コロナ渦の影響による売上不振で大きく業績を落としている企業や、業態転換を迫られている企業が後を絶ちません。
この状況をふまえて、2020年第三次補正予算で業態転換を支援することを目的とした新しい補助金制度「事業再構築補助金」が令和3年3月26日から公募スタートしました。
現在は第2次の公募が2021年5月20日よりスタートしています。
今回はこの事業再構築補助金について、令和3年2月15日、新たに中小企業庁から発表された、概要資料の情報をメインに解説します。
※本記事の参考情報の出典:
事業再構築補助金の概要(中小企業等事業再構築促進事業)|中小企業庁
目次
事業再構築補助金の目的
事業再構築補助金は、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的として導入されることが決定した制度です。
基本的に設備投資を支援する補助金のため、事業転換で新たな機器を購入する、店舗を改修する、新システムを導入する、などの対応を迫られている事業者にとっては見過ごせない制度でしょう。
本制度の対象となるのは、コロナ渦の影響で業績が厳しくなっている中小企業※、中堅企業、個人事業主、企業組合等です。
※ここで言う「中小企業」の範囲は、中小企業庁によれば現段階では調整中ですが、資本金10億円未満となる見込みとされています。
事業再構築補助金の公募期間
事業再構築補助金の公募は全5回を予定しています。
第2次の公募開始は、令和3年5月20日(木)で、申請受付は令和3年5月26日(水)開始の見込みです。
また、第2次の応募締切は令和3年7月2日(金)です。
事業再構築補助金の主要申請要件
要件1.売上が減っていること
申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少している。
要件2.事業再構築に取り組むこと
事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行うことが求められます。
業態転換とは、例えば店舗型の飲食店が、店舗を一部改修し、ドライブイン方式のテイクアウトの販売を新たに始めるなど、もともとの事業内容から新たに転換することを指しています。
「事業再構築」の詳しい定義に関しては、中小企業庁による「事業再構築指針」に掲載されていますので、そちらをご参照ください。
要件3.認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と事業計画を策定すること
事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定することが必要です。
認定経営革新等支援機関とは、別名「認定支援機関」とも呼ばれており、地域の経済産業局や財務局が、「税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上ある」と認定した個人、法人、中小企業支援機関等のことを指します。
お近くの認定支援機関を調べたい場合、下記サイトをご利用ください。
また、補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定することが求められます※。
※金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。
さらに、補助事業終了後、3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額※の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画を策定する必要があります。
※付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したものを指します。
申請代行を依頼できる認定支援機関も
前項で説明したとおり、事業再構築補助金では認定支援機関と事業計画を策定することが申請の必須要件です。
事業計画書の作成は、慣れていない方の場合、多くの時間を必要とする上、作成のための勘所を掴むのもなかなか難しいです。経営の専門家である認定支援機関の力を借りることで、メインである事業に集中できることでしょう。
このコロナ渦で、余計な事務作業に割く時間を極力少なくしたいという方は、専門家への申請代行を検討するのがおすすめです。
当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)も認定支援機関として、事業再構築補助金のご相談や、申請代行を承っております。なお、補助金の相談をご希望の方は、「補助金の相談をしたい」旨を受付担当にお伝えいただけるとスムーズです。
予算額、補助額、補助率(通常枠、卒業枠、グローバルV字回復枠)
事業再構築補助金の予算額として、令和2年度第3次補正予算で、1兆1485億円が計上されました。 なお、補助金の公募は、全5回を予定しています(時期は未定)。
補助額と補助率は下表にまとめる通りです。
補助金額 | 補助率 | |
中小企業(通常枠) | 100万円以上6,000万円以下 | 2/3 |
中小企業(卒業枠) | 6,000万円超~1億円以下 | 2/3 |
中堅企業(通常枠) | 100万円以上8,000万円以下 | 1/2(4,000万円超は1/3) |
中堅企業(グローバルV字回復枠) | 8,000万円超~1億円以下 | 1/2 |
卒業枠とは
400社限定で用意された特別枠です。事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する事業者向けに設定されています。
グローバルV字回復枠とは
100社限定で用意された特別枠です。以下の要件を全て満たす中堅企業に向けて設定されています。
- 直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少している中堅企業。
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること。
- グローバル展開を果たす事業であること。
予算額、補助額、補助率(通常枠の加点と緊急事態宣言特別枠)
緊急事態宣言により深刻な影響を受け、早期の事業再構築が必要な中小企業等には「通常枠」で加点措置が実施されます。
さらに、これらの事業者向けに「緊急事態宣言特別枠」が設けられ、補助率を引き上げることが発表されています。「特別枠」で不採択となったとしても、加点の上、通常枠で再審査も受けられるため、対象要件に当てはまればまず特別枠で申請するという判断も可能です。
なお、要件に合致すれば、地域や業種は問われません。
特別枠の対象となる事業者は通常枠の申請要件を満たし、かつ、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~5月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者です。
事業再構築補助金の補助対象経費
本補助金は、基本的に設備投資を支援するものであり、設備費のほか、建物の建設費、建物改修費、撤去費、システム購入費も補助対象になります。このほか、新しい事業の開始に必要となる研修費、広告宣伝費・販売促進費も補助対象です。
また、補助対象経費は主要経費と関連経費に分かれます。関連経費には上限6千万ではなく別の上限が設けられます。また、関連経費のみの申請が出来ない可能性もあるため注意が必要です。
補助対象外の経費としては、次の例が挙げられます。
- 補助対象企業の従業員の人件費、従業員の旅費
- 不動産、株式、公道を走る車両、汎用品(パソコン、スマートフォン、家具等)の購入費
- 販売する商品の原材料費、消耗品費、光熱水費、通信費
自動車、バイク本体は入らない点に留意が必要です。但し、キッチンカーに載せる設備は対象となる可能性もあるため、詳しくは事務局へ問い合わせて確認することをおすすめします。
事業計画の策定
補助金の審査は、事業計画を基に行われるため、合理的で説得力のある事業計画を準備しておく必要があります。
審査項目として特に重要視される項目は、事業化に向けた計画の妥当性、再構築の必要性、地域経済への貢献、イノベーションの促進などになる可能性が示唆されています。
事業計画は、認定経営革新等支援機関と相談しつつ策定してください。
本サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)も認定経営革新等支援機関として、事業再構築補助金のご相談や、申請代行を承っております。相談は無料ですので、こちらの問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。
※補助金のご相談をご希望の方は、「補助金の相談をしたい」旨を受付担当にお伝えいただけるとスムーズです。

事業再構築補助金支払いまでの流れ
前提として補助金は、事業者の支出を確認した後で支払われる制度です。必要な設備を購入し、その事実が間違いないと承認されてから、後払いでお金が戻ってくる仕組みです。
しかし、今回の事業再構築補助金では、例外的に一定の条件を満たすことで「概算払い制度」が設けられます。つまり、手元資金や融資で補助事業を開始出来ない人に向けて仮払いをする措置が設けられる予定です。当然ながら、補助金交付要綱等に基づき、使途はしっかりと確認されます。
事業計画は、補助事業期間終了後もフォローアップされ、補助事業終了後5年間、経営状況等について年次報告が必須です。また、補助金で購入した設備等は、補助金交付要綱等に沿って、厳格な管理が求められます。
「事前着手承認制度」で採択前の経費も補助対象になる可能性も
通常、補助金を利用する場合、採択前に出したお金は一切補助対象にはなりません。しかし、今回のコロナ禍で既存事業が頓挫している事業者も多くいる現状をふまえ、「出来ることがあれば今すぐ動きたい」「補助金の公募開始を待っていられない」という方にも遡って費用の請求を認めてくれるのがこの「事前着手承認制度」です。
具体的には、2月15日以降に費用を支払ったものについては補助金の採択前の支払いであっても補助対象経費にしてくれる制度になっています。但し、これは事前着手申請を提出し、承認された場合に限りますので、不採択となるリスクがある点に注意しましょう。
事業再構築補助金の受付開始時期は?
事業再構築補助金の第2次申請は、5月26日(水)より開始予定です。
公募要領(第2回)も公表されましたので、詳しくは下記をご参照ください。
現段階で準備できること
事業再構築補助金の申請を考えている方は、次の2点の準備に着手しましょう。
- 電子申請の準備
申請はjGrants(電子申請システム)での受付が予定されていますので、事前にID取得しておくとスムーズに申請をすすめられるでしょう。
アカウントは、下記サイトで必要情報を記入の上、必要書類を郵送して作成可能です。アカウント発行には2~3週間かかる場合もあるため、早めに済ませておきましょう。
https://gbiz-id.go.jp/top/ - 事業計画の策定準備・認定経営革新等支援機関との相談
事業計画の策定には時間を要します。自社の強みの分析や、新事業の市場把握など、幅広い情報収集が必要になるので、早めに策定準備をするのがおすすめです。また、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)と事業計画を早めに相談しておくことも重要です。
本サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)も認定経営革新等支援機関として、事業再構築補助金のご相談や、申請代行を承っております。相談は無料ですので、こちらの問い合わせフォームからお気軽にお問い合わせください。なお、事業再構築補助金の相談をご希望の方は、「補助金の相談をしたい」旨を受付担当にお伝えいただけるとスムーズです。
中小企業庁が喚起している注意事項
中小企業庁が事業再構築補助金に関して注意喚起しているのは次の2点です。
- 内容が異なる別の事業であれば、同じ事業者が異なる補助金を受けることは可能です。 ただし、同一事業で複数の国の補助金を受けることはできません。また複数回、事業再構築補助金を受けることはできません。
- 不正、不当な行為があった場合は、補助金を返還しなければならない事柄となり、法令に基づく罰則が適用される可能性があります。
補助金は、決められた使途以外で利用することは絶対に避けましょう。また補助金を活用して購入した資産の管理状況の確認等、補助金交付要綱等に基づき求められますので、当然ですが不正な行為は断じて行わず、また不正な利用を持ち掛けられた場合は明確に断りましょう。
まとめ
2021年3月から開始された事業再構築補助金について、現時点(2021年5月21日)で公開されている情報を元に解説してきました。
コロナ渦の影響で早急な事業転換を求められている事業者にとってはインパクトの大きい制度となっています。まずは、認定支援機関へ相談することで、事業計画の策定から早めのスタートを切りましょう。