予算額1兆1485億円として注目を浴びている事業再構築補助金の第2次募集が令和3年5月20日(木)から始まりました。
事業再構築補助金は令和3年度中に全5回が予定されており、申請には
- ①電子申請の準備
- ②(自己完結できない)第三者による書類作成
の2点が必須です。
本記事では事業再構築補助金の申請方法に特化して解説します。
事業再構築補助金とは
事業再構築補助金の概要
日本政府は2020年からコロナ禍の影響で売り上げ減少に陥った事業者に向け、持続化給付金などの支援策を打ち出してきました。日本政府が行うコロナ関連の補助金で共通する考えは、「コロナで売上が下がった事業者に向けて補助金を支給する」というものです。
今回の事業再構築補助金ではこれまでの「コロナでの売上ダウン」という要件に加え、「コロナ禍で事業再構築に取り組む事業者」が新たに設定されています。
事業再構築とは、「事業を見直すこと」です。事業再構築は別名「業態転換」とも言われていますが、例えばこれまでイートインのみで営業していた飲食店がテイクアウトを始めることも業態転換のひとつと言えます。
業種:事業内容 | 活用イメージ |
飲食業:喫茶店経営の場合 | 店舗の一部を改修し、新たにドライブイン形式での食事のテイクアウト販売を実施。 |
小売業:ガソリン販売の場合 | 新規にフィットネスジムの運営を開始。地域の健康増進ニーズに対応。 |
サービス業:高齢者向けデイサービスの場合 | 一部事業を他社に譲渡。病院向けの給食、事務等の受託サービスを新規に開始。 |
製造業:半導体製造装置部品製造 | 半導体製造装置の技術を応用した洋上風力設備の部品製造を新たに開始。 |
運輸業:タクシー事業 | 新たに一般貨物自動車運送事業の許可を取得し、食料等の宅配サービスを開始。 |
業態転換については、以下記事にて豊富な事例をご紹介しています。
事業再構築補助金の補助金額
事業再構築補助金で支給される補助金額は以下の通りです。中小企業か中堅企業かでもらえる補助金額などの条件額が異なります。また、通常枠・卒業枠などの「〇〇枠」というグループ分けがあるのも特徴的です。各グループの概要については当サイトの以下記事でご紹介していますので、是非あわせてご覧ください。
【事業再構築補助金で支給される補助金額】
中小企業者等 | 通常枠 | 卒業枠 | 緊急事態宣言特別枠 | |||
補助金 | 補助率 | 補助金 | 補助率 | 補助金 | 補助率 | |
100万円~6,000万円 | 2/3 | 6,000万円超 | 2/3 | 【従業員数5人以下】 100万円~500万【従業員数6~20人】100万円~1,000【従業員数21人以上】 100万円~1,500万円 |
3/4 | |
中堅企業 (資本金1億円以上10億円未満) |
通常枠 | グローバルV字回復枠 | 2/3 | |||
補助金 | 補助率 | 補助金 | 補助率 | |||
100万円~8,000万円 | 1/2 | 8,000万円超~1億 | 1/2 |
※中小企業者には個人事業主や士業法人(弁護士法人、税理士法人など)も含まれます。
参照URL:METI/経済産業省|事業再構築補助金の概要(PDF形式:829KB)P6
【注意】補助金はキャッシュバック
他の補助金と同じで、この補助金もキャッシュバック(ご自身が支払ったお金に対して、あとから相当分が支給される制度)です。
最低100万円で補助率2/3ですので、少なくとも150万円の該当経費を支払う予定の事業者がもらえる補助金と表現することができます。
例)100万円の補助金を受け取る場合
①事業再構築補助金に申請して採択される(合格する)
↓
②まず自分が150万円の該当の経費(設備投資費など)の支払いをする
↓
③(中小企業者の場合)150万円×2/3=100万円が支給される
★ワンポイント!
補助金がもらえることになったら、あなたは事業再構築補助金の「補助事業者」となります。補助金事業者には①「補助事業実績報告書」を提出する義務と、②事業完了後の5年間に毎年会計終了後60日以内に会計等の報告をする義務の2つの義務があります。
「認定支援機関と事業計画を立てる」のが条件の補助金
事業再構築補助金にはもうひとつ、「認定支援機関とともに事業計画を立てる」という新たな要件が追加されました。
認定支援機関って何?と思われる方も多いと思いますが、簡単に言うと「経済産業省に認可された税理士や社会保険労務士など」です。
認定支援機関という大きな組織をイメージさせる言葉ですが、実際は街なかの5人程度の税理士事務所でも認定支援機関として認定されている場合もあります。
この認定支援機関とあなたがどのように事業計画を立てるのかという理解しやすくするために、以下の図をご覧ください。

※わかりやすくするため、一部簡略化しています
上記の図の左側が事業再構築補助金の運営サイド、右側が補助金申請サイドであるあなたです。
事業再構築補助金の企画と資金は経済産業省が担当し、申請は(独)中小企業基盤整備機構が担当し、事務手続きはパソナが、採択(合否決め)と審査は採択審査委員会という機関が行います。
これに対し、事業再構築補助金の申請では、①電子申請と必要書類をそろえる担当は事業者であり、②採択・審査にマストな「事業計画」を作成するのは認定支援機関となります。
3~5 年で付加価値額の年率平均 3.0%以上増加すること
最後の要件は事業の付加価値についてです。付加価値とは、営業利益のアップや人件費の削減などさまざまな項目から算出されます。
経済産業省の「経営革新計画」での付加価値額算出を参考にすると、以下の算式で求められます。
付加価値額=営業利益 + 人件費 + 減価償却費
付加価値のアップについては、提出する事業計画書を作成する際に付加価値額が3%以上アップするような計画を立てることで要件を満たすかの判断が行われます。
事業再構築補助金の申請はいつから?締め切りは?

事業再構築補助金をもらうには、事業再構築補助金の申請をして採択されなくてはいけません。事業再構築補助金の申請はいつでもできるわけではなく、申請期間が決まっています。
公募は既にスタートしている(第2回:令和3年5月26日)
事業再構築補助金は事業者を支援する新しい補助金として、その概要がマスコミで発表された当初から注目を浴びています。
2021年3月26日には事業再構築補助金事務局の事務局ホームページ(https://jigyou-saikouchiku.jp/)が公開され、すでに第2回目の公募要領(事業再構築補助金のルールがすべて載ったpdf資料)も公開されました。

参照URL:令和二年度第三次補正 事業再構築補助金 公募要領 (第2回)
第2回の申請期間 | 令和3年(2021年)5月26日~7月2日 |
第2回の締め切り時間 | 令和3年(2021年)7月2日18:00 |
令和3年度中に計5回の公募予定
「2回目の申請は準備が間に合わない!」という方は、ご安心ください。
事業再構築補助金は令和3年度中に全5回公募される予定です(約2.5ヶ月に一度のペース)。
ちなみに、3回目以降の日程はまだ公表されていません。決まり次第、事務局ホームページ(https://jigyou-saikouchiku.jp/)で公表される見込みです。第2回公募で補助金に落ちてしまっても、第3回以降にまた申請できるので諦めずにチャレンジしましょう。
申請期間は(1回につき)約1ヶ月しかない
このあとご説明しますが、事業再構築補助金の申請期間は第2回が5月26日~7月2日ですので、実質は1ヶ月ぐらいしかありません。そのため、公募がスタートしてから電子申請の準備をする、認定支援機関に相談する、では遅いのです。
電子申請も書類の準備も大変ですが、補助金はそのルール(公募要領)を読み込むだけでもかなり時間がかかります。確実に事業再構築補助金をもらいたい!という方は、ぜひ公募要領とともに当サイトの関連サイト(資金調達ノート)の以下記事もぜひご一読ください。
補助金の公募要領は長文で言葉使いも難解です。当サイトのように図や表を用いた解説記事でまず大まかな概要を知っておくと、公募要領を読むときにも理解が早くなります。
但し、補助金の内容は随時変更となることもあります。実際に事業再構築補助金に申請する際には、特設サイトから最新の公募要領をチェックするのもお忘れなく!
事業再構築補助金を申請するための準備

①補助金の要件を満たすか確認する
要件とは、事業再構築補助金に申し込むための条件のことです。要件を満たさないと、補助金に応募することはできません。
基本の要件は2つ
具体的な要件は以下の2点です。応募者は以下の要件の2点とも満たす必要があります。
要件① | 補助金申請前の直近6ヶ月の売上のうちの3ヶ月平均売上とコロナ前の3ヶ月平均売上を比較し、10%以上下がっていること。 |
要件② | 経 済 産 業 省 が 示 す 「 事 業 再 構 築 指 針(www.meti.go.jp/covid19/jigyo_saikoutiku/index.htm )」に沿った3~5年の事業計画書を認定経営革新等支援機関等と共同で策定すること。 |
補助対象経費を使う事業であるか
また、上記の要件を満たす場合でも「補助対象経費」を使う予定があるかを確認する必要があります。補助対象経費とは、補助金が支払われる根拠となる経費のことで建物費、機械装置・システム構築費・技術導入費などがあります。
(補助対象経費の一例)
- 建物費(事務所、生産施設、加工施設など)
- 機械装置(工具、測定工具、検査工具など)
- システム構築費(専用ソフトウェア、情報システムなど)
- 技術導入費(本事業遂行のために必要な知的財産権等の導入に要する経費)
- 専門家経費(本事業遂行のために依頼した専門家に支払われる経費)
補助対象経費は通常枠などの補助金のグループによっても少し差があります。詳しくは公募要領(https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/koubo001.pdf)の17ページから20ページ並びに8ページから10ページをチェックしてみてください。
補助対象経費は原則として、補助金に採択が決まってから支払いがされるものが対象となります。しかし、コロナ禍では「補助金の対象となるまで待っていられない」という事情のある事業者も多いはずです。そこで、事業再構築補助金に関しては「事前着手申請」という制度があります。
★ワンポイント!
事前着手申請とは、補助金の採択の決定前であっても事務局から事前着手の承認を受けた場合は、以前に購入した補助対象経費※も対象となる制度です。事前着手申請の手続きは、事業再構築補助金の申請とは別に事務局へメールで申請する必要があります。
※ただし令和3年2月15日以降に購入契約(発注)等を行った事業に要する経費のみ
詳細は公募要領(https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/koubo001.pdf)の22ページをご参照ください。
応募する「枠」の要件を満たすか
この他、前述した〇〇枠という補助金のグループごとに規定があるため、その規定も満たすかどうかを確認する必要があります。
通常枠 | 前述した4つの要件
|
卒業枠(400社限定) | 通常枠の要件に加えて
|
グローバルV字回復枠(100社限定) | 通常枠の要件に加えて
|
緊急事態宣言特別枠 | 通常枠の要件に加えて
|
参照URL:事業再構築補助金 公募要領
この中で最も条件が少ないのは通常枠で、最も条件が厳しいと思われるのは卒業枠です。卒業枠は400社限定の募集となっており、補助を受ける事業計画の中で中小企業から中堅企業に成長することが求められています。
②電子申請GビズIDプライムを取得する

参照URL:GビズID | Home
事業再構築補助金の申請は電子申請のみで、郵送も直接窓口への持参も不可となっています。
まずはGビズIDのサイト(https://gbiz-id.go.jp/top/)にアクセスしましょう。こちらのサイトを利用するための「Gビズプライムアカウント」を取得します。トップページから少しスクロールして画面を下にすると、以下の画面が現れます。

参照URL:GビズID | Home
GビズIDを使い始める、という見出しがありますので、水色の「gBizIDプライム作成」のボタンをクリックします。次の画面で、法人か個人事業主かを選ぶボタンが表示されますので、選択します。
そして、以下の情報を入力します。
【Gビズプライムアカウントの取得に必要な情報】
- 法人番号
- 法人名/屋号
- 所在地
- 代表者名
- 代表者名フリガナ
- 代表者生年月日
- アカウント使用者指名
- アカウント利用者フリガナ
- 利用者生年月日
- 連絡先郵便番号
- 連絡先住所
- 部署名(任意)
- 連絡先電話番号
- アカウントID(メールアドレス)
- SMS受信用電話番号
これらの情報を入力して利用規約に同意すると、そのまま続けて申請書作成の画面に映ります。GビズIDプライムアカウントは発行までに時間がかかることがあるため、「申請に間に合わない!」という方は暫定GビズIDプライムアカウントという別のアカウントでも申請ができます。
【Gビズプライムアカウントと暫定(ざんてい)Gビズプライムアカウントの違い】
Gビズプライムアカウント | 暫定Gビズプライムアカウント |
|
※あとで暫定から通常のGビズプライムアカウントへの切り替えも可能
|
暫定Gビズプライムアカウントの詳細、発行方法は事業再構築補助金の特設サイト内の文書(以下のリンク)をご参照ください。
【重要】G ビズ ID プライムアカウントを用いた申請に関する変更点について
③認定支援機関に相談し、申請をサポートしてもらう
事業再構築補助金には「認定支援機関とともに協力して事業計画を作成する」という要件があります。事業計画の評価により補助金額も決定されるので、事業計画のできは非常に重要です。
認定支援機関ってどこにあるの?と思われる方も多いですが、いまご覧のこの「創業融資ガイド」を運営するのも、株式会社Solabo(ソラボ)という認定支援機関です。
認定支援機関は全国にたくさんあり、一覧は以下のページからエクセルでダウンロードできます。
認定支援機関に問い合わせるときは、「事業再構築補助金に応募したいのですが」とご相談いただけるとスムーズです。
認定支援機関でできることは、事業計画の作成がメインです。株式会社SoLabo(ソラボ)では、完了報告サポート→事業化報告のサポートまで精一杯お手伝いさせていただきますので、お気軽にお問い合わせください。
★ワンポイント!
Gビズプライムアカウントの取得については代行すると法律違反となりますので、ご自身で作業していただくことになります。
④書類をそろえる、作成する
事業再構築補助金には事業計画書以外にもいくつかの書類が必要です。
基本的には認定支援機関が作成する書類が多いですが、決算書については事業者が作成したものが必要です。これらの提出書類は電子申請で送るため、申請前にはPDFやエクセルなどのデータにしておきましょう。
- 事業計画書(⇒認定支援機関が作成する)
- 認定経営革新等支援機関・金融機関による確認書(⇒認定支援機関が作成する)
- コロナ以前に比べて売上高が減少したことを示す書類(損益計算書など)
- 決算書
- ミラサポplus「活動レポート(ローカルベンチマーク)」の事業財務情報(⇒認定支援機関にご相談ください)
- 海外事業の準備状況を示す書類(卒業枠(グローバル展開実施のみ)またはグローバルV字回復枠のみ)
- 従業員数を示す書類(緊急事態宣言特別枠のみ)
- 令和3年の国による緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等に よる影響を受けたことにより、2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の売上高が対前年(又は対前々 年)同月比で 30%以上減少していることを証明する書類
- 2021 年 1 月~3 月のいずれかの月の固定費(家賃+人件費+光熱費等の固定契約料)が同期間 に受給した協力金の額を上回ることを証明する書類
- 審査における加点を希望する場合に必要な追加書類
準備ができたら事業再構築補助金に申請しよう
電子申請の準備と認定支援機関への相談、書類作成の準備(データ化)が終わったら、無事に事業再構築補助金に申請ができます。
ギリギリになって「あの書類がない!」と焦らないよう、余裕をもって準備しておきましょう。
まとめ
事業再構築補助はコロナをきっかけにした事業転換等、事業再構築を行う事業者が受け取ることができる補助金です。申請にはまずご自身の事業がすべての要件を満たしているかを確認し、その後にGビズプライムIDの取得をして、認定支援機関に相談してください。