開業資金ゼロの人はフランチャイズによる独立は可能なのか?

独立を検討している人のなかには、開業資金が足りないのではと悩んでいる人もいるでしょう。とくに、フランチャイズに加盟する予定の人は開業資金ゼロでもフランチャイズで独立できるか気になりますよね。

当記事では、開業資金ゼロの人はフランチャイズによる独立は可能かどうかを解説します。フランチャイズに加盟する際の開業資金の目安や資金調達方法についても解説するので、フランチャイズへの加盟を検討している人は参考にしてみましょう。

開業資金ゼロの人は独立できない可能性がある

開業資金ゼロの人はフランチャイズで独立できない可能性があります。フランチャイズで独立する場合、加盟金や保証金、店舗取得費などの開業資金が必要になるためです。

たとえば、経済産業省が平成20年3月に発表した「フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書」によると、フランチャイズで独立する際の開業資金は小売業、外食業、サービス業全体で平均すると2,200万円程度でした。

【本部事業者側で店舗を用意する場合の開業資金の平均額】
業種 合計額
小売業 15,110,000円
外食業 18,690,000円
サービス業 44,600,000円
全体 22,330,000円

※参照:フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書 平成20年3月|経済産業省

とくに、サービス業の開業資金は4,400万円程度と他の業種よりも高くなっています。サービス業には、映画館や劇場運営などのレジャーサービス業やホテル経営などの宿泊業、美容業などの幅広い業種が含まれるので、設備や備品の購入に資金がかかると想定できます。

ただし、開業資金はフランチャイズの本部事業者によっても異なります。フランチャイズの本部事業者側で店舗を用意しない場合は、加盟店が店舗を用意する必要があるので、別途店舗取得費がかかる点に注意が必要です。

なお、フランチャイズで独立する人は開業資金が必要な傾向がありますが、店舗をもたない業態では開業資金ゼロの人でも独立できる場合もあります。開業資金ゼロでの独立を考えている人は、「開業資金ゼロの人は起業できるのか?」も参考にしてみてください。

店舗をもたない業態は独立できる場合がある

店舗をもたない業態の場合、開業資金ゼロの人でも独立できる場合があります。店舗を用意するための契約料や賃料が不要になり、開業資金を低く抑えられるためです。

たとえば、料理の宅配のみを専門とするゴーストレストランのなかには、開業資金ゼロでも独立できるフランチャイズがあります。ゴーストレストランは客席を設けないため実店舗を用意する必要もなく、キッチンさえレンタルすれば営業可能です。

また、本部事業者が加盟金やロイヤリティを設定していなければ、ゴーストレストランをはじめるのに必要な開業資金は仕入れ費用やキッチンのレンタル料などの運転資金のみです。設備資金をかけずに開業できるので、開業資金を抑えることができます。

なお、ゴーストレストランのフランチャイズに加盟する際は、加盟先のゴーストレストランのブランドがUber Eatsや出前館などのデリバリーサービスで人気があるかどうかを確認しておくと参考になります。

デリバリーサービスのWebサイトやアプリ内でユーザーからの評価指数やコメントから良い評価を確認できない場合は、開業後に売上を伸ばせない可能性があるので、フランチャイズへの加盟を検討している人は注意しましょう。

本部が資金面のサポートを行っている場合もある

本部事業者側が加盟店に資金面のサポートを行っている場合もあるので、フランチャイズに加盟したい人は加盟前にサポートの有無を確認しておきましょう。加盟店に必要な支払いを免除するなど、開業資金を抑えられる可能性があります。

たとえば、フランチャイズの加盟金に関しては、支払いが不要な本部事業者もあります。経済産業省の「フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書」によると加盟金の平均金額は150万円なので、加盟金が不要な場合は開業資金を約150万円削減できることになります。

また、店舗取得費や設備費の支払いを不要にしている本部事業者もあります。その場合は直営店を引継ぎできるように本部事業者側が店舗を用意しているため、新たな店舗の契約や設備を購入する必要がありません。

なお、Webサイトや資料から資金面のサポートがあると確認できても、その他に加盟店にとって不利な条件や予想外の制約を設けている可能性があります。本部事業者が個別の相談会や説明会を開催するなど、1対1で質問できる機会を設けていることもあるので、フランチャイズへの加盟に不安がある人は参加してみるとよいでしょう。

独立する人の約半数は金融機関から融資を受けている

フランチャイズで独立する人の約半数は銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けています。独立する際に必要な開業資金が足りない場合は、金融機関から事業資金の融資を受けるという選択肢もあるためです。

経済産業省の「フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書」によると、フランチャイズに加盟した人のうち、銀行や信用金庫などの民間金融機関から融資を受けている人の割合は、全体の37.4%とほかの資金調達方法よりも多い傾向です。

次いで、日本政策金融公庫などの政府系金融機関からの融資が18.6%を占める結果になっており、フランチャイズで独立する人の約半数近くが金融機関からの融資を受けていることがわかります。

【フランチャイズで独立した人の主な資金調達方法】
資金調達方法 割合(複数回答含む)
民間金融機関からの融資 37.4%
政府系金融機関からの融資 18.6%
知人や親戚等からの調達 15.4%
本部からの融資 3.2%
地方公共団体(都道府県市区町村)からの融資 1.8%
その他 1.7%

※経済産業省の「フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書」をもとに株式会社SoLaboが作成

なお、金融機関から融資を受けた場合は借入金の返済と利息の支払いが必要になる点に注意が必要です。事業開始後は、返済の開始と同時に仕入れ費用などの運転資金の支払いも必要になるので、資金繰りを把握していなければ資金がショートするおそれもあります。

資金繰り表を作成することで収支を把握し、資金のショートを防ぐことにもつながるので、金融機関からの融資を検討している人は「資金繰り表とは?経営者のための資金繰り表の活用法と作り方」も参考にしてみましょう。

開業資金ゼロの人は融資を受けられない可能性がある

開業資金ゼロの人は、銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けられない可能性があります。金融機関は融資実行の可否を決める際に、開業資金を貯めているかどうかを検討材料にする傾向があるためです。

たとえば、政府系金融機関である日本政策金融公庫の「新規開業資金」の場合、日本政策金融公庫の担当者に自己資金の有無を確認される傾向があります。

開業資金ゼロの人は金融機関から融資を受けられない可能性があるので、開業前に一定の資金を貯めておく必要があります。融資を受ける際の資金の種類を知りたい人は「融資を受けるための自己資金とは?通帳原本をチェック?」を参考にしてみましょう。

契約を締結する前に必ず契約内容を確認しておく

フランチャイズに加盟したい人は、本部事業者と契約を締結する前に必ず契約内容を確認しておきましょう。契約内容の確認を怠れば、開業後に本部事業者との間で予想外のトラブルが生じ、事業運営や資金繰りに支障をきたす可能性があるためです。

【フランチャイズのよくあるトラブル事例】
加盟契約をして経営を始めたが、当初の売上予測の半分に満たない
開店できなかったのに加盟金が返還されない
思ったよりロイヤルティが高かった
売上が落ちて赤字になったところ、本部事業者から自動的に貸付をされていた
自店の商圏内に同じチェーンの店舗が開店した
経営がうまくいかないので解約を申し出たら、解約違約金を請求された

※参照:フランチャイズ契約の留意点|中小企業庁

たとえば、中小企業庁は「フランチャイズ契約の留意点」において、フランチャイズ契約を締結した後に、想定していた以上にロイヤルティが高かったというトラブルの事例を注意喚起しています。本部事業者によってロイヤルティの算出方法や条件が異なる上、算出方法が複雑な傾向があります。

また、同資料には「売上が落ちて赤字になったところ、本部事業者から自動的に貸付をされていた」というトラブルの事例も紹介されています。加盟前に想定していなかったトラブルが起きる可能性もあるので、フランチャイズに加盟したい人は、契約内容を十分に理解できるまで本部事業者から説明を受けるようにしましょう。

フランチャイズチェーン協会で無料相談してみる

フランチャイズの加盟に不安がある人は、フランチャイズの専門家に相談してみるのも選択肢のひとつです。フランチャイズ業界の健全な発展を図ることを目的に設立された「一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会」では、専門の相談員が無料でアドバイスする「フランチャイズ相談センター」を開設しています。

たとえば、フランチャイズ契約上のトラブルや、フランチャイズへの加盟についての事前相談が可能です。相談内容は厳守され、協会の会員でなくてもフランチャイズの加盟について相談できるので、第三者の意見を聞きたいときに参考にすることができます。

なお、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会への相談は、電話受付か24時間のWeb受付のいずれかで受けつけています。電話の場合、受付時間は毎週月曜日または木曜日(祝日と年末年始を除く)の13時~17時と時間帯が限定されています。

フランチャイズへの加盟について第三者に相談したい人は、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の公式サイトにある「フランチャイズ相談センター」を確認してみましょう。

まとめ

加盟する本部事業者によって開業資金は異なりますが、開業資金ゼロの人はフランチャイズで独立できない可能性があります。そのため、不足している開業資金を一定以上貯めてから開業を再検討するか、外部からの資金調達を検討するとよいでしょう。

本部事業者のなかには開業資金ゼロでも加盟できるフランチャイズもありますが、開業後は本部事業者へ支払うロイヤルティや仕入れ費用などが必要なので、開業資金だけでなく開業後に必要な運転資金も加味して資金計画を立てる必要があります。

なお、独立する人の約半数は銀行や信用金庫などの金融機関から融資を受けている傾向があります。開業前後の人が利用できる創業融資の制度を設けている金融機関もありますが、利用の際におさえておきたい注意点もあるので、金融機関から融資を受けたい人は「起業前後に創業融資の審査を受ける上での注意点を解説」も参考にしてみましょう。

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