会社設立の際にはいくつかの手続きが必要になります。
手続きは起業をする本人が自分で行うことも可能ですが、手続きのための作業に時間がかかってしまったり、提出書類に不備があり再提出が何度も必要になってしまったりするかもしれません。
しかし、税理士などの専門家に依頼することで会社設立の手続きをスムーズに終えることができるでしょう。
今回は税理士に依頼するタイミングや依頼するメリット、費用相場、ご自身に合った税理士の探し方などをご紹介しています。
税理士に依頼をするタイミング
税理士を依頼するタイミングとして、個人事業主として開業した後、会社設立時、会社設立後などが挙げられます。
税理士に依頼できる業務を依頼するタイミング別で知っておくことで、ご自身に合うタイミングで依頼することが可能です。
(1)会社設立時に依頼
①会社設立手続き
会社設立時の手続きは起業する方ご自身で行うことも可能です。
一方で、自分で行う手続きを税理士に依頼することで、実際に手を動かす時間を減らすこともできます。
会社設立時には、主に
- 定款作成支援
- 各種届出書類の作成支援
- 各種社会保険申請の支援
などを依頼することができます。
②税務顧問契約を併せて依頼
会社設立時に税理士と顧問契約を締結することで、会社設立のために必要な各種手続き以外にも
- 会計支援
- 資金繰りの相談
- 税務に関する相談
などの依頼もすることが可能になります。
(2)会社設立後に依頼
会社設立後に税理士に依頼することで
- 経理や税金に関する相談
- 決算書の作成や税務申告書の作成、提出
- 資金調達に関する相談
などを依頼することが可能になります。
会社設立後に税理士に依頼する場合、「起業後1期目で売上が向上し、決算時期の直前に依頼する」という方がいます。
しかし、決算の直前に税理士に決算書作成などの税務書類の作成を依頼すると、会計データなどをまとめる必要があり、時間がかかるケースがあります。
(3)個人事業主が開業した後に依頼
個人事業主の方の中には、「売上が安定するまでは税理士に依頼せずにご自身で確定申告などの税務を行う」という方もます。
しかし、2年前の事業売上が1,000万円を超えると、個人事業主であっても課税事業者となり消費税を納税する必要があります。
税務・経理作業が増えるので、課税事業者になるタイミングで税理士に依頼する方もいます。
法人と同様、税務管理や経理の相談などの他に、経営のアドバイスや資金調達の相談をすることもできます。
また、個人事業主の方が売上の増加によって法人成をする際にも税理士に依頼しておくことで、法人成の手続きのサポートもしてくれるので、よりスムーズに手続きを終了することができるでしょう。
税理士に依頼できる業務(依頼するタイミング別) | |
会社設立時に依頼 | 【会社設立手続きを依頼】
など |
【会社設立手続きと同時に税理士顧問契約を締結】
など |
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会社設立後に依頼 |
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個人事業主が起業後に依頼 |
など |
会社手続きを依頼するのは税理士が最適?
会社設立手続きはご自身で行うことも可能ですが、税理士などの専門家に手続きを依頼することもできます。
会社設立の手続きは、税理士だけでなく、行政書士・司法書士など様々な専門家に依頼することができます。
会社設立の手続きを専門家に依頼する場合、それぞれの専門家によって依頼できる手続きの内容が異なるので、専門家ごとの会社設立時に依頼できる業務内容を確認しておきましょう。
(1)税理士
税理士は税務や決算の専門家です。
法人だけでなく個人事業主の方であっても、確定申告や税務に関する業務を税理士に依頼することが可能です。
税理士に依頼することで漏れのない税務申告をすることが可能になり、節税や経営に関する相談をすることもできます。
また、税理士の中には、認定支援機関として中小企業の資金調達サポートや経営サポートを行っている方もいます。
主な税理士業務 |
確定申告の代理/税務調査の立ち合い/税務署への申立て など |
確定申告書や青色申告承認申請書等の税務署に提出する書類を作成し、提出 |
会社の税金などにおける相談・アドバイス |
財務書類の作成/会計帳簿の帳簿代行 など |
①会社設立における税理士の役割
税理士には、税務や決算などの手続きだけでなく、会社設立手続きも依頼することができます。
税理士は許認可申請や登記申請の専門家ではありませんが、会社設立手続きに詳しい税理士に依頼することで、ご自身の手間をかけずに手続きを終了することができるでしょう。
また、会社設立手続きを依頼した際に会社設立後の顧問契約を締結することで、会社設立手続きを割安で引き受けてくれる場合もあります。
多くの場合、税理士に会社設立手続きの依頼をすると、書類作成のアドバイスをしてくれた上で提携している司法書士や行政書士を通して登記や許認可申請を実施することになります。
②会社設立を税理士に依頼するべき人
税理士は税務や決算に関する専門家ではありますが、会社設立手続きに関しては詳しくない税理士も少なくはなく、手続きが完了するまでに時間がかかってしまうケースがあります。
しかし、会社設立後の顧問税理士として契約する、という条件付きで会社設立手続きを依頼することで他の専門家と比較して安い費用で会社設立手続きを依頼することもできます。
会社設立手続きを税理士に依頼し、そのまま顧問契約することで会社設立時から税務や節税に関する相談はもちろん、資金調達や事業計画についてのアドバイスを受けることが可能になります。
会社設立費用をできるだけ安くしたい方や、会社設立時の税務相談や経理業務についてのサポートを専門家に依頼したい方、会社設立時の資金調達などに関して専門家に相談したい方は会社設立手続きを税理士に依頼するとよいでしょう。
しかし、会社設立手続きの代行を依頼したと同時に、設立後の税理士顧問契約を締結した場合、会社設立費用が安くなっていても結果として顧問料が高く設定されていることもあります。税理士と顧問契約をする際には費用相場などを確認しましょう。
(2)行政書士
行政書士は、様々な許認可申請や書類作成、提出などすることができると法的に認められた資格です。
主な行政書士業務 |
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行政書士が実行できる書類作成業務には、役所関係に提出する書類とそうでない書類に分類されます。
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行政書士に依頼した方にとって必要な手続きにはどのようなものがあるのかをアドバイスする業務 |
①会社設立における行政書士の役割
会社設立手続きを行政書士に依頼することで、様々な許認可の手続きを代行してくれます。
しかし、登記手続きは司法書士しか実行することができないので、行政書士に会社設立手続きを依頼すると、登記申請はご自身で実施するか、依頼した行政書士が提携している司法書士に依頼して実行されることになるでしょう。
登記に関する知識が少ない行政書士に会社設立を依頼してしまうと、会社設立手続きが終了するまでに時間がかかってしまうこともあります。
②会社設立を行政書士に依頼するべき人
行政書士は行政書類を作成する専門家です。
開業時に許認可が必要な事業を開始する場合は、許認可申請に詳しい行政書士に会社設立手続きを依頼すると良いでしょう。
- 運送業
- 建設業
- 飲食業
など許認可申請が必要となる事業を開始する場合には、会社設立の際の許認可申請を行政書士に依頼するとよいでしょう。
(3)司法書士
司法書士は法的効力を持つ書類を作成することができる専門家です。
また、法的手続きの代行も実施することが可能です。
主に会社設立や土地に関する登記申請などの業務が中心で、登記業務は司法書士しか実行することができない独占業務です。
主な司法書士業務 |
会社設立の法人登記/土地や建物の所有権が移動した際の所有権移転登記/債権譲渡登記 など |
法務局・裁判所に提出する法的書類の作成代行/遺言書などの相続関係書類・内容証明書の作成代行 など |
消費者金融などへの過払い金請求手続き/目的価額140万円以下の法的案件に関する裁判手続き など |
①会社設立における司法書士の役割
会社設立において必要な登記手続きは司法書士の専任業務です。
税理士や行政書士に会社設立の手続きを依頼した場合であっても、登記申請については司法書士に依頼する必要があるので、税理士や行政書士と提携している司法書士に登記申請を依頼することになるでしょう。
会社設立の手続きを司法書士に依頼することで、登記申請だけでなく他の必要書類の作成を依頼することも可能です。
しかし、登記申請は司法書士しか実施することができませんが、その他の許認可申請や会社設立時の税務などに関しては詳しくない司法書士の方も多いので、登記申請のみを依頼する方も多く見受けられます。
②会社設立を司法書士に依頼するべき人
司法書士は唯一登記申請の手続きをすることが可能な専門家です。
しかし、税務や許認可申請については詳しくない司法書士も多いでしょう。
また、登記申請業務を司法書士しか実施することができない、という点から、会社設立手続きに関しても他の専門家に依頼するよりも費用が少々割高になってしまいます。
会社設立手続き以外にも会社設立後に様々な登記申請が必要になりそう、という方は司法書士に依頼するとよいでしょう。
会社設立手続きを専門家に依頼する際の費用相場
税理士 | 5万円前後 |
行政書士 | 10万円前後 |
司法書士 | 10~15万円 |
税理士や行政書士、司法書士に会社設立手続きを依頼した場合の費用相場は上記の通りです。
司法書士の場合、登記申請業務を実施できる専門家が司法書士しかいない、という点から他の専門家と比較して会社設立手続きに必要な費用が少々高くなっています。
しかし、税理士に会社設立手続きを依頼する際に、会社を設立した後に税務などの作業を依頼するための顧問契約を結ぶことで、比較的安い金額で会社設立手続きをしてくれることがあります。
会社を設立し、決算などの時期に税理士と顧問契約を結ぶ、という方もいらっしゃいますが、設立時の手続きを代行してもらう際に顧問契約を結んでおくことで、将来的に税理士と顧問契約を結ぶよりも全体の費用を抑えることが可能になるでしょう。
税理士が行う業務内容と経営者への効果
(1)税理代行・税務相談
顧問税理士をつけることで、決算書作成の他にも税務に関する申告などを依頼することができます。
また、税務調査などの際に必要な書類作成や税額計算などの相談をすることも可能です。
税務のアドバイスを受けることで、節税効果が得られることもあり、申告書類などの作成を税理士に依頼することで漏れのない書類を作成することが可能になるでしょう。
(2)経理代行・アドバイス
顧問税理士をつけることで、会社経営に欠かせない経理業務についての指導を受けることができます。
経理指導やアドバイスを受けることで、コストの軽減につなげることができるでしょう。
契約した税理士によっては、経理業務の代行をしてくれる場合もあります。
(3)資金調達相談
顧問税理士をつけることで、事業資金の融資を受ける際のアドバイスや資料作成のサポートをしてくれます。
また、助成金や補助金に関しての申請サポートをしてくれる場合もあります。
顧問税理士をつける経営者にとってのメリット |
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顧問契約の相場
税理士の顧問契約料の相場は、企業の年商によって異なることがほとんどです。
売上高別 顧問税理士契約料 | |
年間売上高1,000万円未満 | 月額約1.5万円~ |
年間売上高5,000万円未満 | 月額約3万円~ |
年間売上高1億円未満 | 月額約4万円~ |
年間売上高1億円以上 | 月額約6万円~ |
※決算書作成などの税務書類の作成は別途料金が必要になることがほとんど。相場は月額顧問料の4~6ヶ月分。
会社を設立したばかりで、年商1000万円以下の企業の場合、顧問相場は月額約15,000円となっています。
顧問税理士の契約に費用はかかりますが、結果として節税につながることや資金繰りのアドバイスを受けることができること、経営者が事業に専念することが可能になることなど多くのメリットがあります。
また、会社設立時に税理士と顧問契約することで、会社設立手続きを低価格で実施してくれるケースもあります。検討する際には初期費用だけでなく、長期的な視点でも考えてみましょう。
税理士を探す方法
税理士は知人からの紹介やインターネットなどで探すことができます。
まずは税理士と実際にあってご自身と合うかどうかを確認しましょう。また、それぞれの税理士に得意な分野があります。
資金調達に強い税理士、節税の知識が豊富な税理士、事業承継に詳しい税理士など、様々な税理士がいます。
税理士であれば大丈夫、という選び方ではなく、得意分野を聞き、顧問料や実施してくれる業務内容などをきちんと確認した上で依頼する税理士を決定しましょう。
まずは実際に税理士と会い、親身になって話を聞いてくれる税理士かどうかを判断するようにしてください。
まとめ
会社設立時の手続きは税理士などの専門家に依頼することが可能です。
会社設立手続きを税理士に依頼した場合、同時に顧問契約をしておくことで他の専門家と比較して低価格で会社設立手続きを依頼することも可能になるので、結果として全体の費用を抑えることが可能になるでしょう。
また、会社を設立した時から顧問税理士をつけておくことで、経営アドバイスや資金調達アドバイスを受け安定した会社経営をすることが可能になり、経営者は税務申告などを税理士に任せることで、事業に専念することが可能になります。