自己資金なしでも日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのか?

飲食店や美容室など、起業を考えている人の中には、創業資金として日本政策金融公庫から創業融資を受けることを検討中の人もいますよね。その際、「自己資金がない人も日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのか?」と気になる人もいるでしょう。

当記事では、「自己資金なしでも日本政策金融公庫から創業融資を受けられるのか?」を解説します。自己資金の目安も解説するため、創業資金として日本政策金融公庫から創業融資を受けることを検討中の人は参考にしてみてください。

自己資金がない人は創業融資を受けられない可能性がある

日本政策金融公庫の場合、自己資金がない人は創業融資を受けられない可能性があります。とくに、自己資金がゼロの人は創業融資を受けられない可能性があるため、借入先として日本政策金融公庫を検討中の人は注意が必要です。

創業融資における自己資金とは、事業に使用する予定の資金のことです。原則として事業に使用する予定のない資金は自己資金に含まれず、創業融資における自己資金は運転資金や設備資金などの事業に使用する予定の資金を指しています。

そして、自己資金は日本政策金融公庫の担当者が融資の可否を決める判断材料のひとつです。実際、日本政策金融公庫の担当者に「自己資金がない人も創業融資を受けられますか?」と質問したところ、「自己資金がない人も申し込めますが、自己資金があるほうが望ましい」との回答でした。

日本政策金融公庫の場合、自己資金がない人は創業融資を受けられない可能性があります。とくに、自己資金がゼロの人は創業融資を受けられない可能性があるため、不安な人は申込前に一度、日本政策金融公庫の担当者に相談することを検討してみましょう。

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自己資金に関する要件はない

日本政策金融公庫の創業者向けの融資制度の場合、自己資金に関する要件はありません。自己資金は融資の可否を決める判断材料のひとつですが、要件としては定められておらず、日本政策金融公庫から創業融資を受けたい人は予備知識として覚えておきましょう。

創業者向けの融資制度として挙げられるのは「新規開業資金」です。日本政策金融公庫の公式サイトにある「新規開業資金」には、自己資金に関する内容が記載されていないため、要件としては定められていないことがわかります。

また、無担保無保証による創業融資を希望する場合、新創業融資制度を併用する関係上、以前は「創業資金総額の1/10以上の自己資金」という要件を満たしている必要がありましたが、令和6年3月31日に新創業融資制度が廃止され、現在は自己資金に関する要件がなくなりました。

ただし、自己資金は日本政策金融公庫の担当者が融資の可否を決める判断材料のひとつです。創業融資を受けるならば、自己資金が多ければ多いほど、その点を評価してもらえる可能性があるため、自己資金がゼロの人は自己資金を貯めることを検討してみましょう。

なお、日本政策金融公庫の新創業融資制度に関する情報が知りたい人は「取り扱いを終了?日本政策金融公庫の新創業融資制度を解説」を参考にしてみてください。

必要となる自己資金は一概に言えない

日本政策金融公庫から創業融資を受ける場合、必要となる自己資金を一概に言うことはできません。日本政策金融公庫から創業融資を受けるときは原則として創業資金総額から自己資金を引いた金額を借り入れることなるため、まずはその前提を踏まえておきましょう。

創業資金総額とは、創業時に使用する予定の資金総額のことです。日本政策金融公庫から創業融資を受けるならば、「必要となる自己資金」を考えるのではなく、「創業資金総額から自己資金を引いた金額」を考えることになります。

【創業資金総額から考える融資額の目安】
創業資金総額の条件 自己資金の条件 融資額の目安
創業資金総額100万円 自己資金10万円 融資額90万円
創業資金総額200万円 自己資金20万円 融資額180万円
創業資金総額300万円 自己資金30万円 融資額270万円
創業資金総額400万円 自己資金40万円 融資額360万円
創業資金総額500万円 自己資金50万円 融資額450万円
創業資金総額1,000万円 自己資金100万円 融資額900万円

たとえば、「創業資金総額1,000万円」「自己資金100万円」の条件だった場合、融資額の目安は「1,000万円-100万円=900万円」です。また、「創業資金総額1,000万円」「自己資金200万円」の条件だった場合、融資額の目安は「1,000万円-200万円=800万円」になる計算です。

ただし、実際の融資額は自己資金に加え、面談時の説明や創業計画書の内容など、申込者の条件から総合的に判断されます。自己資金があっても創業融資を受けられるとは限らないため、自己資金と融資額の関係が気になる人は目安程度に考えておきましょう。

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自己資金を貯めている人は創業資金総額の2割を目安にしてみる

自己資金を貯めている人は、まずは創業資金総額の2割を目安にすることを考えてみましょう。日本政策金融公庫総合研究所の「2023年度新規開業実態調査~アンケート結果の概要~」によると、創業資金総額に占める自己資金の割合は約2割だからです。

たとえば、1,000万円の創業資金総額を予定している人は「1,000万円×0.2=200万円」を自己資金の目安にする計算です。また、500万円の創業資金総額を予定している人は「500万円×0.2=100万円」を自己資金の目安にする計算となります。

創業資金総額の2割以上の自己資金があったとしても融資を受けられるとは限らず、全体の2割の自己資金がなかったとしても融資を受けられる可能性はありますが、自己資金を貯めるときのひとつの目安になるため、自己資金はどれくらいあればいいのか迷っていた人は参考にしてみてください。

なお、創業資金総額に占める自己資金の割合が知りたい人は日本政策金融公庫の公式サイトにある「創業計画Q&A」も参考にしてみましょう。

創業融資を受けたい人は自己資金として認められるものを把握しておく

日本政策金融公庫から創業融資を受けたい人は、自己資金として認められるものを把握しておきましょう。申込者の条件によっては、自己資金として認められない場合があるからです。

【自己資金の具体例】

項目 具体例
自己資金として認められる傾向があるもの ・現金預金(貯金)
・資本金
・退職金
・みなし自己資金
・第三者割当増資
・資産を売却した資金
自己資金として認められない傾向があるもの ・タンス預金
・親からの贈与
・返済義務のあるお金

自己資金として認められるものは、自身の口座に振り込まれている現金預金(貯金)です。銀行や郵便局に預けているお金など、振込履歴を確認できるお金は自己資金として認められる傾向があります。

また、個人投資家やベンチャーキャピタルからの出資による資本金は自己資金として認められない可能性もありますが、自ら貯めた資本金は自己資金として認められる傾向があります。自ら貯めた資本金がある人は、自己資金として使用することも検討してみてください。

一方、タンス預金や親からの贈与は、自己資金として認められない傾向があります。とくに、「金庫や貯金箱にある出所が不明のお金」や「クレジットカードやカードローンなどの借入金(返済義務のあるお金)」は、自己資金として認められない可能性があります。

ただし、日本政策金融公庫の担当者に「タンス預金や親からの贈与は自己資金として認められますか?」と質問してみたところ、「出所が証明できれば、タンス預金や親からの贈与によるお金も自己資金として認められる場合がある」との回答でした。

「生命保険や学資保険などの解約返戻金」や「投資信託や有価証券などの株式」など、資産を売却したお金も自己資金として認められる可能性はありますが、すぐに使えるお金かどうかを確認する目的として、担当者に換金にかかる時間を尋ねられる傾向があります。

解約返戻金や株式を自己資金として考えている人は、日本政策金融公庫に申し込む前に一度、換金にかかる時間を確認しておきましょう。

親から自己資金の援助を受ける人は口座振込にしてもらう

親から自己資金を援助してもらう場合、借入先として日本政策金融公庫も考えている人は口座振込にしてもらうことを検討してみましょう。口座振込にしてもらうことにより、親から自己資金を援助してもらったことの証明になるからです。

日本政策金融公庫では、親からの贈与は自己資金に含まれない傾向があります。日本政策金融公庫が用意している創業計画書のテンプレートには、「親、兄弟、知人、友人等からの借入」という項目があるため、親からの資金援助は原則として借入扱いになります。

しかし、口座振込にしてもらえば、自身の預金通帳から振込履歴を確認できるため、親から自己資金を援助してもらったことを証明できます。少なくとも出所が不明のお金とはならないため、日本政策金融公庫の担当者によっては考慮してもらえる可能性もあります。

親からの資金援助は原則として自己資金に含まれないですが、日本政策金融公庫の担当者にお金の出所を証明するためにも、親から自己資金の援助を受ける人は口座振込にしてもらうことを検討してみましょう。

見せ金は自己資金として通用しない

日本政策金融公庫から創業融資を受ける場合、見せ金は自己資金として通用しません。日本政策金融公庫の審査では、記帳した通帳原本を確認されるからです。

見せ金とは、相当する資金があるかのように見せかけるお金のことです。創業融資においては、第三者から一時的に借り入れ、自己資金があるかのように金融機関に提示し、審査が終了した後に借りたお金を返済する行為を指します。

日本政策金融公庫の場合、記帳した通帳原本を確認されます。その際、6か月程度の入出金が記帳された通帳原本の提示を求められるため、一時的な自己資金は通用しません。

また、見せ金は悪質な行為として詐欺罪に問われるおそれもあります。詐欺罪は刑法第二百四十六条により規定され、刑罰は10年以下の懲役となるため、日本政策金融公庫から創業融資を受けることを検討中の人は予備知識として覚えておきましょう。

なお、預金通帳に関する情報が知りたい人は「日本政策金融公庫の審査における預金通帳を解説」を参考にしてみてください。

自己資金の目途が立った人は創業計画書を作成することも検討しておく

自己資金の目途が立った人は、創業計画書を作成することも検討しておきましょう。日本政策金融公庫に申し込む際には、担当者から創業計画書の提出を求められるからです。

創業計画書とは、事業を始める際、事業内容を説明するために作る書類のことです。創業計画書は事業計画書に含まれ、創業計画書と事業計画書を同じ意味として扱うこともあります。

たとえば、日本政策金融公庫が用意している創業計画書のテンプレートには、「創業の動機」や「必要な資金と調達方法」といった項目があります。そして、「必要な資金と調達方法」の項目には、自己資金の金額を記入する欄があります。

なお、日本政策金融公庫の公式サイトにある「よくあるご質問 創業をお考えの方」には、自己資金は重要な要素のひとつですが、それ以上に創業計画全体がしっかりしているかが重要になります」という旨が記載されています。

そのため、自己資金の目途が立った人は、提出書類のひとつとなる創業計画書を作成することも検討しておきましょう。創業計画書の書き方については、日本政策金融公庫の公式サイトにある「創業計画書【記入例】」を参考にしてみてください。

まとめ

日本政策金融公庫から創業融資を受けるならば、自己資金は重要な要素のひとつです。しかし、あくまでも自己資金は創業計画の一部となるため、借入先として日本政策金融公庫を検討中の人は、まずは創業計画全体を見直すことも検討してみましょう。

また、融資額の上限は創業資金総額から自己資金を引いた金額が目安です。融資額を考えるときは「自己資金の何倍の金額」ではなく「創業資金総額から自己資金を引いた金額」となるため、自己資金から融資額の目安を知りたい人は覚えておきましょう。

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