もし持っていない場合は、「住民票の写し」「健康保険証」などの書類を提出することにより、身分証明書とみなされる可能性があるため、金融機関の担当者に相談することになります。
なお、身分証明書は面談時に原本を確認する場合があります。面談前の本人確認として金融機関が確認することがあるため、創業融資を申し込むときは身分証明書の原本とコピーどちらも用意することを留意しておきましょう。
納税が確認できる書類
創業融資を受けるために必要な書類のひとつは、「納税が確認できる書類」です。「住民税」「所得税」など、税金の支払状況を確認する場合があるため、創業融資を申し込むときは税金を滞納していないことが確認できる書類を用意しましょう。
【納税が確認できる書類の例】
項目 | 書類の例 |
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納税が確認できる書類 | ・口座引き落としされた預金通帳 ・振込した領収書 ・納税証明書 |
納税が確認できる書類を提出する理由のひとつは「公的融資の性質があるため」です。「日本政策金融公庫の融資」「自治体の制度融資」など、政府や自治体が関与している融資は、原則として税金の滞納がない人が利用できる制度となるため、納税状況を確認する場合があります。
納税が確認できる書類を提出する理由のひとつは「返済能力を確認するため」です。税金の滞納がある場合、資金繰りが安定していない可能性があるため、金融機関は返済能力を判断するため、納税状況を確認する場合があります。
なお、納税が確認できる書類は「預金通帳」「領収書」「納税証明書」のいずれかを用意します。納税証明書を提出する場合は役所から取り寄せが必要になるため、創業融資を申し込むときはいずれの書類を用意するか確認しておきましょう。
支払い振りが確認できる書類
創業融資を受けるために必要な書類のひとつは、「支払い振りが確認できる書類」です。「公共料金の領収書」「クレジットカードの支払履歴」など、生活費の支払い振りが確認できる書類を提出する場合があります。
【支払い振りが確認できる書類の例】
項目 | 書類の例 |
---|---|
支払い振りが確認できる書類 | ・公共料金の領収書 ・クレジットカードの支払い履歴 ・預金通帳 |
支払い振りが確認できる書類を提出する理由のひとつは「毎月の支払に遅れがないかどうか確認するため」です。毎月の支払が滞っている場合、資金繰りや返済能力に問題を抱えている可能性があるため、金融機関は毎月の支払振りを確認する傾向があります。
支払い振りが確認できる書類を提出する理由のひとつは「毎月の支出額を把握できているかどうか確認するため」です。創業後は事業の利益から生活資金を捻出することになるため、金融機関は毎月の支出額を考慮した事業計画を立てているかどうかを確認する傾向があります。
なお、支払い振りが確認できる書類は、状況によって求める書類が異なります。「自分名義での支払いがない」「クレジットカードを契約していない」など、支払い振りを確認できる書類が思いつかない場合は、面談前に担当者に相談しておきましょう。
借入状況が確認できる書類
創業融資を受けるために必要な書類のひとつは、「借入状況が確認できる書類」です。「住宅ローンの返済予定表」「奨学金の返済予定表」など、他社から借入している場合は返済状況が確認できる書類を用意することになります。
【借入状況が確認できる書類の例】
項目 | 書類の例 |
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借入状況が確認できる書類 | ・住宅ローンの返済予定表 ・奨学金の返済予定表 ・車のローンの返済予定表 |
借入状況が確認できる書類を提出する理由のひとつは「借入残高を把握するため」です。借入残高は融資の可否を決める要素のひとつとなるため、すでに借入している場合は借入の残高が分かる書類を用意することになります。
借入状況が確認できる書類を提出する理由のひとつは「毎月の返済額を確認するため」です。創業融資分を含めた毎月の返済額を支払えるかどうかを金融機関は判断することになるため、毎月の返済額が記載されている書類を用意することになります。
なお、返済予定表が用意できない場合は担当者に相談しましょう。「カードローン」「リボ払い」など、借入内容や返済方法によっては返済予定表が発行できない可能性があるため、書類が準備できない場合は面談前に担当者へ相談してみてください。
自己資金が確認できる書類
創業融資を受けるために必要な書類のひとつは、「自己資金が確認できる書類」です。「預金通帳」「証券口座の明細表」など、自己資金の一部を創業資金に充てる場合は自己資金が確認できる書類を用意することになります。
【自己資金が確認できる書類の例】
項目 | 書類の例 |
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自己資金が確認できる書類 | ・預金通帳 ・証券口座の明細表 ・銀行の残高証明書 |
自己資金が確認できる書類を提出する理由のひとつは「借入要件に含まれている場合があるため」です。資金計画のうち、一定の割合以上の自己資金を投入することが借入要件に含まれている場合、その自己資金を証明する書類を用意することになります。
自己資金が確認できる書類を提出する理由のひとつは「自己資金の準備の経過を確認するため」です。「少しずつ貯金してきた」「退職金を充てた」など、自己資金の調達方法を金融機関に説明するため、自己資金が確認できる書類を用意することになります。
なお、親族からの援助も自己資金として認められる可能性があります。親族からの支援金を自己資金とする場合、親族の預金通帳の提出が求められる場合があるため、親族に事前に了承をもらっておくようにしましょう。
資金の使い道が分かる書類
創業融資を受けるために必要な書類のひとつは、「資金の使い道が分かる書類」です。「購入機材の見積書」「店舗の賃貸借契約書」など、創業資金を使って支払う費用の明細を示すため、資金の使い道が分かる書類を提出することになります。
【資金の使い道が分かる書類の例】
項目 | 書類の例 |
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資金の使い道が分かる書類 | ・機械設備の見積書 ・内装工事の見積書 ・不動産の賃貸契約書 |
資金の使い道が分かる書類のひとつは「見積書」です。「購入予定の機材」「内装工事の費用」などの見積書を提出することにより、資金計画の妥当性を伝えやすくなるため、設備に関する費用は見積書を用意することになります。
資金の使い道が分かる書類のひとつは「契約書」です。「不動産の賃貸契約書」「業務委託契約書」などの契約書を提出することにより、業務内容の具体性を伝えやすくなるため、契約を締結している場合は契約書を用意することになります。
なお、すでに創業のために支払った費用がある場合は、領収書を提出します。領収書を提出することにより、支払った分のお金は自己資金に含められるため、創業のために支払った費用がある場合は領収書を提出するようにしましょう。
申込人の状況によっては必要書類が追加される
申込人の状況によっては必要書類が追加されます。申込人の状況によっては追加の必要書類を依頼される場合があるため、創業融資を申し込む人は必要書類が追加される状況例を確認しておきましょう。
【必要書類が追加される状況例】
- 法人の場合
- 許認可が必要な事業を開始する場合
- 不動産の担保を提供する場合
- すでに事業を開始している場合
必要書類が追加される状況として「申込人が法人の場合」「申込人が不動産の担保を提供する場合」「申込人がすでに事業を開始している場合」などが挙げられます。創業融資を申し込む人のうち、該当する場合は追加書類を確認しておきましょう。
法人の場合
申込人が法人の場合は、必要書類が追加されます。法人を立ち上げて創業するため、「登記事項証明書」という法人の存在を証明する書類を提出することになります。
登記事項証明書を取得する方法は3つあります。「窓口」「郵送」「オンライン」のいずれかの方法で取得することができるため、法人が創業融資を申し込むときは取得までの日数や取得する手間を考慮しつつ、登記事項証明書を準備します。
登記事項証明書は4種類あります。創業融資を申し込む際は原則として「履歴事項全部証明書」を依頼される傾向にあるため、金融機関から特定の指示がない場合は履歴事項全部証明書を準備します。
なお、法人の登記事項証明書は法人口座の開設でも使用します。法人を立ち上げたことを証明する書類となるため、他の手続きでも使用する可能性があることを考慮しつつ、予備の分も申請することを検討しておきましょう。
許認可が必要な事業を開始する場合
許認可が必要な事業を開始する場合は、必要書類が追加されます。「美容師免許」「建設業許可」など、許認可が必要な事業を開業する場合は、許認可が確認できる書類を提出することになります。
【許認可が確認できる書類の例】
項目 | 書類の例 |
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許認可が確認できる書類 | ・美容師免許 ・建設業許可証 ・飲食店営業許可証 |
許認可が必要な事業のひとつは「美容院」です。美容院を開業する場合は、「美容師免許」を持った人員がいなくては開業できないため、創業融資を受けるときは美容師免許を提出することになります。
許認可が必要な事業のひとつは「建設業」です。建設業を開業する場合は、「一般建設業」「特定建設業」などの許可証を取得する必要があるため、創業融資を受けるときは事業の規模に応じた許可証を提出することになります。
なお、融資を受けたあとでなければ許認可が取得できない場合があります。「取得に費用がかかる」「取得に時間がかかる」など、申込時に許認可が取得できない場合は、許認可の取得前に融資を受けられるかどうか担当者に相談してみましょう。
不動産の担保を提供する場合
申込人が不動産の担保を提供する場合は、必要書類が追加されます。自宅の土地や建物など、所有している不動産を創業融資の担保として提供する場合は、不動産の情報が分かる書類を提出することになります。
【担保提供する場合に提出する書類】
書類名 | 書類の内容例 |
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不動産の登記事項証明書 | ・所有者の氏名や住所 ・抵当権者の氏名や住所 |
不動産の登記事項証明書は、「所有者の氏名や住所」「抵当権者の氏名や住所」などが記載されています。登記事項証明書を提出することにより、不動産の情報を確認できるため、担保提供する場合は登記事項証明書を準備します。
不動産の登記事項証明書は4種類あります。担保提供するときは原則として「全部事項証明書」を提出する傾向があるため、金融機関から特定の指示がない場合は全部事項証明書を準備します。
なお、不動産の登記事項証明書の取得方法は3つあります。「窓口」「郵送」「オンライン」のうち、いずれかの方法で申請できるため、不動産の登記事項証明書を取得したいときは取得までの日数や取得にかかる手間を考慮して準備しましょう。
すでに事業を開始している場合
申込人がすでに事業を開始している場合は、必要書類が追加されます。創業後は数年間、創業融資を利用できるため、創業後に創業融資を申し込む場合は、創業後の実績が分かる書類を提出することになります。
【事業を開始している場合に提出する書類の例】
項目 | 書類の例 |
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事業の実績が分かる書類 | ・確定申告書 ・決算書 ・試算表 ・月別売上表 |
事業の実績が分かる書類のひとつは「確定申告書」です。個人事業主は1月1日~12月31日までの間に発生した収益を申告するため、確定申告を行っている場合は確定申告書の提出を求められる可能性があります。
事業の実績が分かる書類のひとつは「決算書」です。法人は年に1回決算書を作成する義務がありますが、決算を行う時期は法人が定めることができるため、決算月を迎えた法人の場合は、決算書の提出を求められる可能性があります。
なお、事業の実績が分かる書類として「試算表」「月別売上表」なども挙げられます。確定申告や決算を行っていなくとも、直近の収益状況が分かる資料の提示を求められる可能性があるため、すでに事業を開始している場合は用意しておくようにしましょう。
契約時に必要となるものも押さえておく
創業融資を受けるための必要書類を知りたい人は、契約時に必要となるものも押さえておきましょう。契約時に必要なものを押さえることにより、審査が通った後から借入金を入金するまでの工程をスムーズに進められる可能性があるため、創業融資を受けたい人は契約時に必要なものも押さえてみてください。
【契約時に必要となるものの例】
- 実印
- 印鑑証明書
- 収入印紙
契約時に必要となるもののひとつは「印鑑証明書」です。融資の契約時は契約書に実印を押すため、借入人と連帯保証人の実印を証明する印鑑証明書を合わせて提出することになります。
契約時に必要となるもののひとつは「収入印紙」です。印紙税法の規定により、融資の契約書は借入金額に応じて収入印紙を貼ることになるため、指定された金額分の収入印紙を用意しておくことになります。
「印鑑証明書は市役所」「収入印紙は郵便局」などで購入できます。書類が不足すると借入金の入金が遅れる可能性があるため、契約に必要なものが分かったら、速やかに用意するようにしましょう。
まとめ
創業融資を受けるために必要な書類は多岐にわたります。創業融資を受けるときは金融機関からさまざまな書類の提出が求められるため、書類を提出する意図を汲み取って準備することにより、申請や面談がスムーズに運ぶ可能性があるため、その前提を踏まえたうえでそれぞれの書類の具体例を確認していきましょう。
申込人の状況によっては必要書類が追加されます。必要書類が追加される状況として「申込人が法人の場合」「申込人が不動産の担保を提供する場合」「申込人がすでに事業を開始している場合」などが挙げられるため、創業融資を申し込む人のうち、該当する場合は追加書類を確認しておきましょう。
創業融資を受けるための必要書類を知りたい人は、契約時に必要となるものも押さえておきましょう。契約時に必要なものを押さえることにより、審査が通った後から借入金を入金するまでの工程をスムーズに進められる可能性があるため、創業融資を受けたい人は契約時に必要なものも押さえてみてください。