金利が低い日本政策金融公庫の融資。
それをさらに低金利にできる方法があります。
特別利率「特利」の適用条件を満たして、無理のない事業経営につなげましょう。
そもそも、日本政策金融公庫って何だっけ…という方は、「中小企業を支えている日本政策金融公庫ってどんな金融機関?」をご参照ください。
1.日本政策金融公庫の金利を低くする要素
(1)基本の2要素:「担保」「代表者の連帯保証」
融資を受けたときに融資金に上乗せして支払う利息、またはその利率のことを「金利」と呼びます。日本政策金融公庫に限らず、まず金利を低くするための基本の要素2つを押さえましょう。
「担保」と「代表者の連帯保証」です。
金利を低くするには「担保を付ける」ことと「代表者の連帯保証を付ける」ことが重要です。
これは、どの金融機関でも同じです。
「担保」は返せなかったときに没収される財産であり、「代表者の連帯保証」は返せなかったときに支払い義務が生じる連帯保証人です。
それらを用意することで、確実に返済する意思を示すことになり、利息が安くなるという理屈です。
日本政策金融公庫の金利は、融資制度によって大枠が決まりますが、この2要素で具体的にどれくらい金利が安くなるのか、確認しましょう。
表は2020年7月時点での金利情報です。日本政策金融公庫の公開情報を元に作成しています。
最新の金利情報は、日本政策金融公庫のウェブサイトでご確認ください。
基準金利 | 特別利率A | 特別利率B | 特別利率C | |
担保なし | 2.16 ~ 2.55 | 1.76 ~ 2.15 | 1.51 ~ 1.90 | 1.26 ~ 1.65 |
担保あり | 1.21 ~ 2.20 | 0.81 ~ 1.80 | 0.56 ~ 1.55 | 0.31 ~ 1.30 |
ここでは、比較しやすいように同じ条件の部分である「基準利率」を見てください。
担保を提供する方が低金利です。担保の有無で0.3〜0.9%金利が変動します。
また、担保の有無と同様、代表者の連帯保証がある方が低金利での借入が可能です。例えば、新創業融資制度を利用し、代表者の連帯保証を設定した場合、利率が0.1%低減されます。
(2)注目の2要素:「新規性」「災害」
続いて、金利が変わる注目の要素2つを見ていきましょう。
ひとつは「新規性」です。
金利はどの融資制度を選ぶかによって大きく変わります。その中でも「新規性」のキーワードが見られる融資制度は、特別利率「特利」が適用され、基準利率よりも低金利で融資を受けることができます。
例えば、創業しようとしている方、新たに事業を始めようとしている方向けの融資制度があります。さらに技術やノウハウにも新規性がある場合は、さらに低金利になる可能性があります。
もうひとつは「災害」です。
政府100%出資の金融機関である日本政策金融公庫は、被災者に低金利で貸付する融資制度を用意しています。
「災害」に関する融資制度の利率は、別テーブルになっています。
【災害に関する融資制度の利率】※令和2年7月1日現在
基準利率 | 特別利率A | 特別利率B | 特別利率C |
1.36 ~ 1.75 | 0.96 ~ 1.35 | 0.71 ~ 1.10 | 0.46 ~ 0.85 |
新型コロナウイルス感染症特別貸付を利用する場合や地震や豪雨などの自然災害によって、直接または間接的に被害を受けた方が融資を受ける際に適用される利率です。ただし、条件や目的によっては他の融資制度を利用した方がよいという判断もありますので、一つの選択肢として捉えた方がよいでしょう。

ここまでの金利が低くなるポイントをまとめると、次の通りです。
- 担保を付ける
- 代表者の連帯保証を付ける
- 条件に合った融資制度を利用する(新規性、災害など)
2.特別利率「特利」の適用条件とは?
(1)「特利」とは?
特別利率「特利」とは、融資の契約を結ぶ際の条件によっては低金利で融資を受けることができる金利のことです。
その条件は、担保や代表者の連帯保証の有無はもちろん、事業主の年齢や経歴、事業内容など様々です。
また、どの金利が適用されるかどうかは自分で選ぶことができません。
当サイトでは無料診断を行っております。今の状況でどのくらい借入できるか、金利はどのくらいで借入できそうかなど、状況や自己資金、事業内容からお答えすることができますので、ぜひ一度診断してみてください。
(2)代表的な融資制度の金利条件
事業形態、有志のお金の使いみちなどによっても利用できる融資制度は変わり、その中で特別利率の適用条件が設定されています。
融資制度と金利の適用条件はセットになっており、中には特利の適用条件が存在しない融資制度もあります。
ここでは、よく利用される融資制度をピックアップして、「特利」がどのような条件で適用されるかを見ていきます。
①一般貸付
利用できる方 | ほとんどの業種の中小企業の方(金融業、投機的事業、一部の遊興娯楽業等の業種を除く) |
資金用途 | 運転資金・設備資金・特定設備資金 |
利率(年) | 基準金利(資金の使いみち、返済期間、担保の有無によって金利が異なる) |
一般貸付は、事業を営む方であれば、ほとんどの人が利用できる融資制度ですが、どのような条件があっても、特利は適用されません。
そのため、低金利にする要素は、担保と代表者の連帯保証の有無などで限定的です。
②セーフティネット貸付
利用できる方 | 売上減少など業況が悪化している方 |
資金使途 | 社会的要因などによって、企業維持上、緊急に必要な設備資金・経営基盤の強化のために必要な運転資金 |
利率(年) | 基準金利(資金の使いみち、返済期間、担保の有無によって金利が異なる) |
セーフティネット貸付の経営環境変化対応資金も、特利は適用されません。これも、低金利にする要素は、担保と代表者の連帯保証の有無などで限定的です。
そのほか、セーフティネット貸付の金融環境変化対応資金、取引企業倒産対応資金も、特利は適用されません。
③新企業育成貸付
◆新規開業資金
利用できる方 | 新規事業を開始する方、事業開始後約7年以内の方 |
資金使途 | 新規事業を開始するために必要な資金、または事業開始後に必要とする資金 |
利率(年) | 基準金利・特利A・特利B・特利C |
特利適用条件 | 【特利A】 1.地域おこし協力隊の任期を終了した方であって、地域おこし協力隊として活動した地域において新たに事業を始める方 2.Uターン等により地方で新たに事業を始める方 3.産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて新たに事業を始める方 4.地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて新たに事業を始める方 5.外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家の方で新たに事業を始める方 6.独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権および新株予約権付社債等を含む。)を受けた方 【特利B】 7.地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方 8.技術・ノウハウ等に新規性がみられる方 【特利C】 9.地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方 |
新企業育成貸付「新規開業資金」には、特利の適用条件があります。一定の条件を満たせば、基準利率の他に「特利A」「特利B」「特利C」が適用可能です。
例えば、「特利A」に記載されている条件を満たした場合、上で紹介した利率の表で「特利A」の項目に書かれている利率で融資を受けることができます。もし同時に「特利B」の条件を満たしている場合、「特利B」の方が低金利ですので、「特利B」を適用した融資を目指した方がよい、ということになります。
◆女性、若者/シニア起業家支援資金
利用できる方 | 女性または35歳未満か55歳以上の方、かつ新規事業を開始する方、事業開始後約7年以内の方 |
資金使途 | 新規事業を開始するために必要な資金、または事業開始後に必要とする資金 |
利率(年) | 特利A・特利B・特利C |
特利適用条件 | 【特利A】 1~3の要件に該当しない方 【特利B】 1.地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方 2.技術・ノウハウ等に新規性がみられる方 【特利C】 3.地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方 |
新企業育成貸付「女性、若者/シニア起業家支援資金」にも、特利の適用条件があります。一定の条件を満たすことで、「特利A」「特利B」「特利C」が適用可能です。
◆中小企業経営力強化資金
利用できる方 | 経営革新または新事業分野の開拓等によって市場の創出・開拓を行おうとする方、かつ認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方 |
資金使途 | 事業計画の実施のために必要とする設備資金・運転資金 |
利率(年) | 基準利率・特利A |
特利適用条件 | 【特利A】 以下すべてに該当する方 1.「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を適用している方または適用する予定である方 2.「当面6ヵ月程度の資金繰り予定表」及び「部門別収支状況表」を含んだ事業計画書を策定している方 |
新企業育成貸付「中小企業経営力強化資金」にも、特利の適用条件があります。
一定の条件を満たせば、基準利率の他に「特利A」が適用可能です。
ただし、中小企業経営力強化資金を利用する場合、認定支援機関を経由して融資を申し込む必要があります。
弊社SoLaboも認定支援機関として3,700件以上の経営者の方のサポートを実施しております。少しでも低金利で借入がしたいという方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ 低金利での融資を目指す3ステップ
日本政策金融公庫の融資において「特利」が適用されるための条件として、事業の新規性を重要視されています。
その新規性を裏付ける材料として、ビジネスプランの策定のほか、官公庁・自治体などの第三者の承認や認定が求められます。
低金利での融資を目指して、まずは公的な経営サポートを受けてみるのもよいでしょう。
また、一般的に金融機関からの融資で低金利になりやすいケースは、企業の事業年数が長い、売上や利益が安定している、他に借り入れをしていない、などの「信頼性」についての共通点があります。
何が起きても確実に返済できるというアピールとしても、事業継続計画を策定するのもよいでしょう。
最後に、低金利での融資を目指す3ステップをまとめます。

「金利なんて気にしなくても…」と考えなしに融資を受けたら、金利が高くて返済に困ってしまうようなケースは少なくありません。
かといって「特利の条件を満たそうと時間がかかって商機を逸してしまった…」となっては本末転倒です。
条件や目的によって融資制度が異なり、金利も変わります。融資を受ける前に、自身に合った融資制度が他にないかをもう一度、確認しましょう。
無理しない範囲で特利の適用条件を満たして、無理のない事業経営につなげましょう。
金利が0.1%変わっただけで具体的に返済金額はどう変わるの?と気になった方は「日本政策金融公庫の金利計算をシミュレーション!金利が0.1%変わると返済金額はどう変わるのか?」をご参照ください。