新型コロナの猛威がなかなか収まりません。日本政府は連日の会見で「3つの密」を避ける自粛を重ねて依頼していますが、結果的に飲食店の顧客減少につながりました。また、4月13日に東京都の小池都知事が飲食店の酒を提供する時間を夜の19時までにするよう要請したことにより、飲食店の経営はますます深刻化しています。
そこで、今回の記事では「飲食店が今すぐ使える支援策」をテーマに融資や協力金などの制度をまとめてわかりやすくご紹介します。
記事の前半では群馬県高崎駅から徒歩7分の自然派ワインバー「ルケ」の店主に、新型コロナの影響やテイクアウト移行となった経緯をインタビューしていきます。同じ飲食店を営業する方にとっては興味深い内容になっているかと思いますので、ぜひご一読ください。
※この記事は2020年4月14日現在の報道および情報をもとに作成されています
目次
1.新型コロナで飲食店が大打撃!飲食店の影響はなぜ深刻?
①平均7~8割減!!3つの密での来店客の大幅減少
【参照:密 – 首相官邸https://www.kantei.go.jp/jp/content/000061234.pdf】
新型コロナウイルスの集団発生防止のために政府により伝えられたキャッチフレーズとして「3つの密」があります。3つの密とは、①換気の悪い密閉空間②多数が集まる密集場所③間近で会話や発声をする密接場面をできるだけ避けましょうという、新型コロナ感染症予防の政策です。
【3つの密とは】
- ①換気の悪い密閉空間
- ②多数が集まる密集場所
- ③間近で会話や発声をする密接場面
飲食店の環境は3つの密にあてはまる場合が多く、これにより次第に飲食店から足が遠のく人が3月半ばごろから徐々に増えてきました。
②食材のロス、アルバイト代、家賃、、。売上がなくても経費が大きい
新型コロナでは、ホテルなどの宿泊業や旅行業・航空業が観光客・ビジネス客の減少により経営上の大打撃を受けています。この次に影響が大きい業種は飲食店です。
まず、飲食店の場合は食品のロスがあります。仮に在庫をうまく消化して休業できたとしても、飲食店に卸す食品会社は大きな打撃を受けてしまいます。
また、アルバイトの人件費や家賃と光熱費の支払いも負担です。厨房機器をリースしている場合は、そのリース代も支払い続けなくてはいけません。以下の表でざっと計算してみましょう。
【新型コロナで休業する場合に飲食店が必要な経費を計算しよう】
事業系一般廃棄物 費用 | ※東京都23区内の場合1キロあたり40円
40円×20キロ(例)=800円 |
アルバイトの人件費 | ※1100円時給の人を月に70時間×3名で
77,000円×3名=231,000円 |
テナントの家賃 | ※東京都目黒で10坪の場合
30万円×休業月数分(2ヶ月)=60万円 |
店の光熱水道代 | ※月100万円の売上の店の場合
13万円×休業月数分(2ヶ月)=26万円 |
計 | 1,091,800円 |
毎月の経費は店によって差がありますが、4月からの2ヶ月の休業を想定すると、上記のように小規模の店でも軽く100万円以上の赤字となってしまいます。
③酒類で稼ぐ店が多い飲食店が多いから
飲食店で利益率が高いのはドリンクです。ビールなどの酒類は原価率20~30%程度、利益率70%程度と飲食店の重要な収入源です。
けれども、東京都で小池都知事は4月10日、特措法に基づき飲食店の営業時間の短縮を要請。酒類の販売は19時ラストオーダーにしなくてはならなくなりました。
また、居酒屋に関しては「生活の維持に必要な施設」とみなされず休業対象となりました。
これらの理由で、日本では新型コロナの影響を受ける飲食店について注目が集まっています。
2.【実録】新型コロナでどう変化?ワインバー店主にインタビュー!
突然ですが、実際に飲食店をされているオーナーさんに新型コロナウイルスについての影響をインタビューしてみましょう。新型コロナウイルスの影響下で飲食店としてどのような対応や工夫をされているのでしょうか?
①群馬県高崎市ワインバー「ルケ」にインタビューした経緯
自然派ワインバー「ルケ」の店主と筆者は法政大学・経営学部の音楽サークルでの先輩と後輩の関係です。
ルケを開業する前の前身である「シュクル・キッチン」の時代には一度おじゃましたのですが、ルケになってからはまだお邪魔していません。写真だけでもとてもおいしそうなので、ぜひコロナが収束したら伺いたいですね~(ジュルジュル)
②新型コロナの影響を受けて、飲食店主として日々感じること
・新型コロナの影響を店が受けたのはいつ頃ですか?
・影響は具体的にどう出ましたか?
3月末に東京で自粛要請が出たのと、志村けんさんが亡くなったのも大きかったとも思うんですけどそこを境に一気に来店数が激減しました。 売り上げで言うと8~9割減です。
志村けんさんが亡くなったのは、確かにじぶんの周りでもショックを受けていたひとが多かったです!
売上は8~9割減ですか!思った以上に深刻です。
・テイクアウトへの移行はどのようにして実施しましたか?
参考にしたひとやサイト等はありましたか?
とにかくスピーディに移行することに集中しました。テイクアウトへの移行に関しては、元々イベント出店をたくさんやって要領は得ていたので上手くできたと思います。
なにかを参考にしたというのは特にないです。今まで自分が作ってきた料理、その中で支持をいただいていたもの、そして自分がいまどういう人たちの力になりたいか。その3点をすり合わせてメニューを決めた感じです。まだ全部やれていないんですけど。
最近、キッチンカーなどでの出店も人気ですからね。
・テイクアウトへの移行で良かった点、
悪かった点を教えて下さい
良かった点は原価率が下がったことですかね。通常営業では常時8~10種類のグラスワインを用意していたのでちょっと静かな日が続くと開けていたワインがほぼダメになるという事が少なからずありました。
だから原価率は高かったんです。テイクアウトにしてからはほぼロスがなくなったのでかなり原価率は下がったと思います。ロスの少ないメニュー構成にしているというのもあるのですが。
悪かった点は、以前のような売り上げを結局確保できていないという事ですかね。ロスはあるにせよ、うちの場合はワインの売り上げが全体の6~7割を占めていたので。その売り上げを全部テイクアウトで作るというのはオペレーション的にもかなりキツいです。
テイクアウトではロスは少ない分、売上を大きく上げることはできないのですね。また、手間が余計にかかるのも課題ですね。
・いまの政府の飲食店への休業要請や支援策をどう思われますか?
正直ちぐはぐな印象はあります。加速度ついて悪化していく状況に対応できるスピード感ではないとも思います。 なので一般的には「休業するなら融資ではなく補償を」、という話だと思うんですけど自分の中では「要請するなら金をくれ」という段階は終わっています。
日々状況は変化しているのでもしかしたら実効性のある施策がこれから出てくるのかもしれないですけどね。
それを待っている時間はなくなってきました。 ヨーロッパのような潤沢な補償は望めない雰囲気なので、今ある支援策を精査して利用できるものは利用してなんとか生き残らねばと思っています。
日本政府の打ち出した事業者向け施策は融資がトップで打ち出され、最近になってチラホラと給付金の話が出始めましたが、実施がいつになるかは不透明ですからね。
・今回のコロナで同業者と話している内容(いつ頃おさまるか、など。あまり深刻に捉えてない、など)があれば教えて下さい
みんな不安でいっぱいですよ。終息もいつになるか見えないし。最近は「お店を開けているのは悪」という全体主義的な風潮が強まっていて、そこに警戒心を抱く仲間も増えています。
③インタビューを終えて
お酒の売上の減少が想像以上に深刻で、かつ、突然の災害下の中でもできる努力を前向きにしているという印象を受けました。
わたしたちに安らぎや楽しさを提供してくれる飲食店の早い復興はみなさんの協力(テイクアウト品の購入など)がカギとなります。
ぜひ飲食店を応援しましょう!インタビュー、誠にどうもありがとうございました!!
3.飲食店が今すぐ使えるコロナの支援策まとめ~もらえるものはもらっておこう!
新型コロナの支援策はさまざまな種類があり、テレビやネットニュースで追っていくだけで一苦労です。この見出しでは、飲食店経営者のみなさんがすぐに使える支援策をまとめてご紹介します。
①【東京都内に店をお持ちの場合】休業要請に応じた場合にもらえる「感染拡大防止金」
4月10日に東京都の小池百合子都知事が表明した、休業に協力した飲食店などがもらえる協力金がこの感染拡大防止金です。しかし、4月14日時点で決まっているのは以下の情報のみ。対象の期間や申請方法などの詳細はまだ決まっていません。
【感染拡大防止金の内容】
概要 | 都の休業等の要請や協力依頼に対して、 全面的に協力頂ける事業者への協力金 |
対象 | 都内に事業所がある中小の事業者のうち、都の要請や
協力依頼を受け、全面的に協力頂ける事業者 |
支給額 | 50万円
(2店舗以上有する事業者 100万円) |
【参照:東京都|新型コロナウイルス感染症に伴う中小事業者向けの主な対策メニュー】
4月10日の菅官房長官による会見によると、感染拡大防止金は東京都だけではなく各自治体の判断で使えるように動いているという趣旨のコメントがありました。この支援策については引き続き注視していく必要があります。
②【誰でも】経済産業省による「持続化給付金」
持続化給付金は4月7日に新型コロナの影響で売り上げ減となる幅広い事業者向けに発表された給付金です。前年同月比で50%以上の売上減少が条件ですので、1年以上飲食店を経営している方が対象です。
この給付金は企業だけでなく個人事業主や小規模事業者も対象なので、比較的多くの方が利用できる給付金です。
【持続化給付金の概要】
【給付対象者】
・中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者等、その他各種法人等で、新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上減少している者 ※資本金10億円以上の大企業を除き、中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者を広く対象とする。また、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人についても幅広く対象となる |
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【給付額】
前年の総売上(事業収入) — (前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月) ※上記の算出方法により、法人は200万円以内、個人事業者等は100万円以内を支給。 |
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【対象期間】
2020年1月から2020年12月のうち、2019年の同月比で売上が50%以上減少したひと月について、 事業者の方に選択いただきます。 |
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【申請・給付の開始】
補正予算の成立後、1週間程度で申請受付を開始します。 電子申請の場合、申請後、2週間程度で給付することを想定しています。 |
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【申請に必要な情報】
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【参照:新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ(P24)】
【参照:持続化給付金に関するお知らせ】
こちらの給付金が実際にスタートするのは、補正予算の成立後となります。補正予算の成立とはいったいいつ頃なのでしょうか?
(補正予算の成立とは)
補正予算とは、当初の予算案での執行が難しくなった場合に執り行われる追加の予算のことをいいます。通常、予算内での執行が難しくなった場合は予備費を使うことになりますが、今回の新型コロナの件では予備費でも足りず、2020年度の補正予算は8兆3,193億円にものぼる見通しです。
2020年度の補正予算案は4月20日頃国会に提出される見通しで、衆議院での可決後の4月最終週に持続化給付金の申請がスタートする予定です。
③【個人事業主向け】実質無利子融資の「新型コロナ感染症特別貸付」+「利子補給」
【参照:日本政策金融公庫|新型コロナウイルス感染症特別貸付】
給付金の条件は厳しく、売り上げ半減ほどまでいっていない個人事業主の方におすすめの支援策は無利子融資です。
無利子融資は最初から金利が0%なわけではなく、日本政策金融公庫の「新型コロナ感染症特別貸付」という融資で融資を受けた方が自治体を通じて申請すると「利子補給」という利息分のキャッシュバックが受けられるものです。
目先のお金がなくお店をたたまなくてはいけない事態になっては大変です。融資なので借金になってしまいますが、無金利なので安心です。また、返済時の据置期間(金利分のみ払えばいい期間)も1年と長めなので返済しやすいのも特徴です。
【新型コロナ関連】個人事業主・フリーランス向け無利子融資などの支援まとめ
※詳細は、当サイトの上記記事をご参照ください
④【従業員を休ませたら】全業種へ条件変更済み!雇用調整助成金の特例を使おう
事業主の努力ではどうしようもない経済や災害等の影響で、事業主が従業員をやむなく休業または研修等を受けさせる場合にもらえる助成金です。
新型コロナ以前から存在する助成金ですが、新型コロナ以後に特例につぐ特例が発表され、現在は大幅に緩和された条件で飲食店オーナーにも使いやすい助成金となっています。
【雇用調整助成金の特例】
特例対象期間(緊急対応期間) | 4月1日から6月30日まで |
対象事業主 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業主(全業種) |
生産指標要件(クリアしなければいけない条件) | 生産指標要件緩和
(1か月5%以上低下) |
雇用保険適用事業者について | 雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象に含める |
計画届について | 雇用調整助成金では、どの従業員をどれくらいの期間休ませるかについて労働局などに事前申請が必要ですが、今回の新型コロナのr特例としては、助成金申請後の事後提出が認められています。 |
助成率 | 4/5(中小)、2/3(大企業)
(解雇等を行わない場合は9/10(中小)、3/4(大企業)) |
ちなみに、中小事業者と小規模事業者の定義は以下の表をご参照ください。小規模事業者は中小事業者のうち小規模事業者に含まれます。小規模事業者として経営されている飲食店は多いのではないでしょうか。
【中小事業者の定義】
【小規模事業者の定義】
⑤【現在の借入がキツイ方は】セーフティネット保証4号または5号を利用しよう
公的機関として融資の際の保証をする「信用保証協会」がありますが、この信用保証協会による100%または80%の保障を受けられる制度があります。
(セーフティネット保証の保証ってどういう意味?)
①既に融資を受けていても新たな融資が受けられる(→融資の別枠の保証)
②あなたが借金を自然災害などのせいで払えない場合、国が代わりに返済する(→信用保証協会による代位弁財の保証)
新型コロナにより、いまは全国各地の方がセーフティネット保証を受けやすい状態にあります。セーフティネット保証に認定されると、融資の審査に通りやすくなり、いま返済できない借入も信用保証協会により立替返済もしてもらえます。
(セーフティネット保証の申請の順番)
- ①事業所を管轄する自治体(市区町村)でセーフティネット保証の認定を受ける
- ②事業所を管轄する自治体にある信用保証協会で信用保証を受ける
- ③日本政策金融公庫などの公的機関の融資を受ける
- ④お金が着金する
- ⑤返済スタート(据置期間あり・利子は0~1%台)
セーフティネット保証4号と5号の概要や違いについては、当サイトの以下記事もぜひご利用ください。
新型コロナ関連で使えるセーフティネット保証って何?融資と4号5号の違いを解説
⑥【飲食店ならでは】飲食店等が優先して利用できる融資!「衛生環境激変対策特別貸付」
ホテル業・飲食店などのための優先的な国の融資が衛生環境激変対策特別貸付です。
金利は基準金利の2.5%前後から0.6%ほど優遇された1.61%が基本です。無担保で据置期間(金利のみを返済すればよい期間)を3年まで設定できます(設定しなくても可)。いま公庫から借り入れしている方でも、別枠で1,000万円までの融資が可能です。
この融資の概要や申請書類の書き方は以下の記事で解説しています。
【徹底解説!】新型コロナウイルス関連で融資を受ける際の必要書類と作成方法
4.個々の飲食店の対応はさまざまです
個人事業主が「営業している方が赤字」と判断し早々に休業している飲食店もあれば、4月15日現在でも通常通りに営業している飲食店もあります。
イタリアンファミリーレストランチェーン「サイゼリヤ」の場合は、以下のように「3つの密」を防ぐ工夫をしながら、緊急事態宣言後も時間短縮して営業しています。
まとめ
新型コロナの日本での最新の感染者数は7千人を超えているそうです。しかしながら、この状況はいつまでも続きません。現状は耐え、近い未来に向けてできることを少しずつ積み重ねていきましょう。
新型コロナでの融資や給付金などについては、放っておいて自動的に飲食店オーナーにお金が支払われることありません。自己申請が必要です。この支援を受けよう!と思ったら、まずは公式ページでも情報収集をして積極的に問合せましょう。