創業融資の審査に落ちる原因は?傾向と対策を解説

創業に向けて準備をしている人の中には、創業融資を受けて資金調達する方法を検討している人もいるでしょう。その際、創業融資の審査に通過できるかどうか不安な人もいるかもしれません。

当記事では、創業融資の審査における傾向と対策を解説します。創業融資は事業の実績がまだない状態で審査される関係上、創業融資ならではの審査の傾向を押さえておく必要があるため、創業融資の審査に不安がある人は参考にしてみてください。

審査に落ちる原因は返済能力に懸念があると判断されるため

審査に落ちる原因は、返済能力に懸念があると判断されるためです。金融機関は融資したお金を回収しなければならないため、さまざまな観点から創業者の返済能力を総合的に評価し、審査の可否を決定しています。

【創業者の返済能力を判断する観点】

  • 自己資金
  • 事業計画書
  • 創業者の経歴
  • 個人信用情報

創業者の返済能力を判断する観点として「自己資金」「事業計画書」「創業者の経歴」「個人信用情報」が挙げられます。それぞれの観点から総合的に評価し、創業者に返済能力があるかどうかを判断しているため、創業融資の審査に不安がある人はそれぞれの観点を押さえてみてください。

自己資金

創業融資では、自己資金を審査の判断材料とする傾向があります。自己資金が計画的に貯蓄されている場合、創業者の資金管理能力が証明され、創業後も期日を守って返済できる能力があると評価されるからです。

自己資金を貯めた実績は、目標のために計画的に努力できた証明となります。収入の一部を貯金してきた経緯がある場合、創業する目的や創業時期を定め、計画的に努力した継続力がある人物と評価される可能性があります。

また、自己資金がある場合、創業後の運転資金に充てることができます。創業後に事業が計画通り進まなくとも、相応の自己資金があれば資金不足に陥る心配が減るため、借入金の返済能力があると評価される可能性があります。

自己資金の有無は創業者の計画性や継続力を判断する指標となります。融資を受けたあとは計画的に返済を継続していかなければならないため、創業融資の審査では、自己資金額や自己資金の貯蓄経緯も含めて審査の判断材料となることを留意しておきましょう。

自己資金は約3割を目安に準備する

審査における自己資金の対策として、自己資金は創業資金総額の約3割を目安に準備しましょう。2024年度新規開業実態調査~アンケート結果の概要~」によると、自己資金額の平均は開業費用全体のうち約25%だったため、自己資金を貯めている人は創業資金総額の約3割を目安に貯金してみてください。

【自己資金の目安の例】

創業資金総額 借入額 自己資金額(自己資金の割合)
500万円 350万円 150万円(30%)
800万円 550万円 250万円(約29%)
1,000万円 700万円 300万円(30%)
1,500万円 1,000万円 500万円(約33%)

創業資金総額に対し、自己資金を約3割用意した場合の金額の目安は上記の通りです。準備する自己資金額の目安は創業資金総額によって異なるため、まずは創業にかかる費用の総額を算出することから始めます。

創業資金総額を算出したあと、自己資金を3割用意することが難しい場合は、計画を縮小する方法を検討する余地があります。「テナントを変更する」「中古設備に変更する」など、創業にかかる費用の総額を減らすことにより、自己資金の割合を増やすことができます。

なお、自己資金を3割用意すれば必ずしも融資を受けられるとは限りません。審査の可否はさまざまな観点から総合的に判断されるため、他の審査項目で懸念事項がある場合、自己資金の割合を3割以上に増やしておくことも検討してみてください。

創業融資における自己資金の情報をさらに知りたい人は、「創業融資を受けるために自己資金はいくら必要か?」も参考にしてみてください。

事業計画書

創業融資では、事業計画書の内容をもとに審査する傾向があります。事業計画書の内容に妥当性がある場合、事業計画に沿った収益が見込めると評価されるため、借入金の返済能力があると判断される可能性があるからです。

【事業計画書の作成ポイント】

項目 具体例
整合性がとれているか? ・創業の動機と経歴に整合性があるか?
・サービスの強みと市場のニーズに整合性があるか?
実現可能な数値を設定しているか? ・売上の予測は実現可能な数値か?
・予想を下回った場合のシミュレーションをしているか?

事業計画書を作成するポイントのひとつは「整合性」です。「創業の動機と経歴に整合性があるかどうか」「サービスの強みと市場のニーズに整合性があるかどうか」など、事業の内容に一貫性があることにより、妥当性のある事業計画書と評価されやすくなります。

事業計画書を作成するもうひとつのポイントは「実現可能性」です。「売上予測は実現可能な数値かどうか」「予想を下回った場合のシミュレーションをしているかどうか」など、実現可能性の高い数値を設定することにより、妥当性のある事業計画書と評価されやすくなります。

なお、事業計画書に記載する内容は「根拠」が必要です。根拠となる事実を積み上げて説明することにより、整合性や実現可能性のある事業計画が作成できるため、事業計画書を作成するときは根拠をもとにサービスの強みや数値などを記載するようにしましょう。

事業計画書の書き方が知りたい人は、「創業融資における事業計画書の書き方のポイントを解説」も参考にしてみてください。

事業計画書の作成が不安な人は添削してもらう

事業計画書を作成する場合の審査における対策として、事業計画書を添削してもらう方法を検討してみましょう。事業計画書を金融機関に提出する前に第三者に添削してもらうことにより、自身では気づかなかった課題や問題点に気が付ける可能性があるからです。

【事業計画書を添削してもらう相手の例】

  • 商工会議所や商工会
  • よろず支援拠点
  • 日本政策金融公庫や信用保証協会の創業相談窓口
  • 開業する業種のプロ

事業計画書を添削してもらう相手として「商工会議所や商工会」が挙げられます。商工会議所や商工会は管轄地域で創業する事業者を支援しているため、無料での創業相談や事業計画書の添削をしてくれます。

事業計画書を添削してもらう相手として「日本政策金融公庫や信用保証協会の創業相談窓口」が挙げられます。日本政策金融公庫や信用保証協会は、創業相談できる窓口をそれぞれ設けているため、融資審査の観点から事業計画書を添削してくれる可能性があります。

なお、自身が開業する業種のプロに意見をもらう方法もあります。「独立開業した先輩」「業種に特化したコンサルタント」など、開業する業種に詳しい人に事業計画書を見てもらうことにより、課題や問題点が見つかる可能性があるため、事業計画書の作成に不安がある人は開業する業種のプロに意見をもらうことも検討してみてください。

創業者の経歴

創業融資では、創業者の経歴を審査の判断材料とする傾向があります。創業融資は事業の実績がない状態で審査することになるため、創業者自身の実績や職歴をもとに、事業を遂行する能力があるかどうかを判断するからです。

たとえば、美容室を開業する人は美容室の勤務経験の有無を確認されます。「美容室での勤務年数」「管理職経験の有無」など、美容室で培ったスキルや経験を伝えることにより、美容室をスムーズに運営できる能力があると評価される可能性があります。

また、業種経験がない場合であっても創業者の経歴は確認されます。創業する事業と関連のない業種に就いていたとしても、「学歴」「職歴」「職位」など、創業者の経歴から人となりを評価される可能性があります。

なお、資格や免許が必要な業種もあります。飲食店や美容室など、資格や免許が必要な業種を開業する場合は、取得した日付や取得した経緯を経歴の欄に記載することも検討してみてください。

業種経験が不足している人は経歴を活かす

業種経験が不足している人は、自身の経歴を活かす方法を考えましょう。業種経験がなくとも、自身の過去の経験が創業する業種に活かせる場面を伝えることにより、業種経験の不足を補えるほどの強みがあると評価される可能性があるからです。

【自身の経験が活かせる場面の例】

過去の勤務経験と開業する業種の例 伝え方の例
経験:食品の卸メーカーに15年勤務してきた

開業する業種:飲食店

飲食店の勤務経験はありませんが、食材の目利きや仕入先との交渉に自信があります。鮮度の良い食材をリーズナブルな価格で提供するレストランを開業したいです。
経験:一般企業で経理事務を担当していた
開業する業種:ネイルサロン
ネイルサロンの勤務経験はありませんが、経理事務の経験から、帳簿の管理や採算の管理ができる自信があります。Excelを使用し事業データを管理することにより、利益を確保できるサロン運営を実現させたいです。

たとえば、食品の卸メーカーに勤務してきた人が飲食店を創業する場合、「食品」という共通点から自身の経験を活かせる場面が考えられます。「食材の選定」「仕入先との交渉」などに特色をもたせることにより、自身の強みを生かした店舗づくりができる可能性があります。

また、経理事務を担当してきた人がネイルサロンを創業する場合、「経理管理」という共通点から自身の経験を活かせる場面が考えられます。「帳簿管理」「予算管理」などに特色をもたせることにより、自身の強みを生かした店舗づくりができる可能性があります。

自身の経験を活かすことにより、同業他社との差別化が図れる可能性があります。同業他社と違うキャリアを積んできたからこその強みが見つかる場合があるため、開業する業種の経験が不足している人は、これまでの自身の経験から強みを探すことを検討してみてください。

なお、業種経験が不足していると感じる人は、「業種経験のない人が創業融資を受けるためのポイントを解説」の記事も参考にしてみてください

個人信用情報

創業融資では、個人信用情報を審査の判断材料とする傾向があります。個人信用情報とは、「クレジットカード」「住宅ローン」などの個人の信用取引における履歴が登録された情報であり、創業融資の審査時に金融機関は個人信用情報を確認するからです。

たとえば、東京信用保証協会では、「個人信用情報機関の利用及び登録等に関する同意書」をもとに、個人信用情報を確認する旨を明記しています。それにより、個人信用情報は創業者の返済能力を判断する材料のひとつとして考えられます。

個人信用情報は取引におけるさまざまな情報が登録されています。「債務整理の有無」「入金遅延の有無」など、過去に返済が滞った情報がある場合は、創業融資の審査にとくに影響する可能性があります。

なお、個人信用情報は「人種」「思想」「保険医療」「犯罪歴」などの項目は含まれません。個人信用情報はあくまで創業者の信用を判断するための参考資料として利用されるため、信用に関する情報のみが記録されていることを留意しておきましょう。

個人信用情報に懸念がある人は開示請求してみる

審査における個人信用情報の対策として、個人信用情報に懸念がある人は開示請求することを検討してみましょう。個人信用情報機関に信用情報を開示請求することにより、信用情報を閲覧できます。

個人信用情報機関は3つあり、それぞれの機関が相互に連携し情報を共有しています。機関ごとに保有している情報が異なる可能性があるため、自身が知りたい情報を保有している機関に開示請求するようにしましょう。

【開示請求先】

個人信用情報機関 保有している情報の例
株式会社シー・アイ・シー(CIC) ・クレジットカード
全国銀行個人信用情報センター(全銀協) ・銀行のローン商品
株式会社日本信用情報機構(JICC) ・消費者金融のローン商品

開示請求すると、個人信用情報機関に加盟している貸金業者との取引における信用情報が閲覧できます。「クレジット会社」「銀行」「消費者金融」など、個人信用情報機関によって加盟している貸金業者が異なるため、保有している情報も異なる可能性があります。

なお、開示請求はインターネットから申し込めます。本人確認書類の提示や請求費用の支払いなどの手続きが発生するため、個人信用情報を確認したい人はそれぞれの機関の公式サイトから申請方法を確認してみてください。

信用情報がブラックだった場合の審査における影響が知りたい人は、「創業融資におけるブラックリストの取り扱いを解説」の記事も参考にしてみてください。

 審査に不安がある人は創業者の事例を参考にしてみる

創業融資の審査に不安がある人は、同じく創業した人の事例を参考にしてみましょう。「審査に向けて準備したこと」「実際に相談しに行った窓口」など、創業に至るまでの事例を確認することにより、審査に向けた次の行動を決める手がかりとなる可能性があります。

【創業支援事例が確認できるサイト】

サイト 概要
信金中央金庫「しんきん創業の扉 全国の信用金庫における創業事例を検索できる。信用金庫が独自に運営している創業施設も検索できる。
全国信用保証協会連合会「各協会の支援事例リンク集 国の信用保証協会における創業支援の事例を地域別に検索できる。各協会における創業支援の取り組みも確認できる。
日本政策金融公庫「Story-全国創業事例集- 日本政策金融公庫における創業融資の事例を検索できる。「業種」「年齢」「テーマ」「地域」など、条件を絞り込んで検索できる。

「しんきん創業の扉」では、全国の信用金庫における創業事例を検索できます。地域ごとに信用金庫の支援事例や創業相談ができる施設情報を確認することができるため、創業融資の審査に不安がある人は、相談できる信用金庫を探す手がかりになるかもしれません。

「各協会の支援事例集」では、全国の信用保証協会における創業支援の事例を確認できます。「事業計画のブラッシュアップ」「取引先の紹介」など、創業支援した事例が協会ごとに掲載されているため、創業融資の審査に不安がある人は、相談できる保証協会を探す手がかりになるかもしれません。

紹介したサイトに掲載されている事例の多くは創業融資を受けています。「準備したこと」「苦労したこと」などの体験談を読むことにより、審査に向けて対策する具体的な行動を見つける手がかりとなる可能性があるため、創業融資の審査に不安がある人は参考にしてみてください。

まとめ

審査に落ちる原因は、返済能力に懸念があると判断されるためです。金融機関は融資したお金を回収しなければならないため、さまざまな観点から創業者の返済能力を総合的に評価し、審査の可否を決定しています。

 創業者の返済能力を判断する観点として「自己資金」「事業計画書」「創業者の経歴」「個人信用情報」が挙げられます。創業融資の審査に不安がある人はそれぞれの観点において確認されるポイントを押さえてみてください。

創業融資の審査に不安がある人は、同じく創業した人の事例を参考にしてみましょう。「準備したこと」「苦労したこと」などの体験談を読むことにより、審査に向けて対策する具体的な行動を見つける手がかりとなる可能性があるため、創業融資の審査に不安がある人は参考にしてみてください。

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