個人事業主であっても、事業拡大のために手元資金が必要になる場面は少なくありません。また、弊社には「個人事業主は法人化しないと融資を受けられないのでは?」というご質問がときどき寄せられますが、実は個人事業主でも法人でも融資審査の通過しやすさに違いはありません。
本記事では、個人事業主の方が利用できる資金調達方法を解説します。また、個人事業主の方が金融機関から融資を受ける方法も解説します。
個人事業主が資金調達する方法
個人事業主が資金調達する手段は、日本政策金融公庫や信用金庫から融資を受ける、補助金・助成金を受給する、友人・投資家から調達するの3つに大別できます。各資金調達方法の特徴は、下表に示す通りです。
資金調達方法 | 主な特徴 |
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日本政策金融公庫 |
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信用金庫 |
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制度融資 |
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補助金・助成金 |
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VC・投資家からの出資 |
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ビジネスローン |
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クラウドファンディング |
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「個人事業主でも融資を受けられるの?」と疑問を抱く方もいるかもしれませんが、個人事業主も、法人と同じように融資を受けることは可能です。
また、申請から資金が手元に来るまでに1年半と時間は掛かりますが、補助金や助成金であれば、融資と違って返済不要で利用できます。要件を満たす場合は、申請を検討してみて下さい。
なお、当サイトでは、事業主の経歴や現在の自己資金からどこの金融機関からいくら借入できるかを無料で診断可能です。
個人事業主が資金調達する方法その1.日本政策金融公庫の融資
まずは、日本政策金融公庫からの融資を見ていきましょう。
(1)日本政策金融公庫で融資を受けるメリット
■理由1:高額融資を受けやすい
日本政策金融公庫は、個人事業主や中小企業をサポートするために政府が100%出資している金融機関です。民間金融機関からの融資を受けにくい事業者でも融資が受けやすく、もちろん、個人事業主の方も借入れることが出来ます。
事業開始から2期以内であれば、最大限度額3,000万円の創業融資を受けられます。
もちろん、3,000万円は限度額であり、実際は準備した自己資金の10倍までが受けられる融資金額です。しかし、計画的に準備してきた人なら、事業実績なしでも数百万円単位で融資を受けられる傾向です。
■理由2:金利が低めで融資までの時間が短い
政府系金融機関である日本政策金融公庫は、カードローンや民間金融機関のローンと比較すると金利が低いという特徴があります。
<創業時(税務申告2回終わるまで)に利用できる『新創業融資制度』>
主要利率(令和3年6月1日現在、年利%)
基準利率 | 特別利率A | 特別利率B | 特別利率C | 特別利率D | 特別利率E | 特別利率J | 特別利率P | 特別利率Q |
2.41~ 2.90 | 2.01~ 2.50 | 1.76~ 2.25 | 1.51~ 2.00 | 1.76~ 2.25 | 1.01~ 1.50 | 1.36~ 1.85 | 2.21~ 2.50 | 2.01~ 2.50 |
個人事業主が日本政策金融公庫から借入をする際には、基本的には基準金利が適応されます。特別利率の適応は申込者の年齢や性別、事業内容によって決まります。例えば、特別利率Aは女性・35歳以下の若者・55歳以上の方の申し込みに適応されます。そのため、融資を受ける側が自分で特別利率を選ぶことはできない点にご注意ください。。
銀行のプロパー融資などより低金利な借入もありますが、銀行融資は事業実績が好調でないと受けるのは厳しいです。そのため、開業まもなくでできるだけ低金利の融資を受けるなら、日本政策金融公庫から融資を受けるのが適しています。
また、日本政策金融公庫は、金利が2.0%前後の融資の中では、申込から借入までの期間が1,2か月程度と早めに借入が可能です。
ただし、日本政策金融公庫に個人で申込をすると、準備の手間がかかります。申込するなら、認定支援機関を利用すると、書類作成を代行してもらえるだけでなく、面談サポートも受けられるので、事業に専念しながら準備を進められます。
当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)も、国の認定支援機関として、これまで4,500件以上の融資支援を行ってきました。相談は無料なので、お気軽にお問い合わせください。
■理由3:担保・保証人が原則不要
『新創業融資制度』を利用した場合には、担保も保証人も原則不要とされています。代表者の保証も不要ですので、万が一倒産した場合の責任を代表者が負う必要がありません。そのため、事業者が利用しやすい融資制度です。
信用金庫などの金融機関からお金を借りる際には、基本的に保証人は必須となりますので、公庫の方が利用しやすいといえるでしょう。
■理由4:返済期間が5年以上ある
日本政策金融公庫の返済は、5年以上から選択することになります。長い期間借りられた方が、1回あたりの返済額が少なくて済みますので、利用しやすいでしょう。
創業時は、運転資金を借りる場合には、5年から最長7年以内に返済、設備資金を借りる場合には、5年から最長10年以内に返済する必要があります。

■理由5:他の金融機関からも融資を受けやすくなる
一度も融資を受けていない方と、既に公庫から公庫からお金を借りて、期日通りにしっかり返済ができている方では、公庫からお金を借りている方の方が、他の金融機関からの評価が高くなる傾向が見受けられます。
そのため、日本政策金融公庫の融資を受けた後、他の金融機関からも融資を受けたい場合、既に公庫から融資を受けていることが実績としてプラスに評価され、融資を受けやすくなるでしょう。
(2)日本政策金融公庫で融資を受ける際のデメリット
次に、日本政策金融公庫の融資のデメリットを解説していきます。
■デメリット1:申込に必要な書類が多く、準備が煩雑
下表の通り、日本政策金融公庫から融資を受ける場合、申込時に準備する書類は複数あります。借入申込書や創業計画書、企業概要書など、記入や作成が必要となる書類があるため、書類準備にはある程度の時間がかかると覚えておきましょう。
対象者 | 必要書類 |
全ての方 | ・借入申込書 ・直近6か月分の通帳コピー ・身分証明書(運転免許証もしくはパスポート) ・支払い明細書(借入がある方) ・不動産の賃貸借契約書(店舗/事務所・自宅) ・営業許可、資格又は免許を証明するもの ・見積書、工事請負契約書 ・固定資産税の領収書及び固定資産税課税明細書(持ち家の方) ・住宅ローンの返済予定表(持ち家の方) |
創業予定者 事業開始から1年以内の方 | ・創業計画書 ・水道光熱費等の支払い状況のわかる書類 ・直近2年分の確定申告書又は源泉徴収票 |
事業開始から 1年を経過している方 | ・企業概要書 ・各種税金の領収書 ・売上の根拠を示すことが出来る書類 ・直近2年分の確定申告書、青色申告決算書もしくは収支内訳書 |
融資が確定した後に印鑑証明書も必要となります。借入申込書や創業計画書、企業概要書など、記入や作成が必要となる書類があるため、書類準備に時間がかかります。
■デメリット2:自己資金ゼロで申し込むと融資を受けるのが困難
日本政策金融公庫から融資を受ける場合、所定の審査に通過する必要があります。
創業時、創業直後の融資審査で重視される項目の1つが「自己資金」です。自己資金が重視されるのは、返済実績のない申込者の評価基準に自己資金以外を設定しにくいからです。
個人で申し込みをする場合は新創業融資制度を利用して融資を受けることになりますが、新創業融資制度は「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」という要件があります。
そのため、自己資金がゼロでは要件を満たしているとは言えず、融資を受けることは非常に難しいです。自己資金を全く用意していないのであれば、まずは目安として100万円を目標にコツコツ貯蓄する計画を立てましょう。
(3)認定支援機関を経由すると融資をスムーズに受けられる
日本政策金融公庫に申込する際には、国から「経営に関するアドバイスができる」と認定された認定支援機関を経由するとスムーズに融資を受けられます。
認定支援機関を利用するメリットは次の3点です。
- 書類の作成の時間コスト削減
- 専門家が支援しているので信頼が向上
- 個人で申し込むより金利を下げられる可能性あり
個人事業主の方は特に、稼働時間を書類作成など公庫の申込準備に充てるのは、事業の機会損失をしているとも言えます。認定支援機関を利用すれば、書類作成を代行しますので、事業に専念できるメリットは大きいです。
当サイトを運営する株式会社SoLabo(ソラボ)も、融資のサポート実績が4,500件を超える認定支援機関です。日本政策金融公庫の融資に関して質問や不安がある人は、まずはお気軽に当社にご相談ください。
個人事業主が資金調達する方法その2.信用金庫からの融資
信用金庫からの融資も利用できます。
日本政策金融公庫と信用金庫で比べてしまうと、日本政策金融公庫の方が借りやすく金利も低いため、日本政策金融公庫の方がおすすめではありますが、日本政策金融公庫では融資を受けることができなかった方でも信用金庫ではお金を借りられたというケースもあります。
信用金庫からの借入は、公庫に比べ、金利が少し高く、借りるまでに時間がかかります。
個人事業主が資金調達する方法その3.自治体の制度融資
制度融資とは、地方自治体と民間金融機関と信用保証協会が連携して実行される融資です。
各都道府県にある信用保証協会による保証を受ける事で、信用力が担保され、金融機関から融資を受けやすくなるメリットがあります。
一方、三機関でそれぞれ審査を実施するため、通常の金融機関からの融資に比べて審査完了までに時間がかかる点に注意が必要です。
個人事業主が資金調達する方法その4.補助金、助成金
補助金、助成金は、先にお金をもらえるのではなく、お金を支払った後に、その分が入金される仕組みの資金調達方法です。
融資のように元本の返済・利息の支払いが発生しない点がメリットですが、入金までの時間が比較的長いため、それまでの資金繰りが滞らないかどうか、チェックが重要です。
助成金は、要件を満たした場合には、必ず受け取ることが出来ます。補助金は、要件を満たした方で、かつ、審査を通過した方が、受け取ることができます。
個人事業主が資金調達する方法その5.投資家・VCからの出資
投資家やベンチャーキャピタル(VC)から出資を受ける資金調達方法です。
出資とは、投資家が資金提供者として名乗りをあげ、株式と引き換えに資金を出すことです。
なお、ベンチャーキャピタル(VC)は、複数の投資家や事業会社等からの出資金を元にベンチャー企業に投資し、出資先企業の株式公開(IPO)により利益を得ることを目的としています。
出資を受けるメリットは、融資で発生するような元本の支払い・利子の返済が生じない点です。
さらに、投資家やベンチャーキャピタルは、経営や人脈等、出資先企業の成長をサポートするだけのノウハウがあるため、加速度的な成長が期待できるでしょう。
出資を受けるうえで注意しなければならないのは、出資を受ける事で、出資者から経営に対する口出しを受けることになり、経営の自由度が狭まってしまう可能性があり得る点です。
出資を受ける場合は、その方針や契約内容をしっかり確認したうえで臨みましょう。
個人事業主が資金調達する方法その6.ビジネスローン
ビジネスローンは、融資実行までのスピード感に特化した資金調達方法です。銀行や消費者金融など、様々な金融機関の商品があります。ビジネスローンの融資額は基本的には50万円以下で、年率15.0%前後という条件での借り入れになるのが一般的です。
ビジネスローンは即日~長くても3日程度で融資を受けられるので、急な資金のショートを解消するために利用されることが多いです。ただし、高金利のため利息負担は大きく、継続的に利用すると資金繰りを返って悪化させる恐れがあります。
また、ビジネスローンの借入残高があると、日本政策金融公庫や銀行のプロパー融資など、低金利の大口融資を受けにくくなるデメリットもあります。
そのため、事業をする上でビジネスローンはなるべく利用しない方のが望ましいでしょう。すぐに完済できるアテがあり、即日かつ緊急で資金繰りをしなければならない時のみ、利用を検討してください。
参考:金利による利息負担の差
日本政策金融公庫や信用金庫の金利2.0%で融資を受けた場合と、ビジネスローンや消費者金融の金利15.0%で融資を受けた場合、それぞれ5年間で返済した場合の利息負担をまとめました。
借入額 | 金利2.0%の利息 | 金利15.0%の利息 | 利息差 |
50万円 | 25,833円 | 213,698円 | 187,865円 |
100万円 | 51,666円 | 427,396円 | 375,730円 |
200万円 | 103,332円 | 854,792円 | 751,460円 |
300万円 | 154,998円 | 1,282,188円 | 1,127,190円 |
500万円 | 258,330円 | 2,136,980円 | 1,878,650円 |
800万円 | 413,328円 | 3,419,168円 | 3,005,840円 |
ビジネスローンや消費者金融を利用する場合と日本政策金融公庫を利用する場合では、100万円の借入で37万円ほど利息負担が変わります。
ビジネスローンは長くても3日程度で融資を受けられるので、急な資金のショートを解消するために利用されることが多いですが、利息の支払いを抑えるなら、より金利の低い日本政策金融公庫からの融資を利用する方が適切です。
個人事業主が資金調達する方法その7.クラウドファンディング
クラウドファンディングは、インターネット上でプロジェクトに対してお金を出してくれる応募者を募る仕組みです。現在、多数のクラウドファンディングサービスが展開しています。サービスによりますが、金額に応じて応募者にリターンを返す方式が主流です。
広報・PR活動がうまくいけば、多額の資金を集めることができますが、認知を得られなければプロジェクトが失敗することもあるため、どれだけ準備に時間を割けるかが成功を左右します。
現状のリソースを考えたうえで、事前に計画立てて進めていくことが重要です。
個人事業主が金融機関から融資を受ける条件
冒頭でも触れたように、個人事業主でも融資を受ける事は可能です。そのためには、2つの条件を必ず満たすことが必要です。
条件①開業届の提出
開業届とは、個人事業主が税務署に開業したことを知らせるために作成する書類です。
所得税法により、個人事業主として開業する際には事業を営む場所の管轄の法務局に開業届を提出することが義務付けられていますので、必ず提出しましょう。
条件②納税・確定申告の実施
融資を受けるにあたっては、あなたの事業が利益を出しており、確実に納税しているかもチェックされます。
そのため個人事業主が銀行から融資を受ける際、「確定申告書」の提出を求められます。
銀行から融資を受けるのであれば、原則、確定申告書2期分(2年分)を提出すると覚えておきましょう。
新型コロナの無利子・無担保融資
新型コロナウイルス感染症特別貸付
日本政策金融公庫による無担保かつ実質無利子の融資が「新型コロナウイルス感染症特別貸付」です。
「実質無利子」とは、本制度とあわせて「特別利子補給制度」を利用することで初めて返済した利子が補填されることを意味しています。
借入資金は設備資金もしくは運転資金として利用可能で、個人事業主・フリーランスの方も利用できます。
新型コロナウイルス感染症の影響で、一時的に業績が悪化し、次の条件に当てはまる方が利用可能です。
新型コロナウイルス 感染症の影響を受けて一時的な業況悪化を来し、次のいずれかの要件に該当する方であって、中長期的に業況が回復し発展が見込まれる方 (1)最近1ヵ月間等の売上高または過去6ヵ月の平均 売上高が、前3年のいずれかの年の同期と比較して、5%以上減少 (2)業歴が3ヵ月以上1年1ヵ月未満の場合等は、最近1ヵ月間等の売上高または過去6ヵ月の平均売上高が、次のいずれか(※)と比較して、5%以上減少 ①過去3ヵ月(最近1ヵ月含む。)の平均売上高 ②令和元年 12 月の売上高 ③令和元年 10~12 月の平均売上高 (※)最近 14 日間以上1ヵ月間未満の任意の期間における売上高と比較する場合は、上記①~③の売上高を日割り計算し、当該期間に対応する日数を乗じて算出した売上高 |
参照:新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要|日本政策金融公庫
民間金融機関による実質無利子・無担保融資
政府系金融機関である日本政策金融公庫以外の民間金融機関でも、実質無利子・無担保の融資が開始されました(令和2年5月1日~)。
また、東京都の場合は融資額1億円までは実質無利子化となっているため、東京都内で事業を営んでいる方はぜひ下記サイトもご参照ください。
中小企業向け融資 無利子の新制度に移行(第286報)|東京都
まとめ
個人事業主が資金調達する手段は、日本政策金融公庫や信用金庫などの金融機関から融資を受ける、補助金・助成金を受給する、友人・投資家から調達するの3つに大別できます。
なお、個人事業主の方も融資を受けることは可能です。融資を検討している方は、一度融資を専門とする認定支援機関に相談するのがおすすめです。
当サイトを運営する株式会社SoLaboは、融資のサポート実績が4,500件を超える認定支援機関です。個人事業主で融資を受けるにあたり、質問や不安がある人は、お気軽に当社にご相談ください。