創業計画書の「創業の動機」の書き方〔良い例・悪い例〕

創業計画書の記載項目の中には、「創業の動機」を記載する欄があります。記載内容としては、〔事業に対しての思い〕や〔将来どのような事業にしていきたいか〕、〔事業における現在の問題点〕などを記載することが一般的です。

ただ、記載欄は決して多いわけではなく、融資担当者は1日に何人とも面談を行うため、融資担当者の負担も考えコンパクトにまとめられると良いでしょう。その中でも一番意識すべきことは、融資担当者へ「事業が成功する可能性」や「返済できる可能性」が高いということを思ってもらえる内容にすることです。

今回の記事では、創業の動機の良い例と悪い例、業界別の記入例、また成功できる事業だと思ってもらうために必要な添付書類などについて解説していきます。

1.「創業の動機」を見て融資担当者は何をチェックしているのか?

創業計画書の『創業の動機』の項目を記した画像

創業の動機を通して、融資担当者が主に知りたいことは、「創業者の事業継続力」です。その理由は、金融機関が創業者に貸したお金は創業者の事業利益から返済されるもののため、例え利益が下がったとしても、その波を乗り越え創業者に事業を続けていく力がどのくらいあるのかを判断する必要があるためです。創業の動機がいい加減なものであれば “この創業者は事業が困難な状況に陥るとすぐに撤退してしまうのでは” と判断され、融資担当者は融資を通してくれない可能性があります。

起業をするということは、自分自身が経営者となるため、時間や事業内容、仕事のスタイルは自由です。言ってしまえば、やりたい仕事だけをやり、やりたくない仕事はやる必要がない、その環境でお金が稼げるとなれば、起業は魅力的にも見えます。

その反面、固定給がないことや、従業員を雇うとなれば従業員の人生を背負っているという責任を持つ必要があります。また、事業のみならず、税務や財務の処理も自身で行う必要があり、会社員とは違う大変なことがたくさん待ち受けています。

そんな中でも、創業の動機に事業への熱い思いや、計画性があると見られれば、困難なことも乗り越えられると融資担当者に思ってもらえます。

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2.「創業の動機」の書き方〔良い例〕

①【過去の職歴を存分に生かしている】和食板前からラーメン屋を創業する場合

〈例〉

「東京銀座の割烹料理店で8年、その後に赤坂のホテルでの和食レストラン副料理長として7年、合計15年、和食業界で経験を積んできました。私は食べることも大好きで、板前として腕を振るいつつ、プライベートではラーメン屋の食べ歩きを頻繁にしています。その中で、3年ほど前から和食を使った高級志向のラーメン屋をやりたいという希望が出てまいりました。自己資金が目標額に達しましたので、起業を決意いたしました。」

過去に15年の和食の経験を積み、その後ラーメン屋を起業する方の志望動機です。通常、和食からラーメンという異なるジャンルでの起業なので、評価としてはマイナスに思われてしまいます。

しかし、フレンチや和食などの手が込んだ創作料理からその他の飲食店への転換となると、「元フレンチのシェフが作るラーメン屋」「元和食料理の板前が作る家庭料理」などの興味が湧くキャッチフレーズとなり、融資担当者も “消費者から人気が出る要素が多い” と判断します。そのため融資担当者や消費者が見て、興味の湧くような自身のキャッチフレーズを考えてアピールしていきましょう。

②【過去の経験と現在の環境を合わせた新しさ】ITエンジニアからカフェを創業する場合

〈例〉

「元々、企業のIT事業部にて10年間エンジニアとして主に機関ネットワークの開発を担当してまいりました。出産・育児に専念するため退職しましたが、子育てを通じて現代のママが抱える不満や悩みを解決したいという思いを強く持ちました。私はWEBページとスマホアプリを製作できますが、飲食店については未経験ですので、地域の元飲食店経営者のママ友に協力してもらい、子供がホッとできる「ほっとカフェ」を起業しようと決意しました。」

子育てをきっかけに起業しているママも増えています。「元々アパレルで働いていた」「美容師だった」「エンジニアだった」など手に職のあるママであれば、その経験を実際の子育ての環境に照らし合わせることで、新しい事業が生まれることでしょう。経験のある職であればその職の特徴を熟知し、子育てにおいてのママの気持ちやママ同士の交流があることで、融資担当者からの評価も得ることができます。

ただしこの動機の場合、利益や将来性については疑問を感じてしまう部分もありますので、「しっかりと準備して利益も出ます」という点は創業計画書のその他の項目(取引先・取引関係や事業の見通し)でアピールしましょう。

③【経験と受講人数から事業安定が見込める】高校教師からサッカー教室を創業する場合

〈例〉

「小学校から大学まで、勉強以外の時間はほとんどサッカーをしていた子供時代でした。新卒で高等学校の教員として採用され、現在勤めている高校でもサッカー部の顧問を担当しています。部活以外にもボランティアで運営しているサッカー教室を持っていますが、問合せや生徒希望のリクエストが近年非常に多い状況です。サッカー教室の運営に集中するため、この度起業を決意いたしました。」

本人に十分なサッカーの経験とサッカーを教える経験があるが、事業としてはまだ始めていないケースの創業動機です。何かの教室を開いていて、人数が増えてきたので、融資で資金を増やして事業拡大したいという動機は、日本政策金融公庫などの金融機関から見れば安定した事業に見えますので融資担当者からも好意的に取られます。

ただしこの例の場合、月会費いくらで何名の生徒が確保されているのか・現在所属している高校から生徒を引っ張ってこられるのかといった点が分からないため、その他の項目(取引先・取引関係や事業の見通し)でアピールしましょう。

3.「創業の動機」の書き方〔悪い例〕

①【いきあたりばったり感がにじみ出ている】ネット物販で起業したい20代男性の場合

〈例〉

「ネットが好きでいつもスマホでネットを見ています。ヤフオク!でいつも商品を販売し、これまで1,000件以上の取引をしています。もっと商品の幅を広げたいが、手元資金がないため、融資を受けることを思いつきました。絶対に返済しますので、お願いします。」

“ヤフオク!” や “メルカリ” でネット物販をしているので、融資を受けたいというお問い合わせも最近非常に多いです。事業としてきちんと利益が出ている証拠を提示できていれば別ですが、趣味の延長や副業とみられる動機では融資の審査では落とされてしまいます。

また改善例として、事業実績を見せるほかに、取り扱う商品で専門性を高めてきた経歴など、準備してきたことがあればアピールするとよいでしょう。

②【始める事業の経験がない】アパレル販売を始めたい30代女性の場合

〈例〉

「飲食店で10年ほど働いてきましたが、30代になり、好きなことで起業したいと思うようになりました。私の趣味はファッションで、オシャレな服を選ぶのが得意です。近所で良い物件があり人通りも多いので、20~30代女性向けの洋服と小物のお店を開きたいと思います。」

今までしてきた飲食店の職務経歴が、生かせない事業は、残念ながら融資を受ける対象として見てくれません。この方の場合、飲食店でもし店長になったことがあるのであれば、店舗運営の経験があるとアピールすることは可能です。足りない分は自己資金を十分に用意している(500万円ほど)とアピールすることに加え、洋服に関わる色彩検定などの資格もあればアピールしていきましょう。

③【会社がイヤだから企業する】在宅でプログラマーとして起業したい30代男性の場合

〈例〉

「大卒から大手企業で8年間プログラマーとして働いてきました。残業が多く、8年の間に体調を崩すことがしばしばありました。30代になり体力的にきつくなってきたので、起業してより健康的な生活をしたいと思うようになりました。」

この方の場合、プログラマーとしての経験は十分にありますので、書き方次第では融資に通る可能性があります。しかし、体調を壊したという部分を動機に入れてしまうと、事業がうまくいかなかった場合、体調のせいにするのではないかと、融資担当者としては不安になってしまい、融資の審査には落ちてしまうことに繋がります。

4.「創業の動機」の業界別記入例

① 飲食店の場合

〈記入例〉

「元々自身のお店を持ちたいという夢があり、カフェでのアルバイトを5年間、その後イタリアンレストランにて10年間の経験を積み、最後3年間は店長として勤め、お店の売上も2倍近く上がりました。自身の目標としていた修行年数も終え、自身のお店を開業するのに理想的な物件も見つかった為、融資を希望しました。」

<融資担当者に評価されやすいポイント>

・十分な経験年数と店長経験

・売上向上の知識

・開業を予定している物件の有無

飲食店の開業で最も大変なことは、生き残れるかどうかです。開業してから3年で飲食店が廃業してしまう割合は約7割と言われています。ライバルが多い飲食店だからこそ、生き残るために各店舗が試行錯誤し、顧客確保や売上の向上を目指します。

そんな中で15年の飲食店経験があり、店長として売上向上の知識もあるとなれば、融資担当者から高評価を受けることに繋がるでしょう。また、既に開業を予定している物件があるとなれば、しっかりと計画を立てているということもアピールすることができます。

② 美容室の場合

〈記入例〉

「現在の店舗で13年間スタイリストとしての経験を積み、3年前には美容組合が主催するコンテストにて優勝することができました。優勝後は自身のお客様が徐々に増え、店舗で対応することが難しくなってきたことから開業を決意し、自身の店舗でお客様一人に対してしっかり対応ができるプライベートサロンの開業を希望しています。」

<融資担当者に評価されやすいポイント>

・十分な経験年数

・コンテストでの入賞実績

・顧客となるお客様の多さ

美容室の開業で成功できるかどうかは、美容師自身についてきてくれるお客様の人数であったり、美容師の技術力です。顧客となるお客様の数が多ければ多いほど融資担当者の評価も上がります。

また、開業後に新規の顧客を取り入れるためには、美容師の実績が重要なものとなります。美容師のことを知らない新規顧客は、経験年数や入賞の実績を見て、行くか行かないかを決める方がほとんどでしょう。目に見える実績があるのであれば積極的にアピールしましょう。

③ エステの場合

〈記入例〉

「エステの需要が少なくない中 “エステに行くとお金がかかる” という自身のお客様の言葉を受け、出張での施術を考えました。また、セルライトに特化した施術をメインに考え、多くの人にエステの良さを知ってもらうためにも施術料を少なくし、開業資金が多くかからない出張エステでの開業を決意しました。」

<融資担当者に評価されやすいポイント>

・開業資金の削減を考えた開業

・ある事柄に特化している

美の追求は女性のみならず、以前と比較すると男性でも意識している方が多くなってきています。その反面、エステに行くのは高いと思っている方も少なくなく、施術料を気にして利用できないという方もいます。

上記の例でいうと、お客様のことを第一に考えた施術料の削減、そしてその施術料を削減するために店舗改装などにかかる多額の費用が不要となる出張エステでの開業というのは、開業に対してしっかり考えられていると判断されます。

またエステとして大きく分類するのではなく、ある事柄に特化した専門エステとなると、その事柄を必要としている顧客を獲得しやすく、融資担当者から見て評価を得ることに繋がります。

その他の業界の参考情報

5.添付書類を用意して説得力を上げよう

創業計画書にある創業の動機の記載欄は、たったの4行しかありません。そのため限られた欄でできる限りのことを伝えなければなりませんが、もしも入賞暦や顧客数、資格取得などが分かる書類がある場合は追加で添付できるよう準備しておくといいでしょう。

文章に書かれた物を見るよりも、実際に目にすることで融資担当者に対しての説得力が上がるためです。

〈添付書類として効果があるものの例〉

・入賞の実績があるならばそれを表す賞状など

・顧客数を表すためのお客様との写真など

・ターゲットとする市場の拡大が分かる資料など

まとめ

創業計画書は面談と異なり、言葉や文章を練ることができます。今回ご紹介した例はあくまで一例ですが、融資を受けられそうな経歴でも、文章の書き方で大きく損をしてしまう可能性もあります。

また、融資を受ける際は経験や創業動機以外にも審査されるポイントがあるため、創業計画書全体を通してアピールできるものにしていきましょう。

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