新規開業資金(新企業育成貸付)とは?融資対象や利用条件を解説

新規開業資金(新企業育成貸付)とは?融資対象や利用条件を解説
株式会社SoLabo 代表取締役 田原広一
この記事の監修
株式会社SoLabo 代表取締役 / 税理士有資格者
資格の学校TACで財務諸表論の講師を5年行う。税理士事務所勤務を経て、平成23年より個人で融資サポート業務をスタート。
平成27年12月、株式会社SoLabo立ち上げ。
融資支援業務に力を注ぎ、現在では400件以上の融資支援を行っている。

起業を検討している方のなかには、日本政策金融公庫の融資を利用したいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

日本政策金融公庫の融資を受けるには、既に事業を始めているのかどうかや、借入したい金額がいくらなのかなど、ご自身の状況や希望に合った融資制度を選ぶことが重要です。

今回の記事では、日本政策金融公庫の「新規開業資金(新企業育成貸付)」について解説します。

1.新規開業資金の利用条件

新規開業資金は、新たに事業を始めようとしている、または事業を始めて7年以内の方で、以下の状況に当てはまる方が利用できる融資制度です。

  • 雇用の創出を伴う事業を始める方
  • 現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方
  • 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める方」又は「民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方」等の一定の要件に該当する方

出典:新規開業資金(日本政策金融公庫)

創業者向けの貸付としては、最も一般的な融資制度になります。

2.資金の使途

この融資制度は、次のように資金の使い道によって、条件が大きく2つに分かれています。

資金の使途運転資金設備資金
融資限度額7,200万円 (うち運転資金4,800万円)
※たとえば、運転資金として4,800万円の融資を受けた場合、設備資金の融資限度額は2,400万円になります。
返済期間

(据置期間)

7年以内

(2年以内)

20年以内

(2年以内)

利率基準利率。ただし、以下いずれかの要件に該当する人には特別利率が適用される。(※ただし、土地取得資金は基準利率。利率の詳細は公式サイトの「国民生活事業(主要利率一覧表)」をご覧ください)

【特別利率A】

  • 地域おこし協力隊の任期を終了した方であって、地域おこし協力隊として活動した地域において新たに事業を始める方
  • Uターン等により地方で新たに事業を始める方
  • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて新たに事業を始める方
  • 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて新たに事業を始める方
  • 外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家の方で新たに事業を始める方
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権および新株予約権付社債等を含む。)を受けた方

【特別利率B】

  • 地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める方
  • 技術・ノウハウ等に新規性がみられる方

【特別利率C】

  • 地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方

※資金の利用用途・返済期間・担保の有無などによって、異なる利率が適用されます。

担保・保証人利用者の希望によって応相談

*日本政策金融公庫の公開情報「国民生活事業」の融資制度の概要を参考に2020年7月に作成

新規開業資金で利用できる資金の使いみちは2つ、「運転資金」と「設備資金」があります。

言葉の定義を確認しておきましょう。

資金を借りた際の契約と異なる使いみちで資金を利用すると、資金使途違反となり、融資した資金の一括返済を求められるほか、日本政策金融公庫からの借り入れは二度とできなくなりますので、注意しましょう。

(1)運転資金

「運転資金」は、事業経営に必要な資金のことを指します。

「運転」というと、機械や自動車を動かすイメージが強いかもしれませんが、組織や団体を動かすことにも使われます。

「ランニングコスト」とも呼ばれます。

事業をスムーズに回すために必要なお金で、具体的には人件費や仕入れ費用はもちろん、文房具や印刷用紙代などの雑費も、運転資金に含まれます。

運転資金は、次の式で算出できます。

運転資金=売上債権+棚卸資産−買入債務

身近な言葉で表現すると、次のようになります。

運転資金=売上+在庫-仕入れ

算出式を見てわかる通り、売上が黒字であっても、運転資金が充分とは限りません。

例えば、月に100万円の仕入れをして、売上が150万円の事業を経営しているとします。

会計上は50万円の黒字です。

しかし、通常、現金払いを徹底でもしない限り、仕入れの支払い時期と、売上が懐に入ってくる時期が同じになることはありません。

仕入れの支払いは当月、売上金の回収は翌月という事業サイクルの場合、50万円あっても次の仕入れの代金としては不足で商売が成立しません。

仕入れをして、売り上げて、またその次の仕入れをして、と事業を回していくのに必要なこのお金が運転資金に当たります。

(2)設備資金

「設備資金」は、設備に必要な資金のことを指します。

設備とは、建物、車、機械設備などの、長期に渡って利用し、事業基盤(インフラ)となる有形固定資産のことです。

事業拡大で多額の初期投資が必要になった場合、その多くは設備資金として扱われるため「イニシャルコスト」と同義です。

設備資金の融資は金額が大きい上、雑費を含む運転資金よりは使いみちの是非を判断しやすいため、追跡調査されることが多々あります。

設備資金の利用時はできるだけ領収書などを保管し、後からいつでも証明できるようにしておくことも重要です。

3.新規開業資金の融資限度額

融資限度額とは「条件を満たせば、この額まで融資できますよ」という日本政策公庫の設定金額を指します。

あくまで最大の金額なので必ず運転資金として4,800万円を借り入れられるという訳ではありません。

当然、申込者の勤務経験や実績、事業計画によって融資希望額が下回ることもあります。

新規開業資金の場合、7,200万円の融資限度額(うち運転資金としては4,800万円)が設定されています。

4.新規開業資金の返済期間(据置期間)

返済期間とは「日本政策金融公庫が、お金を返し終わるのを待ってくれる期間」のことで、据置期間とは「日本政策金融公庫が、利子の支払いだけで、本格的に返済を始めるのを待ってくれる期間」のことを指します。

返済期間の中に据置期間が含まれるので、注意が必要です。例えば、返済期間が3年で、据置期間が1年だった場合、最初の1年は利子だけ支払って、後の2年で返済することになります。

融資を受けた後、据置期間を設定する、といったことはできないので、それも注意しましょう。

返済期間の具体的な年数は、日本政策金融公庫の担当者との融資面談を通して、利子を決める「利率」とセットで決まります。

新規開業資金では、運転資金は7年以内、設備資金20年以内の返済期間を設定されます。

据置期間は、運転資金も設備資金も2年以内を設定されます。

返済期間・据置期間の年数はいずれも最大の期間を示しているので、これより短くなる想定をしておくとよいでしょう。

5.新規開業資金の利率

融資を受けたときに融資金に上乗せして支払う利子、金利を算出する率のことを「利率」と呼びます。

なお、日本政策金融公庫の場合、年間で算出する年利です。

新規開業資金では、利用者の起業の背景と事業の属性によって利率が4パターンに分かれます。利率の詳細は公式サイトの「国民生活事業(主要利率一覧表)」をご覧ください。

(1)基準利率

起業に際して特に事情がなく、事業の属性も一般的なものであれば、日本政策金融公庫が設定する「基準利率」と呼ばれる一般的な利率が採用されます。

基準利率では、「担保」と「保証人」の有無によって利率が変動します。利率の具体的な数字は、日本政策金融公庫の担当者との融資面談を通して、返済期間とセットで決まります。

(2)特利・特利A

以下のいずれかに該当する場合、基準利率よりも低い利率である「特別利率A(特利A)」が採用されます。

  • 地域おこし協力隊の任期を終了した方であって、地域おこし協力隊として活動した地域において新たに事業を始める方
  • Uターン等により地方で新たに事業を始める方
  • 産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援等事業を受けて新たに事業を始める方
  • 地域創業促進支援事業又は潜在的創業者掘り起こし事業の認定創業スクールによる支援を受けて新たに事業を始める方
  • 外国人起業活動促進事業における特定外国人起業家の方で新たに事業を始める方
  • 独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資する投資事業有限責任組合から出資(転換社債、新株引受権付社債、新株予約権および新株予約権付社債等を含む。)を受けた方

(3)特利B

利用者の起業背景は問わず、事業内容に技術・ノウハウ等に新規性がみられると認められた場合、あるいは地方創生推進交付金を活用した起業支援金の交付決定を受けて新たに事業を始める場合は、特利Aよりも更に低金利の「特別利率B(特利B)」が採用されます。

技術・ノウハウ等の新規性については、一定の要件がありますので、必ず事前に日本政策金融公庫の窓口に問い合わせて確認しておきましょう。

(4)特利C

地方創生推進交付金を活用した起業支援金及び移住支援金の両方の交付決定を受けて新たに事業を始める方は、特利Bよりも更に低金利の「特別利率C(特利C)」が採用されます。

6.新規開業資金の担保・保証人

「担保」とはお金を返せなかったときに没収される財産のことで、「保証人」とは借りた資金を返せなかったときに支払い義務が生じる連帯保証人のことです。

日本政策金融公庫の融資では、担保・保証人を用意することで確実に返済する意思を示すことになり、利率が下がります。

新規開業資金の枠組みで融資に臨む場合、原則として保証人・担保の用意が必要です。法人の場合は代表者のみが保証人になります。但し、個人事業主の場合は不要です。

まとめ

日本政策金融公庫の新規開業資金(新企業育成貸付)は、新しい企業を育成するための貸付の一つです。

創業まで時間的な猶予があり、公的な支援を受けることで開業に向けた努力ができる方は、新規開業資金の利用を検討するのがよいでしょう。

なお、あなたが女性または35歳未満か55歳以上なら、女性、若者/シニア起業家支援資金(新企業育成貸付)を利用すると特利で融資を受けられる可能性があります。

また、被災をきっかけに離職し、被災地で創業をする方や、被災地で創業して間もない方には、また別の融資制度が用意されています。

「新規開業資金」を利用する前に一度、他にも条件のあった融資制度がないか、確認するようにしましょう。

どの融資が適しているのかわからないという方は、ぜひ一度当社株式会社SoLaboまでお問い合わせください。これまでに2,400件以上の公庫融資をサポートしてきた実績があり、融資サポート専門の担当者が無料で相談を承ります。

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