事業を始める際、自分で計画的に開業資金を準備して、開業時に融資を受けずに事業をはじめる人もいるでしょう。
思い描いた事業計画のまま進めば、問題ないかもしれません。一方で、開業後、売上が思ったほど伸びないこともありえます。
売上が想定よりも少なく、危機的状況になってから、いざ融資を受けようとしても、融資を受けられない可能性もあります。
銀行などの金融機関からすると、初回の取引である場合、資金繰り状況の悪い、事業実績の乏しい創業者には融資をしにくいからです。
いざというときに備えて、開業時の融資も、一度検討してみることをおすすめします。
今回は、開業時に資金調達について検討する理由、日本政策金融公庫で融資の申し込み手続きをする際のチェックリストをご紹介します。
目次
なぜ開業時に融資を検討したほうがいいのか
創業後すぐに軌道に乗ることはまれで、黒字転換するまでに平均6~8か月程度かかると言われています。
資金も徐々に目減りしていき、不安な気持ちになることもあるでしょう。赤字になることを見越して開業時に余裕のある資金計画をたてることが重要です。
最低限スタートできるだけの資金は用意できても、余裕分まで自己資金で準備することは難しいかもしれません。
自己資金で足りない部分は、融資などの資金調達の計画も必要です。
この資金調達計画は、事業をはじめる前に期間に余裕をもって取組むことをおすすめします。
たとえば融資の場合、創業後の方が創業前よりも借入をしにくい傾向があったり、1~1.5ヶ月程度の期間が必要だったりするためです。
事業を開始し、思ったよりも事業がうまくいかないときに融資を受けるのは難しいです。
消費者金融や、銀行のフリーローンやカードローンを利用することはできるかもしれません。しかし、審査期間が短い融資は、審査期間が短い融資に比べて金利負担 が高くなる可能性もあります。
可能性を広げて、十分に検討するためにも、開業時に余裕を持って資金調達の計画を考えましょう。
なお、開業時であれば金融機関の担当者に事業の将来性を感じてもらうことで、事業実績がなくても融資を受けることができる可能性があります。
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どうしたら開業資金の融資を受けることができるのか
開業資金の融資を受けるためには(1)自己資金、(2)経験、(3)事業計画、(4)個人の信用情報が主なポイントです。
創業までにいかに計画的に進めてきたのかが重要です。詳しくみていきましょう。
(1)自己資金
自己資金において、「計画的に貯めてきたのか」がポイントです。
日本政策金融公庫の創業融資を受ける際には「新創業融資制度」という融資制度を利用できます。この新創業融資制度には「自己資金要件」があります。
◆自己資金要件
新たに事業を始める方、または事業開始後税務申告を1期終えていない方は、創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金(事業に使用される予定の資金をいいます。)を確認できる方 |
審査時には通帳の原本を確認し、直近半年から1年の入出金と合わせて、自己資金の確認を行います。そのため、申し込み時にいくら預金残高があったとしても、計画的に貯めてきた履歴が確認できなければ、基本的に自己資金とはみなされません。つまり、融資の直前にお金を振り込んでも自己資金として見てもらえない可能性があります。
また自己資金の要件ですが、実際に10分の1の自己資金を用意したからといって、必ずしも融資を受けられるとは限りません。
自己資金は計画的に貯めてきたかがみられるため、事業計画において十分だと融資担当から判断されるだけ、計画的に貯めてあるかが重要です。
詳しくは次の記事で詳しく解説しています。
融資を受けるための自己資金とは?日本政策金融公庫では通帳原本をチェック?
(2)経験
経験は、創業する業種に対して、「どれだけの勤務経験を積んできたのか」が重要なポイントです。
融資担当に評価される傾向にあるのは、目安は6年です。なお、6年未満であっても融資を受けられる可能性はあります。
ただし、全くの未経験の場合は、融資審査で評価されにくい傾向です。
創業を考える事業者の中には、「フランチャイズに加盟して事業を始めればノウハウがあるから大丈夫だろう」と考える人もいます。しかし、未経験の事業ではうまくいかないケースがあり、金融機関からの見方は厳しい傾向です。
(3)事業計画
事業計画は、「根拠がある売上計画になっているか、融資の資金使途が明確になっているか」がポイントです。
金融機関の融資担当者は事業計画を通して、事業が収益をあげられ、返済がきちんとできそうかを判断していると推察されます。楽観的な予測ではなく根拠をもって説明できるとよいでしょう。
(4)個人の信用情報
個人の信用情報は、これまでのクレジットカードやローンの契約内容、支払状況などから、融資担当が「問題なく返済してくれる」と判断できるかがポイントです。
過去に延滞や自己破産などの異動情報があると、基本的には、融資を受けるのは難しくなります。
金融機関としては「自分たちが融資しても返済が遅れるのではないか」という懸念を抱くためです。
最大いくらまで融資を受けることができるのか
日本政策金融公庫の新創業融資制度では限度額が3,000万円です。
しかし、日本政策金融公庫の融資担当によると、3,000万円は本店決済時の限度額であり、基本的には本店決済まで行くことはありません。支店決済範囲内である1,000万円が実質の限度額といえるでしょう。
もちろん誰しもが限度額を借りることができるというわけではありません。
事業融資の場合、金融機関は、事業者の事業計画に沿ってどのくらいの融資が必要であるか検討し、申込金額が妥当であるのかを審査します。
そのため、金融機関は事業者が必要とする金額以上の融資をすることはなく、事業計画によっていくら融資を受けられるか決まります。
なぜ日本政策金融公庫から融資を受けるのが良いのか
日本政策金融公庫は政府が100%出資している政府系金融機関で、小規模事業者や中小企業を主に支援しています。また、創業時においても積極的に融資をしています。
そのため、民間金融機関だと、事業実績がないため融資を受けるのが難しいという場合でも、日本政策金融公庫であれば、融資を受けることができるケースがあります。
また、日本政策金融公庫では創業の場合、原則として無担保・無保証で融資を受けることができます。
当社SoLabo(ソラボ)は認定支援機関で、4,500件を超える融資サポートの実績があります。
融資に対して不明点がある人は、相談は無料ですので、お気軽にお問合せください。

日本政策金融公庫から開業資金の融資を受けるためのチェックリスト
しっかりとした準備を進めるために必要なポイントを押さえておきましょう。
借入に申し込むために必要な内容を抜粋してチェックリストをまとめましたので、ひとつひとつ確認していきましょう。

上記表のPDFはコチラ→融資を受けるためのチェックリスト
開業予定地は決まっていますか?
店舗や事務所が必要な事業の場合、立地は売上に関連するため、融資においても物件の選定は重要なポイントです。
一般的に立地がよい物件は家賃が高く、保証金(または敷金)なども含めると、借りるだけで高額な費用がかかります。そのため、「資金計画的に無理のない物件か」、「提供するサービスにマッチしたユーザーが訪れやすい物件か」などを基に慎重に選定しましょう。
開業予定の物件の契約又は仮押さえができていますか?
店舗や事務所が必要な事業の場合、開業(店舗)予定地が決まっていない場合には、融資の申し込みはできません。
なお、店舗や事務所に目処がたっていれば、賃貸契約をする前でも融資の申し込みができます。
ただし、審査が進む中で、他の人が先に目当ての物件を契約したなどの理由で、物件を借りることができなくなり、他の物件を検討することになった場合、審査はやり直しになります。
物件を変更することで、保証金(または敷金)、家賃、広さ、内装費などの費用が変わり、そもそもの事業計画を変更する必要があるためです。

開業予定地でいくらの売上があれば、ギリギリ生活できるのかを把握していますか?

この質問は、最低限必要な売上が把握できているのかを判断するための質問です。
把握するためには、「毎月どれくらいのお金がかかるのか」の分析が必要になるでしょう。
業種によりますが、地代家賃、給与、家賃、水道光熱費、旅費交通費、広告宣伝費、消耗品費など、どのくらい毎月かかるのかを計算し、最低限の売上(損益分岐点)を理解しておきましょう。
お金を借りた場合、毎月いくらなら返済できるのかを把握していますか?
この質問は、手元に現金がどれだけ残るか把握できているかを判断するための質問です。
例えばあなたが個人事業主で毎月40万円の利益が出るような想定をしたとします。しかし、月によっては売掛金を回収できる金額が20万円だったり、50万円だったりすることもあるでしょう。
つまり、毎月どのくらいの売上を上げて、どのくらいの手元にキャッシュを持っていないといけないのかを正確に計算できていないと、借入元金の返済ができなくなる可能性があります。
毎月、手元の現金から借入元金を返済し、さらに、ご自身の生活費を支払わなければなりません。
特に売掛金の回収に時間がかかる業種(介護事業や建設業など)であれば、利益を上げることができているのに手元にキャッシュがない、いわゆる黒字倒産をしないように計算しておく必要があるでしょう。
購入しなければならないものの予算が明確になっていますか?

融資を受けるにあたって、何にいくら使うかを明確にしなければなりません。
予定している金額よりも安くすべてが揃う場合には、全く問題ないですが、予定よりも購入するものが増加してしまう場合には、営業してすぐに資金ショートする可能性があります。購入予定のものはすべてまとめておきましょう。
売上見込みを計算していますか?
基本的には勤務時代の経験を基にした、根拠のある売上見込みを作成します。
また、日本政策金融公庫のホームページには参考として売上の計算方法が載っていますので、合わせて確認しましょう。
- 部品製造業、印刷業、運送業など
設備の生産能力×設備数
- コンビニエンスストアなど
1㎡(または1坪)当たりの売上高×売場面積
- 飲食店、理・美容業など
平均顧客単価×席数×回転数
- 自動車販売業、化粧品販売業、ビル清掃業など
従業員1人当たり売上高×従業員数
売上見込みの計算根拠を答えることはできますか?
売上見込みを考えるときは、計算根拠も答えられるようにしておきましょう。
飲食店であれば、
- 人通りがどれくらいあるか
- 近くにマンション、スーパー、商店街があるか
- 駅から近いか
などから見込みを計算することはできます。
たとえば、都心のオフィス街であれば、平日のランチやディナーは集客ができても、土日は閑散としているかもしれません。
出店予定地の統計を分析するとよいでしょう。

自己資金は用意出来ていますか?
業種や事業計画、どのくらい融資を受けたいのかによりますが、自己資金は計画的に準備しましょう。
創業の場合、自己資金要件があるため、自己資金がゼロでは、融資で評価されない傾向があります。少しでも貯めるようにしましょう。
もちろん貯まっている金額も重要ですが、定期的に入金していた履歴など、計画的に貯めようとしていることが通帳上で確認できれば、プラスとして評価してもらえるでしょう。
家族と相談した結果、起業することになりましたか?
事業を行う上でご家族の支えはきっとあなたの力になってくれるでしょう。また、ご家族の協力を受けることができると融資審査の加点要素になることがあります。
具体的には配偶者やお子さん名義の通帳、配偶者の源泉徴収票や確定申告を準備することでプラスの評価になる場合があります。
開業後のビジョンは明確ですか?

なんとなく良い場所があったので開業しよう!という動機では、思いつきだと判断される懸念があります。成功するためのビジョンを明確にすることで、前々から熱意を持て準備してきたことをアピールしましょう。
売上の入金が遅い業種の場合、入金までのお金は用意できますか?

整骨院のように、入金までに時間がかかる業界もあるでしょう。数ヶ月、入金額が少なくても大丈夫なように、事業計画を立てることが大切です。
従業員を雇用予定の場合、雇用する方のメドは立っていますか?
開業後に探すよりも、開業前にメドを立てておいた方が、開業した後スムーズに業務を行うことができるでしょう。

ご両親には、融資の相談をしていますか?
ご両親やご親族からの支援があると、融資を受けやすくなる場合があります。もし自己資金に不安がある方は一度相談してみるとよいでしょう。

取引先、仕入先は明確になっていますか?

取引先や仕入先が明確にならなければ、創業に向けた準備が不十分だと判断されかねません。
事業計画をより具体的にするために、取引先(見込み先)や仕入先は明確にし、リスト化しておきましょう。また外注を予定している際には外注先も合わせてリスト化しましょう。
まとめ
今回は要点を押さえて融資に必要な準備についてチェックリストを作りました。
融資希望金額や用意できる自己資金などで少しでも不安に思うことがある人は、無料診断を試してみてください。無料診断では株式会社SoLabo(ソラボ)の6,000件を超える融資支援実績を基に、専門の融資担当者がご連絡させていだきます。
融資を受けやすくするためには補足資料も大切です!
融資を受けやすくするためには、補足資料を作成するべきでしょう。補足資料については次の記事 をご参照ください。