翻訳業で300万円の融資事例

資金調達のために、金融機関から融資を受けることを検討されている人から、よくある質問のひとつが「個人事業主と法人で、どちらが資金調達しやすい?」というお問い合わせです。

今回の記事でご紹介する翻訳業を営むSさんも、同じ疑問を抱いて当社に問い合わせしてくださったお客様のひとりでした。Sさんは個人事業主としての経験値を積んだ後に、法人を設立した経緯をお持ちでした。

さらにSさんの場合、法人では2期連続赤字の実績で、審査に影響するかどうか不安に感じていました。

しかし、結果として、Sさんは300万円の融資を受けています。

今回の記事では、Sさんの事例を参考にしながら「個人と法人どちらが有利か」、「2期連続赤字でも融資は通るのか」という疑問を詳細に解き明かしていきます。

Sさんの状況

融資サポートご依頼時のSさんの背景

▼プロフィール
国際特許事務所等で翻訳の仕事を経験した後、個人事業主として10年間ほど 翻訳業務に従事。また、その経験を法人として書籍事業やセミナー業に横展開する事業をスタートしたばかり。

▼個人事業主としての実績
翻訳事業の年間売り上げは約700万円。自己資金は200万円

▼借り入れ状況
借入は個人事業、法人ともになし

▼初回のお電話でのSさんからの問い合わせ内容
「昨年、私自身が代表の法人を設立し、翻訳業で積み重ねたノウハウを書籍事業やセミナー業に横展開する事業をスタートしたばかりです。

もともとも翻訳業も個人事業主として続けています。

法人の売上は年間200万円で、創業以来2期連続赤字の状況ですが、事業拡大のために融資を検討しています。

個人事業主と法人のどちらがより融資が通りやすいでしょうか?

融資サポート依頼時、当社からSさんにお話しさせていただいた内容

「Sさん、今法人で融資を受けても、法人の方はまだ立ち上げたばかりで赤字ということは審査に落ちる可能性が高いです。

まずは個人事業でやられている翻訳業のみで申し込みをしましょう。融資を受けた実績と返済履歴がつけば、法人として黒字になったタイミングで融資が受けられる可能性が高まります」

まずは個人事業主として融資を受け、今後法人が軌道に乗ったタイミングで法人でも融資を受けることをSさんに提案し、納得していただきました。

ポイント1. 個人事業主と法人どちらで申し込んでも融資審査の通りやすさは変わらない

基本的に、個人事業主でも法人でも、企業形態によって融資審査の通りやすさに違いが出ることはありません

Sさんの場合、もともとの個人事業主としてのステータスも、法人としてのステータスもあるため、悩んでしまったそうです。

重要なのは、個人事業主と法人、どちらで申し込む際にも、創業時・創業後のそれぞれで、主に以下のポイントが見られるということです。

【創業時の融資のポイント】

まずは、創業時の融資の審査で確認されることをみていきましょう。創業時とは、創業前~2期分の税務申告をする前までをいいます。

① 経験がどの程度あるか

「これから始める事業に関して経験をどれくらい積んでいるか」という経験が問われます。目安としては、6年です。そこまで時間をかけられないという人でも、最低でも半年~1年程度の経験を積む方が、評価は高まる傾向です。

② 自己資金がどの程度用意できているか

自己資金が多ければ、「しっかり準備をしてきた人」と判断され、融資担当から評価される傾向です。ただし、融資の直前で口座にお金があったとしても、「ほとんど残高が無かったはずの通帳に、急に残高が増えている」「会社設立後、資本金がすぐに引き出されている」などの、いわゆる“見せ金”は、自己資金として認められないケースが高いです。

③ 申込者(代表者)の信用情報に問題がないか

信用情報とは、例えば「クレジットカードのリボ払いの支払い遅延がないか」、「携帯電話の支払いを遅延したことがないか」、「奨学金の支払い遅延がないか」等の支払い遅延や滞納に関する情報です。

これからはじめる事業が法人でしか創業できない場合を除き、個人事業主と法人のどちらを選ぶかは申込者であるあなた次第です。
また、既に個人事業主でも法人でも事業を始めている場合には以下の点が審査基準ポイントとなります。

【創業後の融資の審査基準ポイント】

既に創業している方が融資に申し込む場合、直近の経営状況が分かる書類が必要になります。必要書類として直近2年分の確定申告書、または法人の決算書を提出します。

それまでの業績がどのようなものであったかを具体的な数字で融資担当者に伝えることができ、融資実行可否の判断材料となります。
今回のSさんの場合は、個人事業主としての確定申告書2期分と、法人の決算書2期分を提出しました。

ポイント2. 同じ代表者が異なる事業をしている場合、金融機関は全ての事業内容の損益を確認する

Sさんの例を再度確認してみましょう。個人事業主として翻訳業をはじめた後、法人を設立して書籍事業・セミナー事業をはじめた、という経緯をお持ちです。

このように同じ人物が2つ以上の異なる事業をしているケースでは、通常公庫の担当者は両方の業績が分かる書類(確定申告書、決算書等)をチェックします。

金融機関の融資担当者からすると「融資をしても、赤字事業がある場合、融資した資金が赤字事業の補てんにされてしまう可能性がある。融資した事業に資金が使われず、返済されない懸念がある。」と考えます。

融資担当は「返済できなくなるリスクがどの程度高いか」を見極めなければなりません。

異なる複数の事業を行っている場合でも、元をたどれば一人でやっている事業です。そのため、金融機関はその事業を行っている人の名義のすべての確定申告書をチェックします。

【注意!】複数の法人の代表をやっている場合は?

では、複数の法人の代表者をやっている方の場合はどうなるでしょうか。

基本的には全ての法人の決算書が審査対象となります。

「複数法人を持っていても、存在を隠せばいいよね?」と考える人もいるかもしれません。しかし、ネットなどで調べて情報が出た場合は融資を受けるのが困難になります。

なぜなら、金融機関の融資担当者から「隠ぺいした事業主」という印象も持たれてしまうからです。融資担当者には正直に事業状況を申告しましょう。

ポイント3. 2期連続赤字でも融資を受けたい場合、具体的な根拠の提示が必須

Sさんは、法人では第1期と第2期連続して赤字という決算状況でした。赤字の場合、金融機関から「この人に融資したら、貸したお金を返済できないのではないか」と見られかねません。

しかし、Sさんは個人事業主として行っていた翻訳事業では年間700万円ほどの売上があり、事業は黒字でした。

そのため、滞りなく返済できるだろうという判断材料となり、法人では2期連続赤字でしたが個人事業の方で融資を受けることができました。

このように法人と個人それぞれ運営しており、法人は2期連続赤字でも、個人事業で融資を受けられる場合があります。もちろん個人事業で融資を受ける場合であっても、2期連続で赤字になっている法人の売上が伸びる現実的な根拠や具体的な改善計画を提示できた方がよいでしょう。

売上が伸びる現実的な根拠や、具体的な改善計画の作成に困ったときは、認定支援機関などの融資の専門家に相談してみましょう。

認定支援機関とは、中小企業や小規模事業者の経営力を強化する目的で、経済産業省・財務局が認定する「経営革新等支援機関」のことを指します。

認定支援機関に相談することで、融資審査のサポートはもちろん、相談を通じて経営の改善点も見つかるかもしれません。

「創業融資ガイド」を運営している当社株式会社SoLaboも、認定支援機関として、これまでに日本政策金融公庫の融資サポートを4,500件以上行ってきました。相談は無料ですので、まずはお気軽に問い合わせください。

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借入金の使用使途に注意

個人事業主として借りたお金は個人事業主としての事業で使うことが融資の大前提です。生活資金や法人事業のお金として使うことが金融機関に知られれば、それは契約違反となってしまいます。全額返済を求められる場合があるため、注意しましょう。

認定支援機関からの説明

認定支援機関として、当社から日本政策金融公庫の融資担当者に、Sさんの面談前に以下の点を強調して伝えました。

• 個人事業主としての資金使途
• 融資がおりれば個人事業主の売上増加につながること
• 法人事業として今後売り上げるための施策と今後の見通し

そして、面談後、最終的にSさんへ300万円の融資が決定しました。

まとめ

今回、Sさんは無事に融資を受けることができましたが、もし法人で融資を申し込んでいたら、融資を受けられなかった可能性もあります。

法人をいくつかお持ちの方や、これから創業をお考えの方で個人事業主と法人のどちらで申し込むか悩んでいる方には、一度融資の専門家に相談し、戦略を練ってからの申し込みをおすすめします。

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株式会社SoLabo(ソラボ)は中小企業庁が認める認定支援機関です。

   

これまでの融資支援実績は6,000件以上となりました。

   

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